運命の人6
ブザーの音が鳴ると、同時に平等院は座り込み、目を瞑る。
【我を妨げる全ての理を悠遠へと導け】
【氷炎の守神】
平等院の背後に女神が現れ、背後から平等院を抱きしめると、一体化するように、平等院の体に溶け込んでいく。
平等院が目を開くと、会場一面を真っ白にし、梅雨のジメジメした空気から、冬の張りつめたような空気に変える。
【デルタストーム】
平等院は生徒会三名に向け、平等院ができる最強異能を発動する。
氷でできた竜巻現れ、コンクリートの地面を抉り掬い上げながら、生徒会三名の元へ。
【流炎乱舞】
竹内生徒会長と、三谷副会長は同時に異術を発動する。
生徒会の前に地面に這い蹲りながら、蠢き、唸るように炎が広がる。
蠢く炎が、向かってくる氷の竜巻に触れると、氷が炎を飲み込み、やがて炎から氷の粒になり、コンクリートと同じく掬い上げられる。
「流石A級、すごいな」っと竹内が呟くと、
「関心ている場合じゃないよ、竹内君!!どうするのよ!?」
勢いがまるで収まらない氷の竜巻に動揺する三谷が竹内の肩を持ち、体を揺らす。
「僕達ではどうにも出来ない。こう言う時は、同じA級のキキ君の出番だよね」
会長がそう言うと、冴島は会長と副会長の前に出る。
「言われなくても、分かってるっつーの!!あとキキって呼ぶな!!」
【契りを使いし王たるものよ。今我に力を貸したまえ】
【皇帝の押韻】
冴島の前に大きな木槌が現れる。
冴島は大槌を両手で引きずるようにして、氷の竜巻へと颯爽と向かう。
近づくと、体を軸にし回転しながら大槌振い、氷の竜巻を叩く。大槌で叩いた氷の竜巻に、術印が刻まれる。
冴島はすぐ竜巻から距離を置き、左手で魔力を込めながら唱える。
【爆炎の契り】
〝ドッゴーン!!ドッゴーン!!〟
〝ドッゴーン!!ドッゴーン!!〟
氷の竜巻についた術印が展開し、爆発を繰り返し、繰り返し、行われる。
やがて、氷の竜巻も勢いを無くし、巻き上がった残骸が山のように、地面になだれ落ちる。
冴島が座りながら、ふっと、少し呼吸を整えていると、山のようになった残骸の上から、平等院が氷剣を冴島に振り下ろす。
冴島は、間一髪のところで、大きく右に避けて躱すが、避けた先で、残骸のコンクリートに右足をぶつける。
「痛っ!?」
その一瞬の隙を平等院は見逃さない。
「まずは一人」
平等院は氷剣を持ち直し、冴島に斬りかかる。
が、冴島に斬りかかる寸前に、平等院の両手、両足を鎖で縛られる。
「忘れてもらったら困るね」
平等院は後ろを振り向くと、
竹内の周りの空間から現れている4つの鎖に自身が縛られていることに気づく。
その隙に平等院の目の前にいた冴島は三谷の元へ移動し、三谷の異術による治療を受ける。
「いやはや、かなり危なかったよ。さすがA級、いやさすが平等院清華と言わずにはいられないな。ただ君はもう拘束した。もう降参してくれてもいいんだよ」
「何言ってるんですか。流石に理解しかねます」
そう平等院が言うと、平等院を縛っていた鎖はあっという間に凍りつき、塵のように消える。
「⋯⋯いやー、本当に平等院君はすごいね」
鎖で捉えたにも関わらず、全くもって支障としない平等院に竹内は苦笑いをする。
「だっだけどね、平等院君。まだ一対三なのは、変わらないよ。僕一人ではないんだ。冴島君ももう治療も終わって元気だしね」
動揺を隠せない竹内は変な強がりを見せる。
「本当にそうだね。竹内君一人だったら、もう完全に負けてるよね」
焦ってる竹内を三谷が笑いながら茶化すように話す。
「おいおい三谷、それを言うなら僕達二人いても完全に負けてるの間違いだよ」
「確かに、そうね。私たちじゃダメだね」
「いやいや、ちゃんとして下さいよ!!」
竹内と三谷が談笑しているところに、冴島がツッコミを入れる。
「あれは、無理無理」
竹内と三谷は息ぴったりで答える。
そんな二人をみて、めんどくさそうに冴島は二人に指示を出す。
「それじゃ、竹内会長は、私の後ろでサポート頼みます。特に私、遠距離タイプじゃないので、その辺うまくちゃちゃ入れて下さい。嫌がらせ程度でいいです。あと三谷副会長は、えっーと、とりあえず、ひたすら流炎乱舞唱えといて下さい。相手の氷のフィールドにさせられると、キツイので、ただひたすらにお願いします」
「わかった!!」
2人はそう言うと会長と三谷は後ろに下り、冴島対平等院の構図を作る。
「あとは、私が本気になれば、いいだけだ。もう油断はしないぜ、1年坊や」
冴島は大槌を右手に肩に担ぎながら、低く重心を落とし、平等院だけを見つめる。




