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解き放てない⁉︎入学式5話


平等院はこちらを睨んでいる。

まるでわざわざ食事をしてあげたのに、私の誘いを断るとはどう言うこと?と言ってるようだ。

ただ、俺にも理由があるのだ。


「いや別に入りたくないとか、そう言うなんじゃなくてだな」

平等院はまだこちらを睨んでいる。

じょあ何が理由なのよ?と言ってるようだ。


「俺、バドミントン部入ろうと思っててさ」

中学時代からバドミントン部に所属していた。だが俺が入った瞬間、部員の全員辞めてしまい、俺は中学時代3年間顧問の先生と2人で打ち続けた。

俺嫌われすぎだろ、思い出すと涙が出て来る。

ただ腕には自信がある。顧問の先生の期待とあと他の生徒を見返したくて、1人で全国大会に出場するレベルだ。

友達を作るためにも部活動は、欠かせないと思っている。

経験者しかも全国レベルとなれば、ある一定の立場を確保できるだろうという、少し打算的な気持ちもあるが、輝かしい高校生活を送るためには必要なことだと思っている。


だから、きっぱり断ろう。

少し仲良くなれたが、仕方ない。

生徒会には入らない。


「ごめん、平等院さんから誘ってもらえたのは嬉しいけど、バドミントン部に入って頑張っていきたいと思っているんだ」


「あなた、あんな陰キャラスポーツをする気なの?そんなこと許さないわよ!!」


「全国のバドミントン部の皆さんに謝りなさい!!」


「サッカーなら、許すわ。だけど、バドミントンはダメよ。そんなのは生徒会を断る理由にならないわ。あんな小さい羽根を、小さいラケットで当てる競技、当たるわけないし、全くもって楽しくないわ!!」


「お前の過去に何があったか知らないが、生徒会に入るつもりはない。誘ってくれるのは本当に嬉しいんだがな」


「なら、勝手にすればいいわ」

そう言うと、平等院はぱっぱと残っていた昼食を食べてしまい、1人で出ていく。

そんなに怒らなくてもいいのでは、と少し残念な思いをしながら、俺は1人昼食を食べた。


昼食を終え、教室へ戻る。

まだ昼の授業までは時間はあるが、席には平等院の姿があった。背筋がピンと伸び、美しいのが後ろからもわかる。

教室に来るまで、先ほどの平等院との会話を思い出していた。

よくわからない俺を昼食に誘ってくれて(平等院は断固として認めないだろうが)、そして生徒会にも誘ってくれた。


生徒会。

全く考えたことはなかったが、一度生徒会への入部についても考えようか。

優柔不断と言われたらそれまでだが、クラスメイトからの頼み、平等院の頼みなら、できたら応えたい。


平等院に一度話しかけよう。

俺は平等院に近づこうとすると、後ろからも肩を叩かれる。

振り向くと栗色のショートヘアの女子ニコニコしている。


「やぁ、推薦君」

「なんですか、その嫌味な言い方わ」

「だって普通に七海君って呼ぶより、その方が面白いじゃん」

「あだ名には憧れがありますけど、普通に七海君でお願いします」

えーっ絶対推薦君のほうが面白いのにー。っと口を尖らせながらブツブツ言っている。


彼女の名前は確か頬月さんだったはずだ。

頬月と言えば、日本を代表する医療メーカーの会社だ。自己紹介の時にもそんな話が出ていた。

頬月さんを見る限り、平等院みたくプライドとか無さそうで、人あたりがとても良さそうだ。


「で、何かあった?」

俺にわざわざ話しかけるくらいだ。何か用があるのだろう。


「いやはや、入学早々あの平等院さんと昼食取るなんて、すごいことなんだよ。5中出身者からすれば、それはもう大スクープって感じなわけ。七海君は何したのかな?」

頬月は俺の顔を上目づかいで見る。

平等院の冷たい目線も苦手だが、こういう目線も苦手だ。俺は少し目線を外しながら答える。


「うーん、昼食に誘わ・・誘ったんだ。」

誘われたとか言ったら、また後がうるさそうなので、誘ったことにした。

「七海君って意外に大胆なんだね。」

頬月はこのこのって言いつつ、俺の胸をツンツン人差し指で突く。


「大胆って違うよ。俺こっちに来て1人だったし、それで、誘っただけで、決してやましい気持ちがあった訳じゃないんだ。」

なんか変な勘違いされてそうだから。すぐに訂正した。


「えー、絶対嘘だぁー。平等院さんに一目惚れしたでしょ。照れなくてもいいよ。だってさ、平等院さんの自己紹介聞いて、普通昼食誘う??私達は平等院さんのこと少しは知っているから、別に何とも思わなかったけど、七海君は初めて聞いたんだよね。それで誘うかなぁ?」


(おっしゃるとおりです)


頬月はニタニタしながら、俺を追い詰めていた。

どうよ。どうよ。って言いながら、俺の腹に次は肘を当ててくる。かなりの急接近で陰キャラの俺には刺激が強すぎる。


正直に言えば、後から平等院に何言われるかわからないし、かと言って、一目惚れで誘ったと言うのも流石にシャクだ。

仕方ない。嘘をつこう。


「やっぱり平等院は少し浮いてるのか」

唐突な俺の質問に少し戸惑いながら、頬月は答える。


「えっと、まあ何事にも全力というか、一生懸命というか、それで少し普通の生徒との温度差があって、刺々しい態度を周りにしてる感じはあるかなぁ」

「やっぱりな!」

「やっぱりってどういうこと」

「いやー、俺がなんで平等院を誘ったかというと」


「あいつ、一人ぼっちの子鹿みたいで可哀想に思えたんだよ。だから誘ったわけ」


それを聞き頬月はぼーぜんとし固まる。

やがて、顔が緩み出し、声出して笑い出す。


「平等院さんを子鹿って!?そんなこと言うの七海君だけだよ。絶対!!」

バシバシ俺の背中を叩きながら、頬月は大笑いして、涙を流している。


「頬月さん、痛いから、本当に痛いから。」

「いやー七海君は大物になるよ絶対!!間違いないよ!!」

そういうと、頬月は笑いながら俺の元を離れた。


なんか暴走列車みたいな人だな。

けど、悪い人ではなさそうだし、知り合えてよかった。

俺は席に着くと、前席の平等院がこちらを向く。

なんかプルプル震えながら、顔を真っ赤にしてられる。

(もしかして、聞かれていたのか)


「あなた、あとで覚えときなさいよ」



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