縁【エニシ】
おはようございます。
更新致しますが、ギリギリラインばかりです。
苦手な方はお気をつけ下さい。
里に入ると同時に荊軻は背後の隊士達を労いながら散って良いとだけ伝えた。待ちかねたように散っていくのは隊士達だけでなく枉駕も荊軻も同じだった。遥か先を翔けて行く紳の背中を見送りながら己の邸に戻って行く。荊軻も枉駕も居なくなり宮に戻る途中で弟妹達も散って行くのを軽く手を振って見送りながら媟雅は住処である宮へと翔けた。弟妹達の気持ちは分かりすぎるほどに分かった。身体の芯から痺れて沸き立ってくる沸る思いが頭の中までも支配しているようだ。まだ靄のかかったような頭を小突きながら、今なら誰とでも情を交わせそうな気がした。けれどまだ心の整理がついていない。このまま本能のまま誰とも知らぬ者と情を交わしてしまえば、冷静になった時に後悔するのは目に見えていた。
元から弟妹達のように只愉しむだけの相手を持っていたならばそう思いはしなかっただろうが、媟雅は舜啓しか知らない。倖にも三日の休息はもらえたし、その間に熱も冷めるだろう。出立前に宮の外に集った者たちの中にちらりと舜啓の姿が見えて、心の臓が跳ね上がったのを思い出す。只ほんの少し姿が見えただけでこうなのであれば顔を合わせることも言葉を交わす事も今はまだ難しい。その気持ちを整えるためにも与えられた三日は有難かった。
厄介な想いだ、と大きく嘆息してしまう。舜啓だけが男であるわけでもなし。周りを見渡せばどれだけでも男はいるではないか。余りにも長い刻を共にし過ぎている分、想いを整えるにはまだまだかかりそうだ。本当に心が整ったら弟妹達のように情を交わすだけの相手でも見つけてみよう。やれやれ、と思いながら宮への道を急いでいると急に後ろから腕を掴まれて勢いが殺される。がくん、と急激に止まるしかなかった身体をどうにか支えて落ちないように足を止める。何?、と思いながらも沸る身体で腕を掴まれて背中に震えが走った。一緒に行った隊士達の誰かだろうか、と掴まれた腕に熱が集まるのを感じながら媟雅は振り向いた。そこで息が止まるかと思ってしまう。
腕を掴んでいたのは舜啓だ。何故か肩で呼吸をするほどに息が上がっている。薄らと額に滲んだ汗もそのままに切れる息の中から、探した、という声がする。は?、と言われている意味が分からなくてとりあえず掴まれた腕を外そうとするがますます力強く掴まれてしまう。離して、と乞うがそれも聞き入れられず息を切らしたままの舜啓が踵を返して翔けだした。半は引きずられるようにして宮と離れて行くのを見やりながら幾度も離せと言ってみるが聞いているのかいないのか舜啓からの応えがない。どうにか抗おうとするのだが引かれる強さと翔ける速さで上手くいかないまま見慣れた舜啓の邸に連れ込まれた。ちよっと!、と訳の分からない媟雅がどうにか足を止めたがふわりと抱え上げられてそのまま寝所に連れていかれる。
「ちょっと、待っ…!」
抱え上げられた腕の中で舜啓の身体を離そうとしたが言葉は深い口付けで行く先を奪われた。倒れ込むように寝所に横にされて両手で押し戻そうとするのだが、強く抱きしめられてそれも成されない。ただでさえ悧羅に当てられて沸っているのにこんなことをされては堪らなくなる。かといって舜啓を只、情を交わす相手として見れるかと問われれば今はまだ否だ。幾度か唇が離された隙に、やめて、と伝えてみるが言い終わらない内にまた口を塞がれる。長い刻、乱暴に弄ぶように唇を奪われ続けて沸らされていた身体の芯が痺れて押しのける力も無くなった頃にようやく本当に解放された。荒れた息を整えながら自分を抑え込む。舜啓を見るとこちらもまた息を荒らしている。
ああそうか、と媟雅は小さく嘆息した。悧羅に当てられてどうしようも無かったから媟雅を探したのだろう。情を交わす相手を探す刻も惜しい程に当てられてしまっているのだろう。そう思うと何とも哀しくて惨めになる。
どれだけ心を殺して忘れようと思っているのか。
