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唯一《肆》【ユイイツ《シ》】

大変遅くなりました。

待ってくださってる方がいらっしゃったら嬉しいです。

からりと部屋の()を開けて姚妃(ヨウヒ)廊下(ロウカ)に出ると大きく()びをした。長い(ジカン)(ツクエ)に向かっていた(タメ)身体(カラダ)彼方此方(アチラコチラ)から()(カタ)まったものが(ホグ)れる音がする。このところ(ミヤ)(モド)りしばらく(ミナ)()ごした(アト)自室(ジシツ)(コモ)って()ごしていた。別に漠然(バクゼン)と何の考えもなく(コモ)っていた(ワケ)ではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そのための(ジカン)が必要だったというだけのことだ。


皓滓(コウサイ)加嬬(カジュ)(チギ)りの日取(ヒド)りもつつがなく決まり夕餉(ユウゲ)の時など(サイワイ)(カク)そうともしない皓滓(コウサイ)とそれに巻き込まれてしまう加嬬(カジュ)満更(マンザラ)でもなさそうな姿(スガタ)を見ているのは姚妃(ヨウヒ)にとっても心から(ヨロコ)ばしいと思えている。何より自分が生まれた時から(タカラ)のように守ってくれていた(アニ)の1人が同じように大切にしてくれていた加嬬(カジュ)を選んでくれた事が何より(ウレ)しくもあるのだ。加嬬(カジュ)の中ではまだ皓滓(コウサイ)との(アイダ)にある【立場(タチバ)】というものを気にするところはあるが、それも(フク)めて安堵(アンド)させようと(ツト)める皓滓(コウサイ)の姿は姚妃(ヨウヒ)でなくとも(ミナ)微笑(ホホエ)ましく思えている。何より慶事(ケイジ)()ろすのを戸惑(トマド)っていた加嬬(カジュ)(シン)悧羅(リラ)(ワラ)って後押(アトオ)ししたのも加嬬(カジュ)にとっての(ココロ)負担(フタン)を軽くするには大きかっただろう。


「何か言われても加嬬(カジュ)はもともと(オレ)たちの大事(ダイジ)家族(カゾク)だろ?(マワ)りが何か言ったって(オレ)たちがちゃんと守るよ。ね、悧羅(リラ)?」


「そうだの。そのような些末(サマツ)なことで(サワ)(モノ)らのことなど(アン)じずともよい。(シン)(ワラワ)のみではのうて子らもその思いは同じであろうしの」


ふふっと(ワラ)いながら見られた子どもたちが全員で()(シメ)したことで加嬬(カジュ)幾分(イクブン)かは安堵(アンド)してくれたようだったが、それでも(オコリ)のような不安(フアン)はおいそれと(ヌグ)()れるものではないだろう。けれどそれをしっかりと取り去れるのは(ミヤ)(ダレ)でもなくただひとり、皓滓(コウサイ)だけだ。


(コウ)兄様(アニサマ)であれば心配(シンパイ)いらないでしょうね。


どのような場においても加嬬(カジュ)大切(タイセツ)にしている姿を思い出してつい姚妃(ヨウヒ)は小さく(ワラ)ってしまう。自分を(フク)姉兄達(シケイタチ)(シン)悧羅(リラ)の姿を(ツネ)間近(マヂカ)で見ていたのだ。血縁(ケツエン)であれ他者(タシャ)であれ(タツト)ぶことがどのようなことであるのかなど自然(シゼン)()に付いている。それでもすぐにでも(チギ)りたいという皓滓(コウサイ)にせめて六月(ムツキ)はと(ミト)めさせたのは加嬬(カジュ)だからこそ出来ることだったろう。皓滓(コウサイ)落胆(ラクタン)していたが()()()()()加嬬(カジュ)()()()()()()()()加嬬(カジュ)もそれは分かっているようで(ワラ)いながら(オノレ)首筋(クビスジ)をとんとんと(シメ)していた。


()()(コトワリ)を分かっているのは悧羅(リラ)荊軻(ケイカツ)そして姚妃(ヨウヒ)くらいのものだ。(シン)忋抖(カイト)なら悧羅(リラ)から聞いているかもしれない。知らなかったにしろ皓滓(コウサイ)加嬬(カジュ)には()()がどのようなものであるかは悧羅(リラ)から聞かされているだろう。とはいえ何も知らずに()()を行なった皓滓(コウサイ)はある意味(イミ)幸運(コウウン)持主(モチヌシ)だったということだ。


「…(ワタシ)もいい加減(カゲン)に前に進まないと…」


一度空を見上げて姚妃(ヨウヒ)は小さく嘆息(タンソク)した。開けたままの()から部屋の中を見ると白磁(ハクジ)の小さな(ウツワ)が2つ、目に()まる。ずっと部屋に(コモ)っていたのは()()中身(ナカミ)(コシラ)えるためだった。たまたま(ツト)めている中で文書(モンジョ)(トトノ)えているとき、ふと目に()まった()()には今の姚妃(ヨウヒ)が何よりも(ホッ)していた事柄(コトガラ)(シル)されていた。調合(ツクル)にはかなりの無理(ムリ)をせざるを()なかったが姚妃(ヨウヒ)が何よりも(ノゾ)んでいることを(カナ)えることができるなら何ということでもなかった。()()()()()()()()()()すことでようやく(ネガ)いを(カナ)えることができる。


その()()()()()本来(ホンライ)なら手に入れることなど出来ないものだ。長い(オニ)生涯(ショウガイ)であっても(マミ)えることができるかもわからないモノ。それを手に入れようと夢見(ユメミ)ることは(モヤ)(ツカ)もうと空に手を伸ばすようなものだ。けれど今()()姚妃(ヨウヒ)(ノゾ)めば(ツカ)めるところにある。助力(ジョリョク)してくれるか(イナ)かは別にして。


その文書(モンジョ)に書かれている事柄(コトガラ)(ダレ)(マコト)のものだとは思っていないだろう。それ(ホド)眉唾(マユツバ)ものであるし、何より(ミズカ)らにかかる負荷(フカ)のほうが大きい。(イク)(マジナイ)馴染(ナジ)みのある(オニ)であってもおいそれと手を出したくはないはずだ。だからこそ姚妃(ヨウヒ)が手にするまで書庫(ショコ)奥深(オクフカ)くに(ウズ)まっていたのだろう。ここに(イタ)る前までの姚妃(ヨウヒ)であれば同じような考えをしたはずだ。手に取ったとしても馬鹿(バカ)らしいと()て置いたに(チガ)いない。そう思えはするのに手にした途端(トタン)(スク)われると思ってしまった。長く(カカ)()んできた(ムク)われない(オモ)いを終わらせることができる、と。


卑怯(ヒキョウ)だともわかっている。けれど姚妃(ヨウヒ)にはもうこの手立(テダ)てに(タヨ)るしかないのも事実(ジジツ)なのだ。

ずっと止まったままの自分の(ジカン)を進めるために。


もう一度小さく嘆息(タンソク)してから視線(シセン)(ニワ)(モド)すと(ツブヤ)くように姚妃(ヨウヒ)はその名()()んでみる。


睚眦(ガイシ)、いる?」


()んだ声は静かに()(ヒビ)くが景色(ケシキ)が変わることはない。もう一度()んでみたがやはり変わらない。もともと睚眦(ガイシ)悧羅(リラ)()びかけ以外に(オウ)じることがないのは分かっている。妲己(ダッキ)哀玥(アイゲツ)であれば悧羅(リラ)でなくとも呼びかければ(アラワ)れてくれるのだが睚眦(ガイシ)()()()()()()睚眦(ガイシ)に何かを(メイ)じられるのは悧羅(リラ)だけで悧羅(リラ)(ノゾ)むから(ミヤ)(モノ)たちも里の民達(タミタチ)庇護(ヒゴ)してくれているに過ぎない。


睚眦(ガイシ)、お願い」


やっぱり駄目(ダメ)か、と思いつつも最後にもう一度だけ()んでみる。これで駄目(ダメ)なら()()()()()()()を手に入れなければならないだろう。三度(ミタビ)声掛(コエカ)けにも見える景色(ケシキ)に変わりはないことに落胆(ラクタン)しながら部屋のほうに身体(カラダ)()けると背後(ハイゴ)からふわりと風が()いた。()り向いた姚妃(ヨウヒ)の目に青い(ウコロ)が飛び込んでくる。月明(ツキア)かりに()らされた長い体躯(カラダ)を空に向けて()ばしたまま睚眦(ガイシ)が長い(ヒゲ)揺蕩(タユタ)わせて姚妃(ヨウヒ)を見ている。


(マッタ)く…、何もこんな夜更(ヨフ)けに()びつけずともよかろうが】


「ごめん」


(アキ)れたように目を細める睚眦(ガイシ)近付(チカヅ)きながら姚妃(ヨウヒ)()びた。だがいつもの蜥蜴(トカゲ)の姿ではなく本来(ホンライ)の姿で来てくれたということは姚妃(ヨウヒ)が何を望んでいるのかなど睚眦(ガイシ)には言わずとも分かってくれているのだろう。


「来てくれるとは思ってなかったよ」


近付(チカヅ)いて頭を()でると、やむをえんだろう、と嘆息(タンソク)されてしまう。


(オレ)(ヨウ)に手を()さねば(アルジ)が動くとまで言われてはな。無闇(ムヤミ)(アルジ)(キズ)が付くのを(ヨシ)とはできん】


「そっかあ…。やっぱり母様(カアサマ)には何でもお見通(ミトオ)しなんだね」


今更(イマサラ)なことだろう?】


「…そうだね…」


ふふっと小さく(ワラ)った姚妃(ヨウヒ)(アキ)れたような睚眦(ガイシ)嘆息(タンソク)()ってきた。姚妃(ヨウヒ)睚眦(ガイシ)を呼ぶことも、それで何をするのかも悧羅(リラ)(スベ)て知っているのだろう。その上で姚妃(ヨウヒ)(ネガ)いを(カナ)える手助(テダス)けをしてくれる母の気持ちが(ウレ)しくもあるが申し訳もなくてつい姚妃(ヨウヒ)視線(シセン)を落とした。


【…(ヨウ)


声をかけられて視線(シセン)(モド)すと手を出すように(ウナガ)される。(シタガ)った姚妃(ヨウヒ)の手に青く光る(ウロコ)がひとつ落とされた。思いの(ホカ)に軽く(ウス)()()をそっと(ツツ)むとひやりとした感覚(カンカク)が伝わってくる。


睚眦(ガイシ)ありがとう」


微笑(ホホエ)んで礼を言うと、やれやれと睚眦(ガイシ)(カタ)を落とした。


【…(アルジ)(アン)じていたぞ?()()()()()()()()()()()()()とな】


「うん。たくさん考えて決めたから」


【そうか】


「うん」


手を開いてもう一度(サズ)けられた(ウロコ)を見ていると、難儀(ナンギ)なものだな、と睚眦(ガイシ)の声がした。


(ヨウ)がしようとしていることがどういうことになるのかなど(オレ)には分からん。(モト)より(オレ)には不要(フヨウ)なモノだしな】


長い(ヒゲ)揺蕩(タユタ)わせて(ツム)がれる言葉に姚妃(ヨウヒ)は首を(カシ)げた。()()()()睚眦(ガイシ)声音(コワネ)(チガ)う。()()()()()()()不遜(フソン)態度(タイド)で良くも悪くもまっすぐな言葉を出すのが睚眦(ガイシ)だ。だが今の声音(コワネ)はどことなく(アン)じてくれているような(アタタ)かさを(オボ)えてしまう。


何事(ナニゴト)にもいつかは、ということはあるのだろう。(ヨウ)が決めたのならばそれもひとつの事柄(コトガラ)だな。…だが(オレ)()()をせよと言われても今の(オレ)(イナ)と言うだろう】


睚眦(ガイシ)母様(カアサマ)のことを本当に大切に思ってくれてるし(ツナ)がりも強いからね」


悧羅(リラ)眷属(ケンゾク)である睚眦(ガイシ)姚妃(ヨウヒ)がこれからしようとしていることを()いるとすれば、それは睚眦(ガイシ)(イノチ)()てと言うのと同義(ドウギ)だろう。けれど姚妃(ヨウヒ)はそうではない。あるのはただ自分が(ラク)になりたいがためだけの手前勝手(テマエガッテ)な思いだ。


(ヨウ)()()()()()()()?】


大丈夫(ダイジョウブ)だよ。()()は私が前に進むためでもあるんだから」


笑って伝えた姚妃(ヨウヒ)睚眦(ガイシ)がするりと()()った。


【確かに(オレ)(アルジ)何者(ナニモノ)にも変えられん。だがな(オレ)が思うているのは今は(ヨウ)、お前のことだ。これでも(オレ)はそれなりに(ヨウ)(ホカ)(ヤツ)らも気に入っているのだぞ?まあ…、そうは見えんだろうがな】


()()(リュウ)(コウベ)姚妃(ヨウヒ)はぎゅっと()()めた。硬くてひやりとした(ウロコ)(ホオ)に当たるが不思議(フシギ)と痛みはない。


()()が終わったならしばらく(ガク)(トモ)に休むといいだろう。(カイ)が酒に付き合った後は(オレ)(ガク)哀玥(アイゲツ)(トモ)()るなど贅沢(ゼイタク)だぞ?…ともすれば妲己(ダッキ)も来るだろう。(カイ)まで()れば考える(イトマ)もないだろうよ】


「いきなり(カイ)兄様(アニサマ)の部屋で()ごしたら変に思われるんじゃない?」


【そこは(カイ)上手(ウマ)くやるだろう。(ヨウ)(タノ)みとあれば(ヨロコ)んで(オウ)じるだろうよ。何より(ガク)(ヨロコ)ぶ】


だから(アン)ずるな、と言う睚眦(ガイシ)(コウベ)をさらに抱きしめながら姚妃(ヨウヒ)()かんでくる(ナミダ)(コラ)えることができなくなった。



次の日もその次の日も()()()()()()()()()()()()()()。いや、変わりはあったのだが姚妃(ヨウヒ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という方が(タダ)しいかもしれない。姚妃(ヨウヒ)が何をしようとしているのかを決して気取(ケド)られることがないように()()()()()()()振舞(フルマ)うことがこれ(ホド)までに胆力(タンリキ)(ヨウ)するなど知りもしなかった。(コラ)えることでその(サキ)にあるものが(ヨロコ)ばしいものであるならばそれも良いのかもしれないが、()()はそうではない。この程度(テイド)のことでこれ程迄(ホドマデ)(オノレ)の心を()てつかさなければならないのならば、これまで悧羅(リラ)背負(セオ)ってきたものはどれだけのものだったのだろう。


