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糺す【拾肆】《タダス【ジュウシ】》

遅くなりました。

更新します。


ギリギリラインばかりなので苦手な方はご注意ください。

夜の見廻(ミマワ)りを終えて隊舎(タイシャ)(モド)った忋抖(カイト)隊長(タイチョウ)でもあり父でもある(シン)に変わりは無かった、と(シラ)せを入れた。分かった、と荊軻(ケイカツ)への(シラ)せをしたため始める紳を見ながらまとめる隊士達(タイシタチ)(ヤシキ)()がっていい、と伝える。(ツカ)れた身体(カラダ)を引きずるように隊舎(タイシャ)を出て行く隊士達(タイシタチ)に笑って手を()りながら見送(ミオク)って忋抖(カイト)は紳に向き直る。


父様(トウサマ)、まだ戻らないの?」


他に隊士(タイシ)が居ない事を確かめてから忋抖(カイト)も肩の力を抜いた。隊士達(タイシタチ)の前では隊長(タイチョウ)と呼ばなければならないが二人であれば特段(トクダン)(カマ)うことはない。椅子(イス)を持ってきて紳の前に座ると、もう少しな、と(シラ)せをしたためる手は休めることなく(コタ)えが返ってくる。


「あと一部隊(イチブタイ)戻って来てないんだよ。もうそろそろだと思うけどな。先に帰ってていいぞ?悧羅(リラ)もお前たちが帰ってくるのを待ってるだろうから」


母様(カアサマ)が待ってるのは俺たちじゃなくて父様(トウサマ)だよ」


笑って言う忋抖(カイト)に、そりゃそうだ、と紳が笑っている。昨夜初めて見せてもらって(サワ)らせてもらった悧羅の(ハラ)疵痕(キズアト)が思い出されて忋抖(カイト)は小さく息をついた。湯から上がってきた紳は悧羅と子ども達が部屋に入っている事に安堵(アンド)していたが、疵痕(キズアト)を見せてもらった、と言う皓滓(コウサイ)の言葉には少し心が()らいだように見えた。一瞬(イッシュン)息を呑んだ紳に悧羅が、ただの古傷(フルキズ)だ、と(ナダ)めていたけれど出来れば見せてほしくは無かったのだろうと思った。悧羅の(ハラ)に残る疵痕(キズアト)は紳の(ツミ)(アカシ)だからだろう。思えば(オサナ)(コロ)に皆で湯を使っていた時には疵痕(キズアト)など見えなかった。きっと悧羅が(カク)していたのだ、と今思えば納得がいく。あれだけの疵痕(キズアト)だ。痛むことも()()る事も少なくなったと悧羅は言っていたけれど、(マッタ)く痛まないはずがない。話としては聞いていたが実際(ジッサイ)に目にしてみると、当時は壮絶(ソウゼツ)だったろうと容易(タヤス)く思い描くことができる。


男である忋抖(カイト)には女が自分で子袋(コブクロ)(ツブ)すということがどれほどの覚悟(カクゴ)であったのかは(オモンバカ)ることは出来ない。けれど自分の(セキ)で何よりも(イト)おしく思っていた女がそういうことをしてしまったら、自分はどうするのだろう、と考えてしまう。しかも今の忋抖(カイト)よりも歳若(トシワカ)かった二人にはその身に(アマ)るほどの辛酸(シンサン)苦痛(クツウ)(トモナ)っただろう。考えるだけでぶるりと(フル)えてしまいそうになる身体を必死に(オサ)えた。


