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成就《ジョウジュ》

更新します。

ギリギリラインばかりなのでご注意下さい。

何がどうしてこうなった?


(オボロ)げな正気(ショウキ)を取り(モド)すたびに忋抖(カイト)自身(ジシン)()いかけざるを()なかった。(モヤ)がかった記憶(キオク)にあるのは藍琳(リンリー)のことを王母(オウボ)から聞かされたこと。(ウデ)に抱いていた嬰児(ミドリゴ)(シン)(アズ)かってくれたこと。そして名を呼ばれた瞬間(シュンカン)(トド)めていた(オモ)いが(アフ)れてしまって見えた悧羅(リラ)口付(クチヅ)けてしまったことだ。


だが今のこの状況(ジョウキョウ)は何だというのだろう?


忋抖(カイト)(ウデ)の中に()がれてやまなかった悧羅(リラ)がいて、あろうことか自分と(ジョウ)()わしている。忋抖(カイト)の手や(シタ)がその細い身体(カラダ)()(ゴト)()()(コタ)えて(アマ)い声が聞こえてくる。(アマ)りにも受け止めきれない衝撃(ショウゲキ)を受けて意識(イシキ)を飛ばしてしまい(ユメ)でもみているとしか思えない。そうでなければ悧羅(リラ)忋抖(カイト)(アタ)える(イツク)しみに(コタ)えてくれる(ハズ)がないのだから。


そうだ、きっとこれは自分の(ヨワ)さと欲望(ヨクボウ)が見せている(ユメ)(チガ)いない。


正直(ショウジキ)に言えば(オモ)いを()(コロ)しながら悧羅(リラ)(ソバ)で子として振舞(フルマ)うのも限界(ゲンカイ)だった。だからこそ藍琳(リンリー)にその(ヨク)をぶつけて生命(イノチ)まで(ウバ)ってしまった。藍琳(リンリー)のことを考えると(モヤ)がかっている頭の中が一瞬(イッシュン)鮮明(センメイ)になっていく気がしたけれど本当に一瞬(イッシュン)のことだ。すぐにまた頭の中に(モヤ)がかかって微酔(ホロヨ)いにも()面持(オモモ)ちになる。周囲(シュウイ)()ちた(アマ)(ニオ)いが頭の(シン)(シビ)れさせてくるような感覚(カンカク)(オソ)われると、もう目の前の悧羅(リラ)のことしか考えられない。何かが()()()()と思わないではなかったがそれ以上(イジョウ)は考えたくても考えられなくなる。長い間見たくて(タマ)らなかった悧羅(リラ)の姿が()()にあって自分の(ウデ)(オサ)まり忋抖(カイト)(コタ)えてくれているのだから、今この時に()いて(ホカ)優先(ユウセン)すべきことなどない。


「      」


時折(トキオリ)甘い(アエ)ぎに混じって悧羅(リラ)が何かを言っているがそれもまた(モヤ)がかっているかのように聞こえてはこない。聞こえてくるのは忋抖(カイト)(イツク)しみに(コタ)える甘い(アエ)ぎと()れた(イキ)づかいだけだ。夢にしては触れる感触(カンショク)(ハダ)質感(シツカン)も、(タガ)いから流れ落ちる(アセ)感覚(カンカク)も全てがしっかりと忋抖(カイト)に伝わってくる(ホド)鮮明(センメイ)だ。


夢なら夢でいい。


この悧羅(リラ)の姿をずっと見たかった。

こんな(フウ)忋抖(カイト)(アタ)える快楽(カイラク)でよがり(ミダ)れて(アエ)ぐ姿を見たくて(タマ)らなかった。それが(カナ)えられているのだとしたら、夢の中だけでも忋抖(カイト)の想いを(ダレ)かが聞き届けてくれたということだろう。であれば今だけは忋抖(カイト)の思うまま、ずっと()めていた想いを出し()くしても(ユル)される(ハズ)だ。


(フタタ)(モヤ)がかってきた意識(イシキ)の中で忋抖(カイト)(ヨク)(シタガ)うことを決める。


どれだけの間()らしたのか(スデ)悧羅(リラ)の顔は(トロケ)て少し指を動かすだけで甘い声を上げていた。その姿にぞくりとして、引き寄せられるように(クチビル)(カサ)ねて(ムサボ)るように(ウバ)いながら手は身体(カラダ)()わせていく。忋抖(カイト)の手が細すぎる(アシ)の間に()れると、びくり、と悧羅(リラ)身体(カラダ)(フル)えた。そのまま(イツク)しみ続けると(フサ)がれたままの(クチビル)から声が()れて身を(ヨジ)っている。


「……ここが弱いの?」


口付(クチヅ)けから解放(カイホウ)して(タズ)ねるが(コタ)えられる余裕(ヨユウ)の無い表情(ヒョウジョウ)忋抖(カイト)の背中をぞわりと何かが走った。


「じゃあ()えられないくらい(イツク)しむことにするよ」


微笑(ホホエ)んでから悧羅(リラ)(アシ)を開かせると()げられないように(ホソ)(コシ)をほんの少しだけ持ち上げて支える。待て、と悧羅(リラ)の手が忋抖(カイト)(ウデ)(ツカ)んだけれど待てる(ハズ)もない。(アシ)中心(チュウシン)に顔を(ウズ)めて()いつくと甘い声が(ヒビ)いた。その声をもっと聞きたくて(シタ)()わせ(ナブ)り続けると()(カエ)っていく身体(カラダ)とは裏腹(ウラハラ)(アシ)が閉じられようとする。


「だーめ」


閉じかけていた(アシ)身体(カラダ)(トド)めて思い切り()いつくと大きな(アエ)ぎと共に悧羅(リラ)(ノボ)りつめて大きく()ね上がった。それでも(ナブ)り続けると忋抖(カイト)(カタ)を手で()して(コシ)()がそうとする姿が(タマラ)なく(ナマメ)かしくて加減(カゲン)も出来ない。幾度目(イクドメ)かに悧羅(リラ)(ノボ)りつめて()てるといつのまにか身体(カラダ)(マワ)されていた(アシ)忋抖(カイト)()(モド)そうと(カタ)()れていた手も力無(チカラナ)く落ちてぽすりと布団(フトン)(カワ)いた音がする。もう、と()れた(イキ)の中から(ウッタ)える声も聞こえたけれど止まることが出来ずに(コシ)を支えていた腕を離して更に()める。(シタ)と共に悧羅(リラ)の中に指も入れて(イツク)しむ速度を上げると()えきれずにまた身体(カラダ)()ねた。休むことを(ユル)さずにいると2度3度と続けて()ねた悧羅(リラ)身体(カラダ)(ヨジ)ってどうにか強すぎる刺激(シゲキ)から逃げ出そうとする。それを引き止めて吸い付くとまた身体(カラダ)()(カエ)り始めた。


