ダンジョンへその1
「やあやあやあおはよう諸君。みんな早起きで何より」
宿屋の受付でタマさんは無機質な目をしながらいかにも楽しそうに言う。
「何が早起きだよ・・・。あんだけ部屋のドアガンガン叩かれたら誰でも起きるわ。ふわぁ・・・ねむ・・・」
早朝にドアが破壊されるかと思うほどの勢いで叩かれていたので俺達は慌てて飛び起きた。
「キリト君!何か言ったかな?」
「いやぁ、清々しい朝ですね」
「やけに素直ね」
ボソっとレイさんが呟く。
「蹴られるのはごめんだからな。俺VIT低いから即死しちまう」
「笑えない・・・」
「はいはい。おはようみんな。とりあえず大体アキラ君から聞いてると思うけど今日からアタシ達のギルドに入って一緒に行動してもらうわ」
「そうそ。そんで今から僕達とダンジョンに行ってもらうよ。ダンジョンはドロップも経験値もPLの比じゃないからね」
「ええと・・・それでどうやってギルドに入れば」
「はい。この紙に自分の名前を書いて」
そう言うとセイキさんは俺達に1枚ずつ紙切れを渡した。
「これでいいですか?」
俺達は紙に名前を書いてセイキさんに渡す。
「これでオッケーよ。ようこそギルドAbsolute Teamへ。コマンド画面を開いて見るとみんなの名前の上にAbsolute Teamって文字が出てるはずよ」
『ユニ:話は聞いてる。よろしく』
コマンドで空白になっていた部分に突然文字が出る。
「これがギルドチャット。ギルドに入るとコマンド画面でどこにいてもギルドメンバーと会話ができるの」
「まるで本当のゲームみたいだな。ゲームだけど。それにしてもギルド名ダサくね・・・」
「うん。僕も正直ダサいと思う」
「こればっかりはね・・・。カルマがつけたんだけど、多分AMP(Absolute Magic Protection)のAbsolute見てぱっと思いついて作ったのね」
「まあ慣れて来るよ。僕も最近じゃ気にならなくなったし。それより君達もちゃんと挨拶しないと」
「あ、そうですね」
ギルドチャットには数人のギルドメンバーからのよろしくと言うメッセージが流れていた。
「ええと、どうやって話せば」
「話そうとしたらそのままそれがチャットになるよ」
俺は言われたとおり、ギルドチャットでよろしくお願いしますと話そうとすると、そのままのチャットが流れた。
「ほう・・・こりゃすごい」
『ミヨシ:こりゃすごい!』
『ミヨシ:どうなってんだこりゃ』
『ミヨシ:あーあーあーあーあー』
キリトとレイさんとミヨシさんも挨拶をした後、ミヨシさんはそのままチャットができた喜びをチャットで垂れ流していた。
「はいはい。感動するのはいいけど、無意味にチャットは流さないようにね。ダンジョンにはもちろんエルバインもいるから、ギルドメンバーにも何人か来てもらうわ」
『セイキ:D3行くからシティホール集合して』
セイキさんがチャットでそう言うと何人かが返事をする。
「D3って何ですか?」
「ダンジョン3階って事よ。ダンジョン1階は主に鉱石採取。2階はそれなりに力に自信がある人がソロで狩りをする場所って感じね。パーティで行動するとなると3階以降からって事。3階にはシティーホールから直接ワープさせてもらえるのよ。そんで毎回ダンジョンって呼ぶのも面倒だからダンジョン1階はD1、2階はD2って呼んでるわ」
「なるほど」
「そんじゃ一緒にシティホールに向かおう。もうみんな向かってるはずだよ」
「シティホールってのは前に市民登録した市役所の事ですか?」
「そうそ。そう言えば教えるの忘れてたわね。アタシ達はあそこの事をシティホールって呼んでるの」
そして俺達はタマさんとセイキさんに連れられてシティホールに向かった。
「こんちは」
俺達がシティホールにつくなり全身英雄装備で覆われたメイジの人に声をかけられる。その横にも英雄装備の戦士が2人いた。
「あ、こんにちは!始めまして。俺がアキラ、このメイジがキリトで純戦士ミヨシさん、そして弓使いがレイさんです」
「ども。俺がユニで、こっちがサウル。んでこのごつい方の戦士がカスチン」
「よろです」
サウルと言われる男がぶっきらぼうに挨拶する。
「えらい淡白だな・・・」
キリトが思わずこぼす。
「まあまあ。根はいいやつらなのよ。とりあえずアキラ君たちの今のステータス聞いてもいいかしら?」
