ダンジョンへその2
「随分とまぁ・・・これぞダンジョンって感じね」
飛ばされた先は薄暗く、小さい虫のモンスターがウヨウヨし、そこら中に人骨が散らばっていた。
「!?」
突然俺の頭上に雷が連続で落ち続ける。
「あぁあ、ああ、あばば」
わけのわからないうちに俺のHPはどんどん減っていく。
「PFM」
ユニさんのPFMがかかると俺への落雷は止まる。
「サイクロプスだね」
「?」
「サイクロプスがPFMのかかってない人を見かけるとアホみたいにライトニングをぶちかましてくるんだ。割と低レベルは即死するね」
「先に言ってくださいよ・・・」
「いや、慣れって怖いね。あれが脅威だったって事すら忘れてたから。まあ俺のPFMで助かったし許してや。めんごめんご」
(こりゃまた一癖ありそうな・・・。)
「先頭にいたのアキラでよかった。俺なら死んでたわVIT低いし」
「あんたその自虐ネタ気に入ってんの」
「ぼちぼち」
「初めてのダンジョンって割にはなかなか緊張感なくていいわね。でもここからは気を引き締めていくわよ。PFMは基本絶対に切らさない事ね。間違ってもPFAをかけちゃだめよ」
「そう言う意味じゃここならレイさんも多少は役に立つね」
「言い方・・・」
「うわ」
少し進んだ先で俺は思わず声を漏らす。そこにはPLで見たモンスターと、PLにいたが見た事はなかったサイクロプスが何匹も密集していて、更にその横にはオーガと言われる体長5メートル以上はゆうに超える大きさのモンスターが棍棒を振りながら歩き回っていたからだ。
「やべえだろあれ・・・帰ろう」
「Blizzard!」
ユニさんが魔法を詠唱したかと思うとモンスターの群れに巨大な氷柱が降り注ぎ、密集していたモンスターは1匹残らず消え去った。
「すっご・・・」
「せやろ」
「感心してる場合じゃないわよ。気づいたオーガがこっちに向かってきてるわ」
セイキさんが指差す方向にはこちらに真っ直ぐ向かうオーガの姿が見える。
「あれはメイジじゃきついから戦士でがんばって」
「ええ!?」
助けを請おうとタマさんとサウルさんとカスチンさんの方を振り向くが、サウルさんはニヤニヤしながらこちらを見ているだけで、カスチンさんは欠伸をして退屈そうにしている。タマさんに至っては座り込んで漫画を読んでいた。
(つかこの世界漫画とかあるの・・・)
「おらおら行って来い戦士共」
そう言うとキリトは俺とミヨシさんとレイさんにバーサクをかける。
「うおおおおお」
ミヨシさんは叫びながらオーガへと向かって行き、オーガの棍棒をフランベルジュで受け止めた。
「ぬぐぅう・・・」
なんとか受け止めたものの力負けしてしまい、ミヨシさんは受け止めるだけで精一杯だ。
「この隙に俺とレイさんで背後から殴りましょう。キリトはミヨシさんにヒールを」
「うわすっげえこの防具本当にモリモリMP回復する」
キリトはユニさんからもらったMPR装備の効果に感動している。
「おーーーーーーーーい!」
ミヨシさんがなんとか攻撃を受け止め続けながら叫ぶ。
「わかってるって。そのためにMP回復してたんだろっておっさん案外余裕じゃん」
「おう!こいつくらいならなんとか受けきれそうだぞ!」
だがオーガは後ろから殴り続けてる俺の方を振り向く。
「ええぇ・・・間近で見るとすごい迫力・・・受け止められるのかな俺・・・」
俺は思わず目を瞑り、棍棒を受け止めようと剣を前に出す。
「ふん!」
ミヨシさんがすかさず背後からオーガを斬りつけると、オーガはうめき声を上げて倒れた。
「あれ、意外とあっさりいけたわね」
「まあオーガは見た目ごついだけで雑魚だしね。ここはレベル上げるためだけみたいな場所だからそんなに強いモンスターはいないよ」
「なんだ。よかった」
ほっと一息つくとまた俺の頭に連続で雷が落ち続ける。PFMが切れた俺に近くのサイクロプスが反応したようだ。
「あばばばばば」
「PFM」
今度はキリトが俺にPFMをかけてくれる。
「割と死にかけててワロタ」
サウルさんが俺を指差して笑う。
「なんで俺ばっかり・・・」
