腕【カイナ】
遅くなりました。
更新します。
ギリギリラインばかりなので苦手な方はご注意ください。
朝議の場を悧羅を腕の中に抱えたまま足速に立ち去った紳の姿に残された者たちは誰からともなく笑い出してしまった。ようやく戻ってきた悧羅を隣に置きながら堪えるのは、さぞ拷問に近かっただろう。気をきかせて皆ゆっくりと集まったつもりだったのだが、紳にとってみれば足りない刻であったのは分かっているつもりだった。だがああも急かれてしまうと残された者たちの方が悪いことをしてしまった気になってくる。
「…今度はいつお目にかかれますことやら…」
くすくすと笑う荊軻が何処か嬉しそうで釣られるように皆も倖な気持ちになる。
「仕方なかろうよ。…長の申された衣が仕立て上がる頃には見えることも出来ようて」
目を細めながら言う栄州に、それはゆっくりと仕立ててもらわねばなりませんね、と荊軻は笑う。取り急ぎ妲己か哀玥に乗せて行ってもらおうかとも考えていたが、少し身体を休めてからでも問題なさそうだ。
「今日のところは皆さまもお疲れでございましょうから、里の事は隊士達に任せると致しましょう。私共も少し休まねば夜通しでございましたからね」
隊には報せておく、という荊軻の言葉に甘えることにしてそれぞれが自室や邸に下がっていく。その途中で忋抖が哀玥を呼ぶと尾を下げたまま近づいてくる。項垂れたようなその姿を撫でながら、どうして言わなかった?、と尋ねるとますます項垂れてしまう。
「俺たちがそれ聞いて哀玥を嫌いになるとでも思ったの?」
“…元は呪物でございますれば…”
小さく鳴くように出された声に、馬鹿だなあ、と忋抖が笑いながらその体躯を抱きしめた。若君、と身を引こうとした哀玥を捕まえて、哀玥は哀玥だ、と忋抖は柔らかな毛並みに顔を埋めめる。
「いつでも俺の味方でいてくれてるんだから、そんなこと気にしないでくれよ。哀玥が居てくれないと夜も安心して眠れないだろ?」
“…これからも共におっていただけるのですか?…”
「当たり前だろ?お前は大切な俺たちの家族なんだから。一線退こうなんて考えないでよ?ほら、部屋で一緒に休もう。哀玥も疲れただろ?」
くしゃりと頭を撫でて立ち上がりながら忋抖が促すとようやく哀玥も大きく息をつくことが出来た。忋抖の隣に寄り添いながら歩く尾が小さく振られ始めているのを見て他の子ども達もほっと安堵しながら、それぞれの自室に戻って行った。
足速に自室に戻った紳は悧羅を抱えたまま寝所に飛び込んだ。久方振りの自室の整えられた布団にふかりと身体が沈むのを心地良く思う前に悧羅の唇が塞がれる。口内を弄ぶように乱暴に口付けられて息をする事も出来なくなってしまう。時折少し離れた唇で荒れた息の中から、しばし待てと訴えてみるがそれを聞いてやれる余裕など紳には無いらしい。口付けを続けながら互いの衣を剥ぎ取って投げ捨てると露になった肌を重ねて狂おしいほどに強く悧羅の細い身体を抱きしめる。
ようやく存分に思うまま確かめることが出来る。
聞いてやらなければならないことがある事も分かってはいるが、湯殿で交わし合った口付けよりも深く悧羅を感じる事が出来て止める事が出来ない。苦しいのかどうにか息を繋ごうとしてほんの僅かに唇が開いた時に悧羅から漏れる吐息も、途切れるように聞こえる待てという声さえも愛おしくて離してやれなくなる。激しすぎる口付けだけで悧羅の身体が疼き出したのも身を捩り始めるのも、堪えきれずに押し戻そうと動く手も、紳の箍をすべからく無いものにするのだ。抱きしめていた腕を片方だけ解いて細い身体を確かめるようになぞると、びくりと震わせて応えてくれる。そのまま一番弱いところを慈しむと塞がれたままの唇からくぐもった甘い声が聞こえだした。待て、と途切れる甘い声で訴えられても細い身体は反するように反り返り始めているし、細い両脚もいつでも紳を受け入れられるように開かれていく。悧羅の身体が堪え切れずに大きく跳ねるのを自分の身体で押し付けて一度果てたのを見届けてから、ようやく重ねていた唇を離すと互いの息は乱れてしまっていた。
