確定と不穏
憧れのライトノベル作家の方から、年賀状を貰って上機嫌な正月でした。
まだ、小説は進んでないです。勝手に作った魔術語が登場。
「森が、消えてる……」
ルミネシア王国の遥か南には、広大な砂だけの大地が広がっている。
そこはかつて、緑溢れる豊かな大地であったはずであるが、
「どうして……」
何もない。その面影すら何処にもない。ただ広いだけの大地には乾いた風が吹き、砂が流れるように運ばれて行く。
その様に驚愕した少女は、砂の上に膝をつくとそれを掬う。さらさらと、指と指の間から落ちていく様は、物悲しさを感じるが、まるで嘲笑っているようにも感じる。
緋色の髪の少女は、つい数刻前に永い眠りから目覚めたばかりの竜の娘・ツバキだった。
一体どうしたと言うのか。何故、何故跡形もなく緑が無くて、乾いた大地があるだけなのか。
自分が眠っていた間に、大地から潤いを奪ってしまうほどの何かが起こってしまったのか?
それとも、奴等が、無情にも奴等が全てを無に帰したとでも言うのか。いや、奴等にそんな力はない。
この大地に溢れていた豊かな緑の中心には、あの緋竜が驚くほどに成長した巨大な樹木『センチュリーオーヴァ』があったはずだ。
あれは、特別な樹木だ。樹齢は千年に届くほどで、奴等が作り出すような『火』では燃えない。
自己再生能力が優れていて、樹齢を迎えるか、或いはルミネスのように『神性』に達した生物による行為以外の『力』に、センチュリーオーヴァは屈しない。
大地に力強く根を張り、数え切れないほど葉を繁らせ、幹を太く固く伸ばして、我こそが大地の王だと言わんばかりの、生命エネルギーを持っているのだ。
生命エネルギー、即ちこの世界で『ルーン』と呼ばれている何より尊いとされているモノだ。
魔術師が扱っている魔力と似ているが、ルーンは生まれながらに等しく持っているが、魔力はピンからキリまで色々ある。
「センチュリーオーヴァが、何故・・・?」
ルーンは、センチュリーオーヴァのような半神性生命体になってくると、性質も状態も変わってくる。
ツバキ達の間でそれは有名で、『たった一本で広大な森一つ分に匹敵する生命エネルギー』を持っているからだ。
しかし、全て消えてしまっている。
ツバキは驚愕しながらも、ゆっくりと辺りを見渡してから両手を大地に付くと、小さく言葉を呟く。
現状は、そこにずっといるモノに聞くのが一番早い。何よりも、より正確に、より確実に、確かめることができる。
『ai-na remi-ei-shia』
短い言葉に、ツバキを中心に緩やかに風が発生して彼女の髪を上空に向かって靡かせる。ヒュウッ──と、発生した風の音だけが響いている。
すると、大地に付かれた両手を始めとして、赤銀の線がピーッと光を発しながら、大きな魔方陣が描かれ始めた。
円形で、彼女を中心に直径約30メートルの大きさのそれは、少し白っぽい砂だらけの大地でよく目立っている。
『ai-na , Irisu sele aisea Tu-baki』
それに応えるように、魔方陣が輝きを増して行った。
* * * * *
魔方陣が消え去った後の乾いた大地に立ち上がると、ツバキは遥か北にある王国を見据えるように、その方角を見ている。
その緋色の双眸には、落胆と──憎悪に似た哀しみの光が、ゆらゆらと滲み出ている。まるで、愛しい存在に、裏切られたかのようなもので。
・・・自ら、確かめるしかないのか。
『彼ら』が教えてくれたのは、センチュリーオーヴァを始めとする森の行方と、この場所が砂だけになったことくらいだった。それ以外は、分からないと言われた。
「・・・ルミネス、貴女が言っていたのはこのことだったのか?」
ツバキの問い掛けに、答える者は誰もいない。乾いた風が、肌を撫でていくだけだ。
少し強い風が吹いた。ツバキは目を閉じて遣り過ごし、そしてゆっくりと目を開いた。
すると、ツバキの身体がシューンッと変化した──人の背丈の倍はあるだろう緋色の鳥へと。
ツバキは大きく翼を広げると、ばさりと羽ばたいて上空に飛び上がり北へと飛んで行った。
勝手に作った魔術語は、ツバキだけに使うつもりです。
一応、古代ルミネシア語って設定ですか。