解き放てない⁉︎最初で最後のデート2
「こんにちは推薦君。」
「あっそこ平等院が座っていた席なんで、座るのやめてもらえますか。」
「もう、またまた、お熱いんだからー。」
頬月さんは、俺の話を無視し当たり前のように座り、トレイに載せた日替わり定食を置く。
頬月さんは頂きますっといいながら、ルンルンで食事をしだす。
時間をとって話すこと自体は久々だが、教室で目があうと目線で合図をし合ったりする仲ではある。一方的ではあるかもしれないが何となく仲良くなっているつもりだ。
俺は自分のラーメンを食べ終えていたので、頬月さんの姿をぼっーと見ている。
いい食べっぷりだ。頬月さんといい、平等院といい、最近の女子はよく食べるのか。
よく食べる女子は好きだ。見ていて飽きないし、何となくこっちまで幸せになれる。
「あのー、そんなにまじまじ見られると照れるんだけど。」
「ごっごめん。」
よほど気持ち悪かったのか。頬月さんから指摘を受ける。
「そんなに畏まって謝らなくても。ただ気持ち悪かったから、指摘しただけだよ。」
「いや、それ全然フォローになってないから。」
俺がすかさずツッコミを入れると、頬月さんは嬉しそうに笑う。
「それはそうと最近どうなのさ?」
「どうって?」
「そんなの平等院さんとに決まってるでしょ!」
決まっているのか。まあ平等院は有名みたいだし、頬月さんも気になるのかな。
「別段何もないけどな。」
「本当ぃ〜?」
「本当だよ。嘘つく必要も無いしな。一緒によく行動するぐらいで、頬月さんが欲しそうな恋愛ネタみたいなものはないよ。」
「そうなんだ。残念。」
頬月さんは残念そうな顔をする。
やっぱりほしいのは恋愛ネタみたいだ。
「クラスの中でもお二人さんはかなり話題になってるんだよ。」
このこのっと、頬月さんは茶化すように俺の頬を指でつく。
俺たちが話題になっているのはなんとなくわかっていた。
ガヤガヤした教室に俺たちが入ると一瞬空気が止まる感じとか。
良い意味か悪い意味かは分からないが、要注意、触るな危険みたいに思われていると、思っていた。
中学の時は、悪い意味で話題になっていていたので、その説明がつかない空気感には敏感な方だ。
「でもみんなが思っている以上に、平等院はとっつきやすい奴だと思うけどな。」
まだまだ付き合いは短いが、平等院はキツく見えて、案外人懐こく、そして優しい。
少し天然な所やムキになるとこも愛嬌を感じられる。
「いやいや、そんなことないんだって!!」
頬月さんは手をブンブン振りながら否定する。
「私たちもさ2人の毎日のやり取りを見ていてね、平等院さんも中学の頃と違って変わったのかなぁって思ってたわけさ。だからね、あるクラスの男子が平等院さんに声をかけたのよ。ほら、平等院さん綺麗だしね。」
それはよくわかる。見てくれは明らかに一級品だ。
「そしたらね、話しかけないでほしいのだけれど、って、きっぱり断られちゃてね。撃沈な訳だよ。だから改めて思ったのさ。あぁ平等院さんが唯一心を許すのは、七海君だけなんだって。」
「そんな関係じゃねーよ。でもなんでそんな態度なんだろな?あぁでもさっき私は孤高を好むみたいなこと言ってたしそれかなぁ。」
先ほどのやり取りを思い出していた。
「ここう?どういうこと?」
「ぼっち最高ってこと。」
「なるほど、分かりやすい。」
頬月さんは頷きながら笑っていた。