母様(カアサマ)って本当に(スゴ)いなあ。


(クラ)べることすら烏滸(オコ)がましいのは分かっているが何かに(スガ)らなければ姚妃(ヨウヒ)()すと決めたこともすぐに()らいでしまいそうだった。はあ、と大きく嘆息(タンソク)しながら姚妃(ヨウヒ)は置いていた白磁(ハクジ)(ウツワ)(ツメ)(ハジ)く。()んた音が(ヒビ)いて()むまでのほんの(ワズ)かな間でも、本当にこれで良いのかと(ナヤ)む自分に心底(シンソコ)(アキ)れて自嘲(ジチョウ)してしまう。これが最善(サイゼン)なのだとこれまで幾度(イクド)となく自分に言い聞かせてきた。()()()()()()1()()()()()()(チガ)う道が無いのか考えるたびに行き着く先は同じだった。


()(カエ)し。

()(カエ)し。

何度(ナンド)も。

何度(ナンド)も。

何十年(ナンジュウネン)も。

何百年(ナンビャクネン)も。


もう一度大きく嘆息(タンソク)して(シズ)かになった白磁(ハクジ)(ウツワ)(ニギ)ると立ち上がりそのまま自室(ジシツ)を出て歩き出す。(スデ)(ウシ)(コク)()ぎているからか(ミヤ)の中は(シズ)かだ。(ニワ)(メン)した廊下(ロウカ)処々(トコロドコロ)(アカリ)(トモ)されているがそれもほんのりと()らいでいる程度(テイド)だ。どちらかといえば月明(ツキア)かりのほうが役立(ヤクダ)っているかもしれない。(オニ)である姚妃(ヨウヒ)たちにとれば宵闇(ヨイヤミ)など視界(シカイ)(サエギ)ることにもならないが、里から見上(ミア)げれば山の中腹(チュウフク)にほんのりと()かび上がる(ミヤ)が見えることが民達(タミタチ)安寧(アンネイ)(ツナ)がっているのは知っている。(ミヤ)を見上げるだけでそこに悧羅(リラ)()ることが(ミナ)(ツタ)わるのだ。()るだけ、とはいえ悧羅(リラ)が何もしていないことではないのだがそれを知らない民達(タミタチ)にとれば悧羅(リラ)という絶対(ゼッタイ)存在(ソンザイ)()()()()()ことで自分の生命(イノチ)(アズ)けるだけの意味(イミ)()しているのだ。


そこに(イタ)るまで悧羅(リラ)がどれだけの辛酸(シンサン)()自身(ジシン)()(コロ)してきたかも知る(ヨシ)もなく。知れる機会(キカイ)があったとしてもそれを(クチ)に出す母ではないことも分かってはいる。


()()()えれば自分も少しは悧羅(リラ)のようになれるだろうか。


父である(シン)のためだけに身を(ケズ)り里を(ササ)え続け、(クラ)深淵(シンエン)(ソコ)(シズ)みそうだった忋抖(カイト)の手を()()らし続けることを決めたような強さに近づけるだろうか。長い(ジカン)をかければ(アル)いは、と考えながら手順通(テジュンドオ)りに()を進めてひとつの部屋の前で姚妃(ヨウヒ)は足を止めた。一度深く呼吸(コキュウ)して白磁(ハクジ)(ウツワ)中身(ナカミ)を右の指に()けてから静かに()を開いて中に入る。部屋の(オク)御簾(ミス)(ヘダ)たれたその(サキ)から寝息(ネイキ)が聞こえるのを確かめて()を閉めると御簾(ミス)(オク)で動く気配(ケハイ)がした。


「んー…、(ダレ)…?」


寝惚(ネボ)けて(ウレ)いを(フク)んだ声に一瞬(イッシュン)身体(カラダ)強張(コワバ)ったけれどここで退()くことは出来ない。足早(アシバヤ)御簾(ミス)の中に入ると起きあがろうとしていた玳絃(タイゲン)の上に姚妃(ヨウヒ)(マタガ)った。


