解き放てない⁉︎入学式7話
平等院は俺のベットに座り、俺は反対側でフローリングの上で座っていた。
平等院のスカートの中が見えそうで見えないので、若干気になるが、目の前のテーブルの上に並べられているパンに手をやる。
「それで、話したい用って」
俺は平等院がこちらの部屋に来た理由を聞いた。
「いや、やっぱり貴方が推薦でこの学園に入ったのに納得いかないのよ。絶対何かあるでしょ。」
まだ納得してないらしい。
「そう言われてもな。まあ自己紹介でも言ったけど、異術には自信はあるけどな。それくらいだ。」
俺は胸を張りながら答える。
「異術ねぇ。いや、別に異術を扱えるのがすごくないって言ってるわけじゃないんだけど。」
平等院は少し含みのある話し方をする。
(こいつは本当におバカさんなのかな)
俺は平等院は少し性格に難はあるが、実際勉強とかは出来るお嬢様と勝手に思っていたが、そうではないらしい。全く困ったものだ。
「平等院あのな、異術とは異能の基礎と言われてて、とても大事な要素なんだぞ。異能を鍛えるためにもまず異術が出来ないとうまくいかない。逆に言えば、異術を鍛えれば、異能もおのずと鍛わるわけ。」
実際、俺自身異能が全くもって使えず、使い方すらわからない状況だが、異術を鍛えていけば、いつか異能についてわかると信じている。
「ちなみに俺の得意異術は、流炎乱舞だ。」
流炎乱舞とは、文字通り、炎が踊るように燃え広がり、辺り一面を焼け野原にする異術である。いいところとしては少しの魔力で辺りを燃やせる破壊力があるところが挙げられ、悪いところとしては対象を選べるわけではなく勝手に燃え広がるところである。
流炎乱舞は、国家で定められた国家異術の中級にあたり、俺が初めて出来た中級異術であり、思い出深いものがある。
「しかも俺は国家異術の初球から中級まですべてマスターしている。」
家で、そして山奥で、日々で特訓し、そして鍛錬してきた。5中の学生がどこまで出来るかは知らないが、訓練してきたレベルが違うだろう。
平等院は俺の話を聞き、口を開け、間抜けな顔になっていた。
そしてだんだん呆れた顔になる。
「あのね、七海君、そんなことクラスのみんな出来るわよ。むしろこの学園に入るための最低限のレベルよ。私で言えば、上級魔法も何個か使えるわ。」
「嘘だろ。」
俺は平等院に聞き返す。
「嘘じゃないわ。」
「またまた平等院はすぐに俺をからかうからな、もう冗談がひどいぞ。」
「本当よ。」
「マジかよ・・」
「・・・なんかごめんなさい。」
俺がよほどひどい顔をしていたのか、優しい声で平等院が謝ってくれた。
「いいんだ。俺は所詮ただの田舎者だってことさ。」
中学時代、誰とも遊ばず(遊ぶ相手がいなかったのもある)、ただただ異術の鍛錬に勤しんでいたあの時間はなんだったのか。
来る日も来る日も鍛錬に取り組み、いつか報われる。そんな日が必ず来ると思い、努力してきたのだ。
死にたい。泣きたい。
しかも今日自己紹介で、異術には自信ありますとか言ってしまった。恥ずかしい、どっか深めの穴に入って、もう誰からも見えないところまで潜り込みたい。
沈黙で気まずい時間が流れる中、平等院が切り出す。
「でもこれであなたがなぜ推薦されたのかより怪しくなったわね。」
「何か特別な運動や芸術的才能があったとしても、この学園が推薦を出すとは思えない。また異術についても、平均いや平均以下なことがわかったわ。」
「もう推薦とかそんなのもうどうでもいいのだが、あと平均以下とか言うの今はやめてくれ。」
少し傷つく。
「あなたねぇ、そんなにメソメソしてどうする気なのよ。そんなことしててもなんの意味もないわ。」
平等院は呆れながら俺に話しかける。
「このパンでも食べて元気出しなさいよ。」
平等院はスティック形状のパンを俺の口に突っ込む。
甘いパンが体に染みる。
平等院は案外いいやつなのかもしれない。
俺たちはそのあと他愛もない話をし、また明日、平等院はそういい帰っていた。