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糺す【拾捌】《タダス【ジュウハチ】》

遅くなりました。

ギリギリラインがありますので苦手な方はご注意下さい。


更新いたします。

ぼんやりと微睡(マドロ)む目を開けた媟雅(セツガ)の目に最初に(ウツ)ったのは悧羅(リラ)(ムラサキ)の長い髪だった。目の周りは重いのにひやりとした感覚が残っている。ずっと()やしてくれていたのだろう。丁度(チョウド)手拭(テヌグ)いを()えていたところだったらしく冷たい水の入った(オケ)手拭(テヌグ)いを(シボ)っている。顔と身体(カラダ)(ツツ)むふわりとした毛並(ケナ)みと、(ツツ)まれ()れた(ニオ)いがしてそれが妲己(ダッキ)のものだと分かってほっと小さな安堵(アンド)の息をつく。それに気づいたのか、おや、と(オダ)やかな悧羅の声がした。


「目が()めたのかえ」


手拭(テヌグ)いの代わりに手が置かれてそのまま(ヒタイ)()でてくれる。妲己(ダッキ)も少し身体を起こして、姫様(ヒメサマ)()()ってきた。気分はどうだ、と(タズ)ねられるがぼうっとしたままでよく分からない。今は?、と問い返すと夜だ、と妲己(ダッキ)が教えてくれた。夜、と(ツブヤ)いて身体(カラダ)を起こそうとすると妲己(ダッキ)が手伝ってくれた。大分眠っていたようで身体が気怠(ケダル)い。尾で()きとめられるままに身体を(アズ)けると(アタタ)かな妲己(ダッキ)の体温が心地良(ココチヨ)くて安心してしまう。


「もう少し寝ておればよかろうに」


小さく笑いながら(ホオ)を撫でてくれる悧羅に、寝過ぎたよ、と返すと水差(ミズサ)しから()いだ水を(ワタ)された。受け取って飲むと(カワ)き切っていたのであろう身体に()(ワタ)っていくのが分かった。


()()()はまだだよね?」


自分も付いて行くと伝えていたから悧羅が置いていくとは思えないが一応(イチオウ)(タズ)ねると、明日だ、と返ってきた。そんなに寝ていたのか、と思うと申し訳なくなってしまう。(ツト)めにも出ていないから同じ部隊(ブタイ)の者たちにも迷惑(メイワク)がかかってしまっている。さすがに休みすぎた、とごちると悧羅は、なんの、と笑っている。


媟雅(セツガ)はちと気を張り続けておるからの。丁度(チョウド)よい休息(キュウソク)じゃて」


「明日は出るよ。夜には大事な母様(カアサマ)(ツト)めもあるんだし。部隊(ブタイ)の仲間達にも迷惑(メイワク)かけちゃってるから」


少しずつ水を飲みながら言うと、よいよい、と悧羅は笑っている。


「夜には(ツト)めに着いてきてもらわねばならぬからの。昼間は休んでおきや」


「でも…」


口を開こうとしたが悧羅は静かに首を振っている。(オモ)いが通じている者と(ハナ)れなければらならない気持ちは悧羅にはよく分かる。悧羅の時は子袋(コブクロ)まで(ツブ)していたので身体の衰弱スイジャク(ヒド)かったけれど、それよりも(ツラ)かったのは(シン)への想いを(シズ)めるために自分の心を()てつかせることだった。想いを寄せる相手に(コバ)まれた時の気持ちは痛いほどにわかり過ぎてしまう。しばらく話していると部屋の戸が静かに開けられた。


「何だ。起きてたの?」


入ってきたのは(シン)だ。湯を()びてきたのだろう。髪がしっとりと濡れていた。よいしょ、と悧羅の横に座ると媟雅(セツガ)に手を伸ばして頭をくしゃりと()でてくれる。


「少しは眠れたか?」


微笑(ホホエ)みながら(タズ)ねてくる紳の手が温かくて泣き出しそうになるのを必死に(コラ)える。ただでさえ大変な(トキ)なのにこれ以上の心配をかけるわけにはいかない。だが(シン)が宮に戻っているということはもう(イヌ)(コク)()(コク)は過ぎているのだろう。


