高校ヤンキー列伝 かつひこ君の恋 第四話 完結編
かつひこ君の恋
いよいよ完結編です
合宿にてなんとか
れいこちゃんと仲良くなりたいかつひこ君
それなのに
地元のヤンキー
ほっておいてはくれません
さて いよいよ かつひこ君の恋 四話目です
今回が完結編です
夏合宿当日
なんですが
初日
夕方までは
私の苦手な
顧問の先生がいらっしゃる
という
確かな情報
入手いたしました
私とかつひこ君
その日の夜
先生が帰られてから
合流
という段取りで
夕方
出発いたしました
かつひこ君は
停学中の
のりかず君に借りた
カワサキZ400FX
私は愛車の
カワサキKH400
二人とも
男のカワサキ
暴走のカワサキ
と呼ばれた
カワサキの誇る
単車でございます
私達は
FXは
エフェックス
KHは
ケッチ
と呼称
いたしておりました
さて
途中
他のヤンキーや
族と揉める事もなく
無事に
合宿先の民宿に
到着いたしまして
れいこちゃんの
熱烈な歓迎を受けつつ
当日は無事
何事もなく
過ぎたわけでございます
さて二日目の朝食後
皆は
三々五々
スケッチなどに
出掛けまして
部屋に残りましたのは
私 かつひこ君 れいこちゃんの三人
れいちゃん
今からな
単車でな
バリバリっとな
遊びに行けへん?
海辺はえ~で~
(それなりにかつひこ君の為に努力する私)
今日はあかんよ
私も絵描かんとあかんもん
なんやねん
写真撮っといてな
帰ってからそれ見て
描いたらええんちゃうん?
あかんってば~
でもね
ちょっと乗せてほしいから
明日ね
今日頑張って描くから
明日乗せて
よっしゃ
明日やな
今日は俺ら このあたりで
ええとこないか
適当に流して
下見しといて
明日連れてったるわ~
うん 楽しみにしてるね
と いう事で
話しまとまりまして
私とかつひこ君
二人で
付近の散策に出る事にいたしました
二台の単車連ねまして
海沿いを
流すわけですが
かつひこ君のFXも
私のKHも
とにかくうるさい
マフラーを替えておりますので
騒々しいわけでございます
かつひこ君のFXは
低音の響く
フォースト4気筒独特の音
私のKHは
甲高い
ツースト3気筒の
チャンバー音
しかも
マフラーから
ツースト特有の
もうもうたる白煙を吐きながら突っ走ります
目立つ事
この上ありません
さて
私とかつひこ君
途中の自販機コーナーで
ジュース飲みながら
休憩
いたしておりましたら
どこからか
ぞろぞろと
地元の田舎ヤンキー
集まってまいりました
ケンちゃん
ヤバいで
ヤバいで
結構おんで
う~ん
田舎者丸出しやけど
ちょい多いな
こりゃ
まずいで・・・
どうしよ~
怖いよ
任せとけ
お前は逃がしたら~
安心せい
おぅ お前ら
どこの者じゃい
人様の地元で
ようも目だった真似
しくさりやがって
(人数を頼りにいきがる田舎ヤンキー)
兄ちゃん
悪かったな
俺ら
遠くから海見にきただけやねん
何も悪させんから
見逃してくれや
(下手にでるおとなしくよい子の私)
アホんだら
見逃せやと
なめとったらあかんど ボケ~
(お話しの通じない田舎のヘタレ)
そうか~
見逃せんか
仕方ないわな
せやったら
相手でも何でもしたら
けどな
こいつやけどな
実はこいつ
心臓悪いねん
医者からもな
手術せんと20まで生きれん
言われとんねん
こいつだけは逃がしたってくれ
俺は好きにしたらええからよ
お前らかて
いっぱしの男やろ
体弱ぁて
いつ死んでもおかしない奴 どついても
つまらんで
カッコ悪いやろ
もしどついて 死にでもしたら 後味悪うないか?
