運命の人2
四月二日、午後八時。
私は学校の寮から、東京にいる父の平等院清流に電話をかけていた。
「もしもし、お前から電話してくるなんて珍しいな。何かあったか?」
「あの七海君についてなんだけど、」
「おぉ!!どうだ!!やっぱりお前も気に入ってくれたんだな!!」
父はいきなりスイッチが入ったかのように、テンションが上がる。
この人どんなけ、七海君のこと好きなのよ。
絶対に、絶対にないけれど、もし七海君を好きになったしても、結婚はしたくないわね。
こんな父絶対見せたくないわ。
私は弁解するべく、しっかり説明をする。
「違うわよ!!単なる好奇心だけ。今はそれ以外でもなんでもないわ!!」
「〝今は〝ねぇ、全くこれだから、ツンデレは大変だなぁ。でもそれでいい!!もしろそれでいい!!」
「あんた、殺すわよ。」
「すみません。」
はぁ〜。
父と話すといつも無駄話が増えてどうも調子が狂う。
父なりのコミュニケーションだと思っているが、完全にウザい。ウザすぎる。
私はさっさと本題に入る。
「それで、あの七海君なのだけれど、今日異術の授業の際、弐段階術式で異術を展開してたわ。正直驚いた。彼は自分のおじいさんから習ったって言っていたのだけれど、地方だとそれが当たり前なの?」
「そんなことはないな。地方でも普通は参段階術式だ。ただ。」
「ただ?」
「清華の世代では異術は参段階術式が一番安定し、一番理想的と教えられている。ただな、それは今では当たり前だが、元々異術が発展していない手探りの頃は、弐段階術式もあれば、肆段階、伍段階だってあった。だから別段不思議ではない。」
「じゃあおじいさんが弐段階術式の使い手だったから、彼も弐段階術式を扱っている。という理由なのかしら。」
「その可能性が一番高いが。そうじゃないかもしれない。なにせ、七海君だからなぁ。」
「父さん、七海君のこと好きすぎでしょ。もうお父さんが七海君と結婚したらどう?」
「父さんにはおかあさんがいるからな。だから、娘をやるんだ。」
はぁー。なんで娘をやろうと思うのよ。
全く父の七海君補正は異常だ。
たぶん病気か何かね。
私はツッコミを入れるのもめんどくさくなり、切るねっと告げ、一方的に携帯を切った。
七海守。
まだ2日しか経っていないが、私は父が七海君を贔屓目に見るのか少し分かってきた。
彼にはそこはかとない何かを感じる。
こう言っては自慢みたいに聞こえるかもしれないが、私は異術や異能についてもちろんのこと、外見もよく、そして家柄もかなりいい。
何と言っても平等院家は自衛隊の中枢を担っている。
だから、多く生徒は私に対し遠慮をする。
だが、彼にはそういうところが全く感じられない。
私に遠慮するわけでもなく、また取り繕う訳でもない。
あくまでも、平等院清華を平等院清華として、見ている。
今まで出会ったことのないタイプの人間だ。
彼は何かを持っている。
いや、持っていないとおかしい。
「まだまだ調査する必要がありそうね。」
私は机の中から、まだ新品のノートを取り出す。
ノートの表紙に【七海守の生態ノート】と書く。
「これから、彼と過ごした事や彼の行動など、ありとあらゆる事を書き出し、彼の正体を絶対に突き止めてやる。」




