闘技《トウギ》
少しばかり長くなりましたが、お楽しみください。
祭りのような賑わいがその日の里には満ちていた。
『齢十七以上の者に限り闘技を催す』
200年ぶりの報せが下ったのは一月前の事だ。古くから里にいる者は珍しいこともあるもんだ、と笑っていたが若い者からすれば鬼としての自分の能力がどれ程のものなのかを知れるとあって申し込むものが後を絶たなかった。未だ成長過程の者、すでに最盛期を迎え身体の成長が停まった者、挑む者はそれぞれではあったが平穏な里において闘技があるなど心が踊るというものだ。
鬼たるもの強くあるべし、というのが産まれ落ちた時から身体に刻みこまれている。久方ぶりに全力で暴れられる上に勝利した者には望む褒美も与えられる。勝利せずとも成果が目に留まれば近衛隊や武官隊に入隊している者も、そうでない者も声がかかるのは分かりきった事だ。
しかも今回は長の子どもらも出るという。
『遠慮は要らぬ』
子どもらが出るからといって手加減はしなくても良いと父である近衛隊隊長紳の言葉も添えられていた。長と紳の子ども達は六人すべてが一本角の持ち主だ。けれど能力や体術においてはまだまだ発展途上だろう。秘めたる能力は凄まじいだろうが最盛期を迎えている者達にとれば童の手を捻るようなものだ。
けれど闘技と言えど真剣勝負。普段手合わせ願えない者たちと手合わせ出来るのは嬉しいものである。しかし余りに多くの者が集ってしまったので、仕方なく篩にかけるために一旦100人ほどを一つとして勝ち上がった物を本戦に出れる権利を与えた。集った者たちは久しぶりの闘技に喜びながら自らの能力や体術を存分に発揮した。
闘技の場として用いられたのは鍛錬場だった。鍛錬場を囲むように参加しない民達が密集して、闘技を見守っている。見守る者達もまた、心が踊っているようで大きな歓声が響きわたっていた。その最上階に悧羅の席が設られている。
「闘技の最中に砂や埃が飛ぶし、武器が飛んできたら危ないでしょ?」
心配し過ぎた紳が近くで見ることを禁じたからだ。無用な心配だ、と悧羅は笑ったのだが許してはもらえなかった。紳が見て一番安全だと思われる場に悧羅を置いたのだ。側には荊軻と栄州が控え、悧羅の両隣には皓滓、玳絃、灶絃が座っている。足元には妲己まで控えていては、何が起ころうともこの場だけは安全な場だろう。
下の子ども三人は目の前で繰り広げられる鬼達の真剣勝負に目を輝かせながら、悧羅にしがみついている。
「恐しゅうはないかえ?」
優しく尋ねる悧羅に、ううん!、と元気な声が返ってくる。
「ぼくも出たかったなぁ」
残念そうに呟く皓滓の頭を撫でて、もう少しの辛抱だ、と悧羅は笑った。齢十三の皓滓にはまだ早すぎる。ちぇえ、と唇を尖らせる皓滓に苦笑していると、いやはや、と側から栄州の声が聞こえる。
「久方ぶりの闘技とは、なかなかに血が騒ぎまするな。我ももう少し若ければ、と思いますなあ」
満足そうな笑顔で闘技を見つめる栄州の目は嬉々として輝いている。栄州からすれば先代の時には毎年のように行われていた闘技を常に開きたいと思っていた。悧羅が善としなかったので、聞き届けられたのはこの500年で二回だけだ。その500年の間に優秀な鬼が陽の目を見る事がなかったかもしれない。それがこうして開かれるとなったのだ。今の鬼達の能力を量り知るよい機会だと喜びしかない。
「栄州ならば今とて渡りあえるのではないかえ?」
笑う悧羅に、お戯れを、と栄州が笑う。
「我も老齢でありますれば。若者達には敵ぬ。なれど我が天寿を全うしても、良い鬼達が里を支えてくれるならば良いことですからな」