そんな事も分からない者では無かったはずなのに、悧羅に当てられて鬼としての本能でしか動いていないのだ。沸る身体とは裏腹に込み上げてくる惨めさに涙が出そうになったが必死に堪えた。呟くように離して、と言う声は自分にも届いたが思いの外に冷たかった。真上にある舜啓の目が見開かれて一瞬腕の力が弱まったがすぐにまた強く抱きしめられて口付けられた。手足が痺れるような官能に身を捩りながら、このまま流されたい思いを頭から追い出す。
「…情を交わすだけの者ならすぐに見つけられるでしょう?お願いだから離して」
沸って潤んだ声で言っても是とは言わないだろうが、このままでは本当に媟雅も自分を保てなくなってしまう。痺れた手で舜啓を押し戻そうとすると、嫌だ、と首を振っていた。何が?、と思う。別れを切り出したのは舜啓であったし、媟雅も自分に非があると思えばこそ受け入れた。
「媟雅が欲しい」
その一言に身体が震えたけれどすぐに思い直した。今この状態で言われても信じる術などない。冷静でいられないことは媟雅も分かりすぎるほどに分かっているからだ。もう一度小さく息をついて押し戻そうとするが舜啓は動かない。
「…只の情の相手にはまだなれない。そういう気持ちになれたら言うから、今は離して。熱を冷ましたい気持ちは分かるけど他を当たってくれる?」
懸命に冷静を装って言ってみたがやはり真上の舜啓は首を振っている。
「媟雅が良いんだ。媟雅しか欲しくない」
「…それは母様に当てられたからでしょう?良いから他を当たってってば」
身体を捩ってどうにか横を向くと舜啓の腕の中から逃げだそうと媟雅は床に爪を立てた。この数日一番聞きたかった言葉だったけれどまさかこの状況で聞かされるとは思ってもいなかった。媟雅の気持ちがまだ舜啓に奪われていることを分かっていてそれを言うのか、と悔しくなってくる。身体半分舜啓から逃げ出せて身体を起こそうとすると突然項に吸いつかれて思わず甘い声が漏れてしまった。びくりと震えた身体がまた引き戻されてようやく逃げ出せた舜啓の腕の中に収まってしまう。そのまま首筋や頬に口付けられて溺れそうになってしまうがどうにか耐えてもう一度腕の中から這い出した。乱れた息と髪を整えてから立ちあがろうとする媟雅の腕がまた掴まれる。
「…媟雅…、お願い…」
呼ばれ慣れた声に動きを止めてしまいそうになるけれど、振り向かずに頭だけを振って応える。
「…言ったでしょう?今はまだ只の情の相手として舜啓を見れないって。もう少し刻を頂戴。落ち着いて心が整ったらきっと応えることもできるから」
今は他に見つけて、と言いたくもない言葉をもう一度伝えると腕の力が緩んだ。大きく嘆息してどうにかなった、と立ち上がろうとする。少しでも早く宮に帰って水でも浴びないと媟雅の心も身体も限界だ。床に手を付いて立ち上がった媟雅の腕を滑るように舜啓の手が撫でながら落ちて手を握られる。
「離してもらえないと…帰れないよ…」
振り向けずに言葉だけで伝えると背後で首を振られた様な気配がする。もう一度大きく嘆息して空いた手で握られた手を外していると小さな声がした。
「…好きだよ、媟雅…」
思わず手を止めてしまったけれどそれ以上の言葉はない。聞き間違いか、情を交わしたいだけでつい出てしまったのだろうと思い直してまた握られた手を外し始めると、もう一度小さな声で同じ言葉が聞こえた。
「…好きなんだって…」
は?、と思わず振り向くと俯いて座る舜啓の姿が目に入る。訝しんでいるがやはりそれ以上の言葉は無くて手を外そうとするとその手が小さく震えていることに気づいた。舜啓?、と呟くように呼ぶと俯いたままで、ごめん、と言う声がした。
「身勝手でごめん…。媟雅と恋仲になる前は俺はそういう事してたのに、媟雅には許してなかった。この間のも媟雅ばっかり責めて自分のことなんて棚上げにしてた」
何が言いたいのか分からなくて媟雅は首を傾げてしまう。
「この間のことは私が悪いんだから別に舜啓が謝ることはないでしょう?舜啓だと分からなかったとはいえ身体を開きそうになったんだから怒って当たり前じゃない」
小さく息をついて伝えるが俯いたままの舜啓はまた頭を振っている。当たり前なんかじゃないよ、と大きく嘆息すると舜啓は握った手を強く引いた。思い切り腕を引かれてしまって傾いて倒れ込んだ媟雅の身体を舜啓は抱きとめる。瞬時に離れようとする媟雅を留め置いて、聞いて、と願う。身体が密着しないように両手だけは舜啓との間に置いたままで媟雅が動きを止める。
「凄く考えたんだ。媟雅が俺に倖でいてくれって言ってくれたから。でもこの数日媟雅の姿も声さえも聞こえなくて落ち着かないんだよ」
「それは長く一緒にいすぎたからでしょう?刻が経てば薄くなって行くよ。…私も出来るだけ早く普通に接するように努めるから。舜啓は舜啓の倖を見つけてよ」
ね?、と諭すように言うが舜啓は腕を緩めずに頭を振るばかりだ。お願いだから、と願うがやはり頭を振ってくる。
「本当に身勝手だって分かってるよ。こんな時に伝えたって信じてもらえないのも分かってる。悧羅に当てられた今じゃあね。答えが出た時にすぐにでも媟雅に伝えに行けばよかった。…まさかこんな大きな務めが待ってるなんて知らなかったから今度会えた時に伝えようって勝手に決めてたんだ」
まあ極秘裏だったしね、と嘆息する媟雅の身体がまた引き寄せられて慌てて両手の力を込めてそれ以上近づかないようにする。腕一本分では大した効果は無いのだが、それでも直に触れるよりは身体の火照りも幾分かは紛らわせた。
「媟雅が俺と恋仲に戻りたくないならそれでもいいよ。他と情を交わしたいって言うならそれも目を瞑る。…元々俺にそこをどうこういう資格なんて無かったんだし…。どれだけでも待つからもう一度俺との事を考えて欲しい」
抱きしめられる腕も伝えてくれる声音も震えていて媟雅は思わず腕の力を抜いてしまった。それが伝わったのか抱きしめる腕に更に力が込められた。さらりとした舜啓の髪が顔に触れて耳元で囁くように、好きだよ、と伝えられた。沸り過ぎた身体にはそれだけで十分すぎるほどの刺激だった。びくりと震える媟雅を見逃すことなく舜啓は続けて囁くように幾度も想いを伝えて行く。囁きながら耳を噛むともう長い間聞くことの出来なかった媟雅の甘い声が聞こえてきて、舜啓も限界だった。想いに対する答えはないけれど、媟雅も沸り切っているのは長く刻を共にしてきたからこそ分かる。この状態で身体を開かせるのは卑怯だと分かっていたけれど元々自分は媟雅に対してずっと卑怯だった。
「…ごめんな…」
呟くように言って廻していた腕を解いたが媟雅は身体を離す事はない。告白に対する答えでない事は分かっているけれど解いた手で小さな顔を包んで上向かせる。小さな刺激でも昇っている媟雅の目が潤んでいるのが見えて舜啓の中で何かが弾けた。
「…本当にごめん…。媟雅の責にばかりして逃げてた。許してくれなくても良いよ。本当にどれだけでも待つし、どんな媟雅の答えでも受け入れるから…」
顔を近づけながら囁くが媟雅は身体を動かさない。否、動かせなくなっているのだろう。深く口付けて倒れ込むと自分の隊服も媟雅の隊服も乱暴に剥ぎとって肌を重ねる。さすがに隊服を脱がされる時には、待って、と抗うような声がして媟雅が舜啓を押し戻そうとしたが貪るように唇を奪い続けて聞こえない振りをした。幾日振りかに重ねた肌の感触だけで堪らなくなっていつもはゆっくりと開く媟雅の身体を急いで開かせる。慈しむ手が速すぎるのか抗いたいのに意思とは異なって昇る身体に抗いたいのか、待ってと媟雅は繰り返しながらどうにか舜啓の腕から逃げようとしている。それに何度も、ごめんと謝っては唇を奪う。見慣れたはずの身体と聞き慣れたはずの媟雅の甘い声なのにたった数日触れずにいただけで舜啓の箍を外すには十分過ぎた。
想いを受け入れてくれた訳ではないのに、こうしてはならないと分かっているのに止められない。身体の至る所に口付けて都度聞こえる甘い声が舜啓を狂わせるのだ。
「…待…って…っ!」
どうにか抗おうとしていた媟雅の身体が大きく反り返って昇りつめびくりと跳ねた。それでも慈しむ手を休めずに居るともう甘い声しか聞こえなくなる。何とか手を舜啓の胸に当てて押し戻そうとしているようだが全く力が入っていない。抱きしめる腕の中で何度も昇っては果てさせて一際大きな声と身体が跳ねたのを見やって舜啓は目を細めてしまう。艶かし過ぎる肌はしっとりと汗で濡れて胸に当てられていた手も力なく落ちた。細く白い内股をすっとなぞるのが舜啓が媟雅の中に入る、といういつもの合図だった。それが分かって慌てたように身を起こそうとした媟雅の脚を持ち上げると、嫌だ、と涙目になりながら頭を振っている。それに少し戸惑ったけれど既に当てがってしまっている。