「…あ……、まっ……!」


また(ノボ)りつめようとした悧羅(リラ)に頭を()されて今度(コンド)(シタガ)って顔を上げる忋抖(カイト)にぐったりと身体(カラダ)を投げ出している姿が見えた。息は(ミダ)れ顔だけでなく身体(カラダ)も赤く火照(ホテ)りしっとりと(アセ)ばんでいるのに暗い部屋にあってもその白い(ハダ)(ホノ)かに浮かびあがって何とも(ナマメ)かしい。(ヒタイ)(ホオ)に口付けるとそれだけでびくりと身体(カラダ)(フル)わせている。()てる寸前(スンゼン)()めたのだ。余韻(ヨイン)の残った身体(カラダ)(モト)めるように(ウゴメ)いて忋抖(カイト)身体(カラダ)(オク)(ウズ)いた。


「……もう待てぬ……」


ついている両手(リョウテ)の中にすっぽりと(オサマ)った悧羅(リラ)から(フル)える声で(モト)められてつい忋抖(カイト)は小さく(ワラ)ってしまう。(ホオ)()でると(タカブ)った(ホソ)身体(カラダ)がびくりと動く。


「…ああもう…、可愛(カワイ)いなぁ…」


(ナダ)めるように口付(クチヅ)けるとそれにも身体(カラダ)(フル)わせる悧羅(リラ)(イト)おしくて目を(ホソ)めた忋抖(カイト)に、早く、と悧羅(リラ)懇願(コンガン)しながら受け入れるために(ヒザ)を立てている。それに(コタ)える(タメ)()てがってゆっくりと中に入り()んでいくのだが、思っていたよりも(セマ)()()けも強い。ふあっと甘い声を上げながら忋抖(カイト)を受け入れてくれている悧羅(リラ)身体(カラダ)(フル)えながら()(カエ)っていくのを強く抱き()めて(ウデ)の中から()がさないようにしながら初めて入る悧羅(リラ)の中を確かめるようにゆっくりと(オク)まで進む。最奥(サイオク)まで到達(トウタツ)すると()えきれなかったのか悧羅(リラ)()てた。その刺激(シゲキ)でより(ツヨ)()め付けられて忋抖(カイト)()()()()()()()()になるが何とか()える。かたかたと(フル)える身体(カラダ)をぎゅうっと強く()()めると忋抖(カイト)は大きく息を()いた。


(ユメ)であれば()めないでほしい。


積年(セキネン)の願いが(カナ)えられた充足感(ジュウソクカン)に知らず知らずの内に(ナミダ)(アフ)れてしまう。


悧羅(リラ)を1人の(オンナ)として心に置いたのはいつからだったろう。()の国から生来(セイライ)の地へ里を(ウツ)して寝込(ネコ)んだ悧羅(リラ)幼心(オサナゴコロ)(マモ)りたいと思った。初めての闘技(トウギ)で負けた時もこれでは悧羅(リラ)(マモ)れないと痛感(ツウカン)して(クヤ)しくてたまらなかった。何より当たり前に悧羅(リラ)(カタワ)らに()いて人目(ヒトメ)(ハバカ)らずに(イツク)しめる(シン)(ウラヤ)ましくて仕方(シカタ)がなかった。忋抖(カイト)悧羅(リラ)(ソバ)に居て容易(タヤス)()れるためには()という立場(タチバ)であると同時に()()()えることは(ユル)されないことだったから。思い返せば()()幼子(オサナゴ)の時から羨望(センボウ)(イダ)いていていつのまにか()()(アワ)恋心(コイゴコロ)に変わっていったのだろう。悧羅(リラ)(オモ)っているからこそ(ダレ)とどれだけ(ジョウ)()わしても()たされることのなかった心の(カワ)きも今この瞬間(シュンカン)(ウルオ)っていくような気さえする。


これが(タト)(ユメ)であったとしても今まで(ユメ)に見ることさえできなかったのだ。(ココロ)何処(ドコ)かで背徳感(ハイトクカン)とも罪悪感(ザイアクカン)とも()べる思いが渦巻(ウズマ)いていたからなのは忋抖(カイト)にだって分かっている。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


だが今こんな(ユメ)を見ることを(ユル)されたのであれば忋抖(カイト)はこのまま悧羅(リラ)(オモ)っていてもよい、ということなのだろうか?


そう思えば(カナ)うことのなかった想いを(ダレ)が何と言おうと味方(ミカタ)でいる、と言ってくれた哀玥(アイゲツ)(ホカ)にも(ユル)してくれる者がいるような気にすらなってしまう。


そんな事などある(ハズ)もないのというのに。


()たされていた(ココロ)(トゲ)()さるがそれでもいいと思う。(ユメ)にしてはあまりに現実味(ゲンジツミ)のある感覚(カンカク)に心の(ソコ)から()めないでほしいと(ネガ)ってしまう。悧羅(リラ)の中に入ったのに抱きしめたまま動かずに嗚咽(オエツ)()らす忋抖(カイト)の首に細くてしなやかな(ウデ)(マワサ)れた。


「…忋抖(カイト)…?」


(ツヤ)めいた声で()ばれては(アラガ)うことなどできる(ハズ)もない。抱きしめた(ウデ)(ハナ)さずに顔を上げた忋抖(カイト)から(アフ)れる(ナミダ)悧羅(リラ)の細い(ユビ)(ヌグ)ってくれる。入っているだけでも先程(サキホド)()てた余韻(ヨイン)が残っているのか、その指は小さく(フル)えていた。


「…(ユメ)なら()めないで、って(ネガ)ってた…」


(アフ)れる(ナミダ)を止める事もできない忋抖(カイト)の顔を悧羅(リラ)の手が(ツツ)んで引き()せるとそのまま深く口付(クチヅ)けてくる。


「…(ユメ)ではない…」


(クチビル)()れる距離(キョリ)で言われて、は?、と忋抖(カイト)身体(カラダ)(マタタ)()()える。ひゅっと息を()んで咄嗟(トッサ)悧羅(リラ)の中から出ようとしたが忋抖(カイト)をより強く()め付けて悧羅(リラ)はそれを(ユル)さなかった。(ツツ)んだままの忋抖(カイト)の顔が()(サオ)になっていくのを微笑(ホホエ)んで見ながらもう一度引き()せて軽く口付(クチヅ)ける。


「…(ユメ)などではないよ?そのように(オビ)えることも(カナ)しむこともない。()()()()()()()(ワラワ)忋抖(カイト)のもの。其方(ソナタ)の思う(トオ)りにしてよいのだ…」


そう言われても(オドロ)きを(カク)せない忋抖(カイト)が、ごめん!、と(アヤマ)りながら悧羅(リラ)から離れようとするが()されることはない。中に入ったままの忋抖(カイト)が出て行かないように引き()せて(フカ)口付(クチヅ)けられては忋抖(カイト)も動きを止めるしかない。