父様(トウサマ)今日は早かったの?」


頭から手が離されてから媟雅(セツガ)(タズ)ねると、さっきだ、と笑っている。


()(コク)近かったかな?早く帰りたかったんだけどね」


なんでも無いように笑う紳にも明日は(ツト)めに出ると言うが苦笑して駄目(ダメ)だと言われてしまう。


「どうせ夜には一緒(イッショ)に行くんだろ?だったら昼間は休んでろ。せめて少しくらい食餌(ショクジ)()らないと夜も連れてってやんねえぞ?」


ねえ?、と(トナリ)を見ながら笑う紳に静かに悧羅も微笑んで(ウナズ)いている。


先程(サキホド)からそういうて聞かぬのじゃ。(ワラワ)も出ずとも良いと言うておるのだがな」


「だって(ツト)めは()まってるだろうし、部隊(ブタイ)の仲間に負担(フタン)かけちゃってるでしょ?」


水を飲みながら言うと紳は声を上げて笑いながら、大した事じゃないともう一度媟雅(セツガ)の頭を撫でた。


「そんなに気にしなくて大丈夫だ。媟雅(セツガ)の分なんて俺が廻ればすぐ終わることだし、隊士達(タイシタチ)にもそう言ってる。(ツト)自体(ジタイ)そんなに()やしてないから」


「…じゃあ父様(トウサマ)が大変になってるよ。帰りが(オソ)くなってるのも私の()いでしょ?」


「いいや?全然大変じゃないよ」


くしゃくしゃと媟雅(セツガ)の頭をかき混ぜて、父親だからね、と紳は言う。実際(ジッサイ)(タイ)したことは無かったし何より今は媟雅(セツガ)の心の方が大切なのだ。(オモ)う相手と離れなければならない気持ちは紳にも痛いほど分かる。紳や悧羅とは感じている事も違うだろうが落ち着くまでは護ってやりたかった。子ども達は六人全て大切(タイセツ)だが媟雅(セツガ)は紳と悧羅にとっては特に思い入れが強い子だ。出来れば紳と悧羅が本当に大丈夫だと思うまではゆっくりさせたいのだが、それを()という媟雅(セツガ)ではないのも知っている。明日の夜は仕方(シカタ)ないとはいえその後も休ませたいが嫌だというだろう。そうであれば明日の大事(ダイジ)の前までは休ませておきたい。少し()せた媟雅(セツガ)妲己(ダッキ)も、二人の言う通りに、と(サト)している。


“そうでなければ(ワレ)が許しませぬよ。どうしても(アルジ)のお(ツト)めに行くと言われるのであれば(ワレ)の背から降りることも(ユル)しませぬ”


妲己(ダッキ)もこう言うておるに。ゆるりと休め。妲己(ダッキ)が許さねば(ワラワ)が連れてゆくと言うても聞いてはもらえぬでの」


くすくすと笑う悧羅に、至極当然(シゴクトウゼン)妲己(ダッキ)は尾で媟雅(セツガ)(ツツ)む。妲己(ダッキ)にとっても媟雅(セツガ)は特別だ。産まれた時から媟雅(セツガ)は妲己が護ってきたし悧羅や紳よりも妲己(ダッキ)(ナツ)いていた。眠るときも妲己(ダッキ)さえ居れば泣かないほどに媟雅(セツガ)(ソバ)にいたのだ。我儘(ワガママ)を言われても(イナ)と言えず共に宮を抜け出しては女官(ニョカン)達に(シカ)られたものだ。その媟雅(セツガ)が遠い昔の悧羅のように心を痛めているのを(ホウ)っておけるはずもない。宮に戻って悧羅から眠らせていると聞いた時には、どうしてもっと早く(モド)らなかったのだ、と思ってしまった。顔を()り寄せると、くすぐったいよ、と媟雅(セツガ)が小さく笑った。


「何か食べるか?忋抖(カイト)達もいろいろ買って来てるぞ?媟雅(セツガ)が食べないから(モッパ)ら自分たちの物にしてるけどな」


肩を(スク)めながら苦笑する紳に、みんならしいね、と笑いながら弟妹(テイマイ)達にまで心配をかけてしまっていることに申し訳なく思ってしまう。言われてみれば少し空腹(クウフク)に感じるがどうしても食べたい、という感じでも無かった。


「今はいいかな。…明日は少し食べるよ。そうでないと連れて行ってもらえないのは(コマ)るから」


「そうしてくれ。本当は俺も付いときたいんだけどな。今居ないと不自然(フシゼン)になるから、ごめんな?」


(アヤマ)る紳に、どうして父様(トウサマ)(アヤマ)るの?、と媟雅(セツガ)は笑ってしまった。紳の(ツト)めの大きさは知っているし、今が大変な時であることも分かっている。こんな時に余計(ヨケイ)な心配をかけている自分の方が(アヤマ)るべきなのに本当に紳は子ども達に甘い。


