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9月の恋と出会ったら  作者: 佐伯龍之介
40/60

現在の城田さん⑩

ヒロタとは、どういう人だか私には見当つきませんが、起こったことを悼み、悲しみ、過去を変えたいと強く願った誰かでしょう。

 そして現に変えてみせた。齋藤さんの居たB号室に住み、壁にあいたマグカップほどの穴を、異なる時間に属する同じ穴と重ねあわせた。たったマグカップ一杯分の、けれど奇跡を起こしたのです。

 そういうヒロタとは、おそらく、齋藤さんがすでに知っている誰かでしょう。齋藤さんがこの先知り合う誰かではなく(なぜならもしさっき述べたことが当たっているとしたら、本来の歴史の流れでは齋藤さんが『この先、誰かと知り合う』ことはあり得ないですからです)

 以上のことが、私が考えた可能性です。そんな馬鹿なことを思いつくやつもいるのだと無視して頂いてももちろん結構で、齋藤さんの当然の権利です。

 けれども、私としてはそういう事を思いつき、思いついてしまったからにはお知らせするのが義務のような気がしてこの手紙を書きました。

 余計なおせっかいという気もします。こんなことは書かないほうがいいのではとも思います。けれどもこうすることがヒロタなる人物に対して、また齋藤さんに対して誠実な行為だと思わずにはいられませんでした。

 これを読んで腹を立てるのも、齋藤さんの当然の権利です。その場合は私に文句をおっしゃってくれていっこうにかまいません。怒鳴り込んでくださっても結構です。先日の晩に私が、エアコンをつけたことをとがめられたと思って、齋藤さんのところへ文句を言いに行ったように。

 これだけのことを書いたのですから、苦情、お怒り、何でも受け付ける所存です。電話でも結構です。番号も書いておきます。夜の九時か、遅くても十時にはたいてい家にいます。

 それでは、長文かつ乱文の失礼、どうぞお許しください。

                           敬具

                           城田

                           (042-***-***) 


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