「…は…?姚妃(ヨウヒ)!?何だよ、何して…」


姚妃(ヨウヒ)の姿を(ミト)めた玳絃(タイゲン)が目を見開(ミヒラ)いている(アイダ)姚妃(ヨウヒ)が右の指を玳絃(タイゲン)の口に()()んだ。(アマ)くて(ニガ)(ハナ)(ミツ)のような(アジ)口内(コウナイ)(ヒロ)がると同時(ドウジ)玳絃(タイゲン)身体(カラダ)一瞬(イッシュン)(タギ)った。ぐらりと(カタム)きかけた意識(イシキ)(タモ)とうとすると、ひたりと(タギ)り切った玳絃(タイゲン)姚妃(ヨウヒ)に当てがわれた。


「ちょっ!ちょっと待て!」


(アワ)てて上に乗ったままの姚妃(ヨウヒ)()(モド)そうとするが(トウ)姚妃(ヨウヒ)は下を向いたまま頭を()る。


「いやいや!何してんだって!本当に待てってば!」


ゆっくりと姚妃(ヨウヒ)(コシ)()とし()み始めて中に入らざるを()ない玳絃(タイゲン)も声を(アラ)げるが姚妃(ヨウヒ)は止まらない。下を向いたまま玳絃(タイゲン)寝間着(ネマギ)を強く(ツカ)んでいるだけだ。時折(トキオリ)(ウメ)くような声が聞こえてくるがそれ以外の言葉が姚妃(ヨウヒ)から聞こえてはこない。


姚妃(ヨウヒ)!やめろって言ってるだろ!」


半分ほど中に入ってしまったところで玳絃(タイゲン)強引(ゴウイン)半身(ハンシン)を起こして姚妃(ヨウヒ)両肩(リョウカタ)(ツカ)んで動きを止めさせる。ぎちぎちと()()けられる中で動いてしまったから玳絃自身(タイゲンジシン)にも負荷(フカ)はあるが(ハラ)に力を入れて()える。何より()()一時(イットキ)(ヨク)()ませて良い話ではない。


「ほんとに何してんだよ!冗談(ジョウダン)じゃ()まされないんだぞ!?」


(ツカ)んだ両肩(リョウカタ)に力を()めて()き上げようとするがますます姚妃(ヨウヒ)身体(カラダ)強張(コワバ)って(アラガ)おうとする。(カワ)いたままの姚妃(ヨウヒ)の中から玳絃(タイゲン)が出ようと身体(カラダ)を引き(ハナ)される(タビ)()(ヨウ)な痛みが走って姚妃(ヨウヒ)(クチビル)()んで玳絃(タイゲン)寝間着(ネマギ)(ツカ)んで()える。


姚妃(ヨウヒ)!!いい加減(カゲン)にしないと本気で(オコ)るぞ!」


「わかっ…てるよ…っ」


(ツカ)んだ両肩(リョウカタ)玳絃(タイゲン)(サラ)に力を()めた瞬間(シュンカン)姚妃(ヨウヒ)も止めていた(コシ)一気(イッキ)()とし()んだ。()み込まれた刺激(シゲキ)で受け入れた玳絃(タイゲン)(ウメ)く声が(カス)かに聞こえたけれど (ツラヌ)かれる(イタ)みが思っていたよりも強くて何より玳絃(タイゲン)質量(シツリョウ)で苦しくなる。(ニブ)い痛みに思わず苦悶(クモン)の声が()れて身体(カラダ)(フル)え出す。がたがたと(フル)えの強くなる姚妃(ヨウヒ)の耳に止まさせようとする玳絃(タイゲン)の声も(トド)いてはいるのだが(コタ)える余裕(ヨユウ)がない。


ここまで痛みがあるとは思っていなかった。


あまりの痛みの強さに()を起こしておくことさえ(ムズ)かしくなって玳絃(タイゲン)身体(カラダ)(アズ)けたいが()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それは本当に(オモ)いが(ツウ)()ったもの同士(ドウシ)にしか(ユル)されないことだから。一方的(イッポウテキ)玳絃(タイゲン)()も無く行った姚妃(ヨウヒ)がどんなに玳絃(タイゲン)(オモ)っていたとしてもその身体(カラダ)(スガ)り付くなどあってはならないことだ。どうにか痛みを(ノガ)そうと大きな(イキ)()(カエ)している姚妃(ヨウヒ)(フル)えがあまりにも強いことに玳絃(タイゲン)も声を(アラ)げるのを止めるしかない。無理矢理(ムリヤリ)に入り()まされたが姚妃(ヨウヒ)には受け入れるだけの準備(ジュンビ)も何も感じなかった。何より()()()()()()()。いまこの時でさえ(ウルオ)ってくることすらなく玳絃(タイゲン)を受け入れることさえ出来ずにいる。ただ(オノレ)の中に()み込んだことだけで精一杯(セイイッパイ)だと言わんばかりの姿(スガタ)なのだ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()ように。


