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椿の華  作者: 森音 奏
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プロローグ

初めての投稿です。

誤字脱字は、御手柔らかに指導してもらえると嬉しいです。





──ピチョンッ。


静かな洞窟の中、地下から沸き上がる湧水で出来た泉に、水滴が落ちた。洞窟の至るところから突き出した、色も形も大きさも異なった水晶の先から、また一滴、雫が落ちる。


そんな洞窟の赤い泉の、中央にはまるで花のような形状うの深紅の水晶があった。まるで精巧なガラス細工のようなそれは、淡い光を放っている。泉が赤く彩られていたのは、どうやらこの深紅の水晶が映っていたかららしい。


じっくりと水晶の花を見ていると、花の真ん中──花弁の根元──から小さな音が聞こえてきた。それは、心臓が脈打つ早さに似たリズムで──。何だか、心地好くなる。何だろうかと考えようとしていると、ふいに、泉におかしな波紋が出来た。


 別の何かによる波紋のようで、泉の端から徐々に大きくなりながら広がり、泉を浸食する。赤いインクが、透明な水を浸食するように、ゆっくりゆっくりと・・・。すると、どうしたことだろう。洞窟の至るところから突き出した水晶から、


──チリィ……ィイ…ン………。


 そんな鈴が割れるような高い音がして、その残響は洞窟の中の水晶と共鳴して、辺りに響いていく。それは、まるで崇めているものの登場を、讚美しているような歌にも聞こえた。

 ふと、泉がある大空洞に繋がる唯一の巨大な穴から、足音と共に近付いてくる気配があった。静まり返る大空洞の中に響く音は、徐々に大きくなり──それは現れた。


 輝く緋色の鱗で包まれた巨大な身体、金色の瞳、鋭い爪、大きな両翼。恐ろしいながらも、神々しさを感じさせるその生き物は──(ドラゴン)。緋色の竜は進む先には、例の緋色の水晶がある泉で、止まることなく──泉の水の上を歩き、竜は水晶へ向かう。


 乱れない水面は、ピタ、ピタと音をたてるだけで、波紋も起こさない。浮いているというわけではなさそううだが、何とも不思議な光景だった。すると、その竜は赤い水晶の前でピタリと止まった。その金色の瞳には、水晶が写っている。いや、水晶自体をと言うよりは、その中を見つめているような視線だった。

 そして、


『──私の愛しき娘』


 竜は確かにそう言った。


 すると、赤い水晶が鈴が割れるような音を立てた。声に反応しているようだった。しばらく、その音に浸っているとピシリッと歪な音を立て、水晶に亀裂が入った。パシッ、ピシィッと、亀裂はどんどん四方八方に入っていき、遂には茎の辺りにまで到達した。

 竜はそんな水晶に顔を近付けていき、そっと口先で触れ──


 パリィ…ィィ……ンッ。


 悲鳴をあげるように音を立てて、赤い水晶がくだけちり、真っ赤な花が姿を現した。そして、閉じていた花の蕾が言葉に誘われるようにゆっくりと開いて行った。緋色の竜が見つめていた花の深遠──花弁に包まれて眠っている緋色の少女の姿が現れた。


 少女は、異様なほど白い肌に何も纏っておらず、さらさらな緋色の長髪に包まれていた。その緋色は、彼女がいる花と、それを包んでいた水晶と──竜の鱗と、同じ色をしている。


『―――――』


 何と言ったのかは分からないが、竜は少女に話しかける。否、声で言うというよりは、頭の中に直接話しかけているような──そう、テレパシーというのが正しいかもしれない。


「・・・・──」


 しばらくして、少女が僅かに反応を見せたようで、小さく声が上がった。それを合図に少女のまつ毛がフルフルと震え、瞼がゆっくりと開いて、瞳が露になった。その瞳は、例えるならば宝石の、ラピスラズリと呼ばれるもののような色だった。


 彼女は何度か瞬きすると、ゆるゆるとその身体を起こして、視界に写った竜を見上げた。惜し気もなく晒された起伏な身体は、邪な感情を誘うような艶やかなものではなく、寧ろ何人も寄せ付けない清らかさがあった。


「──時の訪れ?」


 少し高めな声で問い掛ければ、竜は否定するように首を振った。


「では、どうして」


 眠気でとろとろしていた少女の瞳は、その動作を見た途端に、すっと細められた。竜は、そんな彼女の脳内に静かに話しかける。すると、少女が目を見開いて竜を凝視して、そうかというように、視線を下げた。


「・・・貴方──ルミネスの意思ならば」


 少女はすくっと立ち上がり、そう言いながら竜に──ルミネスに向かって、頭を下げた。


 ──ルミネス。それは、この世界の守護神。人間に『力を』与えし、最も尊き竜の名前だった。





今回は、プロローグ的な話。


次回は、別の場所からスタートです。

キャラクターも増えます。




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