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ヘルブレス  作者: htsan
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新しい仲間

 武具屋のおじさんが支給してくれたお金で、俺とミヨシさんはとりあえず今のステータスで装備できる一番いい武器と防具を買った。


 装備を買うとおじさんは武器や鎧ではなく、武器や鎧の絵が描かれたカードのような物を渡してきた。


 「買った装備はちゃんと装備して行くんだぞ」


 不思議そうにしている俺達を横に、おじさんがゲームの武具屋の店主がよく言いそうな台詞を言う。


 「装備ってなんだ?これが装備なのか?」


 当然ミヨシさんは困惑する。


 「ああ、魔法を使う時とかステータスを振る時みたいにコマンドが出せるみたいですね。装備のコマンドを出して、ここにこのカードをセットするのかな」


 俺が胴体の部分に鎧のカードをセットすると、カードが空中のコマンドに取り込まれ、カードに描かれた鎧が、俺の体に実際に装備された。


 「おお。最近はすげえな。これがITの力ってやつか」


 ミヨシさんは子供のように驚いて興奮している。


 「まあここは一応ゲーム内ですしね」


 「なんだよ。兄ちゃんたちチュートリアルは済ませたんだろ?装備の仕方くらいやっていかなかったのかい?」


 そう言えばチュートリアルの時は装備リストの中のつけたい装備をリリスに指定したら、勝手に装備されてたな。


 「あの女神、なんでこんな肝心な事教えてないんだよ・・・」


 「まあ、いいじゃねえか。実際装備はできるようになったし」


 ミヨシさんは装備システムが楽しくて仕方ないようで、装備をつけたり外したりしてはしゃいでいる。


 「そうですけど・・・」


 「あ、そうだ。兄ちゃん」


 突然おじさんが話しかけてくる。


 「なんですか?」


 「ついさっき兄ちゃんたちと同じような新人2人が来て、倉庫に行くって言ってたぞ。何するにしても人数が多いほうがいいだろうし、声かけてみたらいいんじゃねえか」


 「本当ですか?」


 願ってもない事だ。仲間が増えるのは本当に助かる。


 「んな事で俺が嘘つく理由がないだろうが。ガッハッハ」


 おじさんはまた豪快に笑う。


 「ありがとうございます。行ってみます!ほら、ミヨシさんも遊んでないで行きますよ」


 相変わらず装備で遊んでるミヨシさんを呼ぶ。


 「お、おう。遊んでたわけじゃないぞ。こんな事でもやっているうちに1つ大事な事がわかった」


 「なんですか?」


 「こんなんでも装備をつけるとちゃんと重さを感じるって事だ!」


 ミヨシさんはすごいドヤ顔で言うが、そんな事は装備をつけた時点で俺もわかっていた。


 「は、はぁ・・・。まあ行きましょうか」


 この人もっと頼れた気がするんだけどなぁ・・・。まあ倉庫にいる人達がいい人だといいが、さすがにミヨシさんと2人は心細くなってきた。


 武具屋を出ると、最初にこの町に出てきた場所の少し向こうに倉庫があるのが見えた。俺とミヨシさんは真っ直ぐ倉庫に向かって入っていった。


 「いらっしゃい」


 倉庫に入ると、武具屋の時とは反対に暗い声が飛んできた。


 声のとおり、見た目も武具屋のおじさんとは正反対の几帳面そうな気難しい顔をしたおじさんが立っていた。


 「なんかようかい?アイテムを預けたり引き出したりするなら声をかけておくれ」


 おじさんはそう言うと椅子に座って本を読み始めた。


 「あの、少し前に2人組が来ませんでしたか?」


 「ああ、あれかな」


 そう言うとおじさんは少し離れた場所を指差した。倉庫が暗かったせいで気づかなかったが、確かにそこでは2人組が座って話をしていた。


 「ありがとうございます」


 おじさんに礼を言うと俺は2人のほうへ向かった。


 「お、新しい人かな?」


 こっちが声をかけるより先に女性から声をかけられる。


 座っていたのは俺より少し年上の女性と、高校生くらいの少年だった。


 「こんにちわ」


 慌てて俺は挨拶をする。


 「よかったー。こいつと2人だと心細くてさー。どうしようかって悩んでたところなんだよね」