近頃(チカゴロ)父様(トウサマ)の戻りが(オソ)いから母様(カアサマ)が部屋に入りたがらないんだよ。身体(コワ)すっていうのに聞かないんだもんね」


(アキ)れたような忋抖(カイト)嘆息(タンソク)に紳は苦笑するしかない。


「じゃあ、今日は中で待っててって伝えてくれよ」


「…聞くと思う?」


「思わないけどね」


でしょ?、と忋抖(カイト)が肩を(スク)めた。今までも幾度(イクド)となく言ってきたがこればかりは悧羅は退()かない。仕方ないので上衣(ウワゴロモ)くらいは()けるようにしているのだが、どれだけ紳が遅くなっても悧羅は縁側(エンガワ)で待ち続ける。(イソ)ぎの(ツト)めがある時以外に(カギ)られるが、里の(オモ)たる事柄(コトガラ)荊軻(ケイカツ)が取り仕切っているのでそう急ぎの(ツト)めが上がってくることはない。必然的(ヒツゼンテキ)にほぼ毎日縁側(エンガワ)に座っているのだ。妲己(ダッキ)哀玥(アイゲツ)が宮にいる時は(ソバ)(ハベ)っているので少しばかりの(ダン)や身体を(アズ)けることができるのだが、その妲己(ダッキ)哀玥(アイゲツ)も悧羅の(メイ)を受けて何やら動いている。もうすぐ始まる(クワダ)てのためであることは分かっているけれど、どうにも悧羅を一人にしておくのは(シノ)びなくて忋抖(カイト)を含む子ども達も(ダレ)か一人は(ソバ)にいるようにしていた。(モッパ)玳絃(タイゲン)灶絃(ソウゲン)が母寄りであるので(ソバ)にいるのだが、(ツト)めに(サワ)る、とある程度の(ジカン)で部屋に戻されてしまうのだ。であればこそ紳に早めに戻って欲しいのだが、紳もこのところ(イソ)がしくて戻るのは(トリ)(コク)()ぎる事が多い。


「じゃあ出来るだけでいいから早く戻ってきてよね」


椅子(イス)を戻しながら言うと、分かってるよ、と紳が大きく()びをした。


「それよりもお前こそ早く帰らないと、また佟悧(トウリ)から追いかけられるぞ?」


椅子(イス)を戻した忋抖(カイト)揶揄(カラカ)うように紳が言うと、それは(コワ)いね、と苦笑が出てしまう。十五年前の粛清(シュクセイ)(ハカ)らずも間諜(カンチョウ)をしてくれていた佟悧(トウリ)が求めた褒美(ホウビ)忋抖(カイト)(ジョウ)()わしたい、というとんでもないものだった。姉のように育った佟悧(トウリ)今更(イマサラ)そんな関係になれるはずもなく、何より一人の女として見ることが出来ない忋抖(カイト)はそれからずっと()げ続けている。宮の部屋へ通じる(マジナイ)も時々悧羅にかけ直してもらい、哀玥(アイゲツ)(ソバ)にいることでどうにか(タモ)てているのだ。


「いい加減(カゲン)(アキラ)めて欲しいんだけどなぁ。十五年も逃げ続けてるんだから…」


咲耶(サクヤ)の子だからな。そうそう容易(タヤス)(アキラ)めたりしないさ。一回(タメ)せば気が()むんだろうけどね」


小さく笑う紳に、無理(ムリ)だってば、と肩を落としながら忋抖(カイト)は手を振って隊舎(タイシャ)を出た。いつもは哀玥(アイゲツ)も共に動くのだが今は悧羅の(メイ)優先(ユウセン)させているので(トナリ)に居ないことに少し違和感(イワカン)がある。今日は宮には戻っているだろうか、と考えながら()け始めて、もうすぐ宮に着くという時になって身体の右側にふわりと何かが巻きついた。は?、と視線を落とすと見慣(ミナ)れた漆黒(シッコク)の髪が見えた。


「やっと(ツカ)まえた!」


抱きついたまま顔を上げて笑うのは佟悧(トウリ)だ。気を張り詰めていたと思っていたが、宮が見えて少し力が抜けてしまったようだ。忋抖(カイト)に気づかれずに身体に巻きつくなどそう易々(ヤスヤス)と出来るものではない。(タン)悪意(アクイ)殺気(サッキ)もなかったから見過ごしたと言ってもよいが、やばい、と忋抖(カイト)は苦笑した。


「…もしかして張ってた?」


どうにか佟悧(トウリ)を離そうとしてみるがしっかりと抱きついた腕は離れる事がない。だってさ、と(ホオ)(フク)らませながら余計(ヨケイ)に腕に力を込められてますます忋抖(カイト)は苦笑を深めた。


(カイ)ちゃん、お部屋の場所も変えちゃうし、悧羅ちゃんに(タノ)んでちょこちょこ(マジナイ)もかけ直してもらってるでしょ?哀玥(アイゲツ)ちゃんも(ソバ)を離れないしさ。なかなか一人にならないから大変だったよ」