一度果ててより敏感になった身体を確かめるように額や頬、首筋から指の先まで丁寧に舌を這わせながら胸や腹、足の先まで本当に全ての鱗が無いかを見ていく。あれほどに悧羅を蝕んでいた鱗はどこを確かめても一片も残っておらず、あるのは陶器のような真っ白な肌だけだ。御簾の中にある寝所は部屋の入口からは遠く陽が高く昇ろうと仄暗い。その中で透けてしまいそうなほどの白い肌が浮かび上がっている。唇を這わせるたびに身を捩りながら甘い声を出す姿があまりに艶かしすぎて、どうにかなりそうだ、と紳は自嘲してしまう。500年触れもしなかったのにたった150年抱き続けられただけで腕の中に収めなれなかった七月は、触れることさえ出来なかった500年よりも辛いものだった。
開かれた脚の内側を舌でなぞりながら中心に吸い付くと弾かれるように脚が閉じられようとする。それを止めてより開かせながら嬲り始めると、より大きな声が上がり始めた。甘い声と喘ぎを響かせる悧羅の細腰を逃げられないように強く引き寄せて強い刺激を与え続けると堪え切れずに果てていくのがわかる。それでもまだ見たくて、まだ味わいたくて嬲り続けると間を空けることも出来なくなっているのだろう。幾度も昇っては果て、またすぐに昇っては果てていく。いつのまにか開かされていた脚もまるで求めるように紳の身体にしがみつくように廻されているが小さく震え始めている。果てさせるたびに大きくなるその脚の震えが、ますます紳を沸らせていくのを知らないわけでもないだろうに、紳が与える官能を取りこぼさないように応えてくれようとする悧羅が愛おしくて堪らなくなる。
息をつく暇もないほど果てさせ続けて、ようやく紳がそこから離れた時には悧羅の身体からすとん、と力が抜けた。絶え間無く与えられ続けた刺激から解かれた姿は幾度となく果てたせいでしっとりと汗ばんで力も入らないようだ。荒れた息を繰り返す頬にそっと触れるとそれだけでびくりと身体を震わせている。潤んだ目で見つめられて小さく笑う紳の名を悧羅が呼ぶ。うん、と笑って中に入るために当てがうと待ち切れないように悧羅の腰が捩り始めた。ゆっくりと入り込んでいくと合わせるように甘い声が上がる。数え切れないほど果てさせたためか入る時から締め付けられて奥に進むたびに巻きつくように狭くなる。十分過ぎるほどに潤ってくれてはいるので受け入れてはくれるのだが最奥まで到達するにはゆっくりと進まなければならなかった。進むたびに悧羅から漏れる声と強い締め付けについ紳も、きっつ、と呻いてしまう。
全て入り込んでから身体を重ねて落ちたままの悧羅の掌に自分の掌を重ねて指を絡める。大きく吐息をつく紅い唇を啄むと閉じられていた瞼が開いた。潤んだ目が紳を見つめてくるが待てないかのように重ねた肌が震えている。
「…もう…、待てぬ…」
入ったまま動かない紳に乞う悧羅の声まで震えていて、うん、と紳も微笑みながらもう一度軽く口付ける。
「焦らしてごめんね?…色々聞いてやらなくちゃいけないのも分かってるけど…。俺ももう無理だ…」
重ねた掌を抑え付けながらゆっくりと動きだすと息を呑むように身体の下で喘ぎ始めてくれる。湯殿の中でも聞いたけれどそれとはまた違う。数え切れないほど果てた悧羅の声は甘過ぎる。求めるようにより深く紳が入り込めるように自然と脚を開いて膝を立てる悧羅も自分と同じなのだ、と紳は満たされた気持ちに襲われる。動きに合わせて動いてくる腰を突き上げるたびにまた昇り詰めて反り返り始める身体を紳は自分の身体で抑えつけて果てて跳ねる身体から自分が出ないようにして突き上げ続ける。まだ速さはないのに容易く幾度も果てて悧羅の中がより一層紳を締め付けた。強く締め付けられて欲を吐き出しそうになるがどうにか堪える。一度や二度で沸る身体の熱を冷ます事など出来ないのは分かっているが、腕の中で紳に応えて乱れる悧羅の姿を見ていたいのだ。
果てた悧羅はより艶かしくなっていく。その姿が、紳に獣のような思いを抱かせる。果てたばかりの悧羅にもう一度口付けると、もっと、と乞われた。
「…もっと強うに…、紳の腕の中に帰ってきたのだと妾に教えてたも…」
「もちろん、壊れるまで止めてやれないよ?…壊れても俺が止まれないかもしれないけど…。それでも良い?」