「…()びねばならぬのは(ワラワ)(ホウ)じゃ…。其方(ソナタ)(オモ)いを知っておったというのに心地良(ココチヨ)すぎてそのままにしてしもうた。それが其方(ソナタ)を苦しめておるということも分かっておったというに…」


すまなんだ、と(ヒタイ)を付けてくれる悧羅(リラ)身体(カラダ)からどうにか自分を(ハナ)そうと(モガ)きながら、でも、と忋抖(カイト)は言う。


「こんなの駄目(ダメ)だよ…。(ユル)されることじゃない…。だって(オレ)母様(カアサマ)なんだよ?…何より父様(トウサマ)顔向(カオム)けできない…」


「そのような些末(サマツ)なことなど思い(ナヤ)むことなどないえ?何より(シン)が言い出したこと(ユエ)


ふふっと(ワラ)悧羅(リラ)に、は?、と忋抖(カイト)は目を見開いた。悧羅(リラ)を何より(イツク)しみ(ホカ)(ダレ)であっても()れることも、ともすれば見ることさえも嫌悪(ケンオ)する(シン)が自分以外の者が悧羅(リラ)()()()()()()れることを(ユル)すなど考えられることではないしそれは悧羅(リラ)も同じである(ハズ)だ。姉である媟雅(セツガ)(ハラ)宿(ヤド)った時、(オサ)という立場(タチバ)であれば他にも(ジョウ)()わす者を持ち数多(カズオオ)くの子を()さねばならないことを分かった上で(シン)以外とは何があろうとも(ジョウ)()わさないと宣言(センゲン)したのは(ダレ)もが知る話だ。結果として忋抖(カイト)(フク)めた7人の子を(サズ)かれたけれど、それは(ホカ)でもない(シン)悧羅(リラ)(ツレアイ)となったからだ。(シン)でなければ悧羅(リラ)は子を持つことができなかったことは子どもたちなら(ミナ)が知っているし悧羅(リラ)(ハラ)に残る(イタ)ましい傷跡(キズアト)は2人の間にあった事を今でも雄弁(ユウベン)(カタ)り続けている。それでも(ナオ)(フタタ)び手を取り合うことを(ヨシ)とした(シン)悧羅(リラ)(タガ)いを求める(オモ)いと(ムス)びつきが強いことも、そこに入り込む余地(ヨチ)がないことも、だ。


「…な…っん…でっ…⁈」


ぐるぐると(マワ)思考(シコウ)の中でそれだけを伝えながらそれでも忋抖(カイト)はどうにか悧羅(リラ)から離れようと(ココロ)みるのだが(ウデ)の中の悧羅(リラ)微笑(ホホエ)んで首を()った。


「…忋抖(カイト)(シン)にとって特別(トクベツ)なのだから、と。それは(ワラワ)にとりても同じであろう?とな」


「…でもそれじゃあ母様(カアサマ)が苦しんじゃうじゃないか…。父様(トウサマ)(ユル)したって母様(カアサマ)父様(トウサマ)以外と()()()()()(ハダ)(カサ)ねたくなんてないはずでしょ…?」


必死(ヒッシ)身体(カラダ)を離そうとする忋抖(カイト)をより強く悧羅(リラ)は引き止めた。


「…そうだな…、別の者ならば()れられるなど考えるだけでも虫酸(ムシズ)が走る。…なれどな、忋抖(カイト)…」


離れようとする忋抖(カイト)の首にしなやかな(ウデ)(カラ)ませると悧羅(リラ)(オダ)やかに微笑(ホホエ)んで見せた。


其方(ソナタ)(ワラワ)にとりても特別(トクベツ)な者じゃ。血の(ツナ)がりや其方(ソナタ)(ワラワ)の子である、ということを(ノゾ)いてもそれは(アマ)りあること。なれど其方(ソナタ)(ワラワ)(オモ)うてくれる(ホド)には(オモ)いを返すことなどできよう(ハズ)はないのだが。…それでもほんの一時(イットキ)其方(ソナタ)のモノになることくらいは(ヨシ)とできる。…それもまた(シン)(ワラワ)()いてきかせてくれた。見知(ミシ)らぬ者なら(マカ)せようとは思わぬが忋抖(カイト)であるからこそ(ユル)すのだ、と(ワラ)っておったよ」


ふふふ、と(ワラ)われても忋抖(カイト)はそれを素直(スナオ)に受け取ることができない。このまま()き進んでしまっては、もう後戻(アトモド)りが出来ない所に(イタ)ってしまう。そうなってしまってからでは忋抖(カイト)(シン)悧羅(リラ)の子であるという()らぐことのない居場所(イバショ)も失うことになるなのだ。(ダレ)(トガ)められることもなく悧羅(リラ)(ソバ)(ハベ)ることも、当たり前のように()れて()しむことのない愛情(アイジョウ)を受け取ることもできなくなってしまう。これまでは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()(ムク)われないと分かっていても()えることが出来ていた。()()(ウシナ)うことになるならばこのまま悧羅(リラ)(イダ)けないことなど、またこれまでと同じ想いを抱いて生きていくだけなのだから天秤(テンビン)にかける(ホド)のことでもない。子としての顔や振舞(フルマ)いを(エン)じ続けることには(ツカ)れてやるせなく思ってしまう時もあるけれど、それで悧羅(リラ)(カタワ)らに居続(イツヅ)けられるのであれば安いものだろう。


今までもどうにか()えてこれたのだ。

悧羅(リラ)の中にほんの一時(ヒトトキ)だけでも入れて(ツナ)かることが出来ただけで満足(マンゾク)すべきだ。


「…忋抖(カイト)…」


考えあぐねる忋抖(カイト)の思いを見透(ミスカ)すように悧羅(リラ)()ぶと動揺(ドウヨウ)(カク)せない(マナコ)悧羅(リラ)(トラ)えた。どう動くのが正しいのか(ワカ)らないという思いを(タタ)えたままの忋砥(カイト)悧羅(リラ)はますます微笑(ホホエ)みを深くする。


(シン)はの、もしも(ワラワ)(マド)わしに其方(ソナタ)(アラガ)うことが出来たならば(マコト)を話して忋抖(カイト)に選ばせよ、とも言うておったに。(シン)忋抖(カイト)を一人の(オノコ)として(タツト)んでおるよ?…(ワラワ)(アズ)けてもよいと思う(ホド)に。そしてそれは(ワラワ)とて同じこと。忋抖(カイト)の想いに真摯(シンシ)に向き合わねばならぬ、との。…(ユエ)に今()()()()()()(ワラワ)意志(イシ)忋抖(カイト)(アン)ずることなど決して起きはせぬと制約(セイヤク)しよう。(シン)(ワラワ)忋抖(カイト)(スベ)てを受け入れると決めておる(ユエ)あとは忋抖次第(カイトシダイ)じゃ。其方(ソナタ)の心のままに決めても良いのだよ?」