(口からでまかせをペラペラ述べるぺてん師の私)
・・・・・・
お前は一人で残るつもりなんか?
俺ら 見た通り10人以上やで
ふくろになんで
そりゃな
ヘタレのハナクソばっかでも
こんだけ集まりゃ
俺は勝てんわな
けどな
三人は確実に道連れじゃい
まず
お前
それと
お前とお前に決めた
死ぬ前に殺したるわい
ええ根性しとるやないか
わかった
おいお前
体悪いのに単車乗っていきがんなよ
お前だけはええから
帰れ
(思ったより話しのわかるいい田舎者)
ケンちゃん
俺どうしよ~
一人で帰れんよ~
(とても心臓が悪いとは思えない血色のいいかつひこ君)
ええから帰れ
帰って待っといてくれ
お前おらん方が動きやすいねん
後はええからまかせい
う う うん
ケンちゃん
ごめんなごめんな
慌てて単車に跨がり
飛ばして逃げていくかつひこ君
おい
仲間呼びに行ったんと違うやろな
(疑り深い田舎者)
お前はアホか
仲間呼びに行くのに四時間かかるわい
俺一人で充分じゃい
最初から左手に握っていた砂を
相手の目 めがけて
投げつけると同時に
あらかじめ
右ポケットの中で
握りしめて
用意していた
メリケンサックで
相手の鼻っ柱に
どつきかかります
ガスッ
グァッ
見事鼻っ柱にヒット
血を撒き散らしながら
うずくまる田舎ヤンキー
ここでひとつ
注釈ですが
メリケンサック
と言うのは
殴り合いの際に
手に嵌めて使用する
鉄製の輪っか
ですね
これで殴られましたら
鉄で殴られるわけですから
大変痛い
一発で大概は
戦意喪失いたします
私 用心深く几帳面な
A型ですから
常にポケットに
携帯いたしておりました
さて
一人は
かろうじて退治
いたしましたが
猶予はありません
一瞬の出来事で
全員 あっけにとられ
固まっている今が
チャンスでございます
すぐ横で
この野郎
と言いかけていた
ボンクラの
みぞおちめがけて
メリケンで
ストレートを入れ
相手がどうなったか
見る間もなく
その斜め後ろのヘタレの
顎にメリケン
ぶちこみます
しかし
予定通り三人まで
でございました
後ろから
体のデカイ坊主頭に
羽交い締めされ
身動きとれなくなったところを
めった殴り
めった蹴り
にされてしまいました
このような場合
ぜひとも
皆さんにも守っていただきたい
大切な事がございます
それは
自分が使っていた武器
この場合
メリケンサック
ですが
これは
死んでも手離さない
と言う事です
手離しますと
その瞬間から
その自分の武器で
自分がやられる事になってしまいます
とにかく
どこを
何発殴られたか
何発蹴られたか
記憶にはございませんが
遠くからの
パトカーのサイレンで
あ~ なんとか助かったわ~
と感じた事
覚えております
パトカーのサイレンを聞いて
田舎ヤンキー達
やられた仲間を連れて
逃げていったようですが
ここは
私も逃げなければなりません
アドレナリンが
出まくっているせいか
あまり痛みは感じませんが
単車が 蹴り倒されて
右のブレーキレバーが折れております
とにかく慌てて
単車を起こし
キックにてエンジン始動
倒されたせいか
数回キックが必要でしたが
なんとかエンジンもかかり
無事逃げる事
できまして
フットブレーキだけで
民宿に帰り着きましたら
玄関先にて
かつひこ君
さも 自分がやられたような顔をして
待っております
かつひこ
お前な
マジで心臓悪そうな顔色やぞ
ケンちゃん
ごめんなごめんな
血だらけやん
ごめんなごめんな
アホか
ただの鼻血や
たいした事あるかい
けどな
ちょっと体痛いから
シャワー浴びて
寝るわ
うん
単車 置いてきて
民宿のおばちゃんに言うて寝れるようにしてもらうわ
おばちゃんにはな
単車で転けた
って言うねんで
わかった~
言うてくるわ
シャワーあびまして
鏡で点検しましたら
あちこち
アザはできて痛みますし
左側頭部に
ナイフで切られた
傷があり
そこから大量に
出血してはおりますが
傷口自体は
それほど大した事はなさそうです
血はこの頭と鼻血だけの様子ですが
胸はやはり
肋骨 折れてるか
という痛みがあります
とりあえずは
頭にタオルを巻いて
布団に潜り込みました
かつひこ君が
横で顔を濡れタオルで
冷やしてくれていたのは覚えておりますが
痛い痛いと
思いながら
いつの間にか
寝てしまったようでした
気がついたら
あたりは
すでに夕方
横に座って
看病してくれている
かつひこ君に
おい かつひこ
ありがとうな
喉渇いたわ
ちょっと
水持ってきて~
と頼みつつ
かつひこ君の方を見ますと
そこには
かつひこ君ではなく
目を真っ赤に
泣き腫らした
れいこちゃんが
座っておりました
おわっ
れいちゃんか
びっくりしたわ
かつひこは?