できるだけ心配は少なくして逝きたいのだ、と笑う栄州に、縁起でもない、と悧羅は苦笑する。そう易々と逝ってもらっては困る、と言う悧羅に栄州は笑ったままだ。
「心残りはございませぬのでな。長の御子を六人も抱けるとは思うておりませなんだ。なれど、我にとっては何よりの褒美。御子達から爺とまで呼んでいただけておるのですからの」
笑い続ける栄州に、やれやれ、と肩を落とす悧羅に、母様、兄様が出るよ、と灶絃が衣を引っ張った。どれ、と視線を返すと妲己も起き上がっている。鍛錬場の中心に大刀を持った忋抖が立っている。相手はかなり巨躯だが二本角のようだ。特に問題なく勝てる相手だろう。立会人は公平をきすために枉駕が務めるようだった。
始め!、と振り下ろされた手を合図に二人が動いたが勝負は一瞬だった。おや、と苦笑する悧羅の目に巨躯の鬼が地に伏せる姿が映った。構えた大刀を相手の首に当てる忋抖に枉駕が勝ちを宣言する。
「やった!兄様が勝ったよ!」
嬉しそうな玳絃、灶絃、皓滓の顔を笑って見ながらしばらく心配はいらないだろう、と悧羅は椅子に深く腰掛けた。出ている子ども達は順当に勝ち上がっている。勝利までは掴めなくとも良い線まではいくだろう。悧羅としては怪我をしてくれなければそれでいい。
“あの程度の相手など若様の敵ではございませんな”
起きあげた体躯をもう一度休めながら妲己が小さく笑っている。幼い頃から妲己や紳によって手合わせを行っているのだ。今の子ども達の実力は妲己が良く知っている。その割には心配そうであったではないか、と苦笑する悧羅に、お怪我でもされては許されませぬので、と尾を振っている。
「おやおや、妲己は姫君、若君の勝利よりもお怪我なさるほうが心配なのですか?」
小さく笑いながら言う荊軻に、無論、と妲己は尾を振り続けている。500年前に悧羅に同行した時も勝ち負けよりも怪我をしないかどうかが心配だったのだ。割と早めに負ける、とは言っていたが怪我して負けたら、と思うと胆が冷えたのを思い出す。
“まだまだ修行が足りておらぬ故。上には上がおると知るのも一興だろうて。負けを知って強うなられるのだから”
鼻唄でも聞こえそうな妲己の様子に荊軻は苦笑するしかない。笑い合っていると闘技は着々と進んでいく。鬼同士の戦いに刻はかからない。全力で挑めば尚のこと一瞬だ。進んでいく闘技を見ながら、そういえば、と荊軻が口を開く。
「褒美は何を欲しがりますでしょうね?昔は長を望む者も多かったと聞いておりますが、今ではそれはないでしょうから」
「さての。手に余るもので無ければよいがの」
苦笑する悧羅に、そうでございますね、と荊軻が苦笑する。さすがに今、悧羅の夜伽の相手を務めたいなどと言い出す者はいないだろう。だがそれ以外だとすれば、何を欲しがるかなど荊軻にも分からない。土地や金銀などであればどうにかなるが、それ以外で何か言い出すようなものが思い浮かばないのだ。荊軻が愚考している間にも闘技は進んでいく。順当に勝ち上がっていた子ども達も最初に啝珈が真珠色の一本角を持つ男鬼に負けた。体格の差もあったのだが、それ以上に男鬼の能力が秀でていたのだ。瞬きの合間に地につかされた啝珈は礼を取った後一目散に悧羅の場まで翔け上がってきた。余程悔しくて仕方ないのだろう。そのまま妲己に抱きついて顔を上げようとしない。
“姫君はまだ強くおなりになれまする”
抱きついたまま動かない啝珈を尾で優しく撫でながら妲己が声をかけている。無言で頷く啝珈が啜り泣いているのが聞こえて悧羅も胸が痛くなった。かける言葉も見つけられず啝珈の側に膝をついてその背に手を当てる。弾かれたように啝珈が悧羅の胸に収まった。
