解き放てない⁉︎異術授業4
俺と平等院がゆっくりしていると、あっという間に練習時間の20分が経つ。
藤宮教師がやってきて、5人ずつで試験が開始された。
各生徒は工夫を凝らしたウォータースピアを展開していたが、的に当てられているのは、5人に1人くらいの割合だった。
藤宮教師は生徒の出来に対し、良いとも、悪いとも言わず、見ているだけだった。
ただ、それが逆に場に緊張感を持たせていた。
平等院の番が来た。
俺は次の番ということもあり、間近で平等院の異術を見ることができる。
5人の生徒が等間隔に並び、試験が始まる。
各生徒が異術を展開させ、結果に一喜一憂している中、平等院はあくまで自分のペースで、試験に臨んでいた。
そして、平等院は遠くの的にゆっくりと右手を差し伸べ、大きく手のひらを開く。
手の平を中心に渦を巻くように壱の型、弐の型、参の型と、術式が組まれていき、やがて大きな円陣になる。
『展開』
平等院がそういうと、円陣から5つの長いツララが現れる。そして、平等院が右手をゆっくりと閉じると、5つのツララは少しの迷いもなく50メートル先の的に向かい中心部を射抜いた。
美しい。
不覚にもそう思ってしまった。
術式の組まれ方を見ていても、丁寧に丁寧に組まれ、そして一切の予断がなく、かつ正確であった。
自分とは全く違う。
彼女らしい異術がそこにはあった。
「次!」
藤宮教師がそう言い、平等院と入れ違うような形で俺は前の組と交代する。
俺も呼吸を整え、自分のペースで術式を展開するが、
嘘のようにうまくいかず、50メートルの遥か手前の30メートルぐらいで、失速し、地面に刺さると消えてしまった。
情けない。
自身の力不足なのはわかっていた。こういう結果になるもの別段不思議ではないし、当たり前の結果だ。
出来ることと出来ないことがあるのは当たり前だ。
この学校で初めての異術の授業という事もあり、俺は推薦者であったこともあり、かなりの注目を浴びていたが、「こんなものか。」と聞こえるようなクラスメイトの顔が見えた。
しかし、俺自身全く気にしていない。
むしろ先ほどの平等院の姿が脳裏を離れなかった。
どうすれば、彼女のようにうまく異術を使えるのか。
彼女のように異術を使いたい。
彼女のような能力者になりたい。
そう強く思った。




