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解き放てない⁉︎最初で最後のデート5


「今日は疲れたなー。」

「そうね。」


俺と平等院はゲームセンターから出て、帰宅途中だ。すっかり暗くなり、空を見上げれば、月や星がキラキラと輝いている。

ここまで輝いているのは珍しい。

普段はあまり思い出さないが、今日の夜空を見ていると、田舎のじいさんのことを思い出す。


元気にしてるといいな。

ってかあのじぃさんなら、絶対元気だわ。考えるだけ時間の無駄だった。


俺と平等院は住んでいる下宿先へゆっくり向かう。

特に何も話さない。けど、それがまた心地よく、今までに経験したことがない不思議な気分だ。


これも平等院のおかげかもしれない。

癪だけど。


センター街を抜け、ケヤキの木が歩道の両側に植わっているケヤキ道を2人で並んで歩いていると、平等院が話し出す。


「四校って昔は何て学校名だったか知ってる?」

「いや、知らないな。唐突にどうした?」

俺はこの高校のことは全く知らないし、分かるわけもなかった。


「国家支援第四学園高等学校、通称四校は元々軍事能力開発第四施設と呼ばれていて、そこの四から来ているの。まあ昔の話だし、今と違って本島にあったんだけど。」

「なるほどなぁ。」


軍事能力開発と聞けば、すごくヤバそうなかんじがするが、どんな物でも昔は戦争とかによって、できた物は多いし、別段不思議でもない。


「そして大きな争いがあり、終わった。今はより便利により快適にそして平和、安全のために、異能の開発が進められていて、軍事能力開発第一施設から第四施設まで、それぞれ今の高校へと姿を変えたの。」


最近でも、異能や異術と機械を合わせて、例えば、自動車のエンジンの開発が進められたりしているのはよく耳にする。

その他にも色々あるんだろうけど、俺はあまり知らない。


「ただ、今はあくまでも昔の延長でもあるの。」

「どういう意味?」

そんな含んだ言い方されてもわからない。


俺が平等院の顔を見ると、ニコッと笑う。

「平等院家が作ったのよ。軍事能力開発施設を。」

「マジかよ!!」

「嘘つく必要がないわね。」

「だったらさ今ある4つの高校すべて、平等院家が作ったようなものなの!?」

「そうなるわね。まあ作ったといってもおじいさん世代だし、あんまり知らないのだけども。」

「でもすごいじゃん。平等院は天才の血を引いてるな。」

「そういう言い方嫌なんだけど。」

「ごめんなさい。」

これは俺が悪い。


「でもそれも今は 4つの高校のうち、3校は違うとこが、運営しているわ。」

「なんでなんだ?自分たちで作ったんだ。全部運営していても良さそうなものだけど。」

俺の質問に対し、そうよね。っと頷きながら、平等院は答える。


「私も詳しくはわからないのだけれど、平等院家ってみんなが思ってるよりも力が無いのよ。元々ただの科学者一家だしね。だから、旧家の人たちに利権を取られただと思うわ。」

平等院は空を見上げながら淡々と話す。


自身が作った施設を他の人に奪われる。

弱肉強食の世界だ。下の者が上の者に利用されたり、蹴落とされたり、仕方ない世界だ。

けど、その時の平等院家のことを考えると、同情せざるを得ない。


「だったら平等院はいつかあとの3校すべてを平等院家で運営するようなことを目指しているのか。」

俺は少し踏み込んだ話を平等院に問う。



「そんなこと望んでないわ。だけど。


4校の内一番にならないといけないと思ってる。」


隣で歩く平等院の表情は見えないが、言葉には強い意志が感じられた。



俺は学校での平等院の自己紹介を思い出していた。


『私の名前は、平等院清華。五大中出身です。異能は氷炎の守神。この学園で、私は生徒会に入り、いずれ生徒会長になります。

まずは腐敗した生徒会の改革を、そしてこの学園を国家支援学園高校の中でトップに導きます。

何かしら能力に秀でている人は私と共に生徒会に入りましょう。以上です。』


今なら分かる。

平等院が叶えたい願いというのは、夢でもなく、目標でもない。何か。強いていうなら、しがらみと言うのだろうか。


励ますべきなのか。一緒に嘆くべきなのか。

それすら、俺にはわからない。


「七海。」

「なんだ?」

「一回しか言わないけどね。」


平等院は照れ臭そうにしながら、話しだす。

「あんたとの出会いは私にとって大事なものになった。本当に。こんなに毎日の生活が楽しかったのは初めてだった。生まれてきて一番大事なものになったかもしれない。本当に感謝してる。だから。」




ありがとう。



俺はその平等院の言葉に返事を返すことができなかった。




俺たちはケヤキの道を抜けて、やがて下宿先のアパートが見え始める。


「それじゃあ私コンビニに寄って帰るから、ここで。」

「一緒について行こうか。」

「ううん、大丈夫。ここでお別れ。」

「おっおう、わかった。」

「また、明日。」

「また、明日。」


俺たちは、別々の道を歩き出した。



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