「よう頑張った」
優しく抱きしめていると、姉様だ!、と玳絃が声を上げる。視線を返す悧羅の腕の中から啝珈も目を擦りながら顔をあげた。その頭を撫でて鍛錬場を皆で見やると、媟雅が大刀を構えている。相手は舜啓のようだった。おやまあ、と苦笑する悧羅の目の前でそれは一瞬だった。
大刀に振るった媟雅を軽くかわして、舜啓が高く舞い上がる。腰に差した刀を抜いて一振りし媟雅が体勢を崩したところで足を払う。背中から地に倒れた媟雅の首元の一寸先に刀を勢いよく突き立てると同時に媟雅の大刀を足で抑えた。
遠目からでもわかるくらいに媟雅が青ざめているのは見てとれた。
「ずいぶんと強うなっておるではないか」
くすくすと笑う悧羅の横で妲己が、くっくっ、と笑っている。
「…妲己…、其方鍛錬をつけてやったのであろ?」
“せがまれましたので。舜啓の頼みとあらば我に否と言えましょうか”
道理で近頃宮に居る刻が少ないとは思っていた。まさか舜啓を鍛えていたとは思っていなかったけれど、まだまだあれにほ先がございますよ、と妲己は笑っている。手合わせする間に妲己は舜啓に何某かの可能性を見出しているようだ。
「それは楽しみじゃの」
笑いながら礼を取る二人を見守っていると、離れようとした媟雅に焦って駆け寄る舜啓の姿が見えた。怪我などしていないか確かめたいのだろうが、それを振り切って媟雅も悧羅の場まで駆け上がってきた。追いかけるように舜啓までも上がってきて、悧羅は苦笑を深めるしかない。啝珈と同じように妲己に抱きつく媟雅に舜啓が、怪我してない?、と声をかけている。
「うるさい!」
涙声で叫ばれて舜啓も肩を落とす。悧羅ぁ、と困ったような声で名を呼ばれて悧羅は立ち上がった。舜啓もすでに悧羅の背丈を越している。少しばかり見上げるように舜啓を見て、大事ないよ、と宥めた。でも、と言う舜啓に、真剣勝負であろ?、と諭す。
「いつものように手を抜いておっては舜啓の力試しにもならぬ。能力の違いを分かることは良いことじゃ。励みにもなろうて。ほれ、次の試合が始まるえ。行って支度をするが宜しかろう」
舜啓の背を叩いて促すが、だってせっちゃんが、と舜啓はおろおろとしている。それにも宥めて、気を紛らわすでないよ、と笑う悧羅に、うん、と舜啓が側を離れようと背を向けた時だった。舜啓、と涙声の媟雅が呼び止める。
「え?せっちゃん、やっぱりどっか痛い?力入れ過ぎたかな?」
焦る舜啓の顔を見ずに妲己に抱きついたまま、手加減したでしょ、と媟雅が言う。
「真剣勝負だって言ったのに!馬鹿ぁ!負けたら許さないからね!」
言うなり大声で泣き始める媟雅に、おやおや、と悧羅は苦笑する。舜啓も、参ったな、と頭を掻いている。手加減なし、と言われてもやはり媟雅には傷を負わせたくなくて能力を抑えてしまった。本能的に抑圧してしまったのは否めない。
「見透かされておったようだの。舜啓、どうするのだえ?」
小さく笑い続ける悧羅に舜啓は嘆息した。
「…今度は本気でやるから。それで許してよ。鍛錬の時でもなんでも、せっちゃんが本気でやれっていったらやるからさ」
溜め息混じりの舜啓に妲己も笑っている。尾で媟雅の背を叩いてやると、約束だからね!、と涙声がした。わかった、という舜啓に行くように悧羅が促すと、お願いね、と言い残して鍛錬場に駆け降りていく。大きくなったものだ、と背中を見送りながら小さく笑って、悧羅は啝珈の時と同じように媟雅の側に膝をついて、よう頑張った、と頭を撫でた。
「…悔しいよ母様…」
下を向いたまま悧羅に抱きついて媟雅が声を殺して呟やいた。
