訓練所デビュー
「はぁっはぁっはぁ・・・!やめろぉ・・・。助けてくれ・・・。もう俺はこれで終わりなんだ」
追い詰められる男。
「はぁ?そんなの僕の知ったことじゃないし、雑魚がノコノコこんなところに踏み込んできたのが悪かったね」
訓練所には相応しからぬ、しっかりとした装備をつけた青年はそう答え、男に近寄る。
「うおおおおおおお!」
背後から別の男が青年に切りかかる。
剣は見事に青年の背中を切ったが、防具のおかげでほぼダメージを負わない。
「いってぇな。そんなクソ武器で僕にダメージ通るわけねえだろ。でも多少はいてえんだからな。マジでぶっ殺す」
「Ice Strike」
青年がそう詠唱すると、追い詰められた男の頭上にいくつかの氷の塊がゆっくりと落ちてきて、男を押しつぶした。
男の死体はゆっくりと消えて行き、切りかかった男の記憶からも、殺した青年の記憶からも存在が消えた。
「うおああああああああああああああああ。なんて事しやがる!!消えちまった!本当に存在が!思い出せねえ!仲間が死んだ事、消えた事はわかるのに。なんて事すんだ!!!!」
切りかかった男は発狂し、叫ぶ。
「うるせえな。このシステムを作ったのは僕じゃねえし、僕にキレてもしょうがねえだろ」
男を嘲笑いながら青年は続ける。
「まあ、あんたももう死ぬんだ、関係ねえよ。安心しな」
「アイススト・・・」
青年が詠唱を始めると、青年にピチュンと矢が刺さった。
「あんた!よくわかんないけど、あたし達が時間稼いでる間に逃げて!」
弓を構えながらレイは叫ぶ。
「こっちです!早く!」
アキラが男を入り口に案内する。
「うおおおおおおおおお」
レイの矢で詠唱が止まった隙にミヨシが青年に切りかかる。
ミヨシの剣は見事に青年の肩に当たったが、やはり防具に防がれてしまい、ダメージを与えられない。
「うぜえな・・・。アイス・・・」
「それはさせない!」
青年は再び詠唱を始めるがレイの矢で妨害される。
「ああああああああああああああああうっぜええええええええええ。嫌いなんだよなぁ。ずっと昔からゲームやってる時はいつもうぜえ。弓使いってのはいつも僕の邪魔してくるんだ。チュンチュンチュンチュンうれしそうに撃ってきやがって、僕らメイジ様は魔法撃つのに必死で詠唱してるって言うのによぉ~。お前らはチュンチュン簡単にそれを邪魔しやがる。マジでうぜーんだよなぁあああああああ。」
「ふん!」
そう言ってミヨシがもう一度青年に切りかかるがやはり刃は通らない。
「おっさんもうざいよ」
そう言って青年がミヨシの頭を持っていた杖で殴ると、ミヨシの首はぐるんとねじれ、ミヨシは即死した。
「うそ・・・でしょ・・・」
「ミヨシさん!!!」
男を逃がそうとしているアキラもとっさに振り返る。
「嘘じゃねえよ。当たり前だよ。お前らレベルいくつだよ。弱すぎんだろーが。僕はここでEKCためてそれなりの装備つけてんだよ。お前ら雑魚が僕の邪魔なんてしていいわけねえだろうが」
青年は笑いながら大声でレイに怒鳴りつける。
「ほら、死ねよ。アイ・・・」
ぴちゅんと矢が刺さり、やはり詠唱を止められる。
「ふん、どんだけ装備がよくても、あんた回避は低いみたいだし、矢さえ当たれば、あたしがあんたをやれなくてもあたしもやられはしないよ。あたしはひたすら逃げ撃ちしてればいいだけだしね」
そう言いながらレイは青年と一定の距離を保ちながらアキラ達と共に入り口へと向かう。
「この調子なら行けそう。あれ?」
青年が一瞬離れ、レイの弓の射程から離れる。
「諦めたのかな、一気に逃げましょ」
「パラライズ」
逃げようと後ろを向いたレイは青年のパラライズによって拘束される。
「く、しまった・・・」
「はははははは。あっはっははっはっは。間抜けのボケがぁ!クソ雑魚の初心者が僕から逃げられるとでも思ったのか?さあ、どんな気分だ。今から確実に殺されるってのは。絶望した顔を見せてくれよ。僕はお前みたいな気の強そうな女が絶望に歪む瞬間が何よりも好きなんだ。さぁ、早く」
「うわ、きも・・・」
そう言ってレイは矢を放つ。
「『拘束されても、この距離なら相手が近づく前に拘束は解ける。魔法さえ詠唱させなければ逃げられる』そんな事でも考えているのか?」
レイの矢は防護壁によって防がれ、青年には当たらない。
「なっ・・・」
「まさかPFA(Protection From Arrow)をかけてくるとは思わなかったか?このゲームはいいよなぁ。お前みたいなくっそうざい弓使いも、この魔法さえかけたらただの案山子だ」
*PFA(Protection From Arrow)『矢による攻撃からの保護魔法』取得に必要なINT30
「あんた・・・それをかけるってどう言う意味かわかってるの?」
「もちろんわかっているさ。保護魔法は上書きできない。だからPFAの効果中、僕はPFMをかけられないから、魔法は全て当たってしまう。そうだろ?」
「そうよ。キリト!出番よ!」
アキラの後ろで黙って見ていたキリトが、呼ばれてあわてて出てくる。
「お、おう!食らえ!我が闇魔法、マジックミサイル!」
パシュン!と言う音と共にキリトの魔法は青年のところに飛ぶが、ダメージを与えられない。
「だめだ、MAGの数値が違いすぎて、魔法が抵抗されてしまうんだ」
アキラはつぶやく。
「くっくっく・・・・はーっはっはっはっは。なんだ?今のは。コントか?お前ら見たところまだ始めたばかりのガチの初心者だろう?見た瞬間からそんな事はわかってんだよ。そんなクソ雑魚の魔法なんざ、僕ならレジスト(抵抗)するに決まってるだろうがよぉ。わかんねえのか?これだから初心者狩りはやめられねぇ」
「くっ・・」
万事休す。レイが苦しい顔をする。
「それだ!それが見たかったんだよぉおおおおおお。いいなぁああああああやっぱりいいよ。女はそう言う苦悩に歪んだ顔をしている時が一番かわいいよぉおおおおお。なぁ?お前らもそう思うだろ?」
「くそ!死ね!変態野郎!」
キリトが必死に言い返す。
「ぷぷ。なんだそりゃ。悪口のつもりかよ」
青年は笑いながらレイに近づく。
「さて、十分楽しませてもらったし、死んでもらおうかな」
「早く!走って!あんた達だけでも逃げて!!!」
レイはとっさにアキラ達を怒鳴りつける。
「アイスストライク」
青年が詠唱を終えると、氷の塊に潰されてレイは即死した。




