ネチケットとは何か
私がインターネットを始めた頃、よく目にした『インターネットを利用するにあたっての注意』みたいなものがありました。
『インターネットは現実世界と同じ。相手の気持ちを考えて発言しましょう』みたいなやつ。
『ネチケットを大切にしましょう』みたいなことですよね。
某匿名巨大掲示板ですら、これをわきまえて丁寧な受け答えをされてらっしゃる方を見るとほっこりします。
自分は他人にとって誰だかわからない名無しさんなのに、こんなに真面目で、こんなに丁寧。
リアルでも素敵なひとなんだろうなーと思ってしまいます。
リアルとインターネットは同じ。不必要に他人を不快な目に遭わせないようにしましょう。
でも、違いももちろんありますよね?
リアルではわずらわしい人間関係も、ネットではしないことも出来る。
リアルでは近所に変な人が住んでたとしても、ご近所さんだからその人を見ないわけには行かない。会ったら挨拶もしないといけない。
その変な人が夜な夜な奇声を近所中に発することがあっても、警察は民事不介入だから、自分達でなんとかしないといけない。
でも、ネットなら簡単。
ブロックやミュートを使えば、ほらスッキリ。
あるいは職場に嫌いな人がいる。
その人がしつこく話しかけて来て嫌だとか、不快なことを言われて困ってるとか、あるいはストーカー化されちゃって実害があるとか。
でも警察は事が起こらないと何もしてくれない。自分でなんとかするしかない。
でも、ネットなら簡単。
ブロックやミュートを使えば、ほらスッキリ。
いいと思います。
しかしこれ、相手が実害のない人だったとしても、単に噂で嫌なヤツだと聞いただけだったとしても、ただの勘違いだったとしても、ブロックやミュートを使えてしまうんですよね。
自分の好きじゃない考え方をする人だからと、ブロックミュートしてしまうこともあるようです。
これを現実世界でたとえるとどんな感じか。
ヒゲダンが好きな女の子がいたとします。同じクラスにヒゲダンを嫌いな男の子がいたとします。
その人がヒゲダンを悪く言っているのを女の子がたまたま傍で聞いてしまい、気分を悪くしました。
女の子は他にKing Gnuも好きでした。King Gnuは男の子のほうも好きなバンドだと思っていました。
女の子がKing Gnuのファンだと知って、男の子は彼女と会話がしたくて、話しかけました。
女の子は耳栓をしており、男の子を無視しました。
これが男の子が普段からしつこくヒゲダンの悪口を女の子に言ってるのなら、話はわかります。
でもそんなわけでもないのに一方的に遮断されてたら、男の子は『なんで??!』と傷ついてしまいます。
まぁ……わかってます。
現実世界にもそんなことはよくあります。
話は変わりますが、大好きなユーチューバーさんが某スマホのソシャゲにハマっていると聞いて、『会えるかな?』と期待して同じゲームをやってみたことがあります。
FPSというジャンルの、チーム同士で銃撃戦をするみたいなゲームでした。
何もわからず飛び込みました。友達などいないので、チームメンバーは初めましてさんばかり。
まずは何か挨拶交換でもあるのかな? と思ってたら、4人のメンバーのうち知り合いらしき2人ほどが延々と会話をしているだけで、私ともう1人の方はまったくの無言でヘリから地上へとパラシュートで降りて行きました。
私は普段ゲームをしないので、お荷物となりました。
中学生かな?と思える男の子の声が、私に怒鳴りました。最初に会話をしていた2人のうちの1人です。
「なんでそんなとこ着地すんだ!? ガイジか!?」
私は謝るために声を出すのも恐ろしく、黙っていました。
男の子の声が激しく私をなじります。
「A! Aっ!! てめー頭おかしいのか!? どこ向いて行ってんだ!? ガイジ! ガイジか、コイツ!」
私はあっという間に敵チームに射殺されると、黙ってゲームをやめました。
私が『ごめんなさい、初心者です』と言わなかったのが悪いのはもちろんですが、あの男の子はリアルでもああいう言い方をしたのでしょうか?
いかにも初心者な、へっぴり腰で銃を携えたもやしみたいな女を見たら、それだけで「あー」と納得してくれたと思います。
ネットは顔が見えないから相手がどう思ってそんなことをしているかがわかりません。
だから誤解されないよう言葉を尽くす必要があるし、
悪いほうではなく、自分にも相手にも、ストレスの少ない『想像力』を働かせる必要があるように思います。
ネットだから、リアルよりもはっきりと、リアルでは面と向かって言えないキツイことも言えてしまう。
ネットだから、自分の気に食わない人は、問答無用で会話をしない。
ネットにはストレスがなくていいと思ってらっしゃるのでしょうか?
自分さえノンストレスなら、他人をどれだけストレスフルにしてもいいという考えで、『だってそれがネットだから』と思ってらっしゃるのでしょうか?
それが『ネチケット』だと本気で思ってらっしゃるのでしょうか?
もちろん『ネットにあまり求めるな』と言われればそれまでです。
大体、ヒゲダンの悪口を言ってた男子はそんなことヒゲダンファンに聞かれないように自分の胸の中だけで言ってればよかったのですし、
ソシャゲで罵倒された私は『初心者です』と断りを入れればよかったわけですが、
それでもどうも『ネチケット』という言葉が軽んじられているように感じてしまう今日この頃です。
ヒゲダンファンの女の子は耳栓をする前に男の子と口喧嘩でもして、それから「あんたとは話せん!」と宣言すればよかったのではないでしょうか?
ソシャゲの男の子は自分のムカつきばかりを口にするよりも、まずは初めましての人が怖がらないよう、発言しやすいようにしてくれてもよかったのではないでしょうか?
もちろんどれだけ言葉を尽くしても、リアル同様わかり合えないことはあるでしょう。
でも、会話をしたこともない相手を無視するとか、初めて会った相手を罵倒するとか、その方達はリアルでもそういうことをされてらっしゃるのでしょうか?
これは攻撃のつもりではありません。問題提起のつもりです。
ブロックを気軽に、やりとりをしたことがない人に対してまで使うのは、
『悪』ではありませんが、静かなる『いじめ』だと、私は思います。
そんなことをする人がもしも『いじめダメ!』とか仰っているなら私は首をひねります。
お互いに気持ちのいい解決方法を私は取りたいです。
今のままでは明らかに、お互いに気持ちが悪いはずです。
ネットの世界にもリアルの『エチケット』同様のものがもしもあるのなら、私はそれを重視したいと思っています。