第1話 王様
ある晴れた午後の昼下がりのこと。 時間を持て余した王様が異国から取り寄せた特製の高価なペンで文章を書いていた。
何かの書物で文章を書くということは自分の心の整理に役立つ、というのを読んだからだった。
皆の者、元気にしておるか?余はとても元気だ。
ストレスもなく何不自由なく生きておる。
金も女も余の思いのままじゃ。
そなたたちが毎日毎日、時間と夢を犠牲にし、労働をしてくれるお陰で余はいつでも高級なワインや肉、あらゆる贅沢なものを手に入れることができるのじゃ。
わっはっはっ。
笑いが止まらんのぉ。ほっほっほっ。
哲学とは知を愛する精神ということだが、学校、スクールという言葉は、そもそもギリシャ語のスコレという言葉が語源じゃ。
このスコレという言葉は『暇』という意味があり、学問や芸術というのは暇がないと、とてもできん。
しかしだな、
人間は本来、芸術や学問に触れていなければ精神が堕落する!
そなたたちは働かなければならないだろうから、そんな暇はなかろう。ほっほっほっ。
だが!!余は何だってできる!
常に芸術や文化に親しんでおる!
両手を頭上に振り上げ、握り拳で恍惚な表情を浮かべる王様の眼は血走り、完全にイッてしまっていた(笑)