「いやいや…ってそんなにずっと張ってたのかよ」


何とか腕を外そうとするが、大変だったんだからね、と佟悧(トウリ)はますます(ホオ)(フク)らませている。そこまでしなくても佟悧(トウリ)が他に(ジョウ)()わしている相手がいることは忋抖(カイト)も知っている。別に忋抖(カイト)としたいからと言っていても本能(ホンノウ)(サカ)らわないのは佟悧(トウリ)らしい。巻き付けられた腕を(ハズ)すのを(アキラ)めて嘆息(タンソク)すると、ふふふ、と佟悧(トウリ)が笑っている。


「別に俺じゃなくてもいいでしょ?()()()()()する相手は持ってるじゃないか」


「それは(カイ)ちゃんだって()()でしょ?」


当たり前のように首を(カシ)げられて忋抖(カイト)は苦笑するしかない。確かに言われてみればそうなのだが。


「もういい加減(カゲン)(アキラ)めてよ?十五年も追いかけっこしてるんだよ?…それとも(カイ)ちゃん恋仲(コイナカ)の相手がいる?」


「…いや、そうじゃないんだけど…。何度も言ってるじゃないか。佟悧(トウリ)は俺にとって姉みたいなもんだから()()()()()()として見れないんだって」


()いた左手で頭を()きながら言ってみるが、またそんなこと言う、と佟悧(トウリ)納得(ナットク)しない。これも十五年言い続けてきたことだから聞き()きたとでも言うように大きく溜息(タメイキ)をついている。


大体(ダイタイ)何で俺にそこまで(コダワ)るんだよ?他で我慢(ガマン)してろって」


「だからぁ、一回してみたいんだって。()うかもしれないでしょ?姉みたいとか言わずに(カイ)ちゃんも()れてよ」


もう、と肩を落としながら佟悧(トウリ)忋抖(カイト)(ウデ)を引っ張り始める。何気(ナニゲ)に強い力に体勢(タイセイ)(クズ)しそうになる忋抖(カイト)の腕を離さずにそのまま()け始めた。おいって!、と待つように声を掛けるが佟悧(トウリ)は止まってくれない。力付(チカラヅ)くで()(ハラ)うことは出来るのだが、やはり自分より力の弱い鬼女(キジョ)に対してそれをするのは忋抖(カイト)には(ハバカ)られる。


佟悧(トウリ)、待てって!何処(ドコ)に連れて行くつもりだよ!?」


どうにか足を止めようとするが()ける足を止めない佟悧(トウリ)に引きずられてしまう。いいからいいから、と笑いを(フク)んだような声音(コワネ)に、本当に待てって!、と言ってみるが(マッタ)く聞かない。結局引かれるままに連れてこられたのは佟悧(トウリ)(マカ)されている診療所(シンリョウジョ)だった。今は佟悧(トウリ)はここで寝泊(ネト)まりをして医師(イシ)として里を廻っている。戸を開けて中に入ろうとする佟悧(トウリ)に、いやいや、と忋抖(カイト)(アワ)てて首を振った。どうにか戸を(クグ)らないようにそこに(トド)まる忋抖(カイト)に、ほんとにもう、と佟悧(トウリ)が大きく嘆息(タンソク)して腕を離した。離しても何も言わずに逃げる忋抖(カイト)ではないと分かっているからだ。


「…本当に(カタク)なだよね…。そんなに(コバ)まれると佟悧(トウリ)魅力(ミリョク)が無いように思えちゃうよ」


くすくすと笑う佟悧(トウリ)に、そういうわけじゃないよ、と忋抖(カイト)も小さく笑う。姉のように思っているのでなければここまで(サソ)われて嫌だとは思わないだろう。本当に大切な家族のような存在だと思っているから(コバ)み続けられるだけだ。


「…本当に勘弁(カンベン)してよ…。佟悧(トウリ)とそんな風になっちゃったら、これから先顔合わせるのも気まずくなるしさ。それも嫌なんだよね」


「そんなのいつも通りでいいに決まってるじゃん?(ジョウ)()わしたからって(カイ)ちゃんと佟悧(トウリ)の関係が変わるもんでもなし。()()()()()()してる相手とだって関係や態度(タイド)は変わらないでしょ?それと一緒だよ」


「じゃあ、もしも()()()()()になったとしてさ?合うってなったらどうすんの?」


「それも変わらないでしょ?合うってなったら次またすればいいだけ。…何が問題なの?」


きょとりとしてさも当たり前の事のように言い(ハナ)ちながら佟悧(トウリ)が首を(カシ)げた。佟悧(トウリ)としてはただ鬼としての本能(ホンノウ)(シタガ)っているだけだ。姉弟(シテイ)のように育ったとはいえ血の(ツナ)がりはない。忋抖(カイト)(ジョウ)()わしてみたいというそれだけの事なのだ。容易(タヤス)く言われて忋抖(カイト)も苦笑するしかない。きょとりとしている佟悧(トウリ)に、あのねえ、と小さく息をついて頭を()いてしまう。とにかくこの場から離れないと押し(タオ)されてしまいそうだった。


「まあ、とにかくさ。もうちょっと考えさせてよ?ね?」


落ち着けようと思ったのだが、もう!、と佟悧(トウリ)(ホオ)(フク)らませて忋抖(カイト)の腕を(ツカ)んで力一杯(チカライッパイ)に引き寄せた。わ!、とぐらつきながら忋抖(カイト)診療所(シンリョウジョ)の中に引き込まれてしまう。引き込むと同時に戸を閉められて、まずい、と(アセ)っている忋抖(カイト)にぐいぐいと佟悧(トウリ)が近づいて来る。


「いや、待てって…。ほんと、ちょっと待てって!」


追い込まれるように後ずさる忋抖(カイト)の背が部屋に(ツナ)がる戸にぶつかった。逃げようと思えば逃げられるだろうが、それで佟悧(トウリ)を傷つけるのも(イヤ)なのだからどうしようもない。


佟悧(トウリ)、ちょっと落ち着こうよ?な?」


後ろに下がることもできなくなって両手でこれ以上近づかれないようにしてみるのだが佟悧(トウリ)は全く気にしていないようで忋抖(カイト)の手を(ツカ)んだ。


「もう少しもう少しって言われ続けてもう十五年も()ったの!いい加減(カゲン)覚悟(カクゴ)きめてよね?」


「いや、だから佟悧(トウリ)をそういう風に見れないって言ってるんだってば」


幾度(イクド)も伝えてきた言葉だがそれで退()くとも思えない。逃げるよりも落ち着けるように話した方がいいかもしれなかった。(ツカ)まれた手を降ろすと佟悧(トウリ)も手を離してくれる。背中に当たる戸を少し開いて腰掛(コシカ)けると、もう一度大きな溜息(タメイキ)忋抖(カイト)はついた。(スキ)を突いて逃げるつもりもないと示したのだが、それには佟悧(トウリ)も満足そうだ。これまで忋抖(カイト)が逃げ廻っていたのだからやむを得ない反応だろう。


「べつに佟悧(トウリ)自体が(イヤ)ってんじゃないんだよ。とにかく姉みたいな印象が強くて()()()()()()として見れないんだ。俺と(ジョウ)()わしたいって言ってくれるのは(スゴ)(ウレ)しいんだけどね?俺(コノ)みの顔してるしさ。だけど、どうしても()み込んだ後の事を考えると無理なんだよね。分かってくれたら(ウレ)しいんだけど…」


出来るだけ(オダ)やかに佟悧(トウリ)を見ながら伝えると大きく嘆息(タンソク)している。


「まあ、(カイ)ちゃんの理想(リソウ)って悧羅ちゃんだもんね。逃げてたかと思えばちゃんと話す時には話すしさ。そういう所が(ズル)いんだよねえ」


本当にもう、と肩を(スク)めている姿に、分かってくれた?、と笑った忋抖(カイト)は次の瞬間に目の前に来た佟悧(トウリ)の顔に(オドロ)いて後ろに倒れ込んでしまった。あっぶねえ、と身を起こそうとしたが身体の上に佟悧(トウリ)に乗られて身動きが取れなくなっている。もうさ、と(ツブヤ)くようにいいながら佟悧(トウリ)の両手が忋抖(カイト)の顔を(ツツ)んだ。


「…ごちゃごちゃ(ウルサ)い…」


目の前でにっこりと笑って佟悧(トウリ)はそのまま忋抖(カイト)に深く口付けた。(アワ)てて押しのけようとするが佟悧(トウリ)(クチビル)を離さずに自分の(コロモ)忋抖(カイト)隊服(タイフク)(ヒモ)()き始めている。


「待てって!」


ようやく口付けから解放(カイホウ)されて佟悧(トウリ)を押しのけようとするが少し(アラワ)になった肌が触れ合ってしまっては忋抖(カイト)の意思とは逆に身体が(タギ)ってきてしまう。するりと(コロモ)をずらしてもう一度佟悧(トウリ)忋戸(カイト)の上に乗ってくる。