「じゃあそんな感じでさくさく狩りましょ。アタシ達は経験値吸っちゃうから別でパーティ組んで後ろからついていくわ」
「高レベルがパーティ内にいると経験値落ちるし、やばそうな時だけフォローするよ。ギルドメンバーには魔法当たらないし」
「ありがとうございます」
俺達は主にユニさんの魔法によるフォローを受けながら奥へと進んでいく。
「あれ、奥に誰かいますね」
奥の方に以前シティホール前で見たエルバインと同じように、青い英雄装備を全身につけた戦士が見えた。
「うわ・・・絶対強いやつじゃん。でもあいつヘルムだけつけずにサングラスつけてるぞ。しかもスキンヘッド」
「あのサングラスは何か特殊な装備なのかしら」
「いや、あいつの場合はただの趣味よ。ずっとヘルムだけつけずに馬鹿みたいにあのハゲ頭曝け出してるの」
「そう言えばセイキさんもヘルムしてませんね」
「ヘルム暑苦しいから嫌いなのよ」
「で、どうする。初心者抱えてやりあうには重いぞ」
サウルさんが急にまじめになる。
「そんなに強いんですか」
「そうね。エルバインの中でもトップ3には入るんじゃないかしら。よりにもよってあんなのがいるなんてね・・・」
「あんなハゲなのに・・・」
「あいつがいるってことは間違いなくあのメイジもいる」
ユニさんも突然真剣な顔になる。
「どうするー?帰る?僕はやってもいいけど」
タマさんは相変わらず退屈そうにしている。
「そうね。クルセードも近いし実戦慣れしておかないとね」
「んじゃやりますか」
「アキラ君」
突然セイキさんに呼び止められる。
「メデューサソードはここぞと言うぎりぎりで使ってね。相手もおそらくもうその存在を知っているから、発動させられてから発動時間を稼がれたらおしまいよ。絶対に捕まえられるタイミングで発動するの」
「わかりました」
当たり前だが発動してから逃げ回られて、効果時間が切れてしまえば何の役にも立たない。慎重に使わなくては。
「インビジブル使って少し近づこうか。まずは敵の数を確認しよう」
俺達はPFMとインビジブルをそれぞれにかけてゆっくりと近づく。近づいていきコマンド画面を開くと相手の名前が見える。サングラスの戦士はロックオンハート、恐らくユニさんの言う英雄装備のメイジはムーナと言う名前だった。そして
「あいつ・・・」
その後ろではセルシとその一味、そしてミクルが狩りをしていた。
「いやーさすがです。こんなに安全にさくさくダンジョンのモンスターを狩れるなんて、これも全てロックオンハートさんのおかげです」
「そうだな」
ロックオンハートは無愛想に頷く。
「またセルシかよ・・・どんだけ俺達と因縁あるんだ」
「それにしても全然キャラ違うわね・・・。強いやつにはめちゃくちゃごますってる」
「脅威なのはロックオンハートとムーナくらいか。あれならやれそうだね」
「つかロックオンハートって長くて呼びづらいわ。ださいし」
「ロックって呼んでるけど僕は。確かにださい」
「じゃあそれで」
「ディテクトインビジブル」
ムーナと呼ばれるメイジが俺達に気づいてディテクトを使う。
「この距離で気づくのかよ。ぱねぇ」
タマさん、サウルさんとカスチンさんも慌てて身構える。
「それじゃやるわよ。全員生き残るのは厳しいかもね」
セイキさんもヘルムを装備する。
「あああああああああああ!あいつら!いつもいつも僕の邪魔をして!なんでまたこんな時に来るんだヨォオオオオオオ!」
「知り合いか?」
「訓練所とPLで散々僕の邪魔をしてきた雑魚です。ロックオンハートさんやっちゃってください!」
「後ろに厄介なの何人かいるな。いけるか?」
「余裕でしょ。セルシ達の方はカバーできないから各自でなんとかして」
「はい!ムーナ様!」
ムーナはロックオンハートにAMPとバーサクをかける。
「来るわよ。アキラ君はインビジブルを切らさずにメデューサソードであの2人を拘束できるタイミングを常に探るのよ」
「はい」
俺が自分にインビジブルをかけると、ロックオンハートがまっすぐこちらに向かってくる。
「来るわよ。あたしは常に弓でムーナってのを狙って邪魔するわ」
