解き放てない⁉︎異術授業2
今日は朝から異術の実技があり、各生徒は校内のグラウンドにいた。皆異術用の服に着替える。
異術用とのことで異術や異能に関して耐性がついており、体への衝撃や影響を弱めてくれるとのこと。
初めて着てみたが、普通の体操着と全く変わらないように感じる。
「では各自二人組を作り、準備体操を行うこと」
藤宮教師が指示を出す。
誰と組めばいいのだ。
キョロキョロ見渡しても、男の知り合いがまだいない俺には無意味だった。
さすがに女子と準備体操は恥ずかしいし、こちらから頼ることはできない。
周りから「やろーぜー」、「一緒にやろーよ」みたいな声が聞こえ、だんだんペアが決まりだした。
やばい。
異術の授業を受ける前から、嫌な汗をかきはじめる。
もしかしてこのまま見つからなければ、藤宮教師とやらなければならないのか。
あの教師と?
絶対嫌なんだが!?
俺が一人テンパりながら、たじろいでいると、平等院がこちらに近づいてくる。
「一緒にやってあげてもいいけど?」
そういいながら、平等院は恥ずかしいのかこちらの方は向いていない。
(平等院、お前はもしかして、天使なのか!?)
「是非是非お願いします!!」
「声大きい、あと手を握るな!!」
思わず手を握ってしまい、怒られる。
ただひとまずはみらずに済み安堵した。
準備体操と言っても何からしていいのか俺には分からなかったが、各ペアはもうすでに始めていた。
平等院も知ってるらしく俺は平等院に真似て準備体操を進める。
やっているうちに1人でできる体操は終わり、2人で行う体操に変わる。
「変なこと考えないでよね。」そう前置きし、平等院と2人で進めて行く。
手を繋いだり、背中を押したり、足を支えたり、俺はできるだけ意識をしないようにするが、全然無理だった。
(手が柔らかい。足も滑らかだ。しかもなんかいい匂いする!!)
俺がなんとか持ちこたえていると、準備体操が終わった。
なんとか終わった。
平等院の人肌の生暖かさが手に残る。
しっかり覚えておこう。
そんなことを考えていると、
「あんた、結構いい体してるのね」
平等院は俺の腕とか胸を触りながら話す。
「そうか。別に普通ぐらいだろ。ってかこしょばいから、やめてくれ」
平等院は柔らかく、指先でなぞるように触るので、こしょばくて仕方がない。
俺が平等院から少し距離を取ると、平等院は少し残念な顔をしていた。
やっぱり、こいつ変わってるな。筋肉フェチとかそっち系の人なのか。
準備体操が終わると次にはランニングとの指示がある。しかも三キロとのことで、グランドを2周回ることになる。
自主的にやっている朝のランニングは好きなのだが、強制的に走らさせるのは嫌いだ。
めんどくさいので、前の方に行かず、後ろの方からスタートしようとすると、平等院に掴まれ、なぜか先頭のスタート位置に立たされる。
「勝負よ。七海君」
平等院はニヤリと笑いながら、俺を挑発するように言う。
「女子とは流石に勝負だろ」
流石に男女では体格差がある。勝負は嫌いではないが、女子と勝負するほど野暮ではないつもりだ。
「私が女だからって、勝てるわけがないとでも言いたいの」
俺の反応が気に食わなかったのか、平等院は怒りながら言う。
「私ね、女だからとか、金持ちだからとか、令嬢だからとかそういう固定観念で勝手にああだこうだ思われるのが、一番嫌なのよ」
「そこまで言うなら、わかった。けど負けても泣くなよ」
「望むところよ」
俺たちを含め、生徒たちは走る為に構え始める。
スタートの合図が藤宮教師よりかけられる。