1.ガーランド王国
「うぎゃー。おぎゃあ。ぎゃあ」
「サラヴィア様?」
エマは夕暮れの時間と重なって、火の海になっている国内を背景に、悲痛な面持ちで王妃の私室に呼ばれていた。
「エマ。アナタに酷なことをお願いしているのは、わかっているわ
でも私は、ガーランド王国に嫁いだ身。
ここから逃げることは、許されないわ。私も姉との繋がりを持とうと、気を急ぎすぎたのかも知れません。
私は王の代わりに、最期を務めなければなりません」
サラヴィアが嫁いだ国は、諸外国とほとんど交流をしてこなかった国だ。
この国は、閉鎖的でもあるため諸外国から、偏見と憎悪の目で見られることが多い。
開国するにも、反対派が多く。サラヴィアとシルヴィアの交流は、お互い内政状況から、難航していた。
サラヴィアとリリアベルの父ヴァレリオの出会いは、ヴァレリオが偶然、サラヴィアの兄イーサンの結婚式で呼ばれてきたからだった。
その頃には、シルヴィアは、帝国に嫁いで皇太子であるジェラールを出産していた。
イーサンは、美しい景色があると言われているヴァレリオの国ガーランド王国へ留学したことがあった。
祖国アイゼンフィールドは、偏見がない。
当時のアイゼンフィールドの王が、ガーランド王国へ留学の打診をしたのが、交流の始まりだ。
王太子同士が、同年齢ってこともあり、交流がスムーズに進んだ。
ヴァレリオは明るく、誰に対しても態度を変えないサラヴィアの中身に惚れたのだった。
見た目も、ストレートの金髪に紫の瞳。
申し分ないくらいの可愛さだった。
そこからヴァレリオの行動は、早かった。
サラヴィアがアイゼンフィールド王国の第三王女だと知ると、瞬く間に婚約を結び結婚をした。
アイゼンフィールド王国とガーランド王国は、偶然同じ年齢である王太子の交流によるものだったため、国内でも混乱は起きなかった。
悲劇は、サラヴィアが結婚して3年。リリアベルが生まれた一ヶ月後のことだった。
シルヴィアがいる帝国との交流を持ちたいと、サラヴィアがイーサンに願ったことでガーランド国内で内乱が起きた。
ヴァレリオは隠れていた刺客に毒のついた矢で刺され、亡くなった。
刺客は町に火をあげたのと、同じ要領で王城にも火を放った。
サラヴィアは火の手が上がった王城で、エマとリリアベルを脱出したのを見送りそのまま亡くなった。
ヴァレリオがイーサンに、応援をお願いするよう手紙を出したが、悲しいことにイーサンが受け取る前に国は滅亡してしまった。