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ヘルブレス  作者: htsan
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ポータルの先へ

 「この中に入ればいいのかな?」


 ポータルの前に着くと亜美さんは言った。


 ポータルは魔方陣が描かれていて、魔方陣の形にそって赤い光が浮かび上がっていた。魔方陣を囲む円になった光の中に入れば、アレスデンと言う国に送ってもらえるのだろう。


 「恐らくそうですね。行ってみましょうか」


 「なんか・・・ちょっと怖いな。私最後に入ってもいいかな」

 

 「ええ。構いませんよ。じゃあ俺から入ります」


 「いや、俺が入ろう」


 そう言って三好さんはすっと前に進んでポータルの光の中に入っていった。


 三好さんが光の中に入って少しすると、よくアニメなんかで見るような感じで少しずつ体が消えていってワープして行ったように見えた。


 「問題なさそうかな?特に苦しそうとか嫌そうな表情もなかったし」


 「う、うん」


 「じゃあ俺も行きますね」


 「あ、私も一緒に行く」


 そう言うと亜美さんは俺の腕をぎゅっとつかむ。


 女の人に触られる事自体めったにない事な上に、相手は美人。更に腕に思い切り亜美さんの胸が当たっている事で、俺は動揺して戸惑うが、唾を飲んで、精一杯平静を装う。


 「大丈夫ですよ。俺がついてますから」


 「うん。ありがとう・・・。明君がいて本当に良かった」


 会って一時間程度しか経たない男にここまで心を許すものなのだろうか。まあ状況が状況だから仕方ないか。等と冷静に考えつつも、腕に当たる柔らかい感触に俺の頭はおかしくなりそうだった。


 「えっと、あの・・・。亜美さん。胸が当たって・・・」


 「あ、ごめんなさい。嫌だった?」


 亜美さんはあわてて俺の腕を離す。


 「え、いや、全然嫌とかではないんですけど、亜美さんがいいのかなって」


 「私は明君なら平気だよ」


 そうにっこり笑うと、再び亜美さんは俺の腕をつかむ。


 「こうしてると、落ち着くから」


 そう言って腕を深くぎゅっと握り、また腕に柔らかい感触があたる。おいおい。初対面の若い男にそんな言い方しちゃうか?俺みたいな童貞、コロっと落ちて襲い掛かるかもしれねえぞ。いいのか?誘ってるのか?いっちゃっていいんですか?


 俺の頭は煩悩でパンクしそうになっていた。


 「じゃあ行きましょ」


 そんな俺の心を知ってか知らずか、さっきまでびびっていた亜美さんは俺の腕を引っ張ってポータルの中に向かおうとした。


 「は、はい。すみません」


 「?どうして謝るの?」


 亜美さんは不思議そうな顔をする。


 「いえ、なんでもありません。行きましょう!」


 この人はただの天然なのだろうか。女はわからない・・・。


 ともあれ俺達はポータルの中に進んだ。


 中に入ると三好さんがそうなったように俺と亜美さんの体は透けて行き、少しずつ意識が遠のいていった。


 「大丈夫か?」


 声をかけられはっと気がつくと、隣に三好さんがいた。


 「すごい不思議な感じ。ここはどこかしら」


 先程と変わらず亜美さんは俺の腕につかまりながら言う。


 今度連れて来られた場所は、さっきまでいた場所とはうって変わって明るく、狭い小部屋の中のような場所だった。


 「ようこそアレスデンへ」


 周りを見回していると、突然頭の上から声がする。


 声のする方を見ると、翼を生やしたこの世の存在とは思えない美しい女がふわふわと浮かんでいた。


 「女神・・・?」


 形容する言葉がそれしか浮かばなかった。


 「私の名前はリリス。あなた達の冒険の案内をさせていただきます」


 神様があんなだった割りに、女神はちゃんとしてるんだな。


 「もう既に神様から聞いていると思いますが、あなた達にはこれからアレスデンの国民として、エルバインの民と戦争をしていただきます。ここではそのためにすべき事、必要な事を教え、戦い方を学んで行っていただきます。少しの間ですが、よろしくお願いします」