まさか、とは思うが目の前で必死(ヒッシ)(イタ)みに()えている姚妃(ヨウヒ)は本来なら動き出しても良いはずの(ジカン)だというのに動けないでいる。(タギ)り切った玳絃(タイゲン)無理矢理(ムリヤリ)とはいえ(マネ)き入れたのなら後は(ヨク)のまま動けば()()()()()()玳絃(タイゲン)(オウ)じざるを()ないかもしれないのに姚妃(ヨウヒ)()()が出来るようには見えないのだ。ただひたすらに(イタ)みに()える姿は玳絃(タイゲン)に全てを(カタ)っているのと同じだった。


「…姚妃(ヨウヒ)…?もしかして初めて、か?」


入り()まされたとはいえ玳絃(タイゲン)()け出すのは容易(タヤス)いことだ。無理矢理(ムリヤリ)姚妃(ヨウヒ)を引き()がせばいい。けれど本当に破瓜(ハカ)であるならば力任(チカラマカ)せにそれを(オコ)なえば姚妃(ヨウヒ)(イタ)みは()すばかりだろう。かといって動くという選択(センタク)玳絃(タイゲン)には出来そうにない。


姚妃(ヨウヒ)?」


一度大きく嘆息(タンソク)してできるだけ(オダ)やかに姚妃(ヨウヒ)()んでみると、ぽたりと(ハラ)の上に(ナミダ)が落ちた。


「…さいっ…!ごめんなさい兄様(アニサマ)っ」


(シボ)り出された声があまりにも悲痛(ヒツウ)玳絃(タイゲン)姚妃(ヨウヒ)(カタ)(ツカ)んでいる手の力を(ユル)めた。


「どうしても、どうしてもっ!(アキラ)めきれなかった…。私の(オモ)いが兄様(アニサマ)(コマ)らせて(オコ)らせるだけだって分かってたのにっ…」


「うん」


(ユル)されないのは分かってる。私は卑怯(ヒキョウ)な手を使った。でもこれが最初(サイショ)最後(サイゴ)。明日からはもう兄様(アニサマ)(コマ)らせたりしないから」


ぽたぽたと(コボ)れる(ナミダ)玳絃(タイゲン)寝間着(ネマギ)をどんどん()らしていくが姚妃(ヨウヒ)は顔を上げない。


「でも(オレ)(ワス)れないだろ?こんなことして明日から()けられるとは思わなかったのか?」


大丈夫(ダイジョウブ)だよ」


「なんで?」


兄様(アニサマ)(タギ)ったのは私が調合(ツク)った(クスリ)(セイ)だから

。それには()()()()(ワス)れる(マジナイ)も入ってる。兄様(アニサマ)()()けたら何にも(オボ)えてないよ。ただ(ネム)ってただけなの」


「…何だよそれ…。じゃあ(オレ)だけ綺麗(キレイ)さっぱり(ワス)れて姚妃(ヨウヒ)はずっと(オボ)えてんの?それってどうなのさ?(オレ)だけが(ワス)れるならそれを逆手(サカテ)に取ればこれから先も同じようなことが姚妃(ヨウヒ)はできるってことじゃないの?」


玳絃(タイゲン)()う声には少し(トゲ)があった。びくりと姚妃(ヨウヒ)身体(カラダ)(フル)えたが、すぐにそれはないと(コタ)える。


「そんなの分からないだろ?だって(オレ)だけが(ワス)れるんだろ?」


兄様(アニサマ)が思ってるようなことはしないよ」


「だから何でそう言い切れるんだよ?()()()()()()()()()信じろってのが(ムズカ)しいことくらい分かってるだろ?」


玳絃(タイゲン)()いは当たり前といえば当たり前のことだろう。玳絃(タイゲン)意志(イシ)矜持(キョウジ)(スベ)無視(ムシ)して()()()()()()()()いた姚妃(ヨウヒ)言葉(コトバ)など(シン)じてもらえるとも思っていない。寝間着(ネマギ)(ツカ)む手にますます力を込めて、もう一度だけ姚妃(ヨウヒ)(アン)じなくていいとだけ伝える。


「だから…、信じられるわけがないのは姚妃(ヨウヒ)だって分かってるだろ?そう言い切れるだけの何があるんだよ?」


聞き返してくる玳絃(タイゲン)の声が少し(イラ)ついているのが分かって姚妃(ヨウヒ)はほんの少し()(スク)めてしまう。苛立(イラダ)玳絃(タイゲン)(ハン)して姚妃(ヨウヒ)の中の玳絃(タイゲン)質量(シツリョウ)(ユル)まっていく。それが決して(タッ)したからではないことは(ツナ)がっているからこそ分かる。ここまでしても玳絃(タイゲン)にとって姚妃(ヨウヒ)()()()()対象(タイショウ)ではないから(ユル)まっていくのだ。つきり、と(ムネ)(オク)(イタ)みが(ハシ)るが、それも()()()()()()()()()