「舜啓、全然本気じゃなかった!相手にもならなかったよ。まだまだみんなの背中が遠い…」
泣きじゃくる媟雅の背中を優しく撫でて、その気持ちがあれば十分だ、と言い聞かせる。手加減されたのが堪らなく悔しいのだろう。遠い日の紳もそうであったのかもしれない、と少しばかり思いを馳せる悧羅に、まだ強くなるから、と媟雅が言う。
「楽しみにしておるに」
涙を拭いてやりながら悧羅が言うと、帰ったら鍛錬つけて、と妲己に乞うている。どれだけでも、と妲己の尾で撫でられて媟雅はようやく大きく息をついた。悧羅から離れた媟雅に玳絃、灶絃、皓滓が走り寄ってくる。
「姉様、ここまできたのがすごいんだよ!明日からまた一緒にお稽古しようね」
弟達に慰められて、ようやく媟雅にも笑顔が戻った。そうだね、と笑って弟達の頭を撫でていると、ほら、若様ですぞ、と栄州が身を乗り出している。大分数も少なくなってきているが、どうにか忋抖はまだ残れているようだ。とはいえ残りは両手で足りるほどだ。ここから残れるほど甘くは無いだろう。どれ、と見守っていると予想に反して忋抖が勝ち上がって行く。なんとまあ、と目を細める悧羅に対し荊軻と栄州は大きく頷いている。
「日頃から紳様に鍛えられておいでですからね。御自身でも鍛錬を欠かさずにおいでですし。順当ではございましょう」
「まだまだ伸びていかれようて。楽しみだのお」
笑う栄州だが、勝ち上がっているとはいえ忋抖も無傷というわけではない。衣は所々破れているし、身体の至るところから血も出ているのが見て取れる。疲れも溜まっているのだろう。息もあがっているようだ。悧羅としては忋抖の怪我の方が気にかかる。礼をとって退いていく先で紳が忋抖に声をかける姿が見えた。悧羅が降りるわけにもいかず、ここは紳に任せるしか無さそうだ。
「兄様疲れてるね。大丈夫かなぁ」
皓滓にも忋抖の疲れが見えたのだろう。心配そうな声を出して悧羅の衣を引っ張った。
「疲れておっても闘技は待ってはくれぬでな。それは兄様だけではなかろう?皆同じじゃて」
皓滓の頭を撫でて教えると、そうだね、と頷いている。技術的には秀でてはいるが、忋抖の消耗が大きいのは明らかだ。
“しばらくは礎の体力をつけねばならぬようです”
妲己も身を起こして忋抖の姿に目を細めている。そのようだの、と悧羅が頷く先で別の場からも歓声があがった。二倍はあるかと思われる巨躯の一本角を舜啓が瞬倒したようだ。よし!、と一際大きな声が上がって視線を向けると咲耶が身を乗り出して叫んでいる。負けたら夕餉抜きだからね!、と叫ぶ咲耶に周囲の者は皆笑っている。隣で恥ずかしそうにしている白詠と佟悧の姿も見えて、苦労が絶えぬな、と悧羅は苦笑した。
それにしても、と悧羅は妲己を見る。どのような鍛錬をつければここまで変えることが出来たのか、と少しばかり呆れてしまう。悧羅の子ども達には少しばかりの遠慮もあるのだろう。妲己の本気は一本角と変わりないのだが、悧羅が見ている限り子ども達と手合わせする妲己はかなり能力を抑えている。言ってしまえば戯れているに近い。
舜啓にはそれをしなかった、ということだろう。当然だ、と言わんばかりの妲己の顔を見ていると見つめられている事に気づいたのだろう。悧羅を見て少しばかり胸を張り尾を勢い良く振り始めた。
「…子どもらにも本気を出さねば叱られるのではないか?」
“そうでございますね。ですがやはり御子らは愛らしゅうて…。我が本気になればお怪我をさせてしまいますので憚られまして…”
首を傾げる妲己に、本気じゃなかったの?、と子ども達が迫っていく。いえその、と言葉を濁す妲己に、本気でