神様の作り方その1
「かんぱーい!」
いつものレイさんの音頭で宴が始まる。今日は人数が多いので、セイキさんと2人で飲んだ街の酒場に集まった。
「で、なんなんだその武器」
「ええ、もう本題はいるの?」
「俺はもうその武器が気になりすぎてその武器の事以外に全く興味がない」
「そうですね。えーっと何から話しま・・・」
ガチャン!と言うドアを乱暴に開ける音で俺の言葉は遮られた。
「こんばんはー!アキラ君いる?」
会った事もない青年が突然店に入るなり俺の名前を呼ぶ。心なしか他の客がザワついたような気がした。
「あ、はい俺ですけど」
「お、いたいた。君がアキラ君ね。ふーん。いや、そうでもないなぁ」
青年は俺をじろじろ見ながら1人でブツブツ話しだす。青年のその目があまりにも無機質で、物を観察するかのようだったため、俺は直感的に関わってはいけない人間だと感じた。
「ちょっと何よあんた!いきなり人が話してるところ割り込んできて、失礼にも程があるでしょ。ふざけんじゃないわよ!」
「はぁ?」
青年は全く表情を変えず、そのままレイさんの腹を思い切り蹴り飛ばした。
「・・・!」
レイさんの身体はひらがなの「く」の字のように折れ曲がり、そのまま席から転げ落ちた。突然の衝撃を受けたためか言葉を発する事もできずに激痛で床に這い蹲る。
「おい!お前何やってんだ!」
俺とミヨシさんとキリトが立ち上がる。
「僕さぁ。こう言う女一番嫌いなんだよね。相手が自分よりはるかに強いやつだってわかっててもわからなくても、男だから当然自分にいきなり危害を加えてくるわけがないってタカくくってる女。何の力もない癖に強い男に平気でタメ口聞いてくるんだよなぁ。なんなんだろうなぁ一体こういうのさぁ。イラつくんだよねぇ」
「男が女に手あげていいわけねえだろ!」
「なんで?」
青年は表情を変えずにぐるりとミヨシさんの方を向く。目は無機質で一点を見つめたまま。
「なんでなんでなんでなんで?なんでだろう?セックスしたいから?優しくしたらヤラせてくれるから?体使って男に媚びてるの?」
「クズが。そんなもん関係ねえ。女は男が守るって昔から決まってんだ」
「はぁ?なんだこのおっさん。会話できねえな。殺すか」
青年はそう言うと真っ赤なレイピアを取り出し、レイピアは突然ギラギラと赤く光出した。
「う、うわ、うわあああああ」
客の何人かがその光を見て逃げ出す。
「はいストップ」
突然セイキさんが現れミヨシさんと青年の間に入る。
「なんだよ楽しくなってきたのに」
「あんたやりすぎよ。なんて物出してんのよ。あ、キリト君。早くヒールしないとその女死ぬわよ。内臓ぐちゃぐちゃになってる」
レイさんの方を見ると、レイさんは既に虫の息だった。
「マジかよ・・・」
キリトはあわててレイさんにヒールをする。
「セイキさん・・・これは一体・・・」
「ごめんね、アキラ君。ちょっとアタシとこいつとアキラ君の3人で話せないかしら?」
「ええっと・・・今すぐじゃないとダメですか?今みんなと話していたところなので」
「僕が話そうって言ってるんだ。いいからさっさとついて来なよ。それとも、君の仲間をこの場で皆殺しにしようか?」
青年は全く表情を変えずに言う。
いくらなんでも横暴がすぎる。
「・・・。俺達だってただじゃやられませんよ」
俺は翠の剣を取り出す。
「おおおお!マジじゃん!マジのメデューサソードじゃん!へぇえ、こんなのがって思ったけど、セイキの目も捨てたもんじゃないねぇ。いや実際すごい」
青年は剣を見るなり突然目の色を変えてはしゃぎだす。
「なんでその名前を・・・」
「ごめんね。アキラ君。こいつ自体もだけど、その剣の話は少しややこしいのよ。仲間とはまたいつでも話せるし、少し先にアタシ達とお話できないかしら?」
