解き放てない⁉︎異術授業5
実技試験はこの日午前の授業だけで、午後からの授業は机の上の勉強だけだった。
今日の授業は終わり、俺は1人身支度を整えていた。平等院の姿はなく、どこかへ出かけたらしい。
帰ろう。
俺は1人帰宅しようと下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから頭を叩かれる。
「何1人で帰ってんのよ」
振り向くと、チョップをしている平等院の姿があった。
正直鬱陶しいが、可愛いから許すことにした。
「早く帰ろーぜ。寒いし」
俺と平等院は外へ出た。
春を迎えたばかりの外は少し肌寒く、授業を終えた疲れた身体には堪える。
別段顔を合わせるもなく、黙々と歩いていると、平等院が口を開く。
「初めて見たわ」
「何かあったか」
「弐段階術式」
平等院は歩くのをやめる。
「壱の型は術式の大枠を。弍の型は属性の比率を。参の型は術の規模を。どこの学校でも習う至極一般的な、そして理想的な術式展開よ。
ただ、あんたのは違った。
弐の型と参の型が合わさり、組まれて、円陣が出来上がってからも未完成のままうごめいていて、まるで生きているようだった。 あなたどうやったの?」
俺は後ろの平等院に振り返る。
「別に大した事じゃねぇよ。俺はじぃさんから異術を教わってきたんだ。その時に教えてもらっていたのが、弐段階術式だっただけだ。だから平等院が参段階術式しか習ってないように、俺は弐段階術式しか教わってないんだ」
「弐段階展開なんて、そんな簡単にできる芸当じゃないわ。異能力者の中、100人に1人いるかいないか。いやもっと少ないかもしれない」
「逆に俺からしてみれば、平等院の放つ異術ほど美しい異術は見たことがなかった。平等院のほうがよっぽど羨ましいよ」
そういうと、平等院は顔を赤くして頬を染める。
俺も平等院の姿を見て、なんか照れくさくなり、視線を外す。
平等院は再び歩き出し、こちらに近づく。
「やっぱりあんた生徒会に入りなさいよ」
「考えとくよ。というか別にまだ生徒会にお前も入ってねーだろ」
「大丈夫よ。私のものになるのは確実だから」
「相変わらずだなぁ」
俺は苦笑の笑みを浮かべ、少し身体が暖かくなるのを感じていた。