「それよりも父様(トウサマ)母様(カアサマ)ももう休んで。私は大丈夫だから。妲己(ダッキ)もいてくれるし、明日は大変なんだから」


もう遅い(ジカン)なのだから二人にも休んで欲しくて言ったのだが、二人は共に笑っているばかりだ。


「そう(タイ)したことはないえ?すぐに終わる(ユエ)


「確かに()()()()()だろうね」


何をするのかは知らされていないが二人がそう言うということは本当にすぐ終わるのかも知れない。だがそれでも紳は(ツト)めの後であるし悧羅も明日のために動いている荊軻(ケイカツ)達と(クワダ)てを(ミツ)にしている。合間(アイマ)()って媟雅(セツガ)の側にいてくれているのだろうから多少の(ツカ)れはあるはずだ。


「とにかく良いから休んでよ。すぐ終わるって言われても二人が(ツカ)れてたら話にならないでしょ?」


(カラ)になった湯呑(ユノ)みを取り上げる悧羅に言うとまた小さく笑っている。本当に休んで、ともう一度いうと分かったと笑いながら二人が立ち上がる。


「じゃあ妲己(ダッキ)(マカ)せるよ。眠れるなら寝るんだぞ?」


うん、と(ウナズ)媟雅(セツガ)(ホオ)を撫でてから紳は悧羅と共に部屋を出た。自室に向かいながら悧羅の手を取ると(アン)ずるな、と(オダ)やかな声がする。でもさ、と嘆息(タンソク)する紳の(ツナ)いだ腕に()いた腕を(カラ)ませて悧羅は身を寄せた。大事(ダイジ)無いはずじゃ、と見上げながら微笑まれて紳は苦笑するしかない。


「…舜啓(シュンケイ)も聞きたいんだろうけどさ。さすがに俺には聞けないみたいでね。でも(タイ)に出てない媟雅(セツガ)(サガ)してる(フウ)なんだよね」


知らないふりするのも(ラク)じゃないんだよ、と言いながら自室の戸を開けて中に入る。では良いではないか、と笑っている悧羅を抱き上げて寝所(シンジョ)に横にすると、おや?、と首を(カシ)げられる。


媟雅(セツガ)があの調子(チョウシ)である(ユエ)、このところ()()()()ではないか?」


意地悪(イジワル)に笑って(ホオ)に触れる悧羅に、そうなんだけどね、と紳も苦笑しながら口付ける。媟雅(セツガ)が寝込んでから丁度(チョウド)悧羅が物忌(モノイ)みに入ったのもあって紳はこのところ悧羅に()れることが出来なかった。物忌(モノイ)みも終わったようだし、紳が(コラ)えられるはずもない。口付けながら自分の寝間着(ネマギ)()いで悧羅の身体も(アラワ)にする。数日振りに(ハダ)が触れ合って長い腕が首に廻されると、それだけで(タギ)る。


「俺もそうだったから、媟雅(セツガ)の気持ちも分かるし自制(ジセイ)しなきゃなあとは思うんだけど…。物忌(モノイ)みの間()えたんだし…。俺も悧羅と離れてた分は取り返さないといけないしね。(ジカン)がどれだけあっても()りないからなあ」


(ヒタイ)(ホオ)に口付けながら(ササヤ)くように言うとその吐息(トイキ)で身体を(フル)わせながら悧羅は、媟雅(セツガ)の事なら大事(ダイジ)ない、と教えてくれる。


「何でそんな(フウ)に思うの?」


(イツク)しみながら(タズ)ねるが甘い(アエ)ぎを上げながら身を(ヨジ)り始めている悧羅には言葉を(ツム)ぐことが(ムズカ)しい。手を休めてくれなければ話せない、とどうにか伝えるのだが(イヤ)と笑われた。