「…もう(アキラ)めてよ。いい加減(カゲン)佟悧(トウリ)限界(ゲンカイ)だよ?」


熱で(タギ)っているのか(ウル)んだ目で見つめられて忋抖(カイト)が言葉を出せずにいるとまた深く口付けられる。さらりとした肌が触れる感触(カンショク)忋抖(カイト)無意識(ムイシキ)佟悧(トウリ)の背に腕を廻して抱きしめた。長い口付けから()かれると佟悧(トウリ)の息が上がっている。ここまでされて(ホウ)って戻るほうが(コク)だろう。分かった、と(アキラ)めて嘆息(タンソク)すると目の前の佟悧(トウリ)破顔(ハガン)する。それに苦笑(クショウ)して、寝所(シンジョ)は?、と(タズ)ねると一部屋(ヒトヘヤ)先だ、と教えられた。上に乗ったままの佟悧(トウリ)(かが)え上げて部屋の中に上がり寝所(シンジョ)に入るとそのまま横たえる。


「変わってくれるなよ?」


苦笑して深く口付けながら(タガ)いの(コロモ)()いで捨てる。そのままいつも(ジョウ)()わすように(イツク)しみ始めると、くすぐったいよ、と小さく笑っていた佟悧(トウリ)から少しずつ甘い声が上がってくる。いつもの自由奔放(ジユウホンポウ)佟悧(トウリ)の姿とは違う表情と声に忋抖(カイト)は小さく()きでる笑いを(コラ)えきれずにくすくすと笑ってしまう。


「…何…?」


(ウル)んだ目で見つめながら顔を包まれると忋抖(カイト)の顔が引き寄せられる。まるで口付けを()われているようでそれにも笑って(ナカ)乱暴(ランボウ)(クチビル)(カサ)ねた。その間にも手を休める事なく(イツク)しみ続けると身体の下で佟悧(トウリ)が身を(ヨジ)り始める。


(カイ)ちゃん」


()われたけれど、まだ駄目(ダメ)、と忋抖(カイト)佟悧(トウリ)の身体の(イタ)るところに口付けていく。


(サソ)ったのは佟悧(トウリ)でしょ?そんな容易(タヤス)く終わらせてやらないって」


笑いながら佟悧(トウリ)の足の間に顔を(ウズ)めて(イツク)しむと佟悧(トウリ)の身体が逃げようとして忋抖(カイト)の肩を押す。その腰を支えて引き戻すと、やあだあ、と甘い声と共に身体が大きく()ねた。それでも逃がさないように続けて(イツク)しむと二度三度と身体が()り返って()てて行くのが分かる。都度(ツド)聞いたこともない佟悧(トウリ)の声にぞくりと震える自分を(オサ)えて腰の腕を離すと、少しぐったりとした佟悧(トウリ)忋抖(カイト)を呼ぶ。何?、と佟悧(トウリ)(ヒタイ)に口付けるとそれだけでびくりと身体を震わせている。


(カイ)ちゃん…。佟悧(トウリ)もう本当に限界(ゲンカイ)。とにかく一度入ってよお」


「…これだけ(アオ)っといてそれはないでしょ?()らすだけ()らすよ、俺」


意地悪(イジワル)に笑って見せながら首筋(クビスジ)をなぞると、お願い、とまた乞われる。駄目(ダメ)、と笑いながら(イツク)しむ手を休めずにいると又佟悧(トウリ)が身体を(ヨジ)り始めた。甘い(アエ)ぎを聴きながら思っていたよりも細い佟悧(トウリ)の身体を(イツク)しんでいるとその間にも幾度(イクド)()(カエ)都度(ツド)名を呼ばれる。荒れた息と泣き出しそうなくらい甘い声で忋抖(カイト)を呼ぶ姿はしっとりと汗ばんで(ナマメ)かしさを(アオ)る。


確かに肌を(カサ)ねなければ分からないこともあるもんだ、と初めて見る佟悧(トウリ)に目を細めているとまた腕の下で身体を(ヨジ)って逃げ出そうとしていた。


「どこいくの?逃げちゃ駄目(ダメ)だろ?(タメ)したいって言い続けてたのは佟悧(トウリ)じゃんか」


うつ()せになってどうにか身体を離そうとする(ウナジ)(クチビル)でなぞるとびくりと身体を(フル)わせて甘い声を出してくる。布団(フトン)(ツカ)んで逃げようとする身体をどうにか(ツナ)ぎとめようとする姿は可愛(カワ)いらしくてまた忋抖(カイト)は笑ってしまう。何で笑うの?、と甘い声の中から聞かれて、何でだろうね?、とだけ応えてまた笑う。(ササヤ)くように肌に(クチビル)沿()わせると幾度(イクド)めかも分からずに佟悧(トウリ)()てた。それでも手を休めない忋抖(カイト)から無意識(ムイシキ)にまた逃げようとする身体を引き止める。