(ヤサ)しい声音(コワネ)(ホオ)()でてくれる悧羅(リラ)(ハサ)むように置いていた手で忋抖(カイト)は強く(コブシ)(ニギ)った。忋抖(カイト)のことを(オモンバカ)って言ってくれているのは分かっている。それでも悧羅(リラ)の顔を見ることができずに(ウツム)いてしまう。


「…でも、(オレ)は自分で(マド)わしを()いたわけじゃないよ?母様(カアサマ)に言われて正気(ショウキ)(モド)されただけだ…」


「そうかのう?忋抖(カイト)(ミズカ)らのチカラで(ワラワ)(マド)わしに(アラゴ)うてみせたと思うておるのだが?…何より今この時でさえ(ワラワ)(マド)わしを使(ツコ)うておるに」


言われてみれば確かに周囲(シュウイ)には甘い(ニオ)いが(タダヨ)ってはいるが(スベ)()(ハナ)たれたものではない。悧羅(リラ)が本気で(マド)わしを行使(ツカ)ったなら()()()()()()ことなどできないのは(ムカシ)一度だけその()を持って知っている。はあ、と嘆息(タンソク)して(マワ)りを見渡(ミワタ)してみれば此処(ココ)何処(ドコ)なのかも分からない。薄暗(ウスグラ)寝所(シンジョ)以外には(ハル)か上から瀑布(バクフ)のようなものが()ちている。それが御簾(ミス)の代わりに2人の姿を(カク)して広がり落ちているだけだ。(マド)わしの効果(コウカ)が他に()れないような(トバリ)役割(ヤクワリ)もあるのだろうか?ぐらりとまた頭の(シン)(シビ)れ始めて忋抖(カイト)(イソ)いで頭を()って()()()()いだしたが身体(カラダ)はそうはいかない。ただでさえ(タギ)り切っているのだ。考えることを止めてすぐにでも動き出したいのを(ニギ)った(コブシ)により力を()めてどうにか(コラ)える。(ニギ)った(テノヒラ)(ツメ)()()んで血が(ニジ)むが(カス)かな痛みは忋抖(カイト)忋抖(カイト)のままで()させてくれる最後の(トリデ)のように思えた。より強く(コブシ)(ニギ)ると、これ、と悧羅(リラ)忋抖(カイト)の手に()れた。


「そのように(ツヨ)(ニギ)るでない。(キズ)が付いておるではないか」


()れた手がじんわりと熱を持つがそれでも忋抖(カイト)決断(ケツダン)することができない。(クチビル)()んで下を向いたままの忋抖(カイト)(キズ)(イヤ)すと悧羅(リラ)再度(サイド)忋抖(カイト)の顔を両手で(ツツ)んだ。


忋抖(カイト)


(オダ)やかに呼ばれても忋抖(カイト)は動くことも顔を上げることもできない。


忋抖(カイト)(ワラワ)を見てはくれまいか?」


するりとしなやかな指で(ホオ)をくすぐられて忋抖(カイト)もそろりと目を開けるが正面(ショウメン)から悧羅(リラ)視線(シセン)を受け止めることが出来ずに目を()らしてしまう。それに小さく(ワラ)って悧羅(リラ)忋抖(カイト)を引き寄せた。


「…まっ…!!」


(アワ)ててのけぞろうとするが間に合わない。引き寄せられるままに深く口付(クチヅ)けられてしまった。


「…(ワラワ)(マド)わしを使(ツコ)うておる。なれど其方(ソナタ)はそれに(アラゴ)うておろう?今の忋抖(カイト)(マゴ)うことなき忋抖(カイト)であるよ?(ワラワ)(マド)わしに(アラゴ)うてみせる者などそうはおらぬ。…強い(オノコ)になったな」


(アデ)やかな微笑(ホホエ)みを浮かべて悧羅(リラ)は変わらずに忋抖(カイト)(ホオ)()で続ける。


「…それでも、こんなこと(ユル)されないんだ…」


「おやおや、まだそのようなことを(モウ)すのかえ?何より忋抖(カイト)(ダレ)(ユル)しを()うておる?(ワラワ)も、…何より(シン)もとうに忋抖(カイト)(ミト)め受け入れ(ユル)しておるというに…。(ホカ)(ダレ)(ユル)してほしいと(モウ)しておるのだろうの?」


くすくすと(ワラ)われて忋抖(カイト)は大きく嘆息(タンソク)した。全身から力が()けて悧羅(リラ)(オオ)(カブ)さりそうになるのを腕に力を込め直してどうにか(トド)まる。けれど()けた力に呼応(コオウ)するように大粒(オオツブ)(ナミダ)(アフ)れてきてしまった。


(ダレ)(ユル)しを()うていたのかなど明白(メイハク)だ。

尊敬(ソンケイ)する父と敬愛(ケイアイ)する母。

その2人以外の(ダレ)(ユル)されようとも思っていない。

(ユル)される(ハズ)もないと信じて(ウタガ)わなかったのだから。


()びなければならない者はいるけれど。


「…ほんとうにいいの?…俺、このまま母様(カアサマ)(イト)しく(オモ)っていてもいいのかな…?」


忋抖(カイト)()()()()()()(オモ)うてくれるのなら(ワラワ)にとりてこれ以上の(ホマレ)はない」


「…父様(トウサマ)、…軽蔑(ケイベツ)しないかな…?」


(シン)がかえ?可笑(オカ)しなことを。あれは(ヨロコ)んでおったよ?流石(サスガ)自慢(ジマン)の子だ、との」


(アフ)れる(ナミダ)悧羅(リラ)(ヌグ)ってくれるがとめどなく(アフ)れてきて止めることができない。(ニジ)んだ視界(シカイ)では悧羅(リラ)がどんな表情(ヒョウジョウ)で自分を見ているのかも知ることができないけれど(ツム)がれる言葉のひとつひとつが(アタタ)かく忋抖(カイト)身体(カラダ)()(ワタ)って(ムネ)奥底(オクソコ)に深く()さった(トゲ)()かし始めてくれる。


「…だけど、()()んだらもう(モド)れない…。もう2度と2人の子どもとしていられなくなるんだ…」


おやおや、と悧羅(リラ)苦笑(クショウ)しながら忋抖(カイト)(マブタ)口付(クチヅ)けた。


()なことを…。忋抖(カイト)(シン)(ワラワ)の子、それは変わらぬ。なれどそれを()えてしまおうとも忋抖(カイト)忋抖(カイト)であろ?」


ぽんぽんと頭を()でられて忋抖(カイト)身体(カラダ)からますます力が()けていく。


「子であることは変わらぬこと。こればかりはせんないが容赦(ヨウシャ)してたも」


「…だけど(オレ)欲深(ヨクブカ)いから…。()()()えたら母様(カアサマ)母様(カアサマ)として見れなくなる…。きっとまた我慢(ガマン)できなくなって()()()()()…」


