ギフト
「おはよ」
セイキさんと別れた後、みんなが泊まっている宿で少し寝て、朝食を食べているとレイさんが起きてきた。
「あ、おはようございます」
「あ、アキラ・・・」
レイさんは気まずそうにしながら机を挟んで俺の前に座る。
「昨日はなんかごめん。あたしいつも勢いでしゃべっちゃうから」
「いえ、いいんです。レイさんの言っていた事も間違ってないし、落ち込んでたのは俺自身の問題だったんで」
「あらそう。それならいいんだけど。あたしが昨日寝てから何があったか知らないけど、寝てすっきりしたみたいでよかった」
レイさんは拍子抜けしたと言ったような顔をした。
「おうなんだ。早いじゃねえか」
「ふぁぁあ・・・」
ミヨシさんと一緒にキリトが欠伸をしながら起きてくる。
「お、アキラ。もう大丈夫みたいだな」
ミヨシさんは俺を見るなりそう言った。
「俺昨日そんなに露骨に落ち込んでたんですか?」
「そりゃもうこれから死ぬんじゃねえかってくらいな。死んでたけど」
キリトがミヨシさんに代わって悪態をついてくる。
そんなキリトをレイさんが不思議そうに見つめる。
「全然関係ないけどさ、あんたあのうざいキャラ設定完全になくなってない?」
「んあぁ?なんだよいきなり」
キリトは顔を真っ赤にして露骨に恥ずかしそうにした。
「え、何あんた今更恥ずかしがってるの?あんだけ散々暗黒魔法がどうとか言ってたのに」
「ちげーよ!飽きたんだよ!ああ言うのも続けてると疲れるからな。飽きたからやめただけだ」
「ふーん、あっそ」
レイさんはニヤニヤしながらキリトを見る。
「まあまあ!いいじゃねえか!アキラも立ち直ったし!キリトも成長したんだ。今日からまた元気にやって行こうぜ」
ミヨシさんがバンバンとキリトとレイの肩を叩きながら言う。
「いや、加減しろよおっさん。リアルにいてぇ・・・」
そう言うとキリトは本当に痛そうに肩を抑えた。
「そうよ。こいつまだVIT10なんだから、本当に死ぬわよ」
「す、すまねえ・・・」
ミヨシさんはさっきまでとは打って変わり、心底申し訳なさそうにする。
「あ、そう言えばなんだかんだでみんなレベル上がったのにステータス振るの忘れてましたね」
「そう言えばそうね。すっかり忘れてたわ」
「ちょうどみんな70レベルになったみたいなので、90ポイントずつですね」
俺たちはそれぞれステータスにポイントを振っていく。
アキラ:STR104 DEX81 VIT33 INT32 MAG20 CHR10
ミヨシ:STR130 DEX80 VIT40 INT10 MAG10 CHR10
レイ :STR52 DEX150 VIT48 INT10 MAG10 CHR10
キリト:STR10 DEX10 VIT10 INT120 MAG120 CHR10
「昨日結構ゴーレムに攻撃避けられてたんで、俺とミヨシさんは少しDEX意識してこんな感じですかね」
「あたしこのままだとDEXとVITカンストしちゃうわね。余った分でPFMだけでも覚えとこうかしら」
「それがよさそうですね。キリトの負担も減りますし・・・ってキリトはまたVITに全く振らなかったのか」
「俺はさっさと一番強い魔法が撃ちたいんだよ。それだけだ」
「ああ、そう」
レイさんは興味なさげに頷く。
「んじゃ、今日でさっさと100まで上げて、PL卒業しちゃいましょうか。とりあえず俺とミヨシさんはせっかくSTR上げたので新しい武器を買いに行きましょう」
「へいらっしゃい!兄ちゃん達ちょっと見ない間に随分強くなったじゃねえか。がんばってくれよ。ガッハッハ」
武具屋の店主は相変わらずだ。
「俺はSTR104なのでグレートソードってやつですね」
そう言うと俺はグレートソードを装備する。特になんの変哲もない普通の両手剣って感じだ。
「俺はこのぐねぐねのおかしな剣か」
「フランベルジュですね。俺のに比べたらかなり強そうに見えますね」
ミヨシが装備するフランベルジュは刀身が波打っていて、更に刃はのこぎりのようにギザギザになっていた。
「なんつーか。切るってより、単純に人を斬り殺すための武器って感じだな」
キリトは横目で他人事のように言う。
「ああ・・・そうだな」
ミヨシさんもフランベルジュを見つめながら何かを考えるかのように黙り込む。
このゲームは人を殺すゲーム。実際に戦ってきても、いざそう考えるとどうしても身構えてしまう。
「俺も新しい杖に変えられるな」
「杖って魔法の威力が上がったりするの?」