「逃げちゃ駄目(ダメ)だって言ってるだろ?」


笑いながら身体(カラダ)(カカ)えて向かい合わせになると佟悧(トウリ)の腕を片手で押さえ込んだ。幾度(イクド)()てさせられてくったりとした佟悧(トウリ)がとろりとした目で忋抖(カイト)を見てくる。荒れた息で(アカ)()まった(クチビル)(ツイバ)むと、もっと深く、とねだられてしまう。本当にいつもの佟悧(トウリ)からは考えられない姿に、また忋抖(カイト)は苦笑してしまった。ねだられるままに深く口付けて細い片足を(カカ)え上げて自分の肩に乗せる。そのまま勢いよく中に入り込むと幾度(イクド)()てていた佟悧(トウリ)忋抖(カイト)を強く()()けてきた。(クチビル)(フサ)がれたまま一気(イッキ)に入り込まれて佟悧(トウリ)が息を呑んだけれど、休ませることなく動き始めるとくぐもった声を出しながらも忋抖(カイト)にしがみついてくる。動いている間にも佟悧(トウリ)の身体は()り返り幾度(イクド)()ててはまた(ノボ)っていく。


口付けから解放(カイホウ)すると(タマラ)ない、というように甘い(アエ)ぎとともに首を振って嫌だ、と(シメ)す。入っている忋抖(カイト)佟悧(トウリ)()てるたびに締め付けられてつい、きっつ、と(ウメ)いてしまう。(アエ)ぎの中から何度も、ちょっと待って、と哀願(アイガン)されるが止まってやれることが出来ないでいると佟悧(トウリ)の目から(ナミダ)(コボ)れた。


やっべえ、やり過ぎた。


とりあえず動きを止めるとしがみつかれていた腕が力なく落ちてぽすりとした音がする。


「悪い、止まれなかった」


(アヤマ)りながら流れ落ちた(ナミダ)()いてやると(ウル)んだ目で見つめながら佟悧(トウリ)が腕を伸ばして(ホオ)()れてきた。


「…(カイ)ちゃんて…、意地悪(イジワル)だ…」


引き寄せられて口付けると、いつもこんななの?、と小さく笑っている。


「さあ?どうだろうね?…何て応えて欲しいの?」


笑いながら(ヒタイ)を付けると佟悧(トウリ)もくすくすと笑い始めた。(ハダ)()れ合う感触(カンショク)は嫌なものではない。けれど、ここまで()めたてた事は無かったかもしれない。


佟悧(トウリ)(クセ)になっちゃうかもしれないよ?」


もう一度口付けられて忋抖(カイト)の背中に(フル)えが走る。いいよ?、と笑って応えると少しばかり(オドロ)いたのか目を見開いている。


「もうしちゃってるし。(クセ)になったらなったで又(サソ)いにくるんでしょ?…正直こうしてるの俺も(イヤ)じゃないからね」


「だからずっと言ってたじゃん。やっと分かった?恋仲(コイナカ)になりたいわけじゃなくて()()うのがどうなのか知りたいんだって。…もっと早く折れてくれてたら良かったのになあ」


息を整えながら言う佟悧(トウリ)に笑って、それはそれ、と忋抖(カイト)は又動き出す。今までよりも深く入り込まれて、ようやく整いそうだった息もまた(ミダ)れ始める佟悧(トウリ)を抱き上げて座るともうそれだけで(ナン)なく()てていくのが分かる。今までよりも強く締め付けられて自分が()てそうになるのを(コラ)えてから一旦(イッタン)動きを止めるとぐったりと忋抖(カイト)の胸に佟悧(トウリ)の身体が(アズ)けられた。


「じゃあ今まで通りってことで良いんだよね?俺も他と(ジョウ)()わすし、佟悧(トウリ)も他と(ジョウ)()わす。でもしたくなったら(サソ)う」


「…それもずっと言ってるでしょ?佟悧(トウリ)別に(カイ)ちゃんを(シバ)りたいわけじゃないもん」


腕の中から見上げてくる佟悧(トウリ)(ホオ)(フク)らませている。でもさ、と小さく首を(カシ)げて(ツブヤ)くように続ける佟悧(トウリ)に、何?、と(タズ)ねると腕が首に廻された。