(ウッタ)える忋抖(カイト)悧羅(リラ)が首を(カシ)げている。


(ヨク)(フカ)いのは(ワラワ)(ホウ)だな。(シン)だけでなく忋抖(カイト)までその()(ココロ)(シバ)ろうとしておるのだから。しかしながら忋抖(カイト)(ワラワ)(シバ)られるのが(イヤ)だと(モウ)すのであれば考えないでもないが…」


「…(イヤ)なわけがないじゃないか…」


そうだ。

(イヤ)だなどと思う(ハズ)がない。

(イヤ)だと思っていたなら藍琳(リンリー)悧羅(リラ)身代(ミガ)わりにすることなどしなかった。


だが()()()()()()()()()()最後(サイゴ)最早(モハヤ)(オサ)えていた想いを(カク)すことはできなくなるだろう。それでは家族(カゾク)にも(サト)民達(タミタチ)にも(シメ)しがつかないし、何より悧羅(リラ)名声(メイセイ)(キズ)をつけてしまうことになりかねないことが(コワ)くて仕方(シカタ)がない。そう(ウッタ)える忋抖(カイト)の首に腕を(マワ)して引き寄せると悧羅(リラ)は強くその身体(カラダ)を抱きしめた。


「そのような些末(サマツ)なことを(ナヤ)むことなどない。里の中においても親子(オヤコ)であれ兄姉弟妹(キョウダイ)であれ恋慕(レンボ)(チギ)る者とておるのだから。本来(ホンライ)(アヤカシ)とはそういうものなのだが…なれどそうだな…、忋抖(カイト)がそのように(クル)しむのであれば(ワラワ)らのみの秘事(ヒメゴト)とするのはどうじゃろう?」


秘事(ヒメゴト)?、と(ツブヤ)いた忋抖(カイト)に、そうだ、と悧羅(リラ)(ウナズ)いた。


忋抖(カイト)(シン)妲己(ダッキ)哀玥(アイゲツ)睚眦(ガイシ)(ワラワ)だけの秘事(ヒメゴト)


「…その中では気持ちを(カク)さなくてもいいの?」


「そうじゃ。なれど覚悟(カクゴ)はいるえ?(ワラワ)(ヨク)(フコ)うあると()うたであろ?」


忋抖(カイト)が顔を上げると悧羅(リラ)は少し考え込む素振(ソブ)りを見せている。


覚悟(カクゴ)ってなに…?」


周囲(シュウイ)からの侮蔑(ブベツ)嫌悪(ケンオ)か、それとも醜聞(シュウブン)か。忋抖自身(カイトジシン)()りかかるものならばどれだけでも()えられる。だがそれが悧羅(リラ)にまで(オヨ)ぶとなるならば()()()()忋抖(カイト)(ノゾ)まないし(ノゾ)めない。顔を強張(コワバ)らせながらそう(ツタ)えた忋抖(カイト)悧羅(リラ)はくすくすと笑ったまま、2つ、と指を立てて見せた。


「ひとつ。(ワラワ)(オモ)うてくれておる内は(ワラワ)から(ハナ)れることは(ケッ)してまかりならぬ。それこそ(ワラワ)が天に(カエ)るまで」


「…それ、ずっと(ソバ)に居ていいって言ってくれてるのと同じだよ…」


目を見開いた忋抖(カイト)(フル)える声で言うが悧羅(リラ)は小さく(カタ)(スク)めるばかりだ。


「おや?(イヤ)かえ?ならば考え直さねばならぬではないか」


悪戯(イタズラ)(ワラ)っている悧羅(リラ)()られて忋抖(カイト)()きだしてしまった。ようやく(ナミダ)の止まった忋抖(カイト)(アラガ)うことを(アキラ)めて悧羅(リラ)(ホオ)()れる。


(イヤ)だなんて言うわけないし思うわけもない。(オレ)にとってはすごく(シアワ)せなことだもん」


悧羅(リラ)(ヒタイ)口付(クチヅ)けて、(チカ)うよ、と忋抖(カイト)も言う。


「じゃあもうひとつは?母様(カアサマ)(オレ)に何の覚悟(カクゴ)()いてくれるのかな?」


(オモ)いを(カク)さずに(ソバ)に居ていいと言ってくれただけで(ホカ)にどんなことを()いられても良いと思えてしまう。それほどの(ヤス)らぎを(アタ)えてもらえたのだから、何を言われたとしても(カマ)わない。悧羅(リラ)がしてくれていたように(ホオ)をくすぐるように()でながら次の言葉(コトバ)を待っていると、ようやく目の合った忋抖(カイト)(クチビル)悧羅(リラ)の指が当てられて、それだ、と笑った。


()()()()()()()(ハハ)()ばれるはどうにも、な…。()()ぶことにしようか?」


途端(トタン)忋抖(カイト)の動きが止まった。悧羅(リラ)の名を()ぶことが出来るのは(カギ)られた者たちだけだ。けれどその中で(イツク)しみを()めて()()()()()()()()()()()(シン)だけ。それを忋抖(カイト)にも(ユル)すということ……、それはつまり忋抖(カイト)を本当に受け入れるという想いの(アラワ)れと同じことなのだ。


「…それはあんまりにも(オレ)(アマ)()ぎないかな…?」


「そうかえ?なれど其方(ソナタ)(オモ)いを()っておるというに、いつまでも母と()ばせておる(ホウ)(コク)じゃと思うただけなのだが…。ならぬかの?」


首を(カシ)げて見せた悧羅(リラ)忋抖(カイト)(イキオ)いよく首を()った。


駄目(ダメ)じゃない!駄目(ダメ)じゃないけど(オレ)みたいなのに褒美(ホウビ)()ぎてるから」


(アワ)てる忋抖(カイト)余程(ヨホド)可笑(オカ)しかったのか、悧羅(リラ)が声を上げて笑う。


「ならばよいではないか。して忋抖(カイト)?」


(ワラ)いを(コラ)えながら悧羅(リラ)がするりと忋抖(カイト)の顔に手を()ばした。


(ワラワ)から(モウ)さねばならぬことはこれで(スベ)てなのだが…。あとは忋抖(カイト)がどう()りたいかだけじゃ」


(アデ)やかに微笑(ホホエ)まれて忋抖(カイト)三度(ミタビ)大きく(イキ)()いた。本当は(ホカ)にも考えなければならないことがあるのは分かっている。それでも今はこの甘美(カンビ)(イザナ)いを受け入れて悧羅(リラ)()とされてみたい。()いていた腕を悧羅(リラ)の細い身体(カラダ)(マワ)して強く抱きしめると悧羅(リラ)もまた優しく抱き返してくれた。


