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改ミライ  作者: 音哉
11/12

エピローグ

 ついに……ようやく完成しました。


 気が抜けてしまい、足元がおぼつかない私は、壁に背中をぶつけてしまった。


 引き裂かれたあの子の声を聞いてから、もう……何日、何年とろくに寝ていなかったのでしょうか。気が付けば、目もよく見えなくなっているようです。



 私は、埃をかぶっていた茶色の背広を拾い上げ、袖に手を通しました。



 私は、あの子達を救わなければならない。


 あの子達は、いつまでも仲良く、平和な生活を過ごさせてあげなければいけない。

 それが私の使命。



 私は階段を上がり、地階から地上へと出ました。



 確かに、あの子達は私を馬鹿にしていたかもしれない。


 しかし、あの子達は友達のように振舞いながら、どこかで私を信頼し、暖かい心で接してくれる。


 同じ先生でも、まるで違いました。


 神の領域へ踏み込む研究など、きっと誰かが悪事に利用する。


 あそこを辞めて教師になり、本当に……、幸せな毎日でした。



 神の領域、もし……私が神になれたなら……


 私は、あの子達を見守る神になりたい。



 ほら! 君達、あれを使ってください。あそこに、君達の運命を変える物が…………







「こんな所に遺体だ」


 白いヘルメットを被った作業服姿の男は、かがみ込んで白骨死体を眺めた。


「大戦中……じゃなさそうだが、死後何年も経っているな」


 男は目を閉じ、手を合わせた。


 隣で立って手を合わせていた別の男は、屈んだ男に言う。


「どちらにしても、手厚く葬らないとな。しかし、大戦後にも普段から背広(スーツ)を着ていたとは珍しい」


「N A K A M U R A . S ……か。中村(なかむら)茂雄(しげお)? 中村(なかむら)(しげる)?」


「こらこら。やめておけ」


「だって、何か手がかりになるかもしれないだろ?」


 男は不満そうに、背広(スーツ)の内側に刻まれた名前を指差す。


「そういう事は、専門機関に任せておけ。勝手な事をすると、警察長官に怒られるぞ」


「それもそうだな。ところでそう言えば……警察長官って最近結婚したんだよな?」


「ああ。相手は、小柄だけど、白い肌の可愛い人だったな」


カタ……カタ……


「ほんと、羨まし……ん?」


 屈んでいた男は、不思議そうに背広(スーツ)を着たしゃれこうべを覗き込んだ。


「どうかしたか?」


「いや……いま、この遺体が……笑った気がしたからさ……」


「昼間っから何言ってんだ? さあ、人口も増えて、街を広げる俺達の仕事も忙しいんだ。サボっている暇はないぞ」


「そうだな。お~い、遺体回収班を呼んでくれ~ぇ!」


 二人の作業員は、遠くにいた別の作業員に言った。




カタ……カタカタ……


 みなさん……本当に良かった……



〈了〉



本来はここで完結ですが、特別に次話として、おまけ編が掲載されます。

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