「いや、やめたほうがいい。あの2人は俺達とアキラ君に任せて君達は後ろの雑魚を止めといてくれ」
「え、はい・・・」
「俺とカスチンも雑魚の方行くよ。タマさんとセイキさんとユニさんで行けるっしょ」
「戦闘開始までが遅えなぁ」
ロックオンハートはもうユニさんのすぐ近くまで来ていた。
「キャンセレーション。パラライズ」
「キャンセレーション。パラライズ」
ユニさんとムーナの2人が全く同じ魔法を詠唱する。
ミカがチュートリアルの時に使っていた保護魔法無効化スキルのキャンセレーションにより、ロックオンハートのAMPを解除し、ユニさんはぎりぎりのところでロックオンハートを拘束したが、それと同時にムーナはユニさんにキャンセレーションとパラライズをかけ、ユニさんを拘束していた。
「ロック君おひさ」
タマさんがロックオンハートに斬りかかるが、タマさんのブラッドソードはロックオンハートのバーバリアンバトルハンマーによって受け止められる。
「ブリザード」
「うわマジか。俺か」
タマさんとユニさんの頭上に巨大な氷柱が落ちる。タマさんはPFMをかけているが、ユニさんはキャンセレーションによって保護効果が切れているため大ダメージを受ける。
「くっそ・・・マジ死ぬかと思ったあぶねえ」
血まみれになりながらユニさんが立ち上がる。
「やっぱメイジはVITでしょ。半端にSTR振るよりそのほうがいいって言った僕に感謝してよね」
タマさんも氷柱が刺さり、PFMを貫通して受けたダメージで血を流しているが平気な顔で立ち上がる。
「ブリザー・・・」
「アタシの事忘れてない?」
ムーナがユニさんに更に追撃を食らわせようとするがそこにセイキさんが来て斬りかかり、セイキさんの巨大な赤い剣、デーモンスレイヤーは詠唱途中のムーナに思い切り食い込んだ。
「邪魔だなぁ」
食い込んだと思ったセイキさんの剣はムーナの盾によって防がれる。
「M杖まで持ってんの・・・」
ムーナが盾と共に持っているM杖と呼ばれる杖はMagicShieldWandと言って、装備しているとかなりのダメージを吸収してしまうレアアイテムだ。
「こんなの誰でも持ってるけど」
「いいわね優勢側のエルバインはレアモンスターいっぱい狩れて」
そう言ってセイキさんが2撃目をムーナに繰り出そうとすると、ムーナは盾でまたセイキさんの攻撃を受け、その反動で後ろに思い切り飛ぶと、即座に盾を外してセイキさんにキャンセレーションをかける。
「甘く見ないでよ」
ムーナの次のパラライズまでの間にセイキさんは距離をつめ、ムーナに斬りかかる。
「いったぁ・・・」
セイキさんのデーモンスレイヤーはムーナの体をかするが、同時にパラライズをかけられ拘束されてしまう。
「チョロチョロうっとうしいな・・・」
ロックオンハートとタマさんはタマさんの方が優勢らしく、タマさんはロックオンハートの攻撃を全て避けながらブラッドソードで少しずつロックオンハートのHPを削っていく。ユニさんはその後ろで自分の回復をする。
(あっちは2人でなんとかなりそうだ。)
俺はインビジブル状態でゆっくりとムーナの背後に近づき、メデューサソードで斬りかかろうとする。
「!????」
突然俺の体は吹っ飛ばされる。
「あーーーーーーーーーまだ発動してないじゃん」
「ちょっと!あたし耐えられるから食らってからでいいって言ったじゃん」
「ごめん・・・」
もう1人のエルバインの戦士がずっとインビジブルで隠れてムーナの背後で俺を待ち伏せていたらしく、斬りかかろうとした俺のメデューサソードごと彼によって弾き飛ばされたようだ。
「何で俺の姿が・・・」
「え?君の仲間もつけてるじゃん。このネックレス」
そう言うとハヤチャと言う名前の戦士は目玉のついた趣味の悪いネックレスをこちらに向けた。
「いいよ。敵と余計な話しなくて」
「ごめん・・・」
ハヤチャは再びムーナに謝る。
(まさかネックレスの目玉・・・。見た目的にあれでインビジブルを見破る事ができるのか)
「あーあ。メデューサさえ使わせたら余裕だったのに」
「ごめん・・・」




