解き放てない⁉︎最初で最後のデート4
「私実はゲームセンターに来るの初めてなんだ!!クレーンゲームがあるよ!七海見て!!見て!!」
なんだこいつ。
今まで一緒にいて一番テンションが上がっている平等院の姿に若干俺は引いていた。
「七海、こっち、こっち太鼓の超人もあるよ!いや、いや、あっちにも、競馬のコインゲームがあるよ!!七海聞いてる!?」
「わかってるよー。」
「本当にわかってるのー!?」
だめだこいつ。早くなんとかしないと。
平等院があっちやらこっちやらうろつき回るのを、俺は後ろから追いかけていた。
ただ、平等院はテンションが上がってうずうずしているのだが、なかなかゲームに手を出してはなかった。
まあゲーセン初心者あるあるだな。気持ちはよくわかる。俺も初めはゲーセンでお金を使うことができなかった。
ただゲーセンに通い詰めるようになり(友達がいなかったので)、格ゲーから音ゲーまでひと通りやっていた。
「おーい平等院、とりあえずこのシューティングゲームやろーぜ。」
俺は少し離れた平等院を呼び、二百円をゲームの台に入れる。
ゾンビウォー、手元の銃を動かし、ゾンビを撃ち尽くしたら、次へ次へとステージを進めていくどこのゲーセンにでもある一般的なゲームだ。
「これどうやるの?」
ゲームの銃を大事そうに抱え、少し腰が引けてる平等院の姿があまりにも滑稽で笑えてくる。
「お前、どこの一等兵だよ。」
「どっどういう意味!?何か間違ってる?」
何が間違ってると言われれば、全て間違っているのだが、こういうゲームは楽しんだもの勝ちなのだ。
適当にキャラクターを選び、とりあえず、スタートする。
1つ目のステージは簡単だったが、2つ目のステージから少し様子が変わって来る。
「平等院、右側のゾンビ頼むわ。」
「ちょっと、頼まれないわよ。七海がなんとかしなさいよ。ひぃっ、ちょっと早く七海助けてよ。」
「ごめん、今無理。」
「ちょっとふざけないでよ。早く、早く助けなさいってば!!!」
「いやこっちは、こっちで一杯一杯なの!!」
「さっきまであんた上級者ぶってたクセになんなの!?下手くそなの!?」
「っお前ふざけんな!?あとで格ゲーでボコボコにしてやるからな!!」
と、俺たちは楽しみながら、計5回のコンテニューをし、ゴリ押しでゲームをクリアした。
俺が無くなった千円に少し涙目になっていると、
「次なにやる??」
まだまだ興奮が止まらない。平等院の姿があった。
今日は平等院に付き合ってやろう。
楽しいことはいいことだ。
俺たちはその後、音ゲーやら格ゲーやらメダルゲームをひと通り遊び、あーだ、こーだ、言いながら楽しんだ。
ふと、携帯を見ると、携帯のディスプレイには、20時の文字が映った。
「マジか。」
ゲームセンターには窓がなく、時間感覚が麻痺してしまう所がある。
ゲームセンター、恐ろしい子。
まだまだやる気満々の平等院だったが、これ以上は良くないだろう。
俺は携帯で時間を見せる。
平等院も時間に驚いたのか小声でマジかというが聞こえた。
「ふんじゃあ、帰るか。」
この辺がお開きだろう。まだ今日は火曜日だ。明日からもまだまだ学校がある。
俺がゲームセンターに出ようするが、右手を引っ張られる。
こいつ、本当に腕引っ張るの好きだな。
俺は出会った頃を思い出していた。
「あれ。」
腕を引っ張る平等院が指差す方には、プリクラ機があった。
「いやー、あれだよ。七海勘違いしないでよ。あくまでも今後のね、ほらー友達とかできたときにね。えっーとその為の練習よ。練習。あくまでも練習。記念とかそんなんじゃなくて、記念を作る為の、練習よ。」
「そう、そう、練習はやっぱり大事だしな。べっ別に2人でプリクラをとる必要はないんだけど、今後のためには、やっぱりこれを機会にやっとくべきだよなぁ。」
俺たちは変な言い訳をいいながら、初めてプリクラ機に入る。
えっーと、どのようにしてやるのだろうか。
中に入ったはいいものの、全くやり方がわからない。
とりあえず、正面の画面の下に500円の文字が書かれていたので、機械にお金を入れようとすると、俺の肘と平等院の肘がぶつかる。
「あっごめん。」
「こっちこそ、ごめんなさい。」
案外狭い。
これまでにも平等院と今以上に近づいたことはあった。でもなんかこう、わざわざ改まってお互いが近くとなると少し意味合いが変わってくる。
『では、撮影を始めます。近くに近寄って下さい。』
『3・2・1』
プリクラ機から音声が鳴り始める。
「えっ!?これ勝手に始まるのかよ!!平等院早くこっちにこっちに!」
俺はふいに平等院の肩を掴み引き寄せる。
「七海どさくさに紛れてどこ触ってんの!!あーでももういいわ。チーズ」
『カシャ』
俺たちは引きつった笑顔のまま、勢い任せでポーズを決めた。
『それでは、次はもっと密着して撮影しましょう。』
『3・2・1』
「やばい、やばい、これ以上ってどうするんだ!?」
「そりゃ、もう体と体を密着させるしか無いんじゃないの!?」
「えっーー、プリクラってそんなに卑猥な感じの機械だったの?!」
「でもやれって言われたんだし、やるしかないじゃない!?早く抱きつきなさいよ!!」
「平等院、後で怒るんじゃねーぞ!!」
俺は強く平等院を抱きしめ、カメラに向かい、全力の作り笑顔をする。
『カシャ』
疲れた。
俺も平等院も疲れ果てていると、俺たちの熱い抱擁のプリクラががプリントされて出てくる。
これは、ヤバくないか!?
1枚目の引きつった笑顔のピース写真はそこまで問題ではないが、2枚目の写真はやば過ぎる。
当たるところが当たり、絡み合っている。
平等院も写真を見て、絶句し、恥ずかしそうにこちらを見る。
「あんた、校内に貼り回ったりしないでしょうね!?」
「するわけあるか!?」
「まさか、このプリクラを人質に何かいやらしい事を要求するつもりなの!?」
「そんなエロ鬼畜同人誌みたいなこと言うな!!」
全く、こいつはたまに激しい妄想に入るから困ったもんだ。
はぁやれやれ。
俺はプリクラを無くさないように、大事に大事に財布の中に入れた。