「舜啓、お願いだから待って」
願われたけれどもう堪えきれなかった。
「…本当に卑怯で最低だよな…。こんな時でも欲しくて堪らないんだから」
「だから!その相手だったら他を探してってば!」
腰をずらそうとする媟雅を引き寄せてまた当てがうと、本当にお願いだから!、と涙を流し始める媟雅に口付けて、許してくれなくて良いから、と舜啓は一気に媟雅の中に入り込んだ。急激に入り込まれて息を呑む媟雅を抱え上げて膝に乗せるとより深く入り込まれて甘い声の中から、嫌だ、と泣き声が聞こえ始める。けれど一度中に入り込んでしまっては締めつけられてもう出ることなど出来ない。
「ごめんな、今は媟雅しか欲しくない。他の女なんて代わりにもならないんだよ。また媟雅を傷つけるのは分かってるけど、この三日は俺に媟雅を頂戴。…その後はどれだけでも耐えるし待つから」
上に乗った媟雅を深く押しつけてより深く入り込むとそれだけで艶かしさが増していく。
「どれだけでも謝るよ。だけど好きなんだ。どうしようもないくらい。触れられないだけで声が聞けないだけで狂いそうだった」
動かずに伝えるが媟雅は腰を浮かせて舜啓を外に出そうとしている。それをまた抑えつけて深く入り込むと堪えきれない様な甘い声が上がった。少し動くと嫌だと声を上げながらも堪えきれずに果てる身体を強く抱きとめて動きを速める。悧羅に当てられたからなのか、それとも媟雅自身から立ち昇る艶かしさがそうさせるのかは舜啓にも分からない。嫌だ、と訴えられるが聞いてやれない。どんどん勢いを増して突き上げ続けると嫌だと言いながらも、媟雅の腕が舜啓の首に廻された。肌と肌が触れ合って媟雅の腕が首に廻されたことでもう諦めてくれたのだろう、とほんの少しだけ安堵してより早く突き立て続ける。しがみついたままの媟雅の身体が三回跳ねると締め付けも都度強くなる。突き立てながら布団に倒れ込んで勢いを殺すことなく更に動きを速めると、媟雅の腕が落ちた。どうにか舜啓の腕を掴んで耐えているが甘い声と喘ぎの中で懸命に首を振って嫌だと示す。それでも止める事が出来ずに攻めたて続けると、嫌ぁ、と甘い声の中で媟雅は大きく反り返って果てそうになっているのが伝わってきた。どんどんと締め付けられる舜啓もさすがに限界で跳ねる媟雅の身体を引き止めて深く入り込むと最奥で一度欲をはきだすとその刺激でも媟雅が震えている。
ぐったりと横たわる媟雅の中にますます入り込んで泣き続けている媟雅にもう一度、ごめんと謝って額に口付けると呆っとした目で見つめられる。
「…待ってって…嫌だって言ったのに…」
「うん、そうだね」
「どうして…?私じゃなくても良いはずでしょう?」
「媟雅じゃなきゃ駄目なんだって」
流れ落ちる涙を拭いてやりながら涙を流すその表情さえも艶かしくて媟雅の中に入ったままの舜啓がまた沸り始める。悧羅に当てられた後里に戻る帰路で媟雅を探したが一向に見つからなかった。何百もの隊士達が一斉に翔け出したのだ。雑踏に紛れて気配さえ辿れない。隊士達を掻き分けて先を急ぐがどうしても見つけられなかった。里に着いても荊軻の許しがなければ散ることも出来ない。視線だけで周りを見渡しても見つけられず、もしかしたらもう他の誰かが捕まえているのかも知れないと考えるとそれだけで震えが走った。散って良いとの許しが出て待ちかねた様に隊士達が彼方此方に翔け出してその中を縫う様にして里中を翔け廻った。それでも見つけられなくて一抹の期待で宮に向かったのだ。
何処かに連れ込まれているなら見つけるのは絶望的だ。けれどもしかしたら宮に戻っているのかもしれない。全力で翔け続けて息も上がると考えたくもない事ばかり思い浮かんでしまった。宮が見え始めて幾つかの陰が里の中に降り立って行く中に白銀の髪が風になびいているのが見えた時には先程とは違う震えが身体を襲った。