 女神は礼儀正しくお辞儀をして言った。


 「はい。よろしく」


 俺は普通に返事をする。


 「ではまず初期のステータスを振ってもらいます。ステータスはSTR、VIT、DEX、INT、MAG、CHRの六つに分かれており、それぞれ違った効果を持ちます」


 マジでゲームみたいだな。ゲームなのか。


 「わかりやすく言い換えると、STRは力、つまり攻撃力や装備できるアイテムの重さに影響します。STRが足りないと装備できない武器やアイテムもあるので、そこを上手く調整して振っていきましょう。VITは体力、あなた達のヒットポイントや防御力に影響します。そしてDEXは敏捷性、攻撃の命中や回避に影響します。INTは知能、覚えられる魔法とマジックポイントに影響します」


 「ごめんなさい。ヒットポイントとかマジックポイントって何かしら」


 亜美さんはゲームとかをしてこなかった人なのだろう。専門用語に疑問を持ち、女神に尋ねる。


 「これは申し訳ありません。説明不足でしたね。ヒットポイントとはあなた達が持つ生命力のようなものです。敵の攻撃によってこれが0になるとあなた達は死んでしまいます。なので戦うときは絶対にこれが0にならないように気をつけてください。マジックポイントはあなた達の精神力みたいなものです。あなた達はこの世界では魔法が使えますが、魔法にはそれぞれ必要なコストがあります。そのコストがマジックポイントになります。マジックポイントが足りないと、その魔法を使う事ができません」


 「な、なるほど・・・。魔法とか使えちゃったりするんだ」


 「はい。魔法には様々な種類があり、自分達の身を守るサポート魔法や、回復魔法。そして攻撃魔法や、相手の行動を阻害する魔法があります。後村に戻るテレポートや、食べる物を作る魔法もあります」


 食べ物も作れるのか。なんちゅう便利な世界だ。


 「続けますね。MAGは魔力。回復魔法や攻撃魔法の威力、そして魔法の命中率、成功率に影響します。INTをいくらあげて強い魔法を覚えても、MAGが低いとほとんど使う事ができないので注意してください。最後のCHRですが、これはカリスマと言い、周りの人間を導くのに必要な数値になります。またCHRを20まで上げているとギルドを立ち上げる事ができます」


 「ギルド?」


 今度は三好さんが聞いた。


 「ギルドとは、アレスデン国家の内部における一つのコミュニティ集団と言えるものです。アレスデンの中でもいくつかのギルドにコミュニティをわける事により、それぞれが違った働きをしたりします。またギルドに参加していないと、戦争に参加する事はできません。カリスマを上げてギルドマスターになった者は、ギルドメンバーを率いて戦争の指示を出したり、戦争拠点のワープ地点を指定したりできます」


 「なるほど」


 三好さんはうなずく。


 「しかしカリスマは敵国との戦闘には全く意味がない数値なので、基本的にはギルドマスターになる者が20だけ振り、それ以上あげる人はめったにいません」


 めったにって事は上げた物好きもいるのか。


 「あなた達には最初、全てのステータスに10ポイントずつ振られています。更にここで10ポイント差し上げるので、好きな能力に数値を振ってからアレスデンに向かっていただきます」


 「ちょっと待って」


 「はい。どうされましたか?」


 「ステータスを振る前に各STRで装備できる武具、各INTで覚えられる魔法を教えてもらう事はできないの?」


 「はい。もちろんできます。ごめんなさい。先に伝えるべきでしたね。これがその一覧です」


 そう言うと女神は何も無いところから突然巻物のような物を出し、縦にそれを開いて俺達に見せた。


 俺から見て女神の左には各STRで装備できる武器一覧。右には各INTで覚えられる魔法の一覧が書かれていた。


 「なるほどな。まあ最初の10ポイント程度だと大して何もできないか」


 「ステータスポイントはレベルを上がるごとに付与されるので、レベルを上げてどんどんステータスを上げていってもらいます」


 「この巻物はいつでも見る事ができるの?」


 「はい。冒険を始める時にこれをみなさんにお渡しするので、見たいと思えばいつでも見る事が可能です」


 「了解」


 「これでステータスの説明は以上になります。次はEKCと言うポイントの説明をさせていただきます」


 「EKC?」


 「はい。Enemy Kill Countの略なのですが、名前の通り、敵国民を倒した数になります。EKCを稼ぐと強い武具や、魔法を手に入れる事ができます」


 「なるほど。まあ対人ゲームにありがちな設定だな」


 「しかし気をつけなくてはならないのは、敵に倒されてしまうとこの数値はマイナスされてしまいます。10回殺されてしまうとゲームオーバーとなり、そのプレイヤーは消えてしまいます」


