解き放てない⁉︎異術授業3
結果から言うと、俺がクラスで一番で、二番が平等院だった。
平等院はかなり早く、正直負けてもおかしくないほどの実力があった。
レース展開としては、平等院が先行し、俺がそれについていく形で、終盤まで迎え、最後の200メートルぐらいで、ラストスパートをかけ、数秒俺が上回った形だ。
タイム測定は別段していなかったが、10分は間違いなく切ってるペースだった。
「お前かなり早いのな」
俺は息を整えながら煽りとかではなく、ただただ賞賛の気持ちを平等院に伝えた。
平等院はぜぇぜぇ言っており、 俺の声が聞こえているのか、聞こえていないのかわからない。
「おーい、大丈夫かよ」
俺は平等院に近づき、背中をさする。
「だっ大丈夫よ。しかもこの後に及んで、私のブラのホックを触るとか変態なの!?」
「お前のその発想おかしいだろ!!」
俺がツッコミを入れるが、平等院には俺の声が聞こえないくらい、辛そうだったので、俺は背中をさする。
そして、一応ブラのホック位置を確認する。
言われたから確認しただけだ。深い意味はない。
俺たちが座り込みながら休んでいると、ちらほらランニングからクラスメイトが帰ってくる。
俺と平等院は全力で走りすでに満身創痍だが、周りのクラスメイトはそうではなかった。
当たり前だが、あくまでも準備運動だ。みんな話しながらてきとうに走ったり、ジョギング程度のスピードで走り、少なくとも全力で走るバカはいなかった。
全員が戻ってくると、藤宮教師は話し出す。
「それでは異術の訓練を始める。お前達の実力試しとして、まずは水の異術から訓練を始める。まずあれを見ろ」
そう言うと、藤宮教師が指す50メートルぐらい先に直径1メートルぐらいだろうか。弓道やアーチェリーで使われているような白と黒で描かれたマトがある。
「どんな方法でも構わないが、あのマトを倒すことをお前達にはしてもらう。練習時間は20分だ。各自ルールを守って練習に取り組むように。最後にマトを倒すテストを受けてもらう。以上だ」
藤宮教師はそう言うと、さっさとどっかにいってしまった。生徒は皆我先にと言わんばかりに、練習に取り組み出した。
ウォータースピア。水の矢を目標に向けて放つという水の属性に風の要素を加えた初級魔術と中級魔術の間ぐらいの魔術だ。
魔術を放つのはそこまで難しくはない。ただ、50メートルぐらい離れているとなると、工夫が必要だ。
各生徒はスピードをあげたり、また高く放物線を描くように放ったり、工夫を凝らしていた。
俺は座りながら他の生徒を眺めていると、隣の平等院が息を整えながら話す。
「まああれくらいは余裕ね。朝飯前よ。あんなの練習しなくても、百発百中よ」
平等院はよほど自信があるのかそのように話す。
「すごいな。俺は逆にできる気がしないな」
「とかいいつつ、あんたも全く練習する気ないでしょ。なんなのよ」
「走り疲れたんだよ」
そう言うと、隣で座っている平等院は顔を近づけきて、疑いの目を俺に向ける。
「やっぱりあんた他の生徒を見下してない?」
「少なくとも平等院には言われたくないな」
「私は凄いから良いのよ」
「お前の自信は凄いな」
2人はその後結局一度も練習せず、ただただ座り続けていた。