雑貨屋その4
雑貨屋は宿屋も兼ねていて、風呂も寝る場所も用意してくれた。俺達には金がなかったので、ハヤトさんとコーイチさんが代わりに出してくれた。
「いつか返せよ」
コーイチさんは笑いながら言う。
翌朝起きて、昨日みんなで飲んだ席に行くと、既にハヤトさんとコーイチさんは座って朝ご飯を食べていた。そして隣にはカメオさんもいた。
「お、おはよ」
俺に気づいたハヤトさんが声をかける。
「みなさんお早いですね・・・。俺達と同じ時間まで飲んでたのに」
「こう見えて、俺らあっちの世界では社畜だったからねー。体が勝手に起きちゃうんだよね」
そう言ってハヤトさんは笑う。
「ハヤトさんとコーイチさんは現世でも知り合いだったんですか?」
「いや、偶然チュートリアルで一緒になって、それからって感じ。気も合うし現世の生活も似てたし、ちょうどいい感じ」
「なるほど。いいですね。そう言うの」
「何言ってんの。アキラ君だってレイちゃんといい感じじゃん。俺もどうせなら女の子がよかったな~」
ハヤトさんはため息をつく。
「俺の台詞だよ」
コーイチさんが肘でハヤトさんを小突く。
「俺とレイさんはそう言うのじゃないんで・・・ごにょごにょ・・・」
「あたしがどうしたって?」
レイさんが起きてくる。
「いや、なんでもないです」
「ふーん」
レイさんは不思議そうに俺を見る。
「おっさんとキリトは?」
「ミヨシさんなら俺らより早く起きてもう外で待ってますよ。キリト君はまだ寝てるのかな」
「おっさんは早起きだし、ガキは寝ぼすけって、緊張感ないわねぇ」
「起きてるっつーの。朝からおばさんはうるせーな」
眠そうに目をこすりながらキリトが起きてくる。
そんなキリトの顔の真横を、矢がすごい速度で過ぎ去り、キリトの後ろにある壁に刺さった。
「あんた次あたしの事おばさんって言ったら殺すから」
レイさんは冷たい声で言った。
「マジかよ・・・」
キリトは余りの事に一瞬で目を覚ます。
「マジよ」
レイさんはまじめな顔で言う。
「まぁまぁ」
ハヤトさんがレイさんをなだめる。
「あ、こっちのおっさんはどうするの?」
レイさんはカメオさんを指差して言う。
「ああ、カメオさんは俺達と一緒に行くことにするよ。君達は自分達の事でまだ精一杯だろうし」
コーイチさんが言うと、
「足手まといですみませんね」
と、カメオさんが恨めしそうに言う。
「実際そうでしょ。2人に感謝しなさいよ。おっさん」
レイさんは言いたい放題言う。聞いてるこっちが冷や冷やするくらいだ。
「レイさん、もうちょっと言葉を選んで・・・」
「何言ってんのよ。こういう奴にはちゃんとストレートにきつい事も言ってあげないとだめなのよ。みんな内心ではあたしと同じ事思ってるのに、変に気を使って優しくしたりするから、甘えてこんなおっさんになっちゃうの」
「でも・・・」
少し納得してしまった俺は言い返せない。一応レイさんの優しさなのか・・・?
「お、みんな起きたか」
ミヨシさんが外から入ってきて、気まずい空気を打ち消す。
「じゃ、行こっか。さっさとレベルあげて、セルシぶっ殺すわよ」
「だな~」
キリトは手を頭の後ろで組みながら言う。
「そう言えば中2病キャラどうしたんだ?」
俺は昨日から普通に話しているキリトを不思議に思ったので聞いてみる。
「ああ言うのは気分が乗ってないとできないんだよ」
「なるほど・・・」
中2病の奴ってもっと自分の事見えてなくて、勢いでやってしまってるもんだと思ってたが、こいつはますますわからん・・・。じゃあなんのためにあれをやってるんだ・・・。
「がっはっは。難しい年頃なんだよな」
ミヨシさんがキリトに向かって言う。
「おっさんはうるせえよ」
キリトは少し照れる。
ミヨシさんはまたキャラが変わった気がする・・・。
そんな2人を見て、レイさんはニヤニヤうれしそうに笑う。
「くぅー。いいねいいねぇ。おっさん×ショタBLを生で拝めるなんて・・・」
レイさんは俺の肩をバンバン叩きながら呟く。
この人、腐ってんのか・・・。
やっとこれから冒険が始まるって言うのに、俺の不安は増すばかりだった。




