訓練所再びその1
レベル40になった俺達はそれぞれステータスを振り、お互いにそれを確認する。
最初に全ステータスに10ずつ割り振られていて合計60。最初にもらえるポイントが10、レベルアップでもらったポイントが3×40で120。つまり合計で190になる。
アキラ:STR65 DEX30 VIT33 INT32 MAG20 CHR10
ミヨシ:STR91 DEX40 VIT29 INT10 MAG10 CHR10
レイ :STR52 DEX80 VIT28 INT10 MAG10 CHR10
キリト:STR10 DEX10 VIT10 INT60 MAG90 CHR10
「アキラ、えらい中途半端ね・・・」
レイさんは不安そうにアキラを見る。
「まあサポート剣アタッカーって感じなので、実際中途半端ですから・・・」
「INT32でPFMを覚えられるのね」
「はい」
「それでINT60でアイスストライクと。STRは13の倍数ごとに武器のランクがあがるみたいだから、それぞれちょうどいいくらいで止めて、残りはDEXとかVITに振る感じね。弓は武具屋に売っている最高ランクのディレクションボウがSTR52みたいだからあたしはSTRをこれ以上あげなくてよさそう」
「キリト、お前はVIT振らなくていいのか?すぐ死んじまうぞ」
ミヨシさんが心配そうに言う。
「MAGあげねえと魔法避けられちまうからなー」
キリトはチラっとレイさんを見る。
「まあそうですね。相手がPFAを使ってきたら、キリトの魔法が頼りですから。俺は基本キリトを守りながらサポートしていきます。一応メイジのセルシに攻撃があたるよう、DEXは20まで振っておきました」
「まああいつもINT60のアイスストライク覚えてたし、詠唱失敗していないところを見ると、恐らくMAGにも結構振ってるはずだろうから、DEXに振る余裕はないだろう」
キリトは当初の中2病テンションが少し戻ってきたのか、しゃべり方にキレがある。
「訓練所卒業はレベル60だから、セルシをレベル59だと仮定すると、俺達より57ポイントステータスが余ってる事になりますけどね。その数値を何に振っているかはわからないので、そこだけ少し不安ですが・・・」
「現時点の俺のMAGでアイスストライクの成功率は70%しかない。普通メイジなら成功率100%にしたいものだ。だからあいつも残り数値のほとんどをMAGに振っていると考えるのが普通だろう。童貞は心配性だな」
キリトは得意気に言う。
「まあ実際そうですね。基本的な作戦としては、レイさんが弓で攻撃して、ミヨシさんもそれに合わせて殴りに行く。セルシがPFAを使ったら、キリトがパラライズで拘束して、ミヨシさんが殴りつつ、キリトの魔法で仕留める感じですね」
「童貞は何するんだ?」
「こっちのやりたい事は単純なので、セルシも当然この作戦に気づくでしょう。そうなると恐らく狙われるのはキリト。だからキリトを狙って来た時に俺がキリトを守る感じかな。後ミヨシさんへのPFMは俺がかけます」
「ふっ。まあ精々がんばってくれ。今の俺ならお前なぞがいなくてもどうにでもなるがな」
キリトもテンションが乗ってきたようだ。
「それじゃ行こっか」
レイさんが言い、俺達は訓練所へと向かう。
「相変わらず嫌な場所ねぇ」
レイさんは入るなり顔をしかめる。
訓練所は薄暗いレンガで出来た建物で、床も汚く埃が積もっていて、廃墟独特の湿った臭い匂いがする。正直長時間いたい場所ではない。
俺達は周りを見渡すが、訓練所には誰もいなかった。
「あれ、誰もいないじゃない。ラッキー。今のうちに狩りまくりましょ」
レイさんはうれしそうに言う。
「もしかしたらみんなセルシにやられた後かもしれません。気を抜かずに行きましょう」
そう言って俺達は、訓練所に設置されている動く案山子を攻撃し始める。
ミヨシが案山子の攻撃を受け、その後ろからアキラが殴り、その後ろからレイが攻撃する。キリトは3人にバーサクをかけると言った具合だ。
「なんとなく背後から殴ってましたけど、このゲーム背後から殴るとクリティカルが出やすいみたいですね」
クリティカルが出るとダメージが2倍になる。
「まあこう言うゲームって大体そうじゃない?」
レイさんは当たり前の事だと言わんばかりに案山子の背後を取り続ける。
ごそごそ・・・。
「?」
さっき狩った、蛇が這うような音が聞こえる。
ごそごそごそ・・・。
空耳かと思ったがやはり聞こえてくる。
ごそごそごそごそ。
音は近くなってきたと思ったら急に止まった。
脳裏にチュートリアルの時のインビジブルから出てきたタクマの記憶がよぎる。
やばい。
「だめだ!レイさん逃げて!」
「アイスストライク!」
レイさんの背後に突然セルシが現れる。
俺の声でとっさに動いたレイは、セルシの魔法を少し被弾してしまうが、大したダメージにはならなかった。
「PFM」
すぐに俺はレイさんにPFMをかけた。それを見たキリトも自分と俺とミヨシさんにPFMをかける。
「くぅ~うぜえ~。いっちょ前にレベル上げて来てんじゃねーよ雑魚共が。めんどくせえ!インビジブ・・・」
パシュン!と言う音と共にセルシの詠唱が止まる。
「ばーか。逃がすわけないでしょ」
レイさんはアイスストライクを避け、床に倒れている状態から体制を直しながら矢を放つ。
「ああああああああああああクソメスがぁアアアアアアアアアァ!」
セルシは頭をかきむしる。
「ほら、PFAをかけてみなさいよ」
PFAをかけたら今度はキリトの魔法が当たる。セルシもそれくらいわかっているはずだ。
「くっクッソォオオオオオオオオオオオ!」
セルシはそう叫びながら逃げようとするが、レイさんの矢に邪魔されて走ることが出来ない。そんなセルシにミヨシさんも追いつく。
しかし近づいたミヨシさんはセルシの顔を見て、驚き、一瞬止まってしまう。セルシはうれしそうに、ニタァっと笑っていたのだ。
「今、お前ら絶対に勝ったって思ってるだろ?勝ちを確信しているよな?そう言う顔をしているよなぁ?」
「何言ってんのよ、ここからどうやってあたし達が負けるのよ」
そう言ってレイさんは次の矢を放とうとする。
ザッザッザッザ!
足音と共に、床を蹴る砂煙がレイさんの方へと向かっていく。
まさかもう1人いたのか。
「行けない!キリト、レイさんにインビジブルを」
咄嗟に俺そう叫び、急いでレイさんの近くへ走る。
「死ねぇええええええええええええ!」
セルシの声が訓練所に響き渡る。




