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9月の恋と出会ったら  作者: 佐伯龍之介
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二度目の報告②

「そうかもしれませんね。けれども・・・・ちょっと失礼します」

 そう言っておいて、しばらくいなくなるのはヒロタのいつもの癖だが、少なくとも今日に関しては、話をごまかすための口実なのではないかと思えてきた。

「あぁ、すみません。なんでしたっけ?」

「事情を説明してください」僕はくりかえす。

「そのことですか。この前言いましたよね。ある人の気持ちを考えないといけない。私一人の判断でお話しするわけにはいかないと。そして、実を言えば今現在も、その状況は変わっていないような次第で」

「誰かの同意が必要だけけれども、それが得られていないということですか?」

「えぇ、まぁ、それに近いですね」

「相手の人と、先週以来話をしていない?」

「いや、そういう訳ではないのですが」のらりくらりとした受け答えに、僕もイライラしはじめる。

「だいたいその人とは誰の事なんですか?」ヒロタが前に言っていたことを思い出し、「オーナー?」

「いいえ、オーナーではありません」

「じゃあ、いったい・・・」

「私にとって近いようで、すごく遠いような人です」そんな事を言われても何のことなのかさっぱりわからない。

「その人と連絡はとれないんですか?」

「全く取れないというわけではないんですが」

「だったら・・・」

「ですが、その人は今ここにいないのです。私のいるここには」

「でも、ずっと居ないわけではないんでしょう?」

「えぇ、そうではないと思います」

「どこかへ行っていて、戻ってくる?」

「そのはずです」

「それはいつですか?」

「いろいろなことがうまくいけば、たぶん、九月二十六日に」とヒロタ。 

 九月二十六日と言えば、ちょうど一週間後だ。

「僕が来週もこれまで通りにすれば、その時こそ話してくれるという解釈でいいんですね?」

「そう解釈してもらって構いません。さらに言えば、私としてもそうしたいと思っています」

僕は考える。本当に話す気があるのだろうか?

「お願いします」ヒロタの口調が熱っぽくなった。「来週こそ、ぜひとも。何を置いても」

「わかりました」またしても引きずられてから、念を押す。

「でも、あと一度だけですよ。その後も今と変わらないようなら本当に考えさせてもらいます」

「えぇ、それで結構ですありがとう」深く頭を下げているような気配。

「それでは今日はもう遅いですから、最後に・・・・」

「また、新聞ですか」

「えぇ」

「そのことならもういいのに」

 ヒロタが未来の人間だということはよくわかった。いくら信じられない話でも、信じないわけにはいかなかった。だから、今更証拠立ててくれなくてもいい。僕はそう思っている。

「いや、こちらの気が済まないのでやらせてください」

 ヒロタのこだわりに押し切られて、過去散会と同じ手順を繰り返す。相変わらずのプロ野球の制度問題。某国のミサイル問題。

 日付と見出しの言葉を半ば機械的に書き留めながら、僕の心はあちらこちらへさまよっていた。

ヒロタが言っていた相手、気持ちを考えてあげなければならない相手とは、いったい誰の事なのだろう?

この問題はオーナーにもかかわりがある。前にそう言っていたはずだけど、オーナーの事ではないtpはっきりと否定している。

 ことさらいつめかすようなヒロタの口調からは僕の知っている人ではないか?という気が何となくする。

 城田さんと僕の共通の知り合いなんてほとんどいないのに。オーナーのほかには、嶋さんと神室さんくらいだ。

 けれど、考えてみると、それは現在の城田さんと僕の話で、一年後に関してはわからない。

 一年の間に、僕の知り合い地知り合いになっていてもおかしくない。そればかりか、僕自身と親しい友人になっていてもおかしくない。

 そんなことを考えていて、気が付くと一週間ではなくもっと先、十日後の見出しまで書き取ってしまっていた。

「おっと、三日ほど余分でしたね」とヒロタ。

「そのぶんはおまけということで、では来週、いつにもましてしっかりお願いします。守備がどうなろうとも・・・・たとえ途中で彼女を見失ったとしても、十七時までは最大限の努力を続けてください。

あくまで、たぶんですが、来週にはすべてうまくいくと思いますから」「そうなるといいですね」

「そういう事です。それじゃあ、おやすみなさい。くれぐれも、よろしくお願いします」

いつもより強い調子で念を押した後、いつものように、ヒロタの気配が消えた。

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