「何日振りに触れると思ってるの?触れられなくて俺もおかしくなりそうだったんだから、(ナグサ)めてもらわないと困る。…()ち終わるまで止めないよ」


「では話せぬではないか」


どうにか言葉になったのはそれだけだったようだ。甘い声がする中で幾日(イクニチ)振りかの悧羅の姿は紳に他の事を考えることを許さない。ただ腕の中にいる悧羅の事だけしか考えられなくなって(イツク)しみ続けると幾度(イクド)()てては(ノボ)るを繰り返す姿にまた(タギ)らされる。細い身体を(クチビル)でなぞりながら細い両足を曲げさせて間を(イツク)しみ始めると(アワ)てたように、それは、と悧羅の腕が紳を押した。滅多(メッタ)にそこを(ジカ)()めることは無かったので、悧羅もこれだけは(アラガ)おうとする。逃げようとする悧羅の細腰(ホソゴシ)を強く引き止めて足で逃げられないように少し浮かせてから()めると悧羅の身体が何度も()ねて()り返る。(イヤ)だ、と言うが元より紳には聞く気もない。まだ話せる内は(オボ)れきっていない(アカシ)でもある。時には足の内側(ウチガワ)や足の指先一本一本に(イタ)るまで(イツク)しみながら強い刺激から()いてやるがまた()()(モド)ると幾度(イクド)()てさせられて力の入らなくなった手がどうにか紳を押し戻そうとする。


それにも駄目(ダメ)、と言い置いて続けるとまた幾度(イクド)(フル)えては()てて(ノボ)っていく。しっとりと汗ばんだ悧羅の足を(カカ)え上げて(オク)まで一気(イッキ)に入り込むと息を呑みながら悧羅が()てる。中に入った紳も入る時から(セマ)さを感じていたのに急激(キュウゲキ)に締め付けられては(タマ)らない。()えられずに一度(ヨク)()き出すがその刺激(シゲキ)でも悧羅は息を呑みながら身体を()った。子を産むと少しばかりは締め付けも(ヤワ)らぐ、とはよく聞く話だったが悧羅に関してはそれがない。むしろ共にいる間、(ジョウ)()わすたびに入った紳を出さないとでもいうように締め付けてくるのだ。紳以外知る(ヨシ)も無いだろうが、悧羅本人もきっと気づいていないだろう。


(クル)うほどに(オボ)れさせて」


そう言われてから遠慮(エンリョ)を止めた紳に日々()とされ始めた頃から始まったような気がするけれど、自分だけを求めてくれているのが伝わってそれがまた紳の悧羅への(オボ)れを深くしていく。腕の中に収まる悧羅にくすりと笑って動き始めると(コタ)えるように甘い声と強請(ネダ)るように名を呼ばれる。締め付けも強くなるが()えて()めたて続けると泣き出しそうな声で口付けを(セマ)られた。うん、と細い身体を強く抱きしめて深く口付けると(ヒビ)いていた声がくぐもった。求められるままに口付けを繰り返しながら突き立て続けるとその間にも悧羅は(ノボ)って行く。


「ああもう…、可愛(カワ)いすぎるって」


()ててぐったりとしながらも紳を呼び続ける悧羅を抱き上げて座ると身体を胸に預けながら(アオ)ぎ見てくる。荒れた息の中から名を呼ばれてますます紳も(タギ)ってしまう。限界(ゲンカイ)?、と意地悪(イジワル)(タズ)ねながら悧羅を押し付けると、深い、と(アエ)がれてしまう。


本当に可愛(カワ)いくて仕方(シカタ)ない。背中を指でなぞるとぶるりと(フル)えるほどに敏感(ビンカン)になった姿に目を細めると、まだ()りない、と()われた。(ムツ)み合わない事など物忌(モノイ)みの数日だけでも長すぎるくらいなのは悧羅も同じだ。出来れば紳とずっとこうしていたいほどに(ジカン)はどれだけあっても()りない。()てさせられすぎて視界(シカイ)(クラ)むし手足も(シビ)れているが、それでも()りずに求めてしまう。()め立てられて押さえつけられながら最奥(サイオク)で紳が(ヨク)を吐き出しても、まだ、と自分の中から出ることを許してやれない。