「いや、MP消費が減る」
「なーんだ」
「なーんだってお前、メイジにとってMPは死活問題なんだよ。わかってねぇなぁ」
「わかったわかった」
いつものレイさんとキリトのやり取りで調子を乗り戻した俺達は、武器の他にも防具も揃えて外に出る。
「あ、いたいた」
外に出ると俺達を探していたらしいセイキさんがこちらに近づいてきた。
「げ、前のオカマ・・・」
「ん?」
「セイキさんこんにちは」
すかさずキリトを睨みつけたセイキさんを見て、キリトは背筋を伸ばして挨拶する。
「それで、どうしたんですか?」
「そうそう。あなた達に渡したいものがあってね。持ってきたのよ」
「え、なになになんかめちゃくちゃ強いアイテムとかくれるの?」
キリトは目を輝かせながら身を乗り出す。
「ええ。1個10EKで買うアイテムよ。ちょうど1人分の命と同じ価値」
「そう言われると重いな・・・」
「そうよ。だから大事にしてね。はい、キリト君にはこれ」
そう言ってセイキさんはボロボロの呪文書をキリトに渡した。
「え・・・なんだこれ、ボロボロで中身もろくに見れねえし、どう使うんだ・・・」
「それはアタシにもわからない。でもま、持ってたらいつかわかるんじゃないかしら。それで、ミヨシにはこれ」
セイキさんはミヨシさんにぼろぼろの巻物を渡す。
「うぬぅ・・・。これも何が書いてあるかわからんぞ・・・読んで使う物でもないようだが・・・」
「最後にアキラ君にはこれよ」
そう言うとセイキさんは俺にぼろぼろに錆びた剣を渡した。
「えっと・・・。これこう見えて実はめちゃくちゃ攻撃力が高かったりしますか?」
「ううん。見た目のままの威力よ。そのまま使ったらすぐに折れちゃうかもね」
セイキさんは当たり前のように平然と言ってのける。
「は、はぁ・・・」
「じゃあ渡す物渡したし、アタシは戻るわね。早く強くなって一緒にダンジョン行ったりしましょ」
「ち、ちょっと待ってよ」
帰ろうとするセイキさんをあわててレイさんが呼び止める。
「?どうしたの?」
「いや、あたしにはなんかアイテムないの?」
「あ、いやだ。忘れてた」
「は、はぁ?」
「アタシ女に興味ないのよ。だからあんたの事すっかり忘れてた。ごめんね」
「はぁああああ?」
「まあまあまあレイさん。俺たちも大した物もらったわけじゃないんですし・・・」
「あ、そうだわ。あんたにはアタシがつけてるネックレスあげる」
そう言うと大きな目玉のついた趣味の悪いネックレスをセイキさんは外し、レイさんに渡した。
「うぇえ・・・。何よこれ気持ち悪い」
「ちょっと!失礼ね。それ結構レアなんだから大事に使ってよね。アタシが女に物あげるのなんて初めてなんだから」
「うぅ・・・これつけたら呪われたりとかそんな事になったりしないでしょうね」
「大丈夫よ。つけてれば効果はそのうちわかるわ。じゃ、今度こそアタシは帰るわね」
そう言ってこちらを向いて手を振ると、Recallと言う魔法を使ってセイキさんは姿を消してしまった。
「そう言えばあんな魔法あったわね」
「Recallって確かリスポン地点に戻る魔法だったような・・・」
「Recall」
試しにキリトが使うと、キリトは武具屋の目の前のリスポーン地点に現れた。
「やっぱここだよね。レベルが上がるとリスポーン地点が変わるのかしら」
「まあ、ここは初心者用の村って聞いてたし、レベル100を超えるとシティホールのある街に直接飛ばされるのかもしれませんね」
「いずれわかる事だし、とりあえずレベルあげようぜ」
「あら。珍しくやる気じゃない」
「早く強い魔法を覚えたいんだよ」
「そうだね。んじゃとりあえず100までさくっと上げちゃいましょう」
そう言って俺達はPromisedLandへと向かった。
「随分とあの人間達に肩入れするのね」
アキラの予想通り街の片隅にあるポータルに飛んできたセイキは、何者かに話しかけられる。
「あらあら。久しぶりね、リリス。あんたはあの子達に何も感じないの?」
「ふふ。おかしな事を言うのね。私からしてみれば人間なんて、みんな平等に無価値な存在でしかないわ。彼らも今までの人間達と同じように、何の意味もなく消えていくだけの存在でしかないでしょう」
「あんたやっぱり結構馬鹿ねぇ。あの子達の存在に何の意味もないのなら、あんた達の存在だって同じように何の意味もないじゃない」
「ふふ。負け犬の遠吠えかしら。惨めね」
「そのうちわかるわよ」
セイキはそう言うとポータルから街の中へと歩いていった。




