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転生ヒロイン、シスコンになる ~お姉様を悪役令嬢なんかにさせません!~  作者: 浅海 景


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45 作戦会議と来訪者

アネットがマノンから聞いた内容を伝え終わると、空気が少し重くなったように感じた。

「マノン様のおっしゃることを鵜呑みにするわけにはいかないのですが……」

語尾が曖昧になってしまったのは、以前階段でぶつかった時の違和感とその後会いに来た時に見た一瞬の眼差しが心に残っているからだ。


「カディオ伯爵令嬢か。あまり身体が丈夫でない令嬢だったと記憶している。会う機会など早々なかったように思うが、心当たりはあるかな?」

セルジュの問いかけにリシャールは渋面で答える。

「ないな。顔と名前が一致したのはあの時保健室に連れて行った時だ。その後礼をしたいと何度か呼び止められたが、これ以上は迷惑だと断ってからは特に接点はない」


「彼女が犯人であれば階段での一件も故意ということになりますわね」

クロエが淡々と指摘するが、僅かに眉をひそめているため不快なのだと分かる。

自分も怪我をする可能性があってもなおアネットを傷付けようとしたと考えると、並々ならぬ執念を感じて恐ろしい。思い詰めた人間は何をするのか分からないから怖いのだ。


「……このような事になるのなら、はっきり断るのではなかった」

普段からの女性との関わり方を見ていると、明らかに拒絶と分かる断り方をしたのだろうなと想像できる。それでも傷つける意図はなかったのだろうし、落ち込んでしまったリシャールにアネットは声を掛けた。


「はっきりと告げるほうが未練を断ち切りやすいこともありますし、やんわり断る方が傷つかずに済んだと思う方もいるかもしれません。どちらが正しいかは相手次第ですわね。もしリシャール様がそのことで悔やむのであれば、次回改善すればいいだけの話ですわ」

「次回……」


呆然とするリシャールに対してセルジュは苦笑しながら言った。

「婚約者不在となれば、想いを伝えられる場面は一度や二度ではないだろうね。アネット嬢の助言を参考にするといい」

少し場が緩んだものの、すぐにこれからの対応についての話に戻った。


「クラリス嬢の動向に気を付けるのはもちろんだが、現時点では証拠がないな。相手の出方を待つしかないのは少々歯がゆいところだね」

「殿下、アネットを囮にするような策は認めませんわ。アネットもいいわね?」

牽制するようにクロエに言われれば、セルジュもアネットも無言で頷く。しっかり釘を差すあたり、気質が似ている二人のことをクロエはよく理解している。


「危険な目に遭わせずに証拠をつかめれば最善だが、俺がその令嬢の相手をすれば少なくともアネット嬢への嫌がらせは止む―」

「却下です、リシャール様」

遮るように強い口調で言ったアネットに全員が驚いたような表情を浮かべた。


「アネット嬢はリシャールがクラリス嬢に近づくのが嫌なのかな?」

セルジュの言葉にアネットは力強く頷いた。

「あの方は精神的に少々危うい感じがするので、リシャール様の身が危険ですわ。慕っている相手の好意に対しては敏感なものです。その気がないのに近づいたと知ったら逆効果ではないでしょうか」


「リシャール様の身を案じてのことなのね。…それが他のご令嬢だったらアネット自身は不快ではないの?」

首を僅かに傾げたクロエは普段よりも少し幼く見えて大変可愛らしい。そちらに気を取られたアネットはクロエの問いかけの意味を深く考えることはなかった。

「私が、ですか?それはリシャール様の自由ですので特には何も思いませんよ?」

その言葉にリシャールは肩を落とし、セルジュはクロエに、ダメージを与えるような質問をしてはいけないと窘めている。


質問の意味を考えようとしたアネットの前にセルジュの従者の一人が現れ、フェルナン・シアマ生徒会長の訪れを告げたのだった。



「ご歓談中申し訳ございません、殿下」

慇懃な態度で現れたフェルナンは、にこやかな笑みを浮かべて挨拶をした。


「シアマ会長、堅苦しい挨拶は不要だよ。わざわざここに来るということは、緊急または大切な用件なのだろう?」

王族専用スペースは気軽に足を踏み入れる場所ではない。それ以外の用件ならば教室に出向くなり、従者経由で場を設けるなりするのが一般的だ。


「その前に質問をお許しください。アネット嬢、君はクラリス・カディオ伯爵令嬢を知っているかい?」

予期せぬ問いかけにアネットは思わず息を呑んだ。

「貴方は何を知っているのですか?」

すっと冷やかな目に変わったリシャールが低い声で問いかける。その視線に動じることもなく、フェルナンは優雅な笑みを浮かべて告げた。


「アネット嬢の憂いに関する情報とその解決方法でしょうか。殿下方のお手伝いをさせていただければ幸甚です」

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