雑貨屋その1
「あああああああああああああああ。むかつくむかつく。チョーーーーーーーーーーーむかつくーーーーーーーーーー」
リスポーン地点でレイさんが怒り狂う。
どうやら今の俺達のリスポーン地点は最初にこの町に来た時の場所らしく、訓練所から出た俺達はすぐにレイさんとミヨシさんを見つける事が出来た。
「それにしても、あれだけきれいに即死させられたら痛みも全く感じないんだな。気がついたらここにいたって感じだ。それだけは救いだな」
ミヨシさんが腕を組みながらそう言ってうなずく。
「何言ってんのよおっさん。あたし達殺されたのよ?後9回死んだら消えちゃうのよ?」
「まだ9回もあるじゃないか」
「9回しかないのよ!この間抜け!」
レイはやり場のない怒りをミヨシさんにぶつける。
「ぬぅ・・・」
ミヨシさんはやはり黙ってしまう。
「まぁまぁ。レイさんの気持ちもわかりますが、ミヨシさんに八つ当たりしても仕方ないですし・・・」
「わかってるわよそんな事!!」
俺はあわててフォローするが当たり前のように怒鳴られる。
「すみません・・・」
そして俺は咄嗟に謝ってしまう。
「くっくっく・・・。そう言うとこだぞ。童貞」
キリトがここぞとばかりに笑う。
「うるさい!!!!あんたが一番役立たずでしょ!!!何が闇魔法よ!パシュン!じゃないのよ。レジられてんじゃないわよ!!!」
レイさんの矛先はキリトに向く。
「す、すみません・・・」
キリトも普通に謝る。
「あ、あのぉ・・・」
青年にやられかけていた男が、この状況を見かねたのか話し始める。
「あ、なんでしょう」
「いえ、助けていただいてありがとうございます・・・。私のせいでお2人も死なせちゃって・・・。申し訳ないです・・・」
男は深々と頭を下げる。
「あんた、何回死んだの?」
「はい。私ももう8回殺されていたので、本当に助かりました」
「何よ、もう1回死ねたじゃない」
レイさんはもったいない事をしたと言う様な顔をした。
「さすがにそれは言いすぎだろう!」
珍しくミヨシさんが怒る。
「あー。まあ。そうね。ごめん。今のナシで。あたしもおかしくなってた」
ミヨシさんに怒鳴られて驚いたのか、レイさんはようやく冷静になる。
しばらく気まずい沈黙が続く。
「あ、あの。あなたはなんて名前なんですか?」
沈黙をとにかくなんとかしたくて、俺は無理やり話題を出す。
「あ、私はカメオです。カメラマンやってたんで、カメ男って事でカメオって名前にしました」
「ふーん」
心底どうでもよさそうにレイさんがうなずく。
「で、あいつは何なの?あんたなんか知ってる?」
レイさんがそのまま青年の事を聞く。
「はい・・・。あいつは初心者狩りのセルシと言って、最近の訓練所で初心者を食い荒らしているクソ野郎です。私も仲間が3人いたのですが、みんなあいつにやられました」
「セルシ・・・ね。まあいい装備揃えてレベル1の初心者倒しまくってEKC稼げるならまあ、賢いやり方っちゃやり方なのかしら・・・」
レイさんは気に食わないながらも納得する。
「いや、それが、このゲーム、レベル差が20以上開いている相手を倒してもEKCが入らないみたいなんですよ。やられた方はEKCが減りますが」
「はぁ?何それ。じゃああいつなんのためにそんな事してんの?あたし達を殺しても何の得もないんでしょ?」
「はい・・・。だから普通の人はさっさとレベルを上げて次の狩場に行くのですが・・・。恐らく自分の快楽のためだけにあそこに居座っているのかと・・・」
「キィーーー!やっぱりただのクソ野郎じゃない!!マジでぶっ殺してやらないと気が済まないわ!」
レイさんはまた怒り狂い出す。
「まぁ・・・どちらにしてもセルシがいる以上俺達は訓練所で狩りするのは無理みたいですね」
「それだとレベルを上げられないんじゃないか?どうするんだ」
ミヨシさんが言う。
「何か他に方法ありますか?」
俺はカメオさんに聞く。
「いえ・・・。私達もどうすればいいかわからなくて、なんとかあいつの目を盗んで訓練所で狩りをしようとしていたのですが・・・。くそう・・・!」
そう言うとカメオさんは悔しそうに自分の膝を叩いた。
「詰み・・・。と言うやつだな」
キリトが神妙な顔をしながらつぶやく。
絶対こいつ『詰み』って言いたいだけだ・・・。
「そもそもこの町のどこに何があって、どうなってるのかさっぱりわからんからな。ここに倉庫と武具屋と雑貨屋、そして訓練所がある以外はさっぱりわからん。見たところ広そうな町だが・・・。人も全然見かけないしどうなってんだ。地図とかはないのか」
ミヨシさんが沈黙に耐えかねたのか、しゃべりだす。
ってあれ・・・?
「地図。地図くらいあるはずですよね。ゲームなら」
「確かにそうね。当たり前の物すぎて存在忘れてたわ」
レイさんも冷静になり、俺に同調する。
「どうしてこんな当たり前の事最初に確認しなかったんだろう。地図をまず入手しないと、ゲームはそこからじゃないか」
「そうは言っても、どこに地図なんてあるんだ?見たところそんなものはどこにもないぞ」
ミヨシさんはあたりを見回しながら言う。
「まぁ、今思い当たる中で、あるとしたら雑貨屋ね」
「そうですね、どっちにしても何か情報が手に入るかもしれないし、まずは雑貨屋に行くのがベストですね」
「まあ、俺は最初からそう考えていたがな」
「ところで」
珍しくミヨシさんが口を挟む。
「セルシって言ったか?あいつどこから来てるんだ?この町までは追ってこないみたいだが?」
「ああ・・・」
カメオさんが反応する。
「訓練所はエルバインの訓練所とつながってるみたいなんですよ。要するに、アレスデン側の訓練所をずっと奥に行くとエルバインの訓練所があって、そこを抜けるとエルバインの町みたいです。でも訓練所経由では町には出られないみたいで、と言うかこの町だけは唯一全くエルバインが来れないセーフ地点みたいです」
「なるほど」
つまりどう転んでも敵国と殺し合わせるように仕向けられたゲームって事だ。えげつねえ。
「そんじゃま。あたし達も出遅れ組で時間ないし、さっさと行きますか。雑貨屋」
レイさんがそう言うと俺達は雑貨屋へと向かった。