 「は?消えるってどう言う事?」


 「神様があなた達におっしゃった事と同じ意味です。この世界からも、現実世界からも、存在が消えてなくなります」


 おいおいマジかよ・・・。普通のゲームっぽい雰囲気に流されて肝心な部分を忘れていた。つまり誰も倒せずに10回殺されたら消えるって事か。とんでもねぇゲームだ。いや、ゲームじゃないのか。


 「この戦争が終結する条件は片方の国家の国民の人数が、もう片方の国家の国民の人数の半数を下回った時です。その瞬間に戦争は終わり、勝利した国家の人間は現実世界に戻され、負けた国家の人間は消滅します」


 「ちなみに週に1回行われるクルセードと言われるゲーム内の戦争では、負けた国の国民全てのEKCが-1され、勝った国の国民全てのEKCは+1されます」


 「何もしないと、殺されなかったとしても戦争10連敗で全員消えるって事か」


 リリスと言う女神はうれしそうににっこり微笑む。


 「このくらいで説明は以上になりますが、何か質問はありますか?」


 「あ、EKCで手に入るアイテム一覧は教えてもらったりできないの?」


 「それはEKCが実際にそのアイテム取得に必要な数値が溜まった時や、プレイヤー同士の情報交換でしか知る事はできません」


 「なるほど。ちなみにレベルはどうやって上げればいいの?敵国民を倒さないとダメなの?」


 「ヘルブレスの世界にはモンスターがいますので、モンスターを倒す事でレベルを上げる事が可能です。ちなみにモンスターは先ほど説明したEKCとは関与しないのでご安心ください」


 「なるほどね。やっぱその辺は普通のゲームなんだな」


 「明君すごい・・・。私全然話しについていけてないのに・・・」


 亜美さんが俺の腕をつかみながらうっとりとした表情で俺を見上げる。


 なんだこの人・・・エロすぎだろ・・・。俺の事好きなんじゃないのか。


 残酷なゲーム内容を聞いて、冷静になっていた俺の頭がまた煩悩に支配されだす。


 「あ、亜美さんはゲームとかした事ないんですか?」


 「う、うん。・・・知り合いがよくやっているのを見てた事あるけど、私はさっぱり」


 「なるほど。まあ俺がついてるんで、またわからない事があったら後々説明していきますよ」


 俺は調子に乗って格好つける。


 「頼りになるな」


 三好さんも言う。勉強は全く役に立たなかったが、腐ってた二年間のゲームの知識は役に立つもんなんだな。皮肉なものだ。


 「それではこれから戦闘のチュートリアルとして、模擬戦を行ってもらいます」


 「はは。随分親切だな」


 気が緩み、調子に乗りだしていた俺は笑いながら軽く返事をする。


 「はい。あなた達は今から一時的にレベル100まで引き上げさせていただきますので、その範囲でステータスを振ってもらいます。武具、魔法等は今回に限り自由に私から与える事ができますので、自由にお申し付けください」


 「了解。で、何と戦うの?スライムとか?」


 俺はふざけて言う。


 「いえあなた達が戦うのは、先ほどエルバインに行ってしまったタクマさんとミカさんです」


 え、対人戦かよ。よりにもよってあいつらとか・・・。正直もう顔も合わせたくない。


 まあ模擬戦だし適当でいいか。


 「更に気をつけていただきたいのは、この模擬戦の最中に一番最初に3回死んだ人にはここで消えていただきます」


 「は?」

 

 は?


 「えっと、どう言う事?」


 言っている事はわかるがリリスと言う女神、きれいな顔してあまりにも平然ととんでもない事を言うから俺は事態が把握できなかった。


 「そのままの意味です。今から3対2に分かれて殺し合いをしていただき、その中で最初に3回死んだ人はここで消えてしまいます。なお、誰かが3回死ぬまで戦闘は終わりません」


 嘘だろ・・・。

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