「其方が思う通りに…。妾は紳であれば何をされても構わぬ…、そうして欲しゅうて抗うたのじゃ…」
だから、と言う唇を乱暴に塞いで言葉さえも奪うと、これまでとは段違いの速さで突き上げ始める。突然に突き上げ始められて塞がれた口からくぐもった声が溢れ出た。触れ合わせていた身体を離して、それでも絡ませた手の指はそのままに抑えつけながら叩きつけるように動き続けると呼応するように悧羅の声も甘さを増していく。強い官能に耐え切れずにまた果てていく悧羅が紳を強く締め付ける。幾度果てても紳も動きを止めることはしない。果てる度により強くより速く突き上げる。絡ませていた指を離して代わりに開かれた両膝を腕に引っ掛けて突き続けると浮かせられた腰が艶かしく紳を誘う。逃げ出そうとしているわけでは無いのだろうが、上半身を捩って耐えるように布団を掴んでいる悧羅の目が薄らと開けられて紳を捉えると、もっと深く、と喘ぎの中から願われた。あまりにも艶かしい姿に堪え切れずに紳が欲を吐き出してしまうと奥で吐き出された刺激で悧羅の身体が大きく震えてまた果てる。
一度動きを止めてもうぐったりとした身体を起こし上げると触れるだけで甘い声をあげてくれるまでになっている。中に入ったまま座った膝に悧羅を落とし込むと横になっていた時よりも深く入り込まれて息を呑みながら紳にしがみついてきた。ふうっと大きく吐息をつく悧羅を強く抱きしめてまた突き上げるとしがみつく腕の力が強くなる。開かれた脚も紳の身体に絡みついてくるが動きに合わせて悧羅の腰も動く。共に動き続けて悧羅がその間にも幾度も果てて強く締め付けられてしまうと堪えるのも限界になってくる。もう一度欲を吐き出して共に果てると二人の息も荒れ果てていた。しっとりと濡れた肌を擦り合わせて悧羅の背中を指でなぞると甘い声と共に身体が反り返っていく。上向いた顔に口付けると悧羅の目が紳を見つめてくる。視線だけで求められて深く口付けると力の入らない腕が紳の頬を包んだ。包んでくる指先が震えて冷たくなっているのが伝わってくる。それがどういう意味なのかも紳は知っている。堕ち切る前に必ず悧羅の身体はそうなるからだ。
「…限界…?」
唇を離して囁くように尋ねると首を振られる。まるで童が駄々を示すような姿に苦笑すると、まだ、と小さな声がした。
「…まだ足りぬ…。墜ちても壊れても、妾に紳をくりゃれ…。もう…、二度と…、二度と紳の腕の中から離れとうない」
火照って震える唇から出された哀願と共に潤んだ目から涙が溢れ落ちた。やっと手にした倖を手放す事になるかもしれないと、ずっと心の隅に置いていた。考えないようにこの腕の中に帰るのだと抗ってはいたが蛙の娘子たちと話している時にそれは押し殺していただけでずっと燻り続けていたのだと知ることになった。
500年間、あれほどに死を迎えることを望んでいたのに、紳が側にいてくれるようになっただけでそれが遠い日であるようにとさえ思うようになってしまった。
この腕と声に包まれて名を呼ばれて当たり前のように享受される慈しみに慣れてしまって、いつのまにか凍てつかせていた心さえも溶かされ温もりを与えられる内に弱さまで持ってしまっている。
けれどそれで良いとさえ思う。
元々悧羅は只の鬼女であったし、たまたま蓮の娘として降ろされたに過ぎない。一度離れた手を結び直した今、紳とこうしていられる事以外に望むことなどなかったのだから。
流れ落ちる涙を拭いてくれる手が悧羅を本来の姿に少しずつ戻してくれているのだ。
はらはらと涙を流す悧羅の頬を紳が両手で優しく包んで微笑んだ。当たり前でしょ、と優しく口付けるがその小さな刺激さえも悧羅には強い刺激になるようで身体を震わせる。
「こんなに可愛いくて愛しくて堪らないんだよ?俺がどんなに悧羅を欲しくてあの時手を離した事をどんなに悔やんだか忘れてるわけじゃないでしょ?」
「…それは、妾とて…」
同じだ、と伝えようとした悧羅に紳は優しく首を振った。
「あの時俺が悧羅にしてしまったことを忘れるつもりはないんだ。あれは俺が悧羅を信じ切れなかったから500年も悧羅を一人にしてしまった。それどころかとにかく早く生命が終わるように祈らせてた。…それを知った時に絶対に忘れちゃいけないって刻みつけてる」