「あ、そう言えば71レベル以降は随時自分達でポイント振っていましたが、あれから確認してませんでしたね。ちょうど100なったしそれぞれのステータス確認してみますか」
アキラ:STR104 DEX117 VIT50 INT59 MAG30 CHR10
ミヨシ:STR130 DEX130 VIT80 INT10 MAG10 CHR10
レイ :STR52 DEX200 VIT88 INT10 MAG10 CHR10
キリト:STR10 DEX10 VIT10 INT195 MAG135 CHR10
「まあパーティとしては割りとバランス取れてるのかしら」
「キリトさんは結構思い切ったね。PLで殺しまくるとかならいいかもしれないけど、これから先がかなり苦しいと思う。もう俺は使わないしこれあげるよ」
ユニさんはそう言うと、木の盾とレザーアーマーと一番弱いレギンスをキリトに差し出した。
「いや、さすがにそれよりはいいものつけてるんだけど・・・」
「この防具にはMPの自然回復量を上げるオプションがついてるんだ。なかなかのレアドロップなんだよ。俺達はMP Regenerateを略してMPR装備とか呼んでる。これを全部つけた状態でいれば普段の2倍以上の早さでMPが回復する。ただし盾を持っている間は魔法を使えないし、防具も防御力自体が低いから戦闘の時は付け替えるようにね」
「お、おお・・・。なるほど。ありがとうございます」
突然キリトは畏まって装備を受け取る。
「レイって人はそこからどうするの?」
「え、あ、はい」
突然サウルと呼ばれる男に名指しされてレイさんは慌てる。
「あたしはとりあえず弓と盾だけ持てたらいいと思うんで後はVITとINTに振ってPFMくらいは覚えとこうかと」
「弓一本でいくつもりなんだ。盾持ってタンクも兼ねるつもりならSTR104でこの戦士用の英雄防具をつけられるし、そこまではあげてもいいかも。VITで体力が増えても肝心の防御力がないとつらいと思うしね」
「あ、じゃあそうします」
「あれ、話に聞いてたより素直だね。タマさんに噛み付くくらいだからもっときつい人かと思ったけど」
「普通のアドバイスならちゃんと聞きます」
「はは。まあどっちにしろPFMは先にとってもいいかもね。リコールもついでに覚えられて便利だし」
「んじゃ俺からはそのミヨシってやつな」
今度はカスチンと呼ばれる男がミヨシさんを名指す。
「お、おう?」
「俺と同じ純戦士みたいだが、純戦士なら近接最強じゃなきゃいけねえ。STRは200まで振るんだ。狩りでも対人でも殴れれば最強火力であるのが純戦士だ。これをやるからまずはSTR156を目指せ」
そう言ってカスチンさんはミヨシさんに紫色のハンマーを渡す。
「この剣よりこのハンマーのほうが強いのか?」
「ああ。STR169から先の武器はハンマーしかねえからな。182でバトルハンマー、そして200で俺の持ってるバーバリアンバトルハンマーを使えるようになる。だからハンマーの扱いには早い段階で慣れた方がいい。後その紫色になっている武器はエンシェントと言う属性がついていて、他の同じ種類の武器より強いんだ」
「なるほど・・・。レアアイテムってやつか」
「そうだ。そしてアキラって言ったか。お前にはこれをやる」
俺はカスチンさんから紫色のフランベルジュを受け取る。
「それはエンシェント属性のついたフランベルジュだ。STR130にしてそれを使うといい。お前は魔法戦士だからその武器さえ使えれば十分だ。メデューサソードは発動効果こそ強いが、普通の武器としてはグレートソードと変わらないからな」
「わかりました。ありがとうございます」
俺達がお礼を言うと、特に返事もせずにまた少し離れたところに3人は行ってしまった。
「あなた達それさらっと受け取ったけど、めちゃくちゃレアアイテムなのよ。ああ見えて歓迎されてるのよ」
「そ、そうなのね。なかなか気難しい人達なのかしら」
「まああいつらは変人だからめんどくさいかもね」
『お前が言うな』とここにいる全員が思いながらタマさんを見る。
「ん?どうしたの?そんな風に見られても僕は何もあげるものないよ」
「いや、何でもないです・・・」
「そんじゃ行きましょ。さっさとレベル上げて新しい武器つけたいでしょう」
「はい!」
そう言って俺達はシティホールの管理人に話しかけ、D3と呼ばれる場所に送ってもらった。