誰にも捕まえられていなかった、と安堵もしたがその陰の下に手を伸ばそうとしている者達も見えてまた全力で翔けた。他の手が媟雅に触れる刹那、舜啓が腕を掴めた。舜啓が間に合わなければどんなに媟雅が望んでいなかったとしても悧羅に当てられた男の力には抗えなかっただろう。腕を掴まれて振り向いた媟雅に一瞬で心を持っていかれた。
どうして手を離す事が出来たのだろう、と強く思った。もっと考えていれば難なく今頃情を交わせていたはずなのだ。悧羅に当てられた熱を互いで鎮め合っていたはずなのに…。
本当に愚かな事をしてしまった。
他の男になど譲れるわけがない。譲ってなるものか、とその思いだけで媟雅を引き込んだ。そんな思いなど知る由もないだろうが、許してもらえなくても想いだけは伝えたかった。三日の休息の間に見えない所に媟雅が居て、もしかしたら、と思い悩むよりは卑怯でも罵られても自分の腕の中から出したくない。今まさに嫌だと涙を流されていても舜啓は休息の間媟雅の中から出る事はしないと決めている。数日触れていなかった上に悧羅に当てられてしまっていることもあり三日で足りるのかも怪しいところだ。
入られたままで舜啓が沸っていくのが分かったのだろう。出て、と泣きながら媟雅が哀願してくる。媟雅とて当てられているのだからこれくらいで足りているはずもないのに必死に舜啓を押し戻そうとしてくる。その腕を片手で布団に押しつけて更に深く入り込むと泣きながら甘い声を出してくる。
「…お願いだから…。これ以上惨めにさせないで…」
組み敷かれたままで甘い声と泣き声の混ざった声で言われても、嫌だ、としか言えない。
「媟雅が惨めに感じることなんてないよ?…俺の方がそうだから」
少し動くだけで昇っていく媟雅は自らが脚を開いて舜啓を受け入れていることにも気づいていないようだった。抗いたいのに抗えず、沸りたくもないのに沸った身体はどうにかしてくれと言わんばかりに蠢いている。その刺激がまた舜啓を堕としているのも気づいていない。耐え切れずに動きだした舜啓の耳にまた泣き声と喘ぎに混ざって拒む言葉が聞こえてくる。言葉とは裏腹に悩ましく腰を動かしてこられては舜啓も堪らない。逃がさないように腕は抑えつけて甘い声を出す唇を塞ぐと、それだけで媟雅の身体が大きく跳ねる。強く締め付けられて耐え切れずに舜啓も果ててしまう。唇を離すとぐったりとしながら荒れた息の中で媟雅が首を振っていた。
「こんなの嫌だよ。忘れようとしてるのに…、離れなきゃって思ってるのに…」
濡れた唇を舐めると媟雅は、はらはらと泣きながら頭を振っている。
「じゃあ忘れないでいいよ?離れなくてもいい。俺のところに戻ってきてよ、今すぐじゃなくても良いから」
身体の下でまた身を捩り始めている媟雅に向けて舜啓は想いを伝え続ける。幾度も好きだと伝えても信じ切れないような媟雅に苦笑しながら、これが一度手を離したことへの罰なのだ、と受け入れた。
「媟雅が信じてくれるまで毎日でも伝えるから。待つのは慣れてるし。その間に他と情を交わしても良いから最後は俺のところに戻って。…耐えられなくなったらまたこうしちゃうかもしれないけどね」
組み敷かれたままでどうにか抜け出そうとする媟雅の動きでまた沸らされながら、言っとくけど、と舜啓は微笑んだ。
「そうやって動くと俺が沸るよ?ただでさえ優しくしてやれないのにいいの?」
その言葉に媟雅が動きを止めた。嫌だ、と言うがもう聞いてやれないところまで沸らされている。
「悪いけど三日の休息の間、離してもらえると思わないでね?逃がさないし、絶対媟雅の中から出ないから」
微笑んで伝えた言葉が脅しのようで、本当に卑怯だ、と舜啓は思ってしまう。身体の下で震え上がった媟雅が泣きながらもう一度嫌だ、と頭を振ったけれどそれにも苦笑してしまう。
「ごめんな。聞いてやれない」
言うなり乱暴に唇を奪って舜啓はまた媟雅を泣かせ続けた。
もう18禁にした方が良さそうな…。
いや、まだいけるか?と思いながら書いてます。
しばらくギリギリラインが続きますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
ありがとうございました。