「妾が忘れてくれ、と願うてもかえ?」
溢れだしてくる涙は紳が伝える言葉の責ではない。この七月ただ、淋しかったのだ。この腕の中から離れることがあるかもしれない、と思ってしまっていたから。それを考えたく無くて必死に抗おうとしていたのだ。
ただ怖かった。
ただ淋しかった。
ひとりで過ごす旅路も、ひとりで眠る夜も。
紳に包まれて眠る安らかさを知ってしまっているから。
「俺にとっての悧羅は絶対なの。だからこそ忘れちゃいけないことがあるんだよ。それに悧羅が居ないと俺に見える世の中なんて真っ暗で色褪せちゃう。離したくても離せない。…だから悧羅が神になるより俺と歳を重ねていくことを選んでくれて本当は凄く嬉しいんだ」
額をくっつけながら囁くと悧羅の荒れた息も整い始めている。
「それは紳が妾に申してくれたからじゃ…。最期の刻は手を繋いで来世の約束をしながら黄泉へ行こうと」
「そうだよ?だから心配しなくていい。離れることなんて俺からは絶対にしないし離れるなんて考えるだけで耐えられない。…よく一人で抗ってくれた。怖かっただろうし心細かったよね?」
何も言わなくても悧羅の心を分かってくれる。
その疵を癒そうとして紡がれる言葉に悧羅の涙が止まらない。そんな悧羅に紳は微笑んで、もう大丈夫だ、と伝える。
「本当に俺の腕の中に戻ってきてくれてる。約束を果たしてまた俺に悧羅を戻してくれた。頑張ってくれて本当にありがとうね」
伝えてくれる言葉の一つ一つに込められた慈しみにますます悧羅が涙を零す。
「離せって言われても離せないとこまで俺は悧羅に溺れてるから。それは俺に生命を落とせって言うことと同じことなんだよ?」
流れ落ちる涙を唇で受け止めながら紳が強く悧羅を抱きしめた。
「我慢しなくていいよ。落ち着いたらまた抱くから今はこのままで沢山泣いていい」
汗ばんだ胸に顔を擦り寄せて嗚咽を漏らし始める悧羅の頭を撫でると小さく頭が振られた。悧羅?、と名を呼ぶと泣きながら紳を仰ぎ見てくる。
「…ならば、動いてたも…。妾が泣いておってもそれは其方の腕の中におれればこそ…。泣いておる刻さえも惜しい。妾に紳を…」
くりゃれ、と囁きながら腕を伸ばされて紳の頬が引き寄せられて深く口付けられる。
「紳が欲しいのじゃ。紳だけが妾を倖にしてくれる。寝ても覚めても妾の中から出ることはせぬと言うてたも。紳の手で快楽に堕として触れ合うことの出来なんだ分を妾に刻みつけておくりゃ」
「泣いてるままじゃ苦しくなるよ?」
「…それで良い。苦しゅうあろうが、痛みが襲おうが紳がくれるものならば妾には倖でしかない。なればこそ求めてくりゃれ。妾が紳を欲するほどに紳も妾を欲してたも」
「それじゃあずっと籠ってなきゃならなくなるね?どれだけ刻があっても足りないくらいだ」
優しく微笑んだまま紳が抱きしめた悧羅の身体を自分に押し付けると深く入り込んでいたのに更に奥まで届いたのだろう。ふぁっと喘ぎが漏れ出した。一番深い部分は悧羅の弱い部分でもある。押し付けたまま廻すように腰を動かすと息を呑みながら声を上げて身体を反らし始めているが、紳の動きに合わせるように悧羅の腰も艶かしく動く。深くて敏感な部分に当たるのは刺激が強いのだが、それでも強く求めずにはいられないのだ。穏やかに整いつつあった呼吸がまた荒れ始めて二人の息の音と悧羅の甘い声と互いの肌が打ち付けられる音だけが仄暗い寝所に響く。しがみつくように紳の首に廻された腕に力が込められて、紳も離れてしまわないように悧羅の細い身体を強く引き寄せ押し付けて抱きしめ続ける。どんなに果てさせられても手足の先が痺れて冷たくなり身体が痙攣し始めようとも、まだ、と涙しながら願われて、紳もそれに応える。
紳とてもう幾度となく悧羅の最奥に己の欲を吐き出しているのに一向に沸る熱が収まる気配さえしない。自分にしがみついて喘ぎを上げる悧羅に深く口付けてから、くるりと悧羅の身体を返して背中を胸に預かる。代わりに両脚を腕に引っ掛けて大きく開かせながら突き上げると紳の脚に悧羅の爪が食い込んできた。突き上げながら開かれた脚の中心を指で嬲ると、一際大きな甘い喘ぎ声が部屋に響く。