「…なんかもう…、(オレ)このまま死んでも良い…」


「おやまあ、先刻(センコク)(ハナ)れることは(ユル)さぬと()うたというに。もう(チカ)いを()ててしまうのかえ?」


「それだけ(シアワ)せだってことだよ。…でも本当にいいの…?」


「まだそのようなことを(モウ)すのか。(ワラワ)忋抖(カイト)気持(キモ)ちを(タズ)ねておったと思うたのだが、これでは何も変わらぬではないか」


やれやれ、と嘆息(タンソク)した悧羅(リラ)の耳に、もう決まってるよ、と忋抖(カイト)が顔を近付けて(ササヤ)いてより一層(イッソウ)抱き締める腕に力を()める。そのまま悧羅(リラ)を押し付けるようにすると悧羅(リラ)が息を()んだ。幾度(イクド)()てさせられた挙句(アゲク)(ハイ)()まれたままで動かれず熱を持っていたのだ。()らされ続けていたようなものなのだから小さな刺激(シゲキ)でも背中を官能(カンノウ)(ハシ)っていく。腕の中の悧羅(リラ)()(ヨジ)るのを見やってから忋抖(カイト)(イキオ)いをつけて動き出すと、すぐ(ソバ)悧羅(リラ)の甘い声が聞こえてきた。細い身体(カラダ)()がさないように強く抱きしめたまま()め続けると次第(シダイ)悧羅(リラ)身体(カラダ)()り返ってくる。話し始める直前(マデ)()らして、()てる寸前(スンゼン)(トド)めていたのだから苦しかっただろうに忋抖(カイト)(オモ)いを(サキ)に考えてくれた。忋抖(カイト)後悔(コウカイ)罪悪感(ザイアクカン)背徳感(ハイトクカン)さえも感じずに()むように、一言一言(ヒトコトヒトコト)(エラ)びながら伝えてくれた。悧羅(リラ)がくれた言葉(コトバ)はすべからく忋抖(カイト)間違(マチガ)いなく長い(アイダ)切望(セツボウ)していたものだった。腕の中で()ねるように()てた悧羅(リラ)を休ませることなく()き上げ続けると、幾度(イクド)()てて大きくなる甘い(アエ)ぎの中から、しばし待て、と懇願(コンガン)する声も聞こえてくる。それでも止まってやることなど出来る(ハズ)もない。


動き続けながら抱きしめていた腕を(ホド)いて投げ出されていた悧羅(リラ)の両手に自分の手を(カラ)ませて押し付けると、抱きしめたままでは見ることが(カナ)わなかった悧羅(リラ)の顔がはっきりと見えてますます忋抖(カイト)(タガ)(ハズ)されてしまう。()てさせられ続けて強く閉じられた(マブタ)には(ナミダ)(ニジ)んでいた。(コボ)れ落ちそうな(ナミダ)(シタ)()めとると(ウッス)らと(マブタ)が開けられて忋抖(カイト)(トラ)える。


「……あ…っ、…(カイ)…っ!」


動きを止めない忋抖(カイト)翻弄(ホンロウ)されながら()れた息と(アエ)ぎの中から名を()(クチビル)(ナマメ)かしくて忋抖(カイト)乱暴(ランボウ)口付(クチヅ)けてしまう。(ムサボ)るように口内(コウナイ)(モテアソ)びながら動きを(ハヤ)めるとくぐもった声と共に悧羅(リラ)がまた()てた。その()め付けがあまりにも強くて忋抖(カイト)(コラ)え切らずに(ヨク)()き出してしまうとその刺激(シゲキ)でも悧羅(リラ)身体(カラダ)(フル)えている。(スベ)ての(ヨク)悧羅(リラ)の中に()き出してから口付(クチヅ)けを()くと(タガ)いの()れた(イキ)の音だけが聞こえてくる。とろりとした悧羅(リラ)の顔も、しっとりと(アセ)()れて(アカ)火照(ホテ)った身体(カラダ)もずっと見たくて(タマ)らなかったものだ。


もっと見ていたい。

もっと聞いていたい。

もっと(ミダ)れて強く自分を(モト)めて()しい。


息を(トトノ)える(ジカン)さえ()しくて(アセ)()れた首筋(クビスジ)()いつくとまた悧羅(リラ)の甘い声が場に(ヒビ)く。しなやかな身体(カラダ)沿()うように()であげてからころりと悧羅(リラ)だけを返すと中に入られたままで向きを変えられて悧羅(リラ)が小さく(フル)えている。返した(コシ)片手(カタテ)で持ち上げて(ササ)えながら()き上げ始めると悧羅(リラ)()えるように布団(フトン)(ツカ)んだ。その背中から()き上げる(タビ)にはらはらと長く(ツヤ)やかな(カミ)()がれ落ちて忋抖(カイト)の目に(アザ)やかな(ハス)(ハナ)が飛び込んでくる。左肩(ヒダリカタ)にだけ()いていた(ハナ)悧羅(リラ)窮地(キュウチ)(オチイ)(ゴト)王母(オウボ)によって(タワム)れのように()やされ、今では(ツボミ)(フク)めれば背中(セナカ)の半分を()めている。(オサナ)(コロ)には当たり前のように()れられていた(ハナ)()れられなくなったのはいつからだったのだろう。


()かび上がった(アセ)(マト)ってまるで朝露(アサツユ)(シタタ)り落ちているような(ハナ)にそっと()れてからひとつひとつを(タシ)かめるように口付(クチヅ)けて(シタ)()わせる。それだけでも(アエ)ぎが大きくなるのにまだ()きたくて(タマ)らない。()き上げながら()いた手を悧羅(リラ)(アシ)の中心に当てて動かし始めると、びくり、とまた()り始めた。


「……っ!同じ、くは…っ」


布団(フトン)(ツカ)む力とともに身体(カラダ)強張(コワバ)らせるのも伝わってきて、忋抖(カイト)はその背中に(オオ)(カブ)さった。顔も布団(フトン)に押し付けて自分が()げださないようにしているのだろうが、それもまたいじらしくて(タマ)らなくなってしまう。見えている耳を()んでみるとより身体(カラダ)強張(コワバ)って()め付けも強くなる。


「…力()いて?…悧羅(リラ)


そっと(ササヤ)いた忋抖(カイト)の声に悧羅(リラ)身体(カラダ)が強く()ねて()てた。


「力()いてって言ったのに(ギャク)じゃない?」


「そうは…っ()うても…っ」


()て続ける悧羅(リラ)を見ながら()め立て続けると何度も(アエ)ぎの中から、待て、と願われる。都度(ツド)、待てない、と苦笑(クショウ)しながら伝えて悧羅(リラ)(アシ)が小さく痙攣(ケイレン)しだすとようやく忋抖(カイト)も2度目の(ヨク)悧羅(リラ)の中に()き出した。(フル)えながら受け止めてくれている悧羅(リラ)()き上げると(アセ)るような声が()れ出してくる。