「そんなに欲しい?」


悧羅の中で(フタタ)(タギ)り始めるのを感じながら深く口付けると力の抜けた腕が首に廻される。


「当たり前じゃ…、まだまだ()りぬ…」


(ウル)んだ目で見つめられて紳は笑ってしまう。


「何でそんなに可愛(カワイ)いの?…困るよ、いつまでも悧羅に()とされ続けてるんだけど。毎日毎日(イト)しい思いが深くなってるんだよなあ」


くすくすと小さく笑って(アズ)けられた身体を抱きしめて言うと、同じじゃ、と悧羅も荒れた息の中から笑いながら言う。


(ワラワ)とて日々紳に()とされ続けておるに。心も身体もな。…()しゅうて(タマ)らぬほどに」


「…またそんな可愛(カワイ)いことばっかり言って…。じゃあまだあげるから、どうして媟雅(セツガ)大丈夫(ダイジョウブ)だと思うのかだけ教えてよ」


(タギ)った自分を悧羅の中に押しつけながら忘れてしまう前に(タズ)ねるとますます奥に入り込まれて(アエ)ぎながらしがみついてくる。


「そんなに入られると言えぬではないか」


甘い声のまま(ウッタ)えてくる悧羅に、そうだねえ、と笑いながら少し動く。(サラ)に甘えた声を出す悧羅に我慢(ガマン)出来ずに動き続けると細い身体がびくりと上に()ねようとする。()がさないようにしっかりと押しつけて動く勢いを増すと悧羅もまた自分が()げだしてしまわないように細い腕と足で紳にしがみついた。(タガ)いに荒れた息を切らしながら名を呼び合うと紳が(タマ)らずに悧羅の(クチビル)乱暴(ランボウ)(ウバ)う。しっとりと汗ばんだ肌を触れ合わせながら口も(フサ)がれたままで呼吸も出来ないけれど、(スベ)てを紳に(ササ)げている悧羅にとってはこの瞬間(シュンカン)、この刹那(セツナ)(サイワイ)仕方(シカタ)ない。激しく突き立てられて(ウバ)われたままの口から、もう、と又()ててしまいそうなことを伝えると、勢いを増して突き立てられる。(ナマ)めかしい姿も何もかもが(イト)しくてどうしようもない、と伝えてくれる紳に(コタ)えながら共に()てるが、紳は止まらない。


ぐったりと力の抜けた悧羅の身体を横たえてまた()める。紳しか見れない悧羅の姿に自分に限界(ゲンカイ)などないかのように(タギ)り続けてしまう。それに(アラガ)うこともなく受け入れ続ける悧羅にもまた限界(ゲンカイ)など無いように思えた。(ウル)んだ目から(ナミダ)(コボ)れても悧羅が苦しんでいるわけでは無いことをもう紳は知っている。荒れた息の中から一応(イチオウ)、やめる?、と悪戯(イタズラ)()めたてながら聞いてみるが(コタ)えなどわかりきっている。懸命(ケンメイ)に首を振りながら、(イヤ)だ、と言ってくれるのを見たいのだ。紳が望む通りに身体を()り返しながら首を振って、(イヤ)、と言ってくれる。だよね?、と分かっていた(コタ)えに満足しながらより勢いを増してより深く突き立てると悧羅の身体が大きく()ねあがった。それでも、まだ、と強請(ネダ)られて勿論(モチロン)だ、とそのまま今度はゆっくりと動く。(ハゲ)しすぎる動きから緩徐(カンジョ)な動きになって悧羅が腕の中で身を(ヨジ)る。


吸い上げすぎて赤く()まった(クチビル)(ツイバ)むように口付けると、もっと、と強請(ネダ)られた。


「…もっと…、深く…。…もっと…強く…っ」


(タノ)む、と()われて紳は強く悧羅を抱きしめる。こうしている(ジカン)だけは(タガ)いの事さえ考えていればいい。本当にどうしてこんなに欲しいのか分からない。手に入れているのに、それでも(ナオ)求めてしまう。ゆっくりと動きながら、どれほど(イト)しいかを伝えると同じだと言ってくれる。力の抜けたはずの腕を懸命(ケンメイ)に上げて紳の両頬(リョウホホ)(ツツ)んで引き寄せながら深く口付けてくる。


「…はやく…、強く…(コワ)してたも…」


見つめられてぞくりと背中に走る(フル)えを感じながら、すぐにも()めたてたいのを紳は(コラ)えた。媟雅(セツガ)についての(コタ)えを聞いていなかったのを思い出したのだ。(タズ)ねると、今か?、と荒れる息と(アエ)ぎの中から不満(フマン)そうに聞いてくる。


「今でないと聞けないと思うんだよね、俺。()()()()()(コワ)すから」


悧羅の望み通りに、と赤く()れた唇を()めるとそれだけで身体を(フル)わせた。でないと動かないよ?、と(ヒタイ)に口付けながら深く入り込むと、(アエ)ぎを上げながら悧羅の腕が落ちる。両の指を(カラ)ませて布団(フトン)に押し付けると、早く、と先を(ウナガ)す。