「…っ!…ま…って……っ、」
がくがくと震えだした全身から新しい艶かしい声が届くがそれが本心でないことくらいわかっている。言葉では待てと言っていても慈しむことをやめられることを悧羅は望んでなどいない。勢いを増しながら突き上げて指の動きも速めると大きく痙攣しながら悧羅が昇り詰めて、また紳を強く締め付けてくる。それでも突き上げることも指を動かすことも紳はやめない。もうとろりと意識を手放す寸前の悧羅が、まだ、と訴えてくる。
まだ足りない。
まだ離れたくない。
まだ意識を手放してこの瞬間を終わらせたくない。
「…大丈夫。同じだよ?」
二度三度と続けて果てていく悧羅の項に噛みつきながら伝えるが思いとは裏腹にどんどんと意識が遠ざかっているようだ。そのままもう一度果てさせてから共に倒れ込むように悧羅を背中から抑えつける。細い腰を持ち上げて突き上げ始めると、ぎゅうっと布団を掴みながらも誘うように身体は蠢いている。長い紫の髪が突き上げるたびにはらりと悧羅の身体から落ちて背中を露にしていく。鮮やかな蓮の華とまだ開いていない蕾がしっとりと汗にまみれて、まるで朝露を浴びたように輝き始めた。
この全てが自分のものだ、と突き上げながらも肩や背中に強く噛みつくと痛みよりも快楽が勝るようだ。噛み跡が残るほどに強く噛んでしまったのに都度悧羅は甘い声で、もっと、と乞う。
「…跡を…、残し…て…っ…、刻み…っ、」
つけて、と甘く誘われて背中の全てに強く噛み跡を残していく。時折強く噛み過ぎて血が滲む場所もあったが、この華に触れる事を許されているのは紳だけだ。噛み跡だけでなく口付けの跡も悧羅の身体中に付けて、俺だけのものだ、と耳元で囁くと与え続けられる官能の中から必死に頷いてくれる。
「やめ…てくれる…な…、…っ…、」
噛みつける度の痛みと官能が薄くなっていく悧羅の意識を留め置いているのだろう。高みに昇りつめても、目の前が白くぼやけてきても尚自分を欲してくれることが紳をまた沸らせていく。
「当たり前だ…。やめられるわけがない。俺の悧羅だ、俺だけの…。何よりも愛おしく思ってるよ。俺の全ては悧羅だけのものだ。全部あげるよ」
言葉にしても伝えきれないほどの想いを突き上げる速さを増す事で伝え続ける。どんなに耐えても悧羅の意識が限界なのは分かっている。がくがくと震えを増していく身体がそれを伝えてくれる。
_______________それでも____________。
まだ、と乞いながらも紳が最奥で果てると共に悧羅の身体が大きく跳ねて息を呑むと同時にすとん、と意識が遠のいた。跳ねた身体を腕を廻して受け止めて強く抱きしめる。荒れた息を整えながら力の抜けた悧羅を抱きしめると愛おしさが押し寄せてきた。荒れた息のまま閉じられた瞼に口付けて悧羅の身体を自分の方に向けるとそのままくるりと身体を返して紳の身体の上に悧羅を乗せてまた抱きしめる。
「…本当に馬鹿だなあ…。俺が離れられるわけないのに…」
どう伝えればこの想いをすべて悧羅に伝えられるだろう。
息を整えながら契りの疵を重ねると意識を手放しているというのに、まだ、という想いが巡ってくる。
離れたくない。
繋がったままでいたい。
自分の中から出ていくことなど許さない。
_____________愛おしい____________。
_____________狂おしいほど____________。
強い悧羅の想いに紳の目にも涙が浮かぶ。重ねた疵を離してもう一度強く悧羅を抱きしめる。汗で濡れた身体が冷えないように起こさないように中に入ったまま身体を起こして掛け布団を引き寄せると悧羅と自分を包みながらまた横になった。
離せるわけなどないのに…。
涙の浮かんだ目を拭いてから紳も瞼を閉じる。目を覚ませばまた悧羅が意識を手放すまで慈しみ続けてしまうことは分かっていた。
これは本当にしばらく寝所から出れそうにないな。
これ以上の倖などない、と思いながら紳も情の後の心地良い気怠さに身を任せてみることにした。
本当に18禁にしたほうがもういいような…。
いや、まだギリギリでしょうか?
お楽しみいただけましたか?
ありがとうございました。