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運命の人3

5月1日午後9時。


私は学園の寮で1人机に向かい、七海君の生態ノートの2冊目を書き上げていた。


この生態ノートを書くのもそろそろ日課になってきており、9時から10時までのだいたい一時間程度の時間を使って書き上げている。


私の1日の中で最も好きな時間といっても過言ではなく。今となっては一つの趣味と言えるかもしれない。


「やはり、彼はいつも昼はラーメンばっかりなのよね。単にラーメンが大好きなのかしら、いやいや、ラーメンは学食の中ではかなり安価だし、それを推測すると⋯⋯ 」


プルル、プルル。

携帯のディスプレイに平等院清流の文字が写る。


全く今は忙しいのに!!

私は少し乱暴に携帯を取る。


「もしもし、最近学校の方はどうだ?」


「どうも、こうも無いわよ。生徒会は相変わらずだし、あまり順調とは言えないわ」


「そうか。まあ竹内君もわしは良くやってくれていると思うがね」


「竹内生徒会長は確かに悪い人では無いけど、生徒会としてはふさわしく無いわ。だいたい父さんトップなのにそんなだから、ダメなのよ!!平等院家として、私は四校を一番の高校にしなくてはいけないと思っているのに!!」

竹内先輩はいい人だ。

人当たりも良く、決して悪い人では無い。

けど、上に立つものとして、そして将来の四校のことを考えると、彼では足りない。


私がキツくそう言うと、私の意見に賛同するように「わかってるよ。清華、ありがとう」と父が話す。


「わかってくれればいいのよ」


「それは、そうと七海君とはどうなのかね??うまくいってるか??お色気作戦はしているか??」


「実の娘にお色気作戦とか言わないで!!」


父は失敬、失敬と笑う。


「でもたまーに、髪型変えたり、香水を少しつけて見たり、色々試みてはいるものの、全然ダメね。彼そういうことに疎いみたいね」

本当にどうして男って気づかないのかしら、それとも気づいているのに何にも言わないのかしら。


どっちにしても腹立つわね。


「それとね。彼ほぼほぼ毎日昼には学食で安いラーメン食べているのよね。それでたまにカレーって感じなのよ。だからね、たまにほら、奢ってあげようかって話したりするのよ。けどね、彼はそういう事は断るのよ。なぜかというとね、『他の人からなら全然奢ってもらうけど、平等院とは対等でいたいから、平等院からは奢ってもらわない』とか言ってカッコつけるのよね。本当に憎たらしいと思ったわ。あっけど、けど、変な意味で受け取らないでね。本当の意味では、そういうところも彼の良いところなのよ。彼には彼なりの信念があって、それに私が救われていることも少なからずはあるのよ。多くはないけどね。少しよ少し。まあそんなことがあったりしてね、明日からお弁当でも作ろうかと悩んでいたところなのよ。彼のぶんだけ作っていってもいいのだけれど、それじゃあんまりいい顔しないだろうし、しっかり2人分作る必要があるわよね。また豪勢にしすぎると、またあぁだ、こうだ言ってくる可能性もあるし、あくまでも庶民的な感じに仕上げる必要がありそう。まあ定番の卵焼きと、ウインナーとあと、唐揚げはあった方がいいかしら。卵焼きは甘いのが好きか人によって好みが別れるわよね。まあとりあえず、だし巻き卵にしておいて、さりげなく感想聞いてみて、それでこれからどうしていくか決めようかしら。あとデザートはリンゴでいいわよね。やった事は無いけれど、ウサギさんカットにしようかしら。父さんは、お弁当にこれは入れておいてほしいとかあるかしら??」


「⋯⋯⋯⋯」


私は父に尋ねるが返事がない。

父はこれまでにお弁当を作ってもらったことがないのかしら。まあ母さんは、早くに亡くなっているし、そういう機会がないことま全然しかたないと思うけれど。


「父さんは??どうかした??」


「いや、まあ自分の娘のことが少し心配になってきてな。お前くれぐれもストーカーとかにはなるなよ」


「ストーカー??なんの話??私はお弁当作りについて聞いているだけども」


「わしは七海君のことが少し心配だよ」


「私もよ。だから、昼ごはんについて考えているんじゃない。あっでもでもよく考えたら、彼一人暮らしだし、晩ご飯は何食べているんだろう。きっとてきとうに済ませているんだろうし、大丈夫なのかしら。もしかして、カップ麺とかで済ましている可能性もあるわね。そしたら、どうしよ。夜ご飯についても、考えないと。夜ご飯も毎日作ってあげて、一緒に食べた方が良いのかしら」


「⋯⋯⋯⋯すまん。清華ちょっと急用を思い出した。悪いが、電話切っても良いか」


「ええ、構わないわ。またね、父さん」


父さんも忙しそう。私も頑張らないと。


私は平等院家の為に、今日はいつもの倍の2時間、ノートを書き連ねることにした。



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