表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/190

ばれました……

「なあ、なんで猫になってるんだ?あんた人間のはずだろ?」



 その言葉を聞いた瞬間、瑠璃は凍り付いた。


 唯一猫になれることを知っているチェルシーにも、王都で猫として暮らしている事は言っていない。

 誰一人人間の瑠璃と猫の瑠璃が同一人物だと分かる者はいないし、そうだとは思わないはずだ。


 愛し子はそういるものでは無い。

 チェルシーから愛し子が人間であることを聞いていたにも関わらず、現れた愛し子が猫だった為に確認として聞いたとも考えられる。

 それならば納得がいく。


 だが、そんなことに頭が回らないほど瑠璃は混乱していた。



『やっ、あの、えっと………』



 動揺から上手く言葉を紡げない。

 何か話さなければと思えば思うほど気は焦り、浮かんでくる言葉は意味の無いものばかり。


 そんな瑠璃の様子を危機と判断したのか、精霊達が瑠璃を庇うように前に進み出てヨシュアを睨む。



『ルリを苛めちゃだめぇぇ!』


『竜族には愛し子を傷付ける馬鹿はいないって言ったのに、うそつき!』



 精霊に敵判断され掛かったヨシュアは慌てて否定する。



「いやいや、噓じゃないから。今のは苛めてたわけじゃなくて、話を聞きたいだけだから」


『竜族なのにあいつはルリを侮辱したんだから、やっぱりうそつきだ!』


「はっ?あいつ………って、もしかしてさっきフィンさんがユアンに怒ってたのってそれか?」



 精霊達が肯定すると、あちゃ~と言うように手で顔を覆う。



「あの馬鹿、いくら見えてないからって愛し子に喧嘩売ったら駄目なのは常識だろうに。

 あいつには俺からも言っとくから、取りあえず怒りを収めてくれよ、な?」



 不服そうにしながらも、精霊達はヨシュアに従った。

 それはヨシュアが瑠璃を助ける為に精霊達にチェルシーを紹介し、そこで瑠璃は楽しそうに過ごせていたという経緯があったからでもある。


 だが、それを知らない瑠璃は、ヨシュアと精霊達の顔見知りのような掛け合いに疑問を持ち問い掛けた。



『皆、ヨシュアさんと知り合いなの?』



 その問いに答えたのは精霊達ではなくヨシュアだった。



「俺のことは呼び捨てで良いよ、俺もそうさせて貰うし。

 精霊達とはナダーシャで少し話したことがある。

 あんたがナダーシャで森に追放される時に、精霊達にばあちゃんの所に連れて行くようにって俺が言ったんだよ」



 思っても見なかった言葉に瑠璃は大きく目を見開いた。

 ヨシュアは更に続ける。



「俺は元々諜報活動をナダーシャで行ってたんだが、その途中で召喚されてきたのがあんたらだ。

 最初から見てたから、こちらに来てからのあんたの事情は分かっている。人間だって事も。

 本当は助けに出て行ってやりたかったけど、俺も仕事があったから精霊達に任せたんだが。悪かったな」



 瑠璃はどんな言葉を返すべきか迷ったが、これだけははっきりしていた。



『いいえ、ありがとうございます。

 あなたがチェルシーさんの所に連れて行くように言ってくれたおかげで、私は不便どころか楽しく毎日を過ごせました。だから本当にありがとうございます』


「ばあちゃんはあんな顔だけど、優しかっただろう?」


『ええ、あんな顔ですけど、面倒見が良くて優しいです』


「そりゃあ良かった」



 ヨシュアは口角を上げ、瑠璃の頭を強めに撫でた後、優しくぽんぽんと叩いた。



(こんな世界に連れて来られて不幸って思っていたけど、私って凄く運が良い。

 知らないところでこんなにも助けられてたんだから)



