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腕【カイナ】

遅くなりました。

更新します。


ギリギリラインばかりなので苦手な方はご注意ください。

朝議(チョウギ)の場を悧羅(リラ)(ウデ)の中に(カカ)えたまま足速(アシバヤ)に立ち去った(シン)の姿に残された者たちは(ダレ)からともなく笑い出してしまった。ようやく(モド)ってきた悧羅を(トナリ)に置きながら(コラ)えるのは、さぞ拷問(ゴウモン)に近かっただろう。気をきかせて(ミナ)ゆっくりと集まったつもりだったのだが、紳にとってみれば()りない(ジカン)であったのは分かっているつもりだった。だがああも()かれてしまうと残された者たちの方が悪いことをしてしまった気になってくる。


「…今度はいつお目にかかれますことやら…」


くすくすと笑う荊軻(ケイカツ)何処(ドコ)(ウレ)しそうで釣られるように(ミナ)(サイワイ)な気持ちになる。


仕方(シカタ)なかろうよ。…(オサ)の申された(コロモ)仕立(シタ)て上がる頃には(マミ)えることも出来ようて」


目を細めながら言う栄州(エイシュウ)に、それはゆっくりと仕立(シタ)ててもらわねばなりませんね、と荊軻(ケイカツ)は笑う。取り急ぎ妲己(ダッキ)哀玥(アイゲツ)に乗せて行ってもらおうかとも考えていたが、少し身体(カラダ)を休めてからでも問題なさそうだ。


「今日のところは皆さまもお(ツカ)れでございましょうから、里の事は隊士達(タイシタチ)(マカ)せると(イタ)しましょう。私共(ワタクシドモ)も少し休まねば夜通(ヨドオ)しでございましたからね」


(タイ)には(シラ)せておく、という荊軻(ケイカツ)の言葉に甘えることにしてそれぞれが自室(ジシツ)(ヤシキ)に下がっていく。その途中(トチュウ)忋抖(カイト)哀玥(アイゲツ)を呼ぶと尾を下げたまま近づいてくる。項垂(ウナダ)れたようなその姿を()でながら、どうして言わなかった?、と(タズ)ねるとますます項垂(ウナダ)れてしまう。


「俺たちがそれ聞いて哀玥(アイゲツ)(キラ)いになるとでも思ったの?」


“…(モト)呪物(ジュブツ)でございますれば…”


小さく鳴くように出された声に、馬鹿(バカ)だなあ、と忋抖(カイト)が笑いながらその体躯(タイク)を抱きしめた。若君(ワカギミ)、と身を引こうとした哀玥(アイゲツ)(ツカ)まえて、哀玥(アイゲツ)哀玥(アイゲツ)だ、と忋抖(カイト)(ヤワ)らかな毛並みに顔を埋め(ウズ)める。


「いつでも俺の味方でいてくれてるんだから、そんなこと気にしないでくれよ。哀玥(アイゲツ)が居てくれないと夜も安心して眠れないだろ?」


“…これからも共におっていただけるのですか?…”


「当たり前だろ?お前は大切な俺たちの家族なんだから。一線(イッセン)退()こうなんて考えないでよ?ほら、部屋で一緒に休もう。哀玥(アイゲツ)(ツカ)れただろ?」


くしゃりと頭を()でて立ち上がりながら忋抖(カイト)(ウナガ)すとようやく哀玥(アイゲツ)も大きく息をつくことが出来た。忋抖(カイト)(トナリ)に寄り添いながら歩く尾が小さく振られ始めているのを見て他の子ども達もほっと安堵(アンド)しながら、それぞれの自室に戻って行った。




