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9月の恋と出会ったら  作者: 佐伯龍之介
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現在の城田さん④

 そして三日後の晩、城田さんが僕の部屋のチャイムを鳴らした。秋らしく少し厚手の服装で。

「それで」と僕がドアを開けるなり言った。

「はい?」

「私に聞きたいことや話したいことというのは何ですか?」

城田さんに上がってもらい、この前と同じようにダイニングテーブルに差し向いになって、全てを話した。僕から見た、僕に分かっていることを全部。

 城田さんは時々「信じられない」とつぶやいたけど、この前同じ言葉を言った時とは調子が違っていた。三日分とはいえ、新聞の見出しをチェックして、いつか僕が受けたのと同じショックを受けたからだ。

 僕と同じようにヒロタが未来の存在であることを受け入れたのだ。そしてそれを受け入れる前と後では、すべての印象が全く違う。

「思うんですけど、ああいう風に未来のことを予言されると」

僕の話がひと段落した時に、城田さん自身がそう言った。

「ただいうだけじゃなくて、実際に的中させる相手に出会うと、われわれは無条件で畏敬の念を抱いてしまうんでしょうね。だからこそ、齋藤さんも、あんな荒唐無稽な話を信じたり、素直に言う事を聞いたりしてしまったんでしょう。

 地球の絶対的位置が一年で数メートルずれる灘の、過去の自分である私を尾行してほしいだの。普通ならそんな話うのみしませんよね、理性のある人なら」

僕が居れた紅茶を、今度は屈託なくすすりながら断言する。

「ともかく、ここ数日の新聞を見て、私のほうでもいろいろ考えざる負えませんでした。それと今聞いた話とを合わせて、思うのは」

「どんなことでしょう?」僕は期待を抱く。たぶんこの人は、僕より頭がいい。牧童用、ヒロタの正体や目的を知らなくても、僕よりず時の通った推測をしてくれそうだ。

「まず、その声の主ー齋藤さんが言う『ヒロタ』についてです。彼はうそをついている。未来から話しかけているというのは信じないわけにはいきませんが、それ以外はほとんど嘘ばかりといっていいのではないか。

 まず、当人の招待です。私でないのはもとより、A号室の住人じゃない」

「A号室の住人じゃない?」

「そう、一年後もA号室には私が住んでいるはずです。今年引っ越してきたばかりだし、何しろこの家賃でこのスペースという貴重な物件ですから、出ていく予定はありません。

 一年後もA号室にはこの私、ヒロタなる人物とは声も性格も異なる私が住み、しかも壁の穴はエアコンによってふさがれている。私はともかく熱いのが苦手で、食欲もなくげっそりやせてしまうんで。と言って寒さに強いというわけでもないんですけど、それはそれとして。

 この夏中我慢して、ようやく手に入れて取り付けたエアコンです。はずす予定は全くありません」

「そうですか」と僕。

城田さんが暑さに弱いのはよくわかった。そこまでエアコンが不可欠なら夏前に自分で買えばいい。そうする経済力がないことも。

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