表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界転生を倒そう! ~異世界転生流行の理由と今後の流行についての考察~

作者: 冬野 氷空

 異世界転生が多すぎる。

 小説投稿サイトを利用していて、こう思うことはないだろうか。

 私は普段、推理小説やミステリーと呼ばれるジャンルを主な活動範囲としているのだが、この手のジャンル、とにかく人気がない! どのサイトでも人気がない! 私はこれがとても悲しい!

 一時期は人気のある異世界転生全てを敵視していたくらいだ(今ではそれほどでもないが)。

 しかし敵を倒すには、まず敵のこと知らなくてはなるまい。

 と、いうわけで、今回は「なぜ異世界転生が流行しているのか」について考察していきたいと思う。


 まず初めに異世界転生がどれほど流行しているのか、確認しよう。


 16704作品。


 これは「小説家になろうで」での異世界転生(転移も含める)作品の数である。

「小説家になろう」全体の作品数は約50万であるから、大体五つに一つは異世界の話しである。

 おそらく割合で言えば「カクヨム」でも大体変わらないだろう(体感ではカクヨムの方が少なく感じる)。


 で、本題に入るが、なぜこれほどまでに異世界を舞台にした作品が多いのだろうか。

 それはライトノベル――ひいてはアニメや漫画など創作全体の過去を遡る必要がある。


 2003年。

 創作界に新たな単語が誕生した。


 それが、「セカイ系」という単語だ(厳密には1990年代~2000年)


 これは一つのジャンルと言っても良いものだろう。

「セカイ系」とは何か?

 ウィキペディアによると、


主人公ぼくとヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと」


 らしい。

 つまりどういうことかというと、主人公とヒロインが出会って何だかんだで(警察や軍と言った社会的機関に頼らずに)世界を救う物語のことだ。

 物語という“セカイ”に主人公とヒロインしか存在しない。だから「セカイ系」である。


 この辺りの定義には賛否両論あると思うが、あえて目を閉じてもらいたい。

 大事なのは、主人公(自分)とヒロイン(理想の女の子)しかいない、という点だ。


 当時のユーザー(いわゆるオタクという人間)の多くは社会に絶望し、他人を拒みがちだった。そんな彼らが望んだのは、自分と理想の女の子だけのセカイ。そういった時代背景やニーズがあったから、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『新世紀エヴァンゲリオン』が流行したのだろう。


 で、これがどうなっていったのかということに注目したい。


 セカイ系が流行った。

 セカイに必要なのは自分と女の子だけ。

 ……本当にそれだけで良いのか?

 やはり二人だけというのは、寂しかった。

 そしてその寂しさを紛らわせるために、ユーザーが新たに求めたのは“コミュニティ”だ。それも自分の理想を体現した。

 例を挙げるとするなら、『げんしけん』『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団などである。

 そしてこれらの“コミュニティ”をより理想に近づけたものは何か?


 そう、“ハーレム”だ。


 現在でも多大な人気を誇っているこの要素であるが、あえて歴史的推移を元に作品を挙げるなら『生徒会の一存』や『僕は友達が少ない』か。


 とにかくこれで二人だけだったセカイに“コミュニティ”が誕生したわけだ。

 まるで聖書の中の人類のように思える。

 初めはアダムとイヴ。そして人類へ。


 余談はさておき、当然、ユーザーがこれで満足するわけがない。

 では、ユーザーは次に何を望んだろう?


 二人より多く、“コミュニティ”よりも大きく――


 そう、それは社会だ。


 社会とは、言うなれば世界そのものである(あえてセカイとは区別した)。


 世界を理想通りのものに変える。

 ユーザーはそう考えたのだ。

 しかし当然のことながら、我らが生きるこの現実世界を舞台にしていてはそう簡単に変えられるわけがない。

 そこで思い付いたのが、


「そうだ、異世界に行こう!」


 理想の世界がなければ理想の世界を作ってそこに移れば良いじゃない、といった発想である。

 元々理想を追い求めた結果なのだから、その世界での主人公――すなわち“自分”は、当然チート能力を持っているし、女の子にもモテモテなわけだ。


 ここまでのことを纏めて、異世界転生ものが流行った経緯というのは、


 ①「理想の女の子さえいれば良い!」


 ②「やっぱり二人だけだと寂しいわ……そうだ! 気の合う仲間を作ろう!」


 ③「仲間を作ったは良いけど、何か男が混ざってる……そうだ! 仲間は全員女の子にしよう! これでハーレムの完成だ!」


 ④「ハーレムだけじゃ満足できないな、相変わらず世の中は俺に厳しいし……そうだ! だったら理想の世界を作ってそこに移り住もう! 理想通りだから当然俺は一番強いし、周りは女の子ばっかりだ!」


 と、こういうわけだ。簡単に言ってしまえば、ユーザーの妄想が激化してきたにすぎないのである。


 そして最後に、この異世界転生のブームが今後どうなるのか予想したい。


 二人からコミュニティに。コミュニティから世界に。では、世界の次の単位は何か?


 私の考えはズバリ、“時間の支配”である。


 と、言うよりも、実はこのブームの推移は既に現れ始めているのだ。

 その最も顕著な例はつい最近に流行した『RE:ゼロから始める異世界生活』である。

 この作品の主人公はチート能力として「死に戻り」というものを使う。まあ、簡単に言えば世界を巻き戻し、やり直すことができるのだ。この能力はまさに“時間の支配”の前身とも言えるものではないだろうか。

 今後はこの「死に戻り」に改良を加えたもの、あるいは他に時間を巻き戻したり過去にタイムスリップしたりする設定が開発され、その作品が流行するのではないか、と私は予想した。


 しかし、当然、その手の物語にも欠点がある。


 造るのがとても難しいのだ!


 とにかく頭を使う。

 私も異世界を舞台にしてこそいないが、以前ループものを書いた経験がある。しかしとにかく難しいのだ。まさにあちらを立てればこちらが立たずといった状態に陥ってしまった。

 おそらくこれは大半の挑戦者が衝突する障害で、突破できるのはかなり限られてくるだろう。


 そうなると、作品は増えない、しかし人気は集中する、といった事態になるはずだ。


 そこで私はもう一つ仮説を立てた。


「またセカイ系が流行るんじゃないだろうか?」


 というものだ。

 膨張しすぎた宇宙が再び収束するように、広がりすぎた理想が、また自分と理想の女の子だけのセカイに戻るのではないだろうか。


(こちらは明確な根拠がないため、あくまで筆者の想像とさせていただく)


 まとめ。

 異世界転生を倒すにはどうしたら良いか。


 一、時間遡行やループを上手く扱った作品を書く。


 二、原点回帰でセカイ系小説を書く。


 以上である。

 さあ、小説投稿サイト最底辺の諸君、マイナージャンルを盛り上げようとする諸君、今こそ異世界転生を倒すべく立ち上がろうではないか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 異世界転生にむなしいとしか思えないけどニートには人気があるのでしょうか?
2021/03/16 04:34 退会済み
管理
[一言] 加えて、RPG等のゲームに馴染み深く慣れ親しんだ世代の、中世ヨーロッパ世界観への憧憬もあるかと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