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珊瑚という少女



 異世界からやって来た珊瑚は、ジェイドの提案で城で働くこととなった。


 正直、自ら愛し子と名乗り出てきたその行動を問題だと反対する側近も中にはいたのだ。

 この世界の多くの国にとって愛し子というものはとても特別な存在だから。


 しかし、珊瑚が異世界から来たということと、そのせいで夢見がちになっているだけだろうということで、しばらく様子を見るに落ち着いた。

 そして、万が一問題を起こせば、あさひの時のようにアイドクレーズに送るらしい。


 ただ、あさひと違い、珊瑚は高位精霊と契約しているので、できれば最高位精霊であるリンの監視下に置いておきたいようだ。

 たとえ珊瑚の願いで精霊が問題行動を起こしたとしても、珊瑚の精霊より上位にあるリンならば止めることができるからである。



 それもあって、瑠璃は珊瑚へ挨拶もかねて顔見知りとなっておいた方が良いかと考えていた。

 異世界へと突然やって来てしまったその心細さは分かるつもりでいるからだ。

 同じ日本から来た者同士なら、珊瑚もいざという時に相談もしやすいかと思ったのもあった。



 だが、ジェイドから待ったがかかる。

 珊瑚は仕事こそ問題なく行っているが、言葉の端々に愛し子への執着や嫉妬の気持ちが表れていると、同僚である侍女から報告がジェイドのところまで挙がっていたのだ。


 愛し子の待遇や生活レベル、かけられるお金や許されるわがままなど、色々と聞き回っているらしい。

 そこには、愛し子への心残りが垣間見えるという。

 まあ、自分が特別と思いたいのは仕方がないことなのかもしれない。 

 そうすることで、異世界に来てしまったという理不尽な現実から逃げようとしているのかも。

 まるで物語の主人公のように、自分に何かしらの理由や使命があってここに来たのだと、そう思いたい気持ちを責めることなど誰ができよう。


 しかし、現実は非情である。

 瑠璃も珊瑚も、なんの意味もなく、ただ運が悪くこの世界に来てしまった。

 瑠璃は幸運にも、ここに来られて良かったと今でこそ思えるようになったが、話によると珊瑚はこの世界に来てまだ数カ月しか経っていないという。

 ここの生活を受け入れるようになるには、まだまだ時間が必要だと思った。



 そんなわけで、愛し子に対する興味がなくなるまでは、珊瑚を刺激しないように会うのは避けるようにとジェイドだけでなく、ユークレースやクラウスにも言われてしまった。

 そのため、珊瑚が仕事を行うのは、瑠璃の活動範囲である五区より下の区域となったようだ。


 そうすれば、めったなことでは瑠璃と顔を合わせることはないからと。

 そうすると共に、愛し子との立場の差を分からせるという意味合いもあるらしい。

 城の上の地区へ行けるのは地位の高い特別な者だけなのだと。


 実際、一区で暮らしている瑠璃やジェイドは自分が特別な存在などと微塵も思っていないが、その特別な立場に憧れる珊瑚には必要な措置なのだそう。

 自分はそんなたいそうな人間ではないのだが、珊瑚自身のためでもあるというなら、瑠璃は大人しく従うしかない。




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