第十一話
僕達は河川敷に来ていた。
空には大きな夕日が覗いていて、斜陽が水面に反射しキラキラと輝いている。
女性と手分けをして、砂利の上や岩場の隙間、木々の下などを探し回った。
「ここはね、彼と待ち合わせをしたり、よく一緒に散歩をした思い出の場所なの。」
女性は探しながら、嬉しそうに話してくれた。
「そうなんですか!素敵ですね。」
その様子に、何だか僕まで嬉しくなる。
「求婚もね、ここでしてくれたの。こうして、夕焼けをみながら指輪を渡してくれた…。」
そう言って、彼女は夕日に左手を掲げた。その目は、何もついていない薬指を悲しそうに見つめていた。
「大丈夫ですよ!」
僕は、精一杯励まそうと言葉を紡いだ。
「きっと、見つかりますよ!頑張りましょう!」
そうして、また探し始める。今度は、僕は水辺の近くを見て回った。光を反射するものがあれば手に取り、違うと分かればまた探す。何度も何度も繰り返した。
彼女は岩場の近くで、僕を見ていた。
「貴方は、優しいのね。」
そう言って、その目は細められる。
「そんなことないですよ!」
僕は、否定した。
「先生だって、本当は優しい人だと思うんです。」
そう言って、彼女の方へ振り返る。
「先生って、さっきの人?」
「はい!まだ出会ったばかりだけど、身元も分からない僕を雇ってくれたんです。きっと、今は虫の居所が悪かっただけなんですよ…。」
だから、ごめんなさい…と先生の代わりに謝ると、彼女は驚いたようだったけど、静かに首を振った。
「いいのよ。突然のことだったし、ああ言われても仕方がないわ。」
そう言って笑ってくれた彼女も、優しい人なんだろうなぁ…と感じた。笑顔がとても温かい。
「貴方は先生と出会ったばかりなのね。私と彼はね、幼馴染だったのよ。」
僕がいる水辺の近くに彼女も来て、一緒に地面を探しながら、話してくれた。
「家が近くてね。子供の頃からずっと一緒で、兄弟のように育ったの。でも、私は彼がずっと好きだった。だから『結婚しないか』って言ってくれた時は、もう天にも昇る気持ちだったのよ!」
分かる?と彼女はお茶目に笑った。
「貴方は、好きな人ができたことある?」
そう尋ねられ、勢いよく首を振った。
「な!ないです!僕なんて、誰も好きになってくれないし…。」
「あら、そんなことないわよ。私は好きよ。」
「えっ!?」
女性からそんな事を言って貰えたのは初めてのことで心臓がバクバクしてしまった。自分の頬が酷く熱い。
「好きな人がいるって、とても幸せなことよ。」
彼女は言った。
「…そういうものでしょうか?」
今一つ理解ができないが、僕は少ない経験と妄想で頭を膨らませた。
「うーん。確かに、毎日キラキラしてそうですね!」
あの水面みたいに!と川を指差す。
すると、女性は笑った。
「そうなの。毎日、キラキラして楽しいわ。」
そして、川の水面を見つめた後、ゆっくりと僕を振り返った。
「綺麗なことばかりじゃないけどね。」
その顔に、表情はなかった。