ふうっと一度大きく(イキ)()いて今度は玳絃(タイゲン)(ニガ)すために姚妃(ヨウヒ)(コシ)を上げる。中が()られて痛みもあるがどうにか(ツナ)がりを()くことはできたが、それでもまた痛みが強くてすぐには玳絃(タイゲン)の上から動けそうには無い。玳絃(タイゲン)も動きはしないが言葉を(ハッ)しようともしない。それだけ(オコ)らせたのだろうから仕方(シカタ)のないことだし、()われた事に姚妃(ヨウヒ)(コタ)えなければ玳絃(タイゲン)から声をかけることもしないだろう。


「本当に兄様(アニサマ)が思うようなことはしないから。言ったじゃない、最初で最後だって」


「それを信じられると本気で思ってんの?信じて欲しいっていうなら、ちゃんと(ハナ)すべきなんじゃないか?」


出された声は思っていたよりも冷たかった。これまで姚妃(ヨウヒ)溺愛(デキアイ)していた 兄達(アニタチ)からは到底(トウテイ)聞いたことない声音(コワネ)にまた姚妃(ヨウヒ)(ムネ)の痛みが大きくなるが、まだ玳絃(タイゲン)の顔をみることはできそうにない。


「私も…、(ワス)れるからだよ…」


()()()()()()をか?だったらまた同じことを()(カエ)すって可能性(カノウセイ)はあるよな?」


冷たいだけの声に嘆息(タンソク)(クワ)わって思わず姚妃(ヨウヒ)玳絃(タイゲン)の上から()りて立ち上がった。どれだけ伝えても玳絃(タイゲン)(イカ)りは消えないだろう。()()ければ()()()()()()()()()()()(ワス)れているはずだ。けれど(ワス)れられるからこそ伝えておかなければならないのだろう。


「私が(ワス)れるのは()()()()じゃない」


「はあ?じゃあ余計(ヨケイ)に信じられないだろ」


侮蔑(ブベツ)(フク)んだ眼差(マナザ)しに姚妃(ヨウヒ)身体(カラダ)一瞬(イッシュン)で冷たくなる。小さく(フル)え出す身体(カラダ)と強くなる(ムネ)の痛みを(コラ)えるために姚妃(ヨウヒ)は自分の寝間着(ネマギ)を強く(ツカ)んだ。目の前では玳絃(タイゲン)が大きく嘆息(タンソク)して頭を()いている。


これほどまでに(オコ)らせるほど姚妃(ヨウヒ)(オモ)いは玳絃(タイゲン)にとって迷惑(メイワク)でしかなかったのだろう。


(ダレ)の目から見ても拒絶(キョゼツ)されているのはこの姿を見れば(アキ)らかだ。


本当に欠片(カケラ)ほどの可能性(カノウセイ)さえなかったのだ。(ゲン)に目の前の玳絃(タイゲン)頬杖(ホオヅエ)をついて姚妃(ヨウヒ)と目を合わせようともしない。小さく(ワラ)って姚妃(ヨウヒ)玳絃(タイゲン)()ぶが視線(シセン)は返されないままだ。


「私が(ワス)れるのは兄様(アニサマ)への恋情(レンジョウ)だよ」


「…は?…」


ゆっくりと返された視線(シセン)を受け止めて姚妃(ヨウヒ)も今できる精一杯(セイイッパイ)微笑(ホホエ)みを玳絃(タイゲン)に向ける。


兄様(アニサマ)()()()()(ワス)れるけど、私は兄様(アニサマ)への恋情(レンジョウ)(ワス)れるの。だから兄様(アニサマ)が思ってるようなことは二度(ニド)とおこらないよ」


「いや…、いやいや、ちょっと待て!それはお前の記憶(キオク)(イジ)るってことか?そんなことしたらお前の中の(ホカ)大事(ダイジ)なことまで(ワス)れるかもしれないんだぞ?!」


「…そうかもしれないね。だけどこれが1番良いことなの」


「何が良いんだよ!馬鹿(バカ)なことするな!」


(アワ)てたように玳絃(タイゲン)姚妃(ヨウヒ)(ウデ)(ツカ)もうとするが姚妃(ヨウヒ)一歩(イッポ)()がってそれから(ノガ)れる。


「私は(ユル)されないことをしたの。私が兄様(アニサマ)を好きでいる(カギ)りまた同じようなことをするっていうのも当たってると思う。でも私の気持ちは兄様(アニサマ)にとって迷惑(メイワク)なものでしかないでしょう?だから終わりにするの」


(ミト)めたくもなかったことを口に出してしまえば本当に終わりなのだという(クル)しさも同時に(ムネ)()()せてくる。必死(ヒッシ)笑顔(エガオ)を作るが(アフ)れでる(ナミダ)は止めることは(ムズカ)しい。


