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暗闇

作者: 秋雨 玲翔

ここは真っ暗だ。とてつもなく暗くて前も後ろも全く見えない。自分の足や手が認識するのが精一杯なほど。

俺はひたすら歩いていた。前も後ろもわからずこの歩く先に何があるのかもわからない。時には壁にぶつかった。時には崖から落ちることもあった。

それでも歩くしかない。ここに正解はなかった。歩くことだけが唯一の正解だ。


とある時、歩いていると

ざっ、ざっ

と人の足音らしき物音が耳を通した

「誰かいるのか?」

近くにいると思ったので俺は声をかけた。

「うん、いるよ。今行くね。」

女の子らしき声が返ってきた。

俺たちは声を頼りに会うことができた。

「こんなところで人に会うなんて珍しいな」

「そうだね。せっかくだし一緒に行かない?」

「うん、何かの縁だし一緒に歩こうか」

「うん、そうしよう。私の名前は凛花っていうの。」

「俺は秋雨って呼んでくれたらいい」

お互い、人と会うのは久しぶりとのことで色んな話をした。今まで会ってきた人の話。趣味の話。自分のことや時には相談したり。

その時間はとても幸せで暗闇の中を暖かく照らすような明るい世界があった。


時が経って歩くのも続けていた時

2人は会った時よりも仲良くなった

「ね、秋雨。ずっと一緒に歩こうね。この先どんなに痛くてもどんなに辛くても一緒に半分こして分け合おうね。」

凛花は俺の手を握ってそう言った。

「うん。絶対に離さない。」

2人は闇の中を前を向いて歩いて行った。

俺はその時、この子を不幸にしないようにと少し前を歩くことにした。壁にぶつかった時は知らせてぶつからないように。崖の時は早く教えられるように。凛花の笑顔を壊さないように俺は前を歩き続けた。


ずっと時間が経った。ずっと2人で手を繋いで歩いていたがとあるとき手を離して凛花が話しかけてきた。

「ね、秋雨。ずっと前を見てるね。」

「凛花に怪我とかさせたくないからね。」

「ね、こっち向いて?」

「うん?」

暗闇の中、見るためにかなり近いて凛花の顔を見る。

その可愛い顔には涙が伝い悲しげな表情で埋め尽くされていた。

「前ばっかり見て私のこと見えてた?振り向いてくれた?私も秋雨が傷つくの辛いの知ってた?泣いてるの知ってた?」

「……。」

そう、俺は前を向いて相手のためにと思っていたのに何も知らなかった。凛花のこと。話すときも前を向いていた。

その後も俺の知らないことを全部聞かされた。辛いことも悲しいことも全部我慢していたこと。


そんなことがあり俺は凛花を振り返ってみることをしっかりした。けどもう手を握って歩くことはなく、いつのまにか凛花は俺の近くからも居なくなった。


そのあと俺が見ていた世界は凛花と会う前より暗く冷たい世界が広がっていた。

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