足速(アシバヤ)に自室に(モド)った紳は悧羅を(カカ)えたまま寝所(シンジョ)に飛び込んだ。久方(ヒサカタ)振りの自室の(トトノ)えられた布団(フトン)にふかりと身体が(シズ)むのを心地良(ココチヨ)く思う前に悧羅の(クチビル)(フサ)がれる。口内(コウナイ)(モテアソ)ぶように乱暴(ランボウ)に口付けられて息をする事も出来なくなってしまう。時折(トキオリ)少し離れた(クチビル)で荒れた息の中から、しばし待てと(ウッタ)えてみるがそれを聞いてやれる余裕(ヨユウ)など紳には無いらしい。口付けを続けながら(タガ)いの(コロモ)()ぎ取って投げ捨てると(アラワ)になった(ハダ)(カサ)ねて(クル)おしいほどに強く悧羅の細い身体を抱きしめる。


ようやく存分(ゾンブン)に思うまま確かめることが出来る。


聞いてやらなければならないことがある事も分かってはいるが、湯殿(ユドノ)()わし合った口付けよりも深く悧羅を感じる事が出来て止める事が出来ない。苦しいのかどうにか息を(ツナ)ごうとしてほんの(ワズ)かに(クチビル)が開いた時に悧羅から()れる吐息(トイキ)も、途切(トギ)れるように聞こえる待てという声さえも(イト)おしくて離してやれなくなる。(ハゲ)しすぎる口付けだけで悧羅の身体が(ウズ)き出したのも身を(ヨジ)り始めるのも、(コラ)えきれずに押し戻そうと動く手も、紳の(タガ)をすべからく無いものにするのだ。抱きしめていた腕を片方だけ()いて細い身体を確かめるようになぞると、びくりと(フル)わせて(コタ)えてくれる。そのまま一番弱いところを(イツク)しむと(フサ)がれたままの(クチビル)からくぐもった甘い声が聞こえだした。待て、と途切(トギ)れる甘い声で(ウッタ)えられても細い身体は(ハン)するように()り返り始めているし、細い両脚もいつでも紳を受け入れられるように開かれていく。悧羅の身体が(コラ)え切れずに大きく()ねるのを自分の身体で押し付けて一度()てたのを見届(ミトド)けてから、ようやく(カサ)ねていた(クチビル)を離すと(タガ)いの息は(ミダ)れてしまっていた。


一度()ててより敏感(ビンカン)になった身体を確かめるように(ヒタイ)(ホオ)首筋(クビスジ)から指の先まで丁寧(テイネイ)に舌を()わせながら胸や腹、足の先まで本当に全ての(ウロコ)が無いかを見ていく。あれほどに悧羅を(ムシバ)んでいた(ウロコ)はどこを確かめても一片(イッペン)も残っておらず、あるのは陶器(トウキ)のような真っ白な肌だけだ。御簾(ミス)の中にある寝所(シンジョ)は部屋の入口からは遠く()が高く(ノボ)ろうと仄暗(ホノグラ)い。その中で()けてしまいそうなほどの白い(ハダ)が浮かび上がっている。(クチビル)()わせるたびに身を(ヨジ)りながら甘い声を出す姿があまりに(ナマメ)かしすぎて、どうにかなりそうだ、と紳は自嘲(ジチョウ)してしまう。500年(サワ)れもしなかったのにたった150年(イダ)き続けられただけで腕の中に(オサ)めなれなかった七月(ナナツキ)は、()れることさえ出来なかった500年よりも(ツラ)いものだった。


開かれた脚の内側を(シタ)でなぞりながら中心に吸い付くと(ハジ)かれるように脚が閉じられようとする。それを止めてより開かせながら(ナブ)り始めると、より大きな声が上がり始めた。甘い声と(アエ)ぎを響かせる悧羅の細腰(ホソゴシ)を逃げられないように強く引き寄せて強い刺激を(アタ)え続けると(コラ)え切れずに()てていくのがわかる。それでもまだ見たくて、まだ味わいたくて(ナブ)り続けると間を空けることも出来なくなっているのだろう。幾度(イクド)(ノボ)っては()て、またすぐに(ノボ)っては()てていく。いつのまにか開かされていた脚もまるで求めるように紳の身体にしがみつくように廻されているが小さく(フル)え始めている。()てさせるたびに大きくなるその脚の(フル)えが、ますます紳を(タギ)らせていくのを知らないわけでもないだろうに、紳が(アタ)える官能(カンノウ)を取りこぼさないように(コタ)えてくれようとする悧羅が(イト)おしくて(タマ)らなくなる。