「こんな(カイ)ちゃん知っちゃったら、他の女に少し嫉妬(シット)するかもなあ。でも約束(ヤクソク)だから、それでいいよ」


にっこりと微笑(ホホエ)佟悧(トウリ)につい忋抖(カイト)は声を上げて笑ってしまう。


「それでこそ佟悧(トウリ)だよな。…ってか佟悧(トウリ)って可愛(カワ)いかったんだな」


「はあ?今頃(イマゴロ)気づいたの?」


(アキ)れたように嘆息(タンソク)する佟悧(トウリ)を引き寄せて口付けると、悪い、と忋抖(カイト)(アヤマ)ってから(フタタ)び動き出した。今の今まで普通に話していた佟悧(トウリ)からまた甘い声が聞こえ出してそれでも離れないようにしっかりとしがみついてくる。背中に(ツメ)が立ったけれど(カマ)わずに突き続けると立て続けに佟悧(トウリ)()てていく。さすがに()め付けが強くなり過ぎて忋抖(カイト)(コラ)えられそうになかった。


(クセ)になるのは俺も同じかもしれないな、と思いながらも突き上げ続けると甘い声の中から名を呼ばれる。何度も名を呼ぶ口を乱暴(ランボウ)に口付けて(フサ)ぐと上に()ねる佟悧(トウリ)を押しつけて共に最奥(サイオク)忋抖(カイト)(ヨク)()き出した。その刺激(シゲキ)(フル)える身体を又押し付けるように(トド)めおいてようやく(クチビル)を離すとまたくったりとした身体が胸に(アズ)けられた。小さく笑いながら抱きしめて、大丈夫?、と頭に口付ける。


「…やっぱり(クセ)になりそうだよ。…しばらく(カイ)ちゃん以外欲しくなくなりそう…」


まだ中から出ていない忋抖(カイト)に甘えるように擦り寄って言う佟悧(トウリ)が可愛くてまた忋抖(カイト)は笑ってしまう。


「確かに相性(アイショウ)は良いかもな。…でもそんな見たことない佟悧(トウリ)ばっかり見せられたら、もう一回したくなるだろ?俺、そういえば母様(カアサマ)に部屋に入っててって父様(トウサマ)が言ってたって伝えなきゃなんなかったんだよな」


思い出した忋抖(カイト)に、今更(イマサラ)?、とまだ力の入らない身体を(アズ)けたままで佟悧(トウリ)が笑っている。


「さすがに(シン)ちゃんも戻ってるよ。それよりもう一回したいって本音(ホンネ)?」


うん?、と忋抖(カイト)は苦笑する。まだ出ていないのだから佟悧(トウリ)の言葉で(タギ)ってきているのは分かるだろうに。


(ウソ)だったらとっくに出てるよね。()()()()()()?」


入ったままだった忋抖(カイト)(タギ)り始めると佟悧(トウリ)がまた(フル)えだす。本当みたいだね、と甘い声で言われて()り返り始める身体を強く忋抖(カイト)が抱きとめて深く中に入り込んだ。


「…そういうわけなんで、もう一回いい?」


笑いながら言う忋抖(カイト)の頬を包んで引き寄せて口付けながら、もちろん、と佟悧(トウリ)も笑っている。


「十五年も待ったんだからね。ちゃんと支払(シハ)らってもらわないと佟悧(トウリ)がどうにかなりそうだったんだから。利子(リシ)も付けてよね」


了解(リョウカイ)、と苦笑してまた二人は快楽(カイラク)(オボ)れ始める。甘い(アエ)ぎの中から何度も(ナマメ)かしく名を呼ばれ続けて忋抖(カイト)もしばらくは佟悧(トウリ)(マカナ)えそうだ、と思いながら目の前で自分に応える佟悧(トウリ)に思う存分(ゾンブン)(オボ)れてみることを決めた。



満月まで後八日(ヨウカ)になっていた夜だった。

遅くなってすいません。

忋抖が、ついに堕ちてしまいました。


これから先ギリギリラインが続く予定です。

苦手なかたは御了承下さいませ。


お楽しみいただけましたか?

ありがとうございました。

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