ちらりとミヨシさんとキリトの方を見ると、2人は黙って頷いた。レイさんも少し回復してきたようで、床にしゃがみこんでいる。
「わかりました」
「オッケー。ありがと。マスターちょっと個室借りるわよ」
そう言ってセイキさんと青年と俺は店の奥にある扉の中に入った。
「まあまあ、座って座って」
薄暗い狭い部屋の中に机と3人分の椅子が用意されていた。青年に促されるまま俺は椅子に座る。
「で、その剣の事どこまで知ってる?」
座るなり青年は突然話を切り出す。
「えぇっと・・・メデューサソードって名前と、発動時の効果と効果時間と発動のクールタイム、後は発動した時に消えたはずの人の記憶が蘇りました。その時近くにいた人達も思い出したみたいです」
「効果とかはどんな風に知ったか覚えてない?」
「いや、なんか急に記憶が流れ込んでくるような感じで・・・」
「カルマの事は?わかんない?」
「カルマ・・・?」
その瞬間ズキっと頭が痛む。
「金髪のさ、この世界に来た時に君も最初に会っているはずだよ」
「ああ!いや、確かに・・・でもそうか・・・似ていますね」
「と言う事はカルマの記憶も多少あるんだね」
「ええ、っとでも俺がこの剣から・・・えっともらった記憶って言えばいいんですかね。それだと確かに神様に似てはいますがもう少し歳をとっているように感じました。俺が最初に会った神様は小さな少年だったので」
「まああいつは神様になっちゃったしね。アキラ君の前に最初に現れた姿はあいつの好きな姿で現れる。なんで子供の姿だったのかはわかんないけど」
「えっとすみません。全然話についていけないんですが・・・。そのカルマって人と神様が何か関係あるんですか?」
「もうわかってるでしょアキラ君。あなたが剣で見た金髪の男がカルマで、神様のカルマなのよ」
「いや、あのその事実はなんとなくわかるんですけど・・・理解しようにもさっぱり意味が・・・」
「カルマの記憶は何も受け継いでないの?」
「はい。ただその金髪の男の人の顔だけが頭に焼きついたような感じです」
「なるほどね。まあまだ一度しか発動してないみたいだし、そうだ試しに今してみてよ」
「あ、はい。構いませんよ」
そう言って俺はメデューサソードを出すと特殊効果を発動した。剣は以前のようにギラギラと翠の光を撒き散らす。
「おおおおやっぱ本物だなぁ。懐かし~」
「えっと・・・あなたは・・・」
「あ、僕はニャンタマ。タマさんでいいよ」
「タマさん・・・」
行動には似つかわしくないかわいい名前だ。
「タマさんはこの剣の事をなんで知っているんですか?他にも持ってる人がいるって事でしょうか」
「いいや。その剣はこの世界で絶対に1本しか存在しない。今この世界でその剣を持っているのはアキラ君1人だよ」
「そ、そんなすごい物なんですか・・・」
「そりゃね。とんでもない物なのよ。だってこの世界の概念を思いっきり捻じ曲げてしまっているんだもの。まああたしは最初からアキラ君ならやると思ってたけどね」
「マジでこのオカマそう言うところだけはすごいよな」
「アタシはね。一目見ていいなって思った男はこの世でカルマとアキラ君だけなのよ。だから一目見てビビっと来た瞬間に確信したわ」
「いやキモすぎだからお前。まあそれで、アキラ君の前にその武器を持っていたのがカルマ。でもカルマが消えた時に一緒にこの世界からメデューサソードも消えちゃったんだよね。カルマが持っていったのか、もうこの世界に発現する事はないのか、したとして次は誰が選ばれるのか、何一つわからなかったけど、信じて待ってたらアキラ君が発現させたってわけさ」