息をつく(イトマ)もないほど()てさせ続けて、ようやく紳がそこから離れた時には悧羅の身体からすとん、と力が抜けた。絶え間無く(アタ)えられ続けた刺激から()かれた姿は幾度(イクド)となく()てたせいでしっとりと汗ばんで力も入らないようだ。荒れた息を繰り返す(ホオ)にそっと()れるとそれだけでびくりと身体(カラダ)(フル)わせている。(ウル)んだ目で見つめられて小さく笑う紳の名を悧羅が呼ぶ。うん、と笑って中に入るために当てがうと待ち切れないように悧羅の腰が(ヨジ)り始めた。ゆっくりと入り込んでいくと合わせるように甘い声が上がる。数え切れないほど()てさせたためか入る時から()め付けられて奥に進むたびに巻きつくように(セマ)くなる。十分(ジュウブン)過ぎるほどに(ウルオ)ってくれてはいるので受け入れてはくれるのだが最奥(サイオク)まで到達(トウタツ)するにはゆっくりと進まなければならなかった。進むたびに悧羅から()れる声と強い()め付けについ紳も、きっつ、と(ウメ)いてしまう。


全て入り込んでから身体を重ねて落ちたままの悧羅の(テノヒラ)に自分の(テノヒラ)を重ねて指を(カラ)める。大きく吐息(トイキ)をつく(アカ)(クチビル)(ツイバ)むと閉じられていた(マブタ)が開いた。(ウル)んだ目が紳を見つめてくるが待てないかのように重ねた肌が(フル)えている。


「…もう…、待てぬ…」


入ったまま動かない紳に()う悧羅の声まで(フル)えていて、うん、と紳も微笑みながらもう一度軽く口付ける。


()らしてごめんね?…色々聞いてやらなくちゃいけないのも分かってるけど…。俺ももう無理だ…」


重ねた(テノヒラ)(オサ)え付けながらゆっくりと動きだすと息を()むように身体の下で(アエ)ぎ始めてくれる。湯殿(ユドノ)の中でも聞いたけれどそれとはまた(チガ)う。数え切れないほど()てた悧羅の声は甘過ぎる。求めるようにより深く紳が入り込めるように自然と脚を開いて(ヒザ)を立てる悧羅も自分と同じなのだ、と紳は満たされた気持ちに(オソ)われる。動きに合わせて動いてくる腰を突き上げるたびにまた(ノボ)り詰めて()り返り始める身体を紳は自分の身体で(オサ)えつけて()てて()ねる身体から自分が出ないようにして突き上げ続ける。まだ速さはないのに容易(タヤス)幾度(イクド)()てて悧羅の中がより一層(イッソウ)紳を()め付けた。強く()め付けられて(ヨク)を吐き出しそうになるがどうにか(コラ)える。一度や二度で(タギ)る身体の熱を()ます事など出来ないのは分かっているが、腕の中で紳に(コタ)えて(ミダ)れる悧羅の姿を見ていたいのだ。


()てた悧羅はより(ナマメ)かしくなっていく。その姿が、紳に(ケモノ)のような思いを(イダ)かせる。()てたばかりの悧羅にもう一度口付けると、もっと、と()われた。


「…もっと(ツヨ)うに…、紳の腕の中に帰ってきたのだと(ワラワ)に教えてたも…」


「もちろん、(コワ)れるまで()めてやれないよ?…(コワ)れても俺が止まれないかもしれないけど…。それでも良い?」


其方(ソナタ)が思う通りに…。(ワラワ)は紳であれば何をされても(カマ)わぬ…、()()()()()()()()()(アラゴ)うたのじゃ…」


だから、と言う(クチビル)乱暴(ランボウ)(フサ)いで言葉さえも(ウバ)うと、これまでとは段違(ダンチガ)いの速さで突き上げ始める。突然に突き上げ始められて(フサ)がれた口からくぐもった声が(アフ)れ出た。()れ合わせていた身体を(ハナ)して、それでも(カラ)ませた手の指はそのままに(オサ)えつけながら(タタ)きつけるように動き続けると呼応(コオウ)するように悧羅の声も甘さを増していく。強い官能(カンノウ)()え切れずにまた()てていく悧羅が紳を強く締め付ける。幾度(イクド)()てても紳も動きを止めることはしない。()てる(タビ)により強くより速く突き上げる。(カラ)ませていた(ユビ)を離して代わりに開かれた両(ヒザ)を腕に引っ掛けて突き続けると浮かせられた腰が(ナマメ)かしく紳を(サソ)う。()げ出そうとしているわけでは無いのだろうが、上半身(ジョウハンシン)(ヨジ)って()えるように布団(フトン)(ツカ)んでいる悧羅の目が(ウッス)らと開けられて紳を(トラ)えると、もっと深く、と(アエ)ぎの中から願われた。あまりにも(ナマメ)かしい姿に(コラ)え切れずに紳が(ヨク)を吐き出してしまうと奥で吐き出された刺激で悧羅の身体が大きく震えてまた()てる。


一度動きを止めてもうぐったりとした身体を起こし上げると()れるだけで甘い声をあげてくれるまでになっている。中に入ったまま(スワ)った(ヒザ)に悧羅を落とし込むと横になっていた時よりも深く入り込まれて息を()みながら紳にしがみついてきた。ふうっと大きく吐息(トイキ)をつく悧羅を強く抱きしめてまた突き上げるとしがみつく腕の力が強くなる。開かれた脚も紳の身体に(カラ)みついてくるが動きに合わせて悧羅の腰も動く。共に動き続けて悧羅がその間にも幾度(イクド)()てて強く締め付けられてしまうと(コラ)えるのも限界(ゲンカイ)になってくる。もう一度(ヨク)を吐き出して共に()てると二人の息も荒れ果てていた。しっとりと()れた肌を()り合わせて悧羅の背中を指でなぞると甘い声と共に身体が()り返っていく。上向(ウワム)いた顔に口付けると悧羅の目が紳を見つめてくる。視線だけで求められて深く口付けると力の入らない腕が紳の(ホオ)を包んだ。(ツツ)んでくる指先が(フル)えて冷たくなっているのが伝わってくる。それがどういう意味なのかも紳は知っている。()ち切る前に必ず悧羅の身体は()()()()()()だ。


「…限界(ゲンカイ)…?」


(クチビル)を離して(ササヤ)くように(タズ)ねると首を振られる。まるで(ワラベ)駄々(ダダ)(シメ)すような姿に苦笑すると、まだ、と小さな声がした。


「…まだ()りぬ…。()ちても(コワ)れても、(ワラワ)に紳をくりゃれ…。もう…、二度と…、二度と紳の腕の中から離れとうない」


火照(ホテ)って(フル)える(クチビル)から出された哀願(アイガン)と共に(ウル)んだ目から涙が(コボ)れ落ちた。やっと手にした(サイワイ)手放(テバナ)す事になるかもしれないと、ずっと心の(スミ)に置いていた。考えないように()()(ウデ)の中に帰るのだと(アラガ)ってはいたが(カエル)娘子(ムスメゴ)たちと話している時に()()は押し殺していただけでずっと(クスブ)り続けていたのだと知ることになった。


500年間、あれほどに死を(ムカ)えることを望んでいたのに、紳が(ソバ)にいてくれるようになっただけでそれが遠い日であるようにとさえ思うようになってしまった。


この(ウデ)と声に(ツツ)まれて名を呼ばれて当たり前のように享受(キョウジュ)される(イツク)しみに()れてしまって、いつのまにか()てつかせていた心さえも()かされ(ヌク)もりを(アタ)えられる内に弱さまで持ってしまっている。


けれどそれで良いとさえ思う。


元々(モトモト)悧羅は(タダ)鬼女(キジョ)であったし、たまたま(ハス)(ムスメ)として()ろされたに過ぎない。一度離れた手を(ムス)び直した今、紳と()()()()いられる事以外に望むことなどなかったのだから。


流れ落ちる涙を()いてくれる手が悧羅を本来(ホンライ)の姿に少しずつ戻してくれているのだ。


はらはらと涙を流す悧羅の(ホオ)を紳が両手で優しく(ツツ)んで微笑んだ。当たり前でしょ、と優しく口付けるがその小さな刺激さえも悧羅には強い刺激になるようで身体を(フル)わせる。


「こんなに可愛(カワ)いくて(イト)しくて(タマ)らないんだよ?俺がどんなに悧羅を()しくて()()()手を離した事をどんなに()やんだか忘れてるわけじゃないでしょ?」


「…それは、(ワラワ)とて…」


同じだ、と伝えようとした悧羅に紳は優しく首を振った。


()()()俺が悧羅にしてしまったことを忘れるつもりはないんだ。()()は俺が悧羅を信じ切れなかったから500年も悧羅を一人にしてしまった。それどころかとにかく早く生命(イノチ)が終わるように(イノ)らせてた。…それを知った時に絶対に忘れちゃいけないって(キザ)みつけてる」


(ワラワ)が忘れてくれ、と(ネゴ)うてもかえ?」


(アフ)れだしてくる涙は紳が伝える言葉の(セイ)ではない。この七月(ナナツキ)ただ、(サミ)しかったのだ。この腕の中から離れることがあるかもしれない、と思ってしまっていたから。それを考えたく無くて必死に(アラガ)おうとしていたのだ。


ただ(コワ)かった。

ただ(サミ)しかった。


ひとりで過ごす旅路(タビジ)も、ひとりで眠る夜も。


紳に(ツツ)まれて眠る安らかさを知ってしまっているから。


「俺にとっての悧羅は絶対なの。だからこそ忘れちゃいけないことがあるんだよ。それに悧羅が居ないと俺に見える世の中なんて真っ暗で色褪(イロア)せちゃう。離したくても離せない。…だから悧羅が神になるより俺と歳を(カサ)ねていくことを選んでくれて本当は(スゴ)(ウレ)しいんだ」


(ヒタイ)をくっつけながら(ササヤ)くと悧羅の荒れた息も整い始めている。


「それは紳が妾に申してくれたからじゃ…。最期(サイゴ)(トキ)は手を(ツナ)いで来世(ライセ)の約束をしながら黄泉(ヨミ)()こうと」


「そうだよ?だから心配しなくていい。離れることなんて俺からは絶対にしないし離れるなんて考えるだけで()えられない。…よく一人で(アラガ)ってくれた。怖かっただろうし心細かったよね?」


何も言わなくても悧羅の心を分かってくれる。

その(キズ)(イヤ)そうとして(ツム)がれる言葉に悧羅の涙が止まらない。そんな悧羅に紳は微笑んで、もう大丈夫だ、と伝える。


「本当に俺の腕の中に戻ってきてくれてる。約束を果たしてまた俺に悧羅を戻してくれた。頑張(ガンバ)ってくれて本当にありがとうね」


伝えてくれる言葉の一つ一つに()められた(イツク)しみにますます悧羅が涙を(コボ)す。


「離せって言われても離せないとこまで俺は悧羅に(オボ)れてるから。それは俺に生命(イノチ)を落とせって言うことと同じことなんだよ?」


流れ落ちる涙を(クチビル)で受け止めながら紳が強く悧羅を抱きしめた。


我慢(ガマン)しなくていいよ。落ち着いたらまた()くから今はこのままで沢山(タクサン)泣いていい」


汗ばんだ胸に顔を()り寄せて嗚咽(オエツ)()らし始める悧羅の頭を()でると小さく頭が振られた。悧羅?、と名を呼ぶと泣きながら紳を(アオ)ぎ見てくる。


「…ならば、動いてたも…。(ワラワ)が泣いておってもそれは其方(ソナタ)の腕の中におれればこそ…。泣いておる(ジカン)さえも()しい。(ワラワ)に紳を…」


くりゃれ、と(ササヤ)きながら腕を伸ばされて紳の(ホオ)が引き寄せられて深く口付けられる。


「紳が欲しいのじゃ。紳だけが(ワラワ)(サイワイ)にしてくれる。寝ても()めても(ワラワ)の中から出ることはせぬと言うてたも。紳の手で快楽(カイラク)()として()れ合うことの出来なんだ分を(ワラワ)(キザ)みつけておくりゃ」


「泣いてるままじゃ苦しくなるよ?」


「…それで良い。苦しゅうあろうが、痛みが(オソ)おうが紳がくれるものならば(ワラワ)には(サイワイ)でしかない。なればこそ求めてくりゃれ。(ワラワ)が紳を(ホッ)するほどに紳も(ワラワ)(ホッ)してたも」


「それじゃあずっと(コモ)ってなきゃならなくなるね?どれだけ(ジカン)があっても足りないくらいだ」


優しく微笑んだまま紳が抱きしめた悧羅の身体を自分に押し付けると深く入り込んでいたのに(サラ)に奥まで届いたのだろう。ふぁっと(アエ)ぎが()れ出した。一番深い部分は悧羅の弱い部分でもある。押し付けたまま廻すように腰を動かすと息を()みながら声を上げて身体を()らし始めているが、紳の動きに合わせるように悧羅の腰も(ナマメ)かしく動く。深くて敏感(ビンカン)な部分に当たるのは刺激が強いのだが、それでも強く求めずにはいられないのだ。(オダ)やかに整いつつあった呼吸がまた荒れ始めて二人の息の音と悧羅の甘い声と(タガ)いの(ハダ)が打ち付けられる音だけが仄暗(ホノグラ)寝所(シンジョ)に響く。しがみつくように紳の首に廻された腕に力が込められて、紳も離れてしまわないように悧羅の細い身体を強く引き寄せ押し付けて抱きしめ続ける。どんなに()てさせられても手足の先が(シビ)れて冷たくなり身体(カラダ)痙攣(ケイレン)し始めようとも、まだ、と(ナミダ)しながら(ネガ)われて、紳もそれに(コタ)える。


紳とてもう幾度(イクド)となく悧羅の最奥(サイオク)(オノレ)(ヨク)()き出しているのに一向(イッコウ)(タギ)る熱が(オサ)まる気配(ケハイ)さえしない。自分にしがみついて(アエ)ぎを上げる悧羅に深く口付けてから、くるりと悧羅の身体を返して背中を胸に(アズ)かる。代わりに両脚を腕に引っ掛けて大きく開かせながら突き上げると紳の脚に悧羅の(ツメ)が食い込んできた。突き上げながら開かれた脚の中心を指で(ナブ)ると、一際(ヒトキワ)大きな甘い(アエ)ぎ声が部屋に響く。


「…っ!…ま…って……っ、」


がくがくと(フル)えだした全身から新しい(ナマメ)かしい声が届くがそれが本心(ホンシン)でないことくらいわかっている。言葉では待てと言っていても(イツク)しむことをやめられることを悧羅は望んでなどいない。勢いを増しながら突き上げて指の動きも速めると大きく痙攣(ケイレン)しながら悧羅が(ノボ)り詰めて、また紳を強く締め付けてくる。それでも突き上げることも指を動かすことも紳はやめない。もうとろりと意識を手放(テバナ)寸前(スンゼン)の悧羅が、まだ、と(ウッタ)えてくる。


まだ()りない。

まだ離れたくない。

まだ意識を手放(テバナ)して()()瞬間(シュンカン)を終わらせたくない。


「…大丈夫。同じだよ?」


二度三度と続けて()てていく悧羅の(ウナジ)に噛みつきながら伝えるが思いとは裏腹(ウラハラ)にどんどんと意識が遠ざかっているようだ。そのままもう一度()てさせてから共に(タオ)れ込むように悧羅を背中から(オサ)えつける。細い(コシ)を持ち上げて突き上げ始めると、ぎゅうっと布団(フトン)(ツカ)みながらも(サソ)うように身体は(ウゴメ)いている。長い(ムラサキ)の髪が突き上げるたびにはらりと悧羅の身体から落ちて背中を(アラワ)にしていく。(アザ)やかな(ハス)の華とまだ開いていない(ツボミ)がしっとりと汗にまみれて、まるで朝露(アサツユ)()びたように輝き始めた。


