第二十二話
何かに、呼ばれた気がした。
温かい温もりに、意識が浮上する。
ゆっくりと瞼を上げると、目の前は薄暗かった。
埃っぽく、湿ったような嫌な香りが鼻をつく。
僕は、どうしたんだっけ…。
指先を動かすと、土の感触が触れた。
その瞬間すべてを思い出し、ここが蔵の中だと分かった。僕は、慌てて顔を上げる。
途端に、頭に激痛が走り、眩暈がした。
頭を動かしたことで、生ぬるい液体が頬を伝う。目線を動かすと、自分の着物の肩口が赤く染まり、それが血だということがわかった。
腕や足は、麻縄で縛られていた。声を出そうとしたが、口に咥えさせられた布が邪魔をする。
温もりを感じて隣を見ると、信さんも同じ様に縛られて座らされていた。僕の肩に、同じく血の滲んだ頭がもたれかかっており、意識はまだ戻っていない様だ。
彼の近くに、珠代ちゃんが座っていた。
俯きながら、その細い肩は震えている。
「ううぅっ!」
僕が声を出すと、彼女は弾かれたように顔を上げた。
その瞳からは、涙が溢れていた。どうにか彼女を安心させようと笑って頷くと、彼女もまた頷いた。
ごめんなさい。
そう瞳が訴えている様に見えて、僕は首を振った。
僕は、ぐるりと蔵の中を見渡す。
蔵の中は、窓はなく、天井近くの空気孔から外の光が僅かに差し込むだけだった。扉は先程の戸口しかないようで、そこはもう閉められていた。
ここから、どうやって逃げようか。
そう思案していると、突然戸口が音を立てる。
ガタガタと戸が揺れた後、それは勢いよく開かれた。
途端に外の光が差し込む。逆光の中、一人の姿が見えた。
身構えると、その人はこちらへゆっくりと近づいてきた。小柄な着物姿が、薄暗闇に浮かび上がる。
彼女は言った。
「だから、忠告をしたのに………。」
その瞳は、悲しそうに揺らいでいた。