「あ、いまは…っ」


「だーめ」


抱き上げて向かい合わせに(ヒザ)の上に(スワ)らせると悧羅(リラ)を強く抱きしめて押し付ける。(イマ)忋抖(カイト)(ヨク)を受け入れながら()てている最中(サナカ)最奥(サイオク)まで入り()まれた悧羅(リラ)はまた容易(タヤス)(ノボ)りつめてしまう。


駄目(ダメ)だよ?(ノガ)さずに全部()んでね?」


より押さえつけて動き出そうとする忋抖(カイト)(ホオ)悧羅(リラ)の指が()れて名を()ばれた。動きたいのを止められて(ホオ)(フク)らませると、このままで良いから、と悧羅(リラ)が聞くように(ウナガ)してくる。


「もう、なあに?」


仕方(シカタ)なく動きを止めた忋抖(カイト)には悧羅(リラ)も小さく(ワラ)うしかない。


「…忋抖(カイト)(ワラワ)はまだ其方(ソナタ)覚悟(カクゴ)を聞いてはおらぬよ?」


「え?今更(イマサラ)?」


()()()()行動(コウドウ)を見れば(アキ)らかではないか、と苦笑(クショウ)する忋抖(カイト)悧羅(リラ)は静かに首を()って見せる。


「ならぬ。(ワラワ)とともに()るということは(サイワイ)なことばかりではない。(ワラワ)はひとりしか()らぬし(チギ)りを(ムス)んだ(シン)(ワラワ)にとりて唯一無二(ユイイツムニ)伴侶(ハンリョ)。こればかりは其方(ソナタ)にどのように()われようとも変えてやることは(カナ)わぬ。それ(ユエ)()()()()()()()(ツラ)(クル)しい(オモ)いを()くことになるは(アキ)らか。…なれど忋抖(カイト)がほんに(ワラワ)(ソバ)(ノゾ)むと()うてくれるのであれば、(ワラワ)(シン)もこれから来る其方(ソナタ)(ゴウ)をすべからく(トモ)背負(セオ)うてゆくと決めておる。だがそれには忋抖(カイト)がどう(ネガ)うのかどう()りたいと思うておるかを(ツマビ)らかにせねばならぬのだ」


()れられた指先(ユビサキ)()えて(フル)えている。その手を(ツツ)んで(アタタ)めながら、確かにねえ、と忋抖(カイト)(ツブヤ)いた。


(タシ)かにそうだねえ、人目(ヒトメ)(ハバカ)らずに(イツク)しむなんてこと父様(トウサマ)以外に出来ないことだしねえ」


くすくすと(ワラ)いながら(ツツ)んだ指を()むと身体(カラダ)(フル)わせながら、これ、と悧羅(リラ)(タシナ)めてくる。


「…(ワラワ)揶揄(カラコ)うておる(ワケ)ではないのだえ?」


指だけでなく(テノヒラ)口付(クチヅ)け始めた忋抖(カイト)(サラ)(タシナ)めるように悧羅(リラ)が言うが忋抖(カイト)は、分かってるよ、と悧羅(リラ)身体(カラダ)口付(クチヅ)けながら(シタ)()わせている。忋抖(カイト)、と(フタタ)び名を呼ばれても忋抖(カイト)の動きは止まらない。これ、ともう一度(タシナ)めた悧羅(リラ)を押し付けて深くなかに入り込むと同時にその(クチビル)(ウバ)う。口付(クチヅ)けたままで(オサ)えつけながら動くとくぐもった声がする。そのまま動きを(ハゲ)しく強くすると()を離そうとしていた悧羅(リラ)の腕が(クビ)(マワ)されて開かれた(アシ)忋抖(カイト)にしがみつくように(カラ)んできた。


これだけで充分(ジュウブン)なんだけどなあ。


思いながら(サラ)(イキオ)いをつけて()き上げると()え切れずに悧羅(リラ)口付(クチヅ)けから()げた。しがみつかれてすぐ近くで悧羅(リラ)の甘い声が聞こえて忋抖(カイト)も追うようにその(クチ)(フサ)ぐ。あまりに(ハゲ)しく(モト)められるのが苦しいのか、時折(トキオリ)息を()ぐように離れる悧羅(リラ)から名を呼ばれるが忋抖(カイト)はその(タビ)により深くより強く()め立てる。幾度(イクド)()てさせても身体(カラダ)()げられないように()り返ることも(キン)じられた悧羅(リラ)が、忋抖(カイト)!、と強く呼ぶまで()()は続けられた。


「もう!」


不服(フフク)そうな忋抖(カイト)に、(タノ)むから、とぐったりと身体(カラダ)(アズ)けるしかない悧羅(リラ)に大きな嘆息(タンソク)()った。(アズ)けられた身体(カラダ)(スデ)忋抖(カイト)(ササ)えてやらなければ姿勢(シセイ)(タモ)つこともできないのは、かたかたと(フル)え続ける姿が物語(モノガタ)っている。


「…もしかして…、限界(ゲンカイ)かな?」


(フル)える顔を(ツツ)んで上向(ウワム)かせると今にも意識(イシキ)手放(テバナ)してしまいそうな(トロ)けた(マナコ)忋抖(カイト)を見ている。


「…覚悟(カクゴ)を聞かせてくれるならばどれだけでも其方(ソナタ)の思う通りに(アツコ)うて(カマ)わぬ…。なれど()()()()()()()()()()()…」


()れた(イキ)の中から(ウッタ)えられて忋抖(カイト)ももう一度大きく嘆息(タンソク)してしまう。


「…(カナ)わないなあ…。父様(トウサマ)の気持ちが(イヤ)になるほど分かっちゃうよ」


「…今は…、忋抖(カイト)の想いが知りたいのだ」


大きく息をしてどうにか呼吸(コキュウ)(トトノ)えようとする悧羅(リラ)に、うん、と忋抖(カイト)は軽く口付(クチヅ)けた。


「分かった。ちゃんとしなきゃ駄目(ダメ)だよね」


軽い口付(クチヅ)けだけでも()てようとする悧羅(リラ)心底(シンソコ)(イト)おしいと思えてしまう。こんな(オモ)いなど悧羅(リラ)が受け入れてくれなければ、(シン)(ユル)してくれなければ長い(オニ)一生(イッショウ)の中でも(ケッ)して(アジ)わうことなど出来なかっただろう。忋抖(カイト)忋抖(カイト)として(タツト)びその心のままに(エラ)ばせてくれる事には感謝(カンシャ)しかない。であればこそ2人に対して誤魔化(ゴマカ)しを伝えるなどあってはならないことだ。


(オレ)は決めてるよ。父様(トウサマ)が…悧羅(リラ)()()()()()()()って言ってくれたんだから(マヨ)うことなんてないじゃない。人前(ヒトマエ)(イツク)しめなくたって、(イト)しいって言えなくったって良いんだ。…ただ悧羅(リラ)(ソバ)()()れられるってだけで(ホカ)に何も(コワ)いことなんてないんだからさ」


あーあ言っちゃった、と忋抖(カイト)(ソラ)(アオ)いだ。


「ずうっと(カク)して生きていくんだと思ってたのになあ…。こんなとんでもない御褒美(ゴホウビ)があるなんて思ってもなかったんだ…。ほんっと降参(コウサン)(マイ)っちゃった」


言葉にしてしまえば何と(オロ)かなことだろうと(ナサ)けなくもなる。見透(ミスカ)されていても(ユメ)ではないと気付(キヅ)かされた時に知らぬ(ゾン)ぜぬを()(トオ)せば良かったのかもしれない。そうすれば(クル)しむのは自分だけで(シン)悧羅(リラ)()()まずに()んだ(ハズ)だ。それでまた忋抖(カイト)藍琳(リンリー)のような者を出してしまったとしても忋抖(カイト)だけが(ゴウ)背負(セオ)っていけば()()()()()()()()()のに。


「…ほんっと(オレ)は弱いなあ…」


()れ出た声は(ムナ)しく()(ヒビ)いたけれど(ツギ)には顔が(ツツ)まれて目の前に(イト)おしい悧羅(リラ)が見えた。


(ダレ)が弱いのだ?」


顔を(ツツ)む手も身体(カラダ)(フル)えているのにその声は強くしっかりと忋抖(カイト)(トド)く。


(ダレ)忋抖(カイト)(ヨワ)いと(モウ)すのか?」


「…いや、(ダレ)がって(ワケ)じゃないけど…。(かく)し切れなかったわけだし。…藍琳(リンリー)のこともあるし」


(ウル)んだ目で見つめられて忋抖(カイト)(ホオ)()いてしまうと、ぱちり、も両頬(リョウホホ)を軽く(ハタ)かれた。


「そのような事を(モウ)すでない。(ワラワ)らこそ其方(ソナタ)()()めた。()げられぬ(ホド)(クラ)(フカ)(ヤミ)の中に其方(ソナタ)を落とし込むところであったのだ。ようやく手を()()べられても()()を取るか(イナ)かは其方(ソナタ)(ユダ)ねる(ホカ)になかった。なれど其方(ソナタ)()を取ってくれたではないか。()げようと思わば()げられたというに、だ」


「それは、まあ…。()()状況(ジョウキョウ)では無理(ムリ)だったってだけなんだけど…」


苦笑(クショウ)する忋抖(カイト)両頬(リョウホホ)がまた(ハタ)かれるが(フル)えて力の入らない手ではただ()れられているのと変わらない。


「よいか、忋抖(カイト)其方(ソナタ)(オノレ)を弱いというがそれは(チガ)う。(マコト)(ヨワ)い者はどのような()であれ(オノレ)に向き合わず()げ続ける者のこと」


(ツツ)まれた手に自分の手を(カサ)ねて忋抖(カイト)(ツム)がれる言葉(コトバ)を待つ。


「なれど其方(ソナタ)()()うた。なればこそ()()()()()()()()のだ」


それには、うん、と忋抖(カイト)(ウナズ)くしかない。


()()()()()()()()()其方(ソナタ)が少しでも()いるのならば、()()()()()()()()()()()()()()()こともできる。それ(ユエ)覚悟(カクゴ)(ヨウ)するのだよ」


「…それは(イヤ)かなあ…」


「ならば(オノレ)が弱いなどと(ナゲ)くでない。其方(ソナタ)(シン)(ワラワ)が認めた(ツヨ)(オノコ)なのだから。ほれこの(サイ)()うてみるが(ヨロ)しかろう。忋抖(カイト)()しゅうて(タマ)らなんだは何ぞ?忋抖(カイト)が心から(ノゾ)むのはどのような()(カタ)なのじゃ?」


(ツツ)んでいた手を離して忋抖(カイト)は胸に(オサ)まったままの悧羅(リラ)を強く抱きしめる。


()しいものなどずっと(ムカシ)から一つだけだった。


「…悧羅(リラ)()しい…。でも悧羅(リラ)の心は父様(トウサマ)のものだから、ほんとにたまにで良いから()()()()(オレ)悧羅(リラ)頂戴(チョウダイ)


それ以外に多くを(ノゾ)まないから、と(ネガ)忋抖(カイト)を優しく悧羅(リラ)も抱き返した。


「ほんに(ヨク)の無いことよ。…まあ()()をどのようにするかは(モド)った時に(シン)(カタ)()うが(ヨロシ)かろうて。(サケ)でも()()わしながらゆるりとの」


「一発二発は本気で(ナグ)られる覚悟(カクゴ)もしとく」


「それは(イタ)(カタ)あるまいよ」


くすくすと笑う悧羅(リラ)忋抖(カイト)も笑うと深く口付(クチヅ)ける。


「でもまずは悧羅(リラ)()とさないとだね?…限界(ゲンカイ)でしょ?」


言うなり動き出した忋抖(カイト)を甘い声が、()くな、と(タシナ)めてくるがもう止まることなどできない。ひたすらに翻弄(ホンロウ)し続けるとまた(ノボ)らせられて()てさせられる悧羅(リラ)身体(カラダ)が、がくがくと痙攣(ケイレン)し始めた。(カラ)みつく腕と(アシ)も冷たくなり()ぎて()()悧羅(リラ)限界(ゲンカイ)忋抖(カイト)に教えてくれる。より最奥(サイオク)に届くように()さえつけて()き上げる(ハヤ)さと強さの(イキオ)いを()すと荒れ果てた息の中から、もうっ、と小さな声がした。


「うん、いいよ?でも目が()めたらもう少しだけ(オレ)のものでいてね」


言うなり最奥(サイオク)(ヨク)を吐き出すと待っていたように悧羅(リラ)身体(カラダ)一際(ヒトキワ)大きく()ねると、すとん、と忋抖(カイト)の胸に収まった。意識(イシキ)手放(テバナ)した悧羅(リラ)無防備(ムボウビ)(アズケ)られた姿につい()みが(コボ)れてしまう。


「これくらいじゃ全然(ゼンゼン)()りないんだけどなあ。…()(ツブ)して(モド)ったらどんな目に合わせられるか分かったもんじゃない。ああ(コワ)っ!」


悧羅(リラ)を胸に預かったままでごろりと布団に(タオ)れこんで、また忋抖(カイト)は、あーあ、と(ツブヤ)いた。けれどそれは(ナゲ)くためでも()やむためでもない。


(シアワ)せすぎて(モド)りたくないや」


ひとりくすくすと(ワラ)いながら忋抖(カイト)(ネム)悧羅(リラ)を強く抱きしめた。

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