 女性は目の前の少年を指差して言う。


 「失礼な女だ。むしろ足を引っ張るのは貴様の方だろう。俺は1人でもエルバインを滅ぼす覚悟だ」


 少年は額に指をあて、手で顔を覆うような仕草をしながら言う。一目見てわかった。これは中2病ってやつだろう。


 「ぬぅ・・・」


 タクマを思い出したのか、得体の知れない若い男を前にミヨシさんがたじろぐ。


 「もうずっとこんな感じでさー。話になんないんだよね。でもさすがにあたし1人じゃどうにもなんないし、他に人来るの待つしかないかなーってここで待ってたってわけ」


 「は、はぁ・・・」


 きれいで大人しそうな見た目の割りによくしゃべる女性を前に、女性に耐性の無い俺は戸惑う。


 「あ、あたしはレイ。んで、こいつはまさよし・・・じゃなくてキリトだっけ?」


 「†キリト†だ。いい加減に覚えろ」


 「しょうがないじゃん。チュートリアル中はずっとまさよしって呼んでたんだから。なんでそんなややこしい事すんのよ」


 「まさよし・・・。あれはもはや俺ではない。あれは現世を生きるための仮の姿。この世界に来て、まさよしと言う仮の姿を捨てた事によって、ようやく俺は真の俺になれたと言う事だ」


 「うわ・・・また出たよ。うざいなぁ・・・」


 呆然とする俺とミヨシさんを他所に2人は話続ける。なんだかんだ仲がよさそうだ。


 「それで、君達はなんて言うの?」


 「あ、俺はアキラです。それでこっちの人はミヨシさん」


 「よ、よろしく」


 ミヨシさんが緊張しながら挨拶する。やっぱりこの人キャラ変わってないか。


 「なるほど。アキラとミヨシね。2人も仲間探してここに来たんでしょ?見たところ、あたし達と同じで装備だけとりあえず買ったって感じだし、一緒に訓練所行かない?」


 レイと言う女性は1人でどんどん話を進める。俺も元々そのつもりだったので何も文句は無いが。


 「あ、はい。俺達もそのつもりでここに来たので、助かります」


 「そんじゃ決まりね。ここからは4人でがんばって行こうじゃないの。後、そういう堅苦しい話し方しなくてもいいからね。あたしの事もレイって呼び捨てにしていいよ」


 「はい。レイ・・・さん・・・」


 女性を呼び捨てにして呼ぶ事に抵抗のある俺は、最後に小さく『さん』ってつぶやく。


 「聞こえてるわよ。ふふ。しっかりしてよね。期待できそうなのはアキラくらいなんだから」


 「ふっ。まさか貴様童貞か」


 キリトがうれしそうにこっちを見てニヤニヤする。


 「・・・」


 何も言えずに俺は黙る。


 「あんたも童貞でしょうが。下らない事言わなくていいの」


 「なっちょ、ちょっと待て!俺は決してど、童貞などではない。そんなものはとっくに捨てている」


 「はいはいわかったから」


 「俺は小学生で童貞を捨てたぞ!」


 「もー。しつこいよ~」


 やっぱりなんだかんだ息合ってないかこの2人。ミヨシさんは黙ったままだし、なんか俺らが足手まといになりそうだ。


 「そんじゃま、冗談はこれくらいにして行きますか。訓練所でもエルバインの人間が襲ってくる事もあるみたいだしね。あたし達と同じ、低レベルしか入れないようにはなってるみたいだけど、気合入れていかないとね」


 「ええ、そうなんですか?」


 「おや?びびっているのか?童貞」


 「俺はアキラだよ」


 イラっとしてキリトを睨む。


 「図星をつかれたからと言って怒るな。くっくっく」


 こいつうざいな・・・。


 レイさんの気持ちがわかってきた。


 「童貞なんて恥じるもんじゃないぞ!そんなものはきっかけさえあればいつでも捨てられるさ。アキラならやれる!」


 黙っていたミヨシさんが突然わけのわからないフォローを入れだす。


 「何言ってるんですか・・・」


 「このおっさん大丈夫・・・?」


 レイさんが俺に耳打ちする。


 「多分・・・」


 もっと頼りになる人だと思ってたんだけどなぁ・・・。


 俺は思わずため息をつく。


 何はともあれ、俺達4人は訓練所に向かう事にした。


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