「早く話してくれないと俺が我慢(ガマン)出来なくなってるよ?」


「…話せば(コワ)してくれるのかえ…?」


(アエ)ぐように言われて、望むまで、と紳は笑った。


「ただ、そう思うだけじゃ。()()()(ハナ)れられぬ、とな。紳と(ワラワ)のように(ハナ)れようと心を()てつかせても(モド)ってしまう。()()()()数日()っておる(ユエ)舜啓(シュンケイ)の頭も()えたであろうからの…」


ふうん、と言う紳に、それに、と悧羅は続ける。


「明日は(ワラワ)本領(ホンリョウ)が出るであろ?であればそれも(ワズ)かばかりの手伝いにはなろうて」


「なるほどね。確かに悧羅が()()を使えば正気(ショウキ)でいれる奴なんていないもんね。本心(ホンシン)が出ちゃうからな。…でもそうだとすると連れて行く奴らも考えないといけないかなぁ。しばらく(ツト)めにもなりそうにないよね」


小さく笑いながら、何より俺が、と口付けるとそれは願ってもない、と悧羅も笑っている。むしろそれが良い、と(カラ)ませた指に力が込められて(コマ)ったように紳は声を上げて笑ってしまう。


「里の護りやら後始末(アトシマツ)やらあるんだから。全員がそんなことになったら(コマ)るんだけどな。俺もしなきゃなんないんだよ?」


「紳は(ワラワ)(シズ)めてくれれば良いでは無いか。他の事など(マカ)せれば良い」


「またそんな事言って…。自分で(オサ)えられるようになったの知ってるよ?悧羅の意志(イシ)で出したり引っ込めたり出来るでしょ?」


笑い続ける紳から悧羅は少し()ねた様に顔を()らした。


(イヤ)じゃ。()()を使わば(ワラワ)もそれなりに(タギ)る。紳が(シズ)めてくれぬのであらば出し続けるぞ」


「すごい(オド)しだなぁ。しかも(イヤ)だ、なんてまた可愛(カワイ)いこと言って…。ほんとに(マイ)るよね」


()らされた顔に口付けると、分かったよ、と紳はまた苦笑した。


「出し続けられて変な奴が悧羅に寄って来ても困るしね。そんなんなったら相手を()り殺しちゃうからなあ」


「…そうだえ?他の男の手などに触れられとうもない。紳でなければ(イヤ)じゃ」


(ホオ)(フク)らめて顔を戻す悧羅に軽く口付けて当たり前だろ?、と紳も笑った。


「俺のなんだから、(ダレ)(サワ)らせるっていうんだよ?そんなの考えたくも無いね」


であろ?、と笑う悧羅か少しばかり身を(ヨジ)った。悧羅も中に入られたまま動きもされずに()らされているのだ。そろそろ待ちきれなくなっている。


「それよりも話したのだから…その…、」


()じらうように視線を()らして、(コワ)してくれまいか?、と小さく(ツブヤ)くように言う悧羅の姿にに紳はくすくすと笑う。紳も悧羅と同じで()らされている。中に入り込んだままなのだから(ツネ)に締め付けられているのと同じ事なのだ。


「約束したからね。でも(コワ)れて()ちるまで何て言われても止めてあげないよ?」


「…それを望んでおる(ユエ)。紳で(ワラワ)()めてたもれ」


もう一度、(タノ)む、と微笑まれて紳は苦笑を止めることが出来ない。本当に(コマ)った(ヒト)(オボ)れてしまった。けれどこの姿を他の男が見る事など()えられないだろう。


「…俺で良かった?」


動き出すしながら(カラ)めた指を強く(ニギ)って布団(フトン)に押し付ける。勢いを増す動きに翻弄(ホンロウ)されるままの悧羅が、当たり前だ、とどうにか言葉を出す。


「…紳でなけ…っれば…っ!」


これほどに欲しくなど無い、と伝えられた言葉に紳の身体が(シン)から(フル)えた。それ以上言葉は出なかった。(タガ)いに言葉の()わりに(ムツ)み合って(タガ)いが唯一無二(ユイイツムニ)だとその身体に()み込ませていく。



満月の夜まであと一日だった。

遅くなり申し訳ありません。

書いたり消したり繰り返ておりました。


おたのしみいただけましたか?

ありがとうございました。

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