第十八話
目を覚ますと、白い天井が見えた。
どうやら僕は寝かされていたらしい。起きあがろうとしたが、頭に痛みが走り、小さく呻いた。
すると、近くにいた白い服装をした女性が、声をあげた。
「あっ!目が覚めましたか?ここは病院です。すぐに先生を呼びますね。」
そう優しく言われた瞬間、自分が雷が落ちて倒れた木の下敷きになったことを思い出した。
「じいちゃん!じいちゃんは!?」
僕が叫ぶと、女性は顔を顰めた。
「貴方といたおじいさんはー…。」
亡くなりました。
僕は、何を言われたのか理解出来なかった。
どうしても、理解したくなかった。
「じいちゃんに会わせて!じいちゃん!」
取り乱す僕のもとへ、白衣を来た男性や女性が駆けつける。
ベッドから無理矢理出ようとしていた僕を、その大人達は押さえつけながら、落ち着くように諭した。
そして、僕が落ち着き始めた頃、ゆっくりと事情を説明された。
倒木に下敷きになっている所を発見されたことー…。
じいちゃんは、僕を庇うようにして木に潰されていたことー…。
おかげで、僕には打ち付けた頭以外、ほとんど怪我がないことー…。
僕は発熱と怪我により、発見されてから五日間も意識が戻らなかったことー…。
その時、病室へ叔母さんが入ってきた。黒い着物を着ており、手に持つ数珠を震えながら握りしめていた。
お医者さん達は、入れ替わりで部屋を出て行った。
叔母さんが、口を開く。
「…もう、父さんの葬儀は終わったわ。」
その目には怒りが込められていた。
「じいちゃんに、会わせて。」
僕がそうお願いすると、叔母さんはこちらに歩み寄り、掌で力一杯僕の頬を叩いた。
「お前が寝ている間に、もう火葬もすんだ!」
僕は叩かれた頬が熱を持ってジンジンと痛むのを、どこか遠くに感じた。叔母さんの目からは、涙が溢れていた。
「お前が!お前なんかがうちに来たせいで、父さんは死んだんだ!お前が死ねばよかったのに!!」
僕は、その通りだと思った。
「どうしましたか!?」
叔母さんの大きな声に、先程の大人達が戻ってきた。
再度、手を挙げようとする叔母さんを見つけると、慌てたように取り押さえた。
「何をしてるんですか!」
「離して!こいつが!こいつが!!」
叔母さんは叫んだ。
こいつがー…。
その言葉を聞いた時、僕の頭の中に、あのおじさんの顔が浮かんだ。
「おじさんが!」
そうだ!あいつがじいちゃんを殺したんだ。
気がつくと僕の口が動いていた。
「おじさんが、じいちゃんを殺したんです!」
「君まで何を言っているんだ。あの木は、雷で…。」
僕は、戸惑う大人達に必死で説明した。
「ちがう!あの場には、あのおじさんもいた!僕を殺そうとしたおじさんが、じいちゃんを殺したんだ!」
「誰のことを言っているんだ?」
「死んでいるおじさんです!あいつが、逃がさないって、僕に言ったんだ!!」
僕の言葉を聞いて、大人達は顔を見合わせる。
叔母さんは、大きな声で笑って言った。
「ほら!見なさいよ!この子供は、頭がおかしいの。もう、ずうっと心を患っているのよ。貴方達が抑えるのは、私じゃなくてこの子供の方でしょ!?」
「違う!僕はおかしくなんかない!本当に、おじさんがじいちゃんを殺したんだ!!」
そう言っておばさんに掴みかかろうとした僕を、今度は大人達が押さえつけた。無理矢理、ベッドへ押し付けられて腕に注射を打たれた。
「鎮静剤だ。少し眠ってもらおう…。」
大人達の声を遠くで聞きながら意識を無くした。