「??????????????」
全く話についていけない。
「うーん。発動させながらこの話しててもダメか。説明めんどくさいんだよね。手っ取り早くその剣から記憶が流れてきたら楽ちんなのに」
メデューサソードは効果時間を終えて光が弱まっていき、やがて元の状態に戻った。
「アタシが説明するわよ。アキラ君、その剣を発動させたのはあなたで3人目なの。1人目はエルバインにいた戦士、2人目はさっきから話をしているカルマ。カルマは元々アタシとニャンタマの仲間だったのよ」
「えっと・・・この世界の神様もそのカルマって人なんですよね?」
「そう。その通り。その剣に選ばれると言う事はこの世界の神になる資格を得ると言う事なの」
「ちょっと待ってください。この世界を作ったのは神様なんですよね?じゃあなんでそのカルマさんもプレイヤーとしてセイキさん達と一緒にこの世界にいたんですか?カルマさんが神様なんですよね?」
「そうなのよね。ここからの説明が難しいのよ」
「だなぁ~。僕も未だによく理解してないもん」
「アキラ君。世界ってなんだと思う?」
「ええ、いきなり言われても・・・難しいですね。・・・俺達が生きている場所?」
「ぷっ。陳腐な答え」
タマさんが無表情のまま笑う。
「まあそうよね。普通はそう言うものよ。じゃあ例えば今すぐここでアキラ君が死んだ場合、アキラ君のいた世界も一緒に消えるのかしら?」
「いや、それは違いますね。少なくともセイキさんとタマさんが今俺が死ぬ瞬間の世界を知っているわけですから。俺のいた世界は残ります」
「そうよ。さすがアキラ君。飲み込み早いわね。つまりアキラ君のいた世界はアタシ達の記憶の中に残ると言う事」
「世界は記憶だって事ですか?」
「そう。でもこの世界では存在が消えた人の記憶が消える。でもメデューサソードを持つ人間は全ての記憶を保持する事ができる。アタシやニャンタマも消えて思い出せない人がいるけど、その剣を持っている人だけは全部知る事ができるの。そしてそれを発動している間に発動者が消えた人の名前を呼ぶと、その光にあてられた人も消えた人の事を思い出せるみたい」
「それなら僕が発動させてその人の名前を呼べば・・・って名前がわかんないんですね」
「そうね。実際やろうとすればできるのよ。アタシ達が消えた人と一緒にいた時間もアキラ君は知る事ができるのだから。でもそれをやり続けたらアキラ君の脳みそがパンクしてしまうの。だから人間のままじゃそのメデューサソードの情報を全て引き出す事はできない」
「それでカルマさんは神になったと。でもカルマさんはこの世界は自分で作ったって言ってましたよ。この世界のルールも全てカルマさんが作ったものだって」
「最初に会ったあれはカルマであってカルマじゃないんだよね。つーか面白い事に僕達がこの世界に来た時に最初に会った奴もカルマと同じ姿をしていた。わけわかんないけどね」
「これはもう記憶を操作されたとか概念が捻じ曲がった影響だとかそう言う理由でなんとなくアタシは納得したわ。どう考えても矛盾してるんだけどね」
「じゃああの神様だと名乗るカルマさんは一体・・・」
「ざっくりと言ってしまえばその剣が世界であり、神なのよ。全ての世界、つまり記憶を集約するものとしてメデューサソードは存在しているのだけど、その剣が記憶の情報を持っているだけじゃ世界は存在しない」
「観測者が必要だと言う事ですね」
「そう言う事よ。記憶を観測する人間がいなくては世界は存在しないの。だから何かが媒体となり、その剣の記憶を世界にしなくちゃいけないのよ」
「それでカルマさんがその媒体になり、神になったと」
「そう言う事。とりあえずここまでがカルマが神になるまでの経緯よ」