 出会った人達が優しく温かい人達であったこと、それこそが瑠璃にとっての幸運。


 愛し子だから助けてくれたというのもあるのかも知れないが、利用するあくどい者に捕まっている可能性もあったのだ。

 ナダーシャのような国に。

 もしこの何一つ分からない世界で、国に都合の良い常識を教えられれば、瑠璃はそう受け取っただろう。

 本当に運が良かったとしか言えない。


 だが、そう思えば思うほど、こちらに連れて来たあのナダーシャの者達への怒りがくすぶる。



(やっぱり、あいつらだけは許せない………)



 瑠璃がナダーシャへの怒りを再確認した。



「で、何でナダーシャにいた時は人間だったのに、今は猫になってるんだ?」


『あー、それは………』


「今の話どういう事よ……?」



 瑠璃が説明しようとしたその時、第三者の声に振り返ってみると、そこには驚きの表情を浮かべたユークレースがいた。


 ヨシュアと瑠璃は揃ってやばいという表情を浮かべた。



『ユークレースさん、今の聞いて……』


「ばっちり聞こえたわよ、あなたが人間ってね。どういう事か説明してちょうだい!」



 動揺する瑠璃はヨシュアに助けを求めようと見上げる。



「………ところであんたは何で第五区にいるんだよ。

 宰相のお前が立ち寄る用事なんてないだろに」


「うふふふ、仕事の合間にちょっと目の保養に来ただけよ。

 やっぱり男達の肉体美は良いわぁ」



 頬を染めそう話すユークレースを、ヨシュアは冷たい視線を投げかける。



「間違っても兵士達に手を出すんじゃねえぞ、見るだけにしとけよ。

 そっちの道に連れ込んだら、陛下に言って出入り禁止にするからな」


「同意の上なら問題ないでしょう!!……って、話を逸らさないで!

 取りあえず、場所を変えるわよ」



 ユークレースはそう言うと、逃げられないよう瑠璃の首根っこを掴み上げ捕獲。話を逸らしきれなかったヨシュアは「まっ、仕方ないよな。俺も何で猫になってるのか知りたいし」と言い、その後に続いた。



 そんな一連の事態をひっそりと見つめる一対の瞳があった。



「人間だと………?」




***



 ユークレースの部屋へ移動した三人。



「さあ、説明してもらうわよ!」



 誤魔化しは許さないと、鋭く瑠璃を見つめるユークレースに、逃げ場は無いことを悟った。

 さすが宰相をしているだけあり、威圧感が半端ない。



 まず、ヨシュアがナダーシャで瑠璃に関して見聞きした事を話した。

 それを聞き終わり、「そこまで馬鹿だったなんて」「やっぱそう思うよな」と言うユークレースとヨシュアの話を聞きながら瑠璃は少し疑問に思う。



『諜報活動中だったのに、ヨシュアは報告してなかったの?』



 ヨシュアが瑠璃の存在を知っていたとしたら、一番に報告すべきことのはずだ。愛し子が見つかったのだから。

 だが、宰相であるユークレースですら、瑠璃が王都に来るまで瑠璃の存在を知らなかった。



「ルリの事はばあちゃんから口止めされていたんだよ。こっちの世界に慣れて、精神的に落ちつくまで森で暮らさせるからって。

 報告したらじっちゃんが無理矢理にでも連れて行こうとするだろう?」


「あのハゲじじいなら間違いなく王都に連れて行こうとするわね、チェルシーさんのように配慮もなく」



 酷い言われようだ。



「だろ?精霊の事も常識も知らない内に王都に連れて来て、精霊が暴走でもしたら目も当てられないからな。

 だから誰にも話してない、知ってるのは俺とばあちゃんだけだ」



 納得した瑠璃を、どこか疲れて溜息混じりのユークレースが問い詰める。



「次はあなたよ、ルリ。どうしてナダーシャを出るまでは人間だったあなたが猫になっているのか、詳しく教えてちょうだい」


『のっぴきならない事情があって猫になったままクラウスさんの家に行ったら、当たり前だけど猫だと勘違いされまして。

 最初はすぐに人間だと話すつもりだったんですよ?だけどクラウスさんが……』


「親父が?」


『私が人間の愛し子じゃなくて良かったって……。

 だから人間だって言ったら、ここでの扱いが悪くなってしまうんじゃないかと思って言い出せなくて』


「本当にクラウスがそんな事を言ったの?」



 ユークレースが信じられないという目で問い掛けるが、間違いなく事実だ。



『はい。一緒にいたフィンさんも同意している感じでした』



 瑠璃としては、優しく接してくれるクラウスやフィンが人間だと言うだけで対応を変えるとはどうにも思えなかったが、チェルシーのいない王都で、身を守る為に慎重にならざるを得ない。



「あの親父がどういうつもりで言ったか分からないけど、親父もフィンさんも人間だからって差別するような奴じゃないぜ?

 中には竜族至上主義の奴もいるけどさ、それも極々一部だし」



 言葉には出さないものの、ユークレースもヨシュアに同意している。



『でも、城には全然竜族以外の種族はいないですよね。それって、あんまり他種族の事を好ましく思っていないんじゃないのかなと思ったりしてて』



 それは瑠璃が城に来て気になっていた事だ。

 城で人間に会ったなら、ここでの扱いを聞いて人への差別がないのならすぐに言おうと思っていたのだが、全く人間には会わなかった。


 それで竜族は自分の種族至上主義で選民意識があるのではと、勘繰っていた。



「それはね、竜族じゃないと竜王様と働けないからよ。

 ルリも知っていると思うけど、竜族って弱い種族に本能的な恐怖を与えちゃうのよ。

 魔力の強い竜王様の側は特にね。

 それで実力主義の竜族から選ぶとなると魔力の強さも考慮に入れちゃうから必然的に上層部は竜族で占められ、上層部が出入りするルリが暮らしている上の区域に竜族しかいないって事になっちゃっているのよ。

 もう少し下の区域に行けば人間も、他の種族も働いているわよ」


『そうだったんですか……』



 つまりこれで瑠璃が不安に思っていた事は解消された。

 話した方が良いのだろう………。だが、まだほんの少し不安は残る。

 仲良くなってきたからこそ、手の平を返されたらと思うと恐いのだ。



「まっ、ルリが話しても大丈夫だろうって確信出来たら皆に話せば良いんじゃない?」


『えっ、私が人間だって言わないんですか?』



 当然ジェイドやクラウス達に直ぐ報告されるものと思っていた瑠璃は瞠目する。



「無理強いはしないってのが、ルリが城に来た時の約束ですもの。

 じっくり観察して判断すればいいわ。

 でも、クラウスもフィンも ルリが人間だからって態度を変えるような人じゃない事は言っておくわ」



 直後、「一人変わりそうなのはいるけど」とユークレースは付け加えたが、声が小さく瑠璃には聞こえなかった。



『ありがとうございます。後、黙っていてごめんなさい』


「良いわよ、知らなかったとはいえ、話出しづらい状況を作った非はあるもの。

 ただ、なあなあになっていると言い出しづらくなるから、そこは気を付けなさい」



 ユークレースの忠告に瑠璃は素直に受け止め頷いた。



「それで、大体の事情は分かったけれど、どうやって人間が猫になるってのよ?」


「それは俺も気になる」



 リディアの事を話すと話が長くなるのでそこは省略して説明する。



『とある曰く付きの腕輪を手に入れまして、その腕輪を付けると猫に変わるんです』


「それって、今してる腕輪?匂いや気配まで猫に変えられるものなの?」


『行き過ぎた変態の執念のなせる技です』



 気持ち悪いほどの執念だが、その変態により助かっているのもまた事実。



「けど、そもそもどうして猫になったのよ、人間のままクラウスの所に行っていれば、こんな勘違いされなかったでしょうに」


『実は王都に着いてすぐに、二人組の男に追い掛けられたんですよ。

 その翌日も会っちゃって。そのままクラウスさんの家に入る所を見られたら、クラウスさんに迷惑が掛かるから猫になったんです。

 後、人間の姿の私の髪と目の色が珍しいから隠していたんですけど、逃げる時に怪しい男の人に見られたから念のためにと思って』



 ユークレースとヨシュアの間に微妙な間が生まれる。



「…………どこかで聞いたような話ね」


「あのさぁ、その逃げる時に会った怪しい人ってどんな格好だった?」



 恐る恐るという感じのヨシュアの問いかけに瑠璃は少し考えた後に口を開いた。



『たしか、全身黒い服で目の辺りしか出していない怪しい男の人でした。

 私の髪の色に興味津々って感じだったので奴隷商人かと思ってすぐに逃げましたけど』


「……………」



 瑠璃の話す特徴を持った人物にはユークレースとヨシュアは大いに心当たりがあった。

 お忍び用として、竜族の中で最も強い力を抑える為にあつらえたもので、かのお人が王都に散策する時の格好そのものだった。



「ルリ、ちょっと元の姿に戻ってみなさい」


『えっ、今ですか?』


「そう今よ、早く」



 急かされるままユークレースに腕輪を取って貰うと、ルリの体が光り出す。


 光がおさまり、人間の姿となった瑠璃が現れる。

 その白金色の髪と瑠璃色の瞳を目にしヨシュアとユークレースは揃って何とも言えない表情を浮かべる。

 そしてヨシュアは頭を抱え天を仰いだ。

 


「ぐおぉぉ、まじかあ!?俺の苦労はいったい………!近隣の国まで足を伸ばしたのにぃぃ!」


「ご愁傷様。無駄足だったわね」



 ユークレースも眉間を指で押しながら溜息を吐く。



「えっと、何か?」



 人間であったことでも、瑠璃の色が珍しいからというわけでもない理由で驚いている様子の二人に、瑠璃は困惑する。



「ああ、ルリは気にしなくて良いわ。こっちの話だから」



 そう言うと、ユークレースとヨシュアは顔を突き合わせ、瑠璃に聞こえないようひそひそと話し始める。

 


「なあ、これ陛下に報告しなくて良いの?」


「言わないって言っちゃったんだから、しょうがないでしょう。

 ルリが話せば必然と分かるんだから急ぐ必要なんてないわよ」


「けどルリが話さないと、俺いつまでも人探しさせられるんだけど」


「諦めなさい。元はと言えばあなたの父親の責任なんだから」



 訴え虚しくユークレースに一刀両断され、ヨシュアはがっくりと肩を落とした。

 瑠璃は訳も分からず首を傾げる。



 暫く話をした後、再び猫に戻った瑠璃はユークレースとヨシュアと共にジェイドの執務室へと向かう。

 執務室にはクラウスと、見るからに疲れ切った様子のジェイドが仕事をしている。


 瑠璃は猫の跳躍力でジェイドの机に飛び乗ると、ジェイドの顔を覗き見る。



『ジェイド様、大丈夫ですか?顔色悪いですよ』


「ああ、問題ない」



 ジェイドは眉間に寄せていた皺を緩ませ、瑠璃のふわふわとした頭を優しく撫でる。

 ほのかに笑みを浮かべるジェイドに、瑠璃も目を細めされるがままじっとしている。


 そんなほのぼのとした二人を余所に、クラウスから報告書を渡されたヨシュアは絶叫した。



「俺じゃ無くても良いじゃんかよ!そもそもそれって外交官の仕事じゃねえか」


「お前しか手の空いている者がいないんだ。

 お前なら外交もそつなくこなすだろう?

 大事な陛下のお后になられるかも知れない方にへたな者を迎えに行かせられないからな」


「いやそれ絶対にせ……いってぇ!」



 言葉の途中で、足を踏まれたヨシュアは痛みに顔を歪める。

 誰だと振り返れば、ユークレースが鬼の形相で睨み付けていた。


 ヨシュアも自らの失言に気が付いた為、文句を言うこと無く引き下がる。



「何だ、何か問題でもあるのか?」


「…………なんでもない」



 そう言うしか無い。まだ瑠璃の事は話さないと約束したところなのだ。

 つまり、必要ないと分かりつつヨシュアは仕事に行かなければならなくなった。

 これほどやる気の起きない仕事もない。



『何かあったんですか?……ジェイド様のお后って?』



 瑠璃が問い掛けると、苦い顔をしたジェイドを横目にクラウスが説明する。



「陛下が街で一目惚れした女性を探していたんですが、その容姿に似た女性がある国に奴隷として連れて行かれたと報告があったのですよ。

 それでその女性を迎えにヨシュアを向かわせようということになったのです」


「誰が一目惚れだと言ったんだ。気になったと言っただけだろう」


「アゲット殿はそのように言って探させていますよ」



 ジェイドは深く息を吐く。



「まあ、お后にするしないどちらにしても、竜王国の国民が奴隷商人に誘拐されて連れて行かれたのですから、助けてあげなければ。

 陛下に確認を取るまでは本人かも分からないから、不用意な発言はしないように」



 後半はヨシュアに向かって忠告する。



「へいへい」



 それ絶対に人違いだと思う。と心の中で思いつつもヨシュアは素直に頷いた。



 話が一段落すると、ジェイドは立ち上がり瑠璃を抱き上げた。



「休む」



 そう一言だけ言い残し、瑠璃を連れ執務室を出る。

 向かった先はジェイドの自室。そこは瑠璃も入ったことは無い場所だった。



 歴代竜王が使用する私室だけあり、絢爛豪華な部屋に瑠璃は興味津々で辺りを見回す。


 それとは一転して続き間の先の寝室は暗めの色でまとめられ落ち着いた雰囲気だったが、こちらの方がむしろジェイドには合っているように思えた。



 ジェイドは瑠璃をベッドの上に乗せると、自らの服を脱ぎ始めた。

 瑠璃はぎょっとし慌てて後ろを向く。


 ジェイドにとっては瑠璃は会話可能なただの猫にしか思っていないので、目の前で着替える事に抵抗がないのかもしれないが、瑠璃には非常に心臓に悪い。


 シャツにズボンといった簡素な部屋着に着替えたジェイドは再び瑠璃を抱き上げると、そのままベッドの上に上がり横になる。



『へっ、えっ、ジェイド様?』


「最近仕事が片づかなくて疲れているんだ。

 瑠璃は柔らかいな、触っていると癒される」



 ともすればセクハラ発言だが、ジェイドにとって瑠璃は猫。

 それでも一応の抗議はしてみる。



『私一応年頃の乙女なんですけど……』


「猫だから問題ない」



 これで人間でしたと言ったらジェイドはどうするのだろうか。

 何やら言い出しづらくなる理由が増えたような気がする。


 余程疲れていたのか、時を経たず規則的な寝息が聞こえ、ジェイドの顔を覗き見ると目蓋を閉じ眠りに就いている。

 その間もしっかりと瑠璃を捕まえているので、身動きが取れない。



 仕方なく抜け出す事を諦め、隣で眠りに就いたジェイドの作り物のように美しい顔を見ながら瑠璃は思う。



(ジェイド様って好きな人いたんだ………)



 いや、ジェイドもいい大人なのだから、好きな人がいても、お后の一人や二人いてもおかしくはない。

 暇があれば瑠璃の元に足を運んでいたため、ジェイドに女性の影を感じる事がなかっただけで、竜王ともなれば引く手あまたなはずだ。


 その事に今更気付いた。



 僅かに感じる胸の痛みに気付かないふりをして、瑠璃もジェイドの隣で眠りに就いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