「ごめんね兄様(アニサマ)。これまで沢山(タクサン)(コマ)らせて迷惑(メイワク)ばっかりかけて。最後(サイゴ)まで(オコ)らせちゃったね」


「…姚妃(ヨウヒ)…?」


少しずつ後ろに()がる姚妃(ヨウヒ)()うように玳絃(タイゲン)が立ち上がった。


「でもありがとうっても言っていい?」


()()が付いて後手(ウシロデ)に開ける姚妃(ヨウヒ)玳絃(タイゲン)もゆっくりと近付(チカヅ)こうとするが次の言葉に動きを(フウ)じられた。


「私に恋情(レンジョウ)を教えてくれてありがとう。兄様(アニサマ)を好きになれて(サイワイ)だったよ」


(ナミダ)を流しながら笑顔(エガオ)()げると姚妃(ヨウヒ)は部屋を飛び出してそのまま自室に向かって()け出した。


姚妃(ヨウヒ)!」


咄嗟(トッサ)玳絃(タイゲン)が伸ばした手は姚妃(ヨウヒ)(トド)かなかった。するりと寸前(スンゼン)(カワ)されてすぐに追いかけようとするが急激(キュウゲキ)眠気(ネムケ)(オソ)ってきて(ヒザ)()れてしまう。


「くそ…っ」


早く追いかけて(ツカ)まえないと。


そう思うのに身体(カラダ)が思い通りに動いてくれない。(ユカ)(ツメ)を立てて()を起こそうとするが思いとは裏腹(ウラハラ)に強い睡魔(スイマ)()()まれそうになる。ここで(ネム)ってしまえば姚妃(ヨウヒ)の言葉通り起きた時には何も(オボ)えていることはできないのだろう。


「そんなこと…っ、あってたまるかよ…っ!」


思い(アヤマ)っていたのは玳絃(タイゲン)(ホウ)だった。何よりも大切(タイセツ)(イモウト)であることは変わらない。けれど、あんな表情(カオ)をさせたかった(ワケ)ではない。好きだと(ツタ)えられてもいつかは()めるだろうと考えていた。


けれど姚妃(ヨウヒ)がしたことは何だ?


(イツク)しんでくれとも一度だけでも()いてくれとも言わなかった。ただ破瓜(ハカ)(イタ)みにだけ()玳絃(タイゲン)の心が傷付(キズツ)かないように(マジナイ)の力を()りただけ。その上でこれ以上玳絃(タイゲン)重荷(オモニ)になりたくないと恋情(レンジョウ)を消すとまで言っていた。それがどれ程の(アヤ)うさがあることなのかも理解(リカイ)した上で。


馬鹿(バカ)(オレ)の方じゃないかっ!」


100年以上も恋情(レンジョウ)を伝え続けることがどれほどのことなのかわからないはずなどなかったのに…。


分かろうとしなかった。

向き合おうともしなかった。


いつもと変わらない姚妃(ヨウヒ)が何でもないことのようにしてくれていたから、それに(アマ)えていたのだ。

それがどれほど姚妃(ヨウヒ)の心を(エグ)り続けていたのか見ようともしないで。


「ここで動かなかったら兄貴(アニキ)としても最低(サイテイ)じゃないか」


(ユカ)に立てていた(ツメ)を足に置いて無理矢理(ムリヤリ)肉に()()ませる。肉の()かれる音と痛みと流れ出す血でほんの(ワズ)かに頭が()れる。よし、と身体(カラダ)を起こしてみたがそこにより強い睡魔(スイマ)(カブ)さってくる。先程(サキホド)よりも強い睡魔(スイマ)身体(カラダ)(クズ)れて落ちた。


「…あーくそ…。最低(サイテイ)じゃないか…」


落ちる(マブタ)を止めることも出来ない自分に嫌気(イヤケ)()す。閉じられた(マブタ)(ウラ)姚妃(ヨウヒ)の顔が()かんでくる。


「ありがとう兄様(アニサマ)。私に恋情(レンジョウ)を教えてくれて」


そう言って泣きながら(ワラ)った顔はすべて()()姚妃(ヨウヒ)覚悟(カクゴ)玳絃(タイゲン)に知らしめるには充分(ジュウブン)だった。


行ってやらなきゃ。

気にするなって頭を()でてちゃんと向き合ってやらなくちゃ。


そう思うのに意識(イシキ)(シズ)んでいくのを止められない。


「…ほんと、ごめん…」


姚妃(ヨウヒ)の名を()んだつもりだったがきっと声になっていなかっただろう。ぷつりと糸が切れるように玳絃(タイゲン)(ネム)りに(シズ)むしかなくなってしまった。

お楽しみいただけましたか?

読んでくださってありがとうございました。

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