ウグッ
(思わず起き上がろうとして胸の痛みで呻く私)
かつひこ君には
お薬と包帯買いに行ってもらったよ
びっくりしたのは私やん
帰ってみたら
単車で転けたって
かつひこ君が・・・
でも うそ
違うよね
転けたんと違うよね
ケンカ?
殴られたん?
頭・・・どうしたん?
タオルにすごい血・・・
アホか
俺様がケンカで負けるかいや
転けたんやて
思いっきり転けたわ~
いいよ
そういう事にしとく
でも あかん
ケンちゃん・・・
むちゃくちゃする・・・
心配 心配・・・
いやや・・・いやや・・・
ケンちゃん・・・
(大粒の涙をポロポロ流すれいこちゃん)
ケンちゃん
ケンちゃん
お願いやから
ケガせんといて
ケガせんといて
お願いやから・・・
ケンちゃん・・・
(完全に泣き声になるれいこちゃん)
私 その時
全てを理解しました
れいこちゃんが
かつひこに言った
ごめんなさい
私 実は好きな人がいるんです
と言う意味
・・・あのな
れいちゃん
俺な
もうクラブやめるわ
それでな
かつひこやけどな
れいちゃんの事な
大好きなんやて
好きで好きでな
たまらんねんて
だから美術部入ってんで
しかもな
ヘタレやから
一人でよう入らんとな・・・
別にな
付き合うとか
そんなんせんでもええからな
これからもな
仲良う
したってな
一緒にな
スケッチ
行ったってな
あいつはな
ケンカとかせえへん
おとなしい奴やからな
優しいし
安心できるで
俺な 今からもう帰るわ
ありがとうな
ほんま・・・ありがとうな
・・・ケンちゃん・・・
あのね
今夜ね
打ち上げ会するの
みんなでね
お酒もちょっと飲もうって
買ってきてるの
一緒に飲もう
お願い
一緒にいて
(泣き声でしゃくり上げながらのれいこちゃん)
ごめんな
れいちゃん・・・
やっぱり俺は帰るわ
かつひこがな
酒飲んだらな
裸踊りしよるからな
遊んだってな・・・
アホでヘタレやけどな
めっちゃええ奴でな
俺 あいつ・・・
好きやねん
ごめんな・・・
れいこちゃんは
もう何も言わず
いつまでもいつまでも
しゃくり上げ
涙を拭いていました
夕立でもあったのか
涼しい海風が吹いています
遠くから
蝉の鳴き声が
夜になるのを
惜しむかのように
いつまでも
聞こえてきていました
あたりは
すでに
夕闇が迫っていました
あの日の
波の音と
れいこちゃんの
押しころして
泣く悲しい声
今でも
耳に残っております
私達の夏は
まだ
始まったばかりでした
甘く寂しい青春
誰にでもある
ほのかな思い出
あの頃はすでに
記憶の中で輝くのみ
思い出す
あの顔 この顔
皆が幸せになっておりますように