解き放てない⁉︎入学式3
前席の女子がこちらを見ている。
綺麗だ。可愛い。結婚したい。容姿に全て持っていかれそうだったが、俺は先ほどの自己紹介を思い出していた。
腐敗した生徒会の改革とか、国家支援学園高校のトップに立つとか。
(こいつとはあまり関わらない方がいいよな)
「平等院さんだよね。これから席が近い同士よろしくお願いします。」
俺は冷静に状況を判断した上で、当たり障りのないように話す。
「よろしく。七海君。」
平等院もそう言うが、俺の手を離す気がさらさらなさそうだ。顔に私の質問に答えなさいと書いてある。
「さっきの話だよな、別に俺は何者って言うほどではないよ。ただの田舎者だ。」
「そうは見えないわね。さっき私の自己紹介、異能の説明をした時、守神クラス、つまりA級異能力にみんな注目してたわ。ただ、貴方だけは別段興味なさそうにしていた。明らかに強者の振る舞いに思えたわ。
そして何よりも、あなたはこの学園から推薦を受けている。しかも無能力者。」
「あなた何者?」
あなた何者?の補足説明を平等院はしてくれた。
ニコニコしながら話してくれていればいいのだが、まるで容疑者への尋問のように、明らかに疑いの目を向けながら平等院は話す。
「平等院さん深読みしすぎ。俺あがり症だからさ、自分の自己紹介まで緊張して、他の人の自己紹介を聞けてなかっただけで、別にそんな強者の振る舞いなんてしてないよ。」
俺は出来るだけ愛想よく笑いながら話す。
「じゃあ推薦の件はどう説明するの?」
平等院は全く納得している様子ではなかった。
「そうだな。地方出身の生徒を確保したかったからとかかな。まあ一番高い可能性としては、手続きミスかな。」
俺は再度しらばっくれる。
平等院は俺をジト目で見ている。
全然俺の話を信用してくれてる様子はない。
しかし、何かわかったように頷き出した。
「今あなたと話してよくわかったわ。
あなたは異能を隠しているわね。それも大きな力を持った異能を。だから他人を見下す。嫌な人間ね。」
平等院はそう言うと、俺の返事を待たず、教壇の方へ顔を向ける。
名探偵平等院の手で俺の嘘は簡単にバレてしまった。しかもその後にすごい誤解をしてそうだ。
あまり関わりたくないとな思っていたが、あんまりにもあんまりだ。
でも仕方ない。向こうは確信を持てていないわけだし、俺が異能をもっている証拠もない。
疑うことはできても、そこまでだ。
大丈夫だ。
俺は本来の目的のトイレにでも行こうとしよう。俺の尿意が収まらない。