解き放てない⁉︎入学式2
各生徒の自己紹介が次々に終わり、自分の番が近づいてくる。
この次は俺の番だ。
自分の心臓の音を確かめながら、ゆっくり深呼吸していると、自分の前席の生徒が立ち上がる。
「私の名前は、平等院清華。五大中出身です。異能は氷炎の守神。この学園で私は生徒会に入り、いずれ生徒会長になります。
まずは腐敗した生徒会の改革を、そしてこの学園を国家支援学園高校の中でトップに導きます。
何かしら能力に秀でている人は私と共に生徒会に入りましょう。以上です」
そういうと平等院はさっさと座り、真っ直ぐ座る。
(この次の発表はいやだなー)
先ほどまでのほのぼのした雰囲気から、凍ったような雰囲気になる。
周りの生徒は少しざわつき、聞こえない程度の声でコソコソ話している。
黒い長い髪。少しつり目で小さな顔。外見だけで言えば、百点満点だが、発言が残念過ぎるというか、あまりにも高校生活で入れる熱のベクトルが違う。
俺はあくまでも、青い春を過ごしたい。
次、とあまり気にした様子もなく藤宮教師に呼ばれる。俺はこれまでに頭で反復した自己紹介を思い出しながら、立ち上がる。
「七海守と言います。これまで田舎で過ごして来たのもあって、この島での寮生活も不安でいっぱいです。これから学校生活もプライベートも皆さんと仲良く出来たらいいなと考えています。これからよろしくお願いします」
(よし、さっさと席に座るぞ)
俺は席に座ろうとすると、少しドスのきいた声で藤宮教師から待てがかかる。
「これまでの発表を聞いていなかったのか。名前はもちろんだが、異能についても話してもらう必要がある」
(やはり止められてしまったか)
うまく誤魔化せたらといいなと思っていたが、止められるパターンも想定済みだ。
「実は恥ずかしい話、僕は異術については多少なりとも自信があるのですが、異能については目覚めていないので、発表自体出来なかったので、隠してしまいました。ごめんなさい」
(よし、我ながら完璧だ)
俺は心の中でガッツポーズをしながら、再度席に座ろうとするが、また藤宮教師に止められる。
「じゃあお前は無能力者にも関わらず、この学園に入学できたのか」
さらにドスのきいた声で藤宮教師から追求される。
「えっーと、なんかこの学校の入学案内が家に届いたので、入学しました」
ある日突然入学案内が届き、パンフレットを見た感じ良さそうだったからきたのだ。本当の話だ。
そう言うと、藤宮教師は持って来ていた手持ちのファイルをペラペラめくり出し、周りの生徒ざわつきだす。
(なんか、まずいことを言ったか??)
藤宮教師は少しファイルに目を通し、しばらくすると教壇からこちらまで寄ってくる。
ドスドス音を立てながら。
「じゃあなにかぁ!?お前の言い分が正しければ、お前は無能力者にも関わらず、この学園から推薦状が届き、今この場にいるのか!?」
「そうなんですかねぇ。」
あははっと愛想笑いを浮かべながら、俺はその場を去ろうとした。
(めっちゃくちゃ怖いんですけど!?なんで、そんなにキレてるの!?)
「なるほどな、お前の名前覚えといてやる」
早速鬼教師に目をつけられた。
一応ありがとうございますと言いながら、俺はやっと席に座れた。
中学時代異能について正直に話したら周りから嫌われ、高校になって隠したら鬼教師に目をつけられる。
何この選択肢。クソゲーかな??
全員の自己紹介を終えると、10分間の休憩後、体育館で全校集会が開催されるとのことで、朝のホームルームを終えた。
やっと終わった。
長い長い自己紹介から解放され、少し休もうとトイレにでも行こうと席を立つと、左手を思いっきり引っ張られ、また席に座らせられる。
前席の女子がこちらを見ている。
「あなた何者?」
どうやら、まだ俺の自己紹介は終わらないらしい。