この全てが自分のものだ、と突き上げながらも肩や背中に強く()みつくと痛みよりも快楽(カイラク)(マサ)るようだ。()(アト)が残るほどに強く()んでしまったのに都度(ツド)悧羅は甘い声で、もっと、と()う。


「…(アト)を…、残し…て…っ…、(キザ)み…っ、」


つけて、と甘く(サソ)われて背中の全てに強く()(アト)を残していく。時折(トキオリ)強く()み過ぎて血が(ニジ)む場所もあったが、()()()()れる事を(ユル)されているのは紳だけだ。()(アト)だけでなく口付けの(アト)も悧羅の身体中に付けて、俺だけのものだ、と耳元で(ササヤ)くと(アタ)え続けられる官能(カンノウ)の中から必死に(ウナズ)いてくれる。


「やめ…てくれる…な…、…っ…、」


()みつける(タビ)の痛みと官能(カンノウ)(ウス)くなっていく悧羅の意識を(トド)め置いているのだろう。高みに(ノボ)りつめても、目の前が白くぼやけてきても(ナオ)自分を(ホッ)してくれることが紳をまた(タギ)らせていく。


「当たり前だ…。やめられるわけがない。俺の悧羅だ、俺だけの…。何よりも(イト)おしく思ってるよ。俺の全ては悧羅だけのものだ。全部あげるよ」


言葉にしても伝えきれないほどの想いを突き上げる速さを増す事で伝え続ける。どんなに()えても悧羅の意識が限界(ゲンカイ)なのは分かっている。がくがくと(フル)えを増していく身体がそれを伝えてくれる。


_______________それでも____________。


まだ、と()いながらも紳が最奥(サイオク)()てると共に悧羅の身体が大きく()ねて息を()むと同時にすとん、と意識が遠のいた。()ねた身体を腕を廻して受け止めて強く抱きしめる。荒れた息を整えながら力の抜けた悧羅を抱きしめると(イト)おしさが押し寄せてきた。荒れた息のまま閉じられた(マブタ)に口付けて悧羅の身体を自分の方に向けるとそのままくるりと身体を返して紳の身体の上に悧羅を乗せてまた抱きしめる。


「…本当に馬鹿(バカ)だなあ…。俺が離れられるわけないのに…」


どう伝えればこの想いをすべて悧羅に伝えられるだろう。


息を整えながら(チギ)りの(キズ)(カサ)ねると意識を手放(テバナ)しているというのに、まだ、という想いが(メグ)ってくる。


離れたくない。

(ツナ)がったままでいたい。

自分の中から出ていくことなど(ユル)さない。


_____________(イト)おしい____________。

_____________(クル)おしいほど____________。


強い悧羅の想いに紳の目にも(ナミダ)が浮かぶ。(カサ)ねた(キズ)を離してもう一度強く悧羅を抱きしめる。汗で()れた身体が()えないように起こさないように中に入ったまま身体を起こして()布団(ブトン)を引き寄せると悧羅と自分を(ツツ)みながらまた横になった。


離せるわけなどないのに…。


(ナミダ)の浮かんだ目を拭いてから紳も(マブタ)を閉じる。目を()ませばまた悧羅が意識を手放(テバナ)すまで(イツク)しみ続けてしまうことは分かっていた。


これは本当にしばらく寝所(ココ)から出れそうにないな。


これ以上の(サイワイ)などない、と思いながら紳も(ジョウ)の後の心地良(ココチヨ)気怠(ケダル)さに身を(マカ)せてみることにした。

本当に18禁にしたほうがもういいような…。

いや、まだギリギリでしょうか?


お楽しみいただけましたか?

ありがとうございました。

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