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さらなる問題


 そんなこんなで数日経ち、ようやくコランダムも落ち着いてきたというので、さあ帰ろうという時にその報告は入ってきた。



「陛下!」



 ノックもなく慌ただしく入ってきたフィン。

 冷静沈着ないつものフィンらしくないその行動に、ジェイドも目を見張る。



「どうした、フィン?」


「今、皇配殿下より知らせが。第一皇子も皇帝陛下と同じと思われる病に倒れたようです」


「なんだと!」



 帰る準備を進めていた瑠璃も、ぎょっとして手を止める。



「間違いないのか?」


「症状がまるっきり皇帝陛下と同じだと医師が診断したようです。それで、念のために竜の薬をもらえないかと皇配殿下が頼んできています。皇帝陛下の時は時間が経っていましたが、初期ならば竜の薬も効くのではないかと」


「なるほど、確かにその可能性もあるな。薬は余分に持っているから問題ない。すぐに届けてくれ」



 そう言うと、ジェイドは空間から赤い液体の入った小瓶を取り出してフィンに渡した。

 それを恭しく受け取ったフィンは、部屋を出ていった。

 重苦しい空気が流れた部屋で、瑠璃は疑問を口にする。



「同じ病って、これうつる病気なんですか?」



 瑠璃が心配することはそれだった。もしもそうだとしたら、自分もジェイドも同じ病にかかる可能性があるのではないか。

 しかし、それを否定したのはリン。



『前にも言ったけど、これは光毒虫の体液が体内に入ることで発症する病気よ。だから、うつるとしたら、病人の汚染された血といった体液を同じように取り込まないことにはうつらないわ。ルリや王は彼女と話をしただけでしょう? それでうつることは絶対にないわ』



 それを聞いてほっとしたが、完全に安心できたわけではない。



「なら、その虫が他にもいるってことは?」


『そもそもだけど、光毒虫ってのはこの地域にはいないはずなのよねぇ。だからどうして皇帝がこの病気にかかったのか、それが分からないのよ』



 うーんと、リンにもそれは分からないようだ。

 そんな中でジェイドが口を開く。



「たとえばだが、アデュラリア自体が、故意にその虫の体液、もしくは毒された者の体液を混入された可能性もあるということだろうか?」



 瑠璃ははっとしてジェイドを見る。



『どちらかと言えば、そっちの可能性の方が高いわね。光毒虫はここにいるはずがない虫だもの。故意だとしたら説明は付くわ』



 リンの言葉に、ジェイドは表情を険しくする。



「ギベオンが言っていたな。死神がいるとしたら偽物だと。その偽物が死神に罪をなすりつけようとしているとも考えられる」


「ジェイド様……。それじゃあ、これからどうするんですか?」



 瑠璃の顔は不安でいっぱいになっている。

 そんな瑠璃をジェイドは腕の中に閉じ込め、不安が落ち着くように背中をトントンと叩く。



「どうもしない。このことをコランダムに伝えて、私達は帰るだけだ」


「でも……」


「アデュラリアと同じ病だとして、私達には何もできない。竜の薬が効かないのなら。それよりも、ここに居続けることで、瑠璃や他の竜族が害される恐れがある方が問題だ。アデュラリアの死が他人によるものだとして、その理由が分からない以上はな」


『王の意見に賛成ね』


『我もだ。怪我からは守れるが、毒となると我の力では難しい。早く竜王国へ帰るべきだと思う』



 リンもコタロウも一番に案じているのは瑠璃のことだ。

 そして、ジェイドも何より瑠璃を大切にしていると同時に、王としてこれ以上帝国に関わることをよしとしていない。

 王という立場がそれを許さない。


 瑠璃は割り切らなければならないことを、酷く悔しく感じながら頷くしかなかった。


 結局、第一皇子のロイに竜の薬は効かなかった。

 その時点で、瑠璃達がこの国ですべきことは何もなくなったのだ。

 誰もが不完全燃焼のまま、帰る選択をしなければならなかった。



 事態が急変したのは、まさに竜王国へ帰ろうとしていた時。

 先に竜王国へ帰ったはずのクォーツが戻ってきたのだ。

 共にヤダカインの女王を連れて。







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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんばんは、クレハ様。  白猫帝国編、楽しく読ませていただいています。  皇帝アデュラリアがなくなり、瑠璃達が竜王国に帰ろうとした矢先に第一皇子ロイがアデュラリアと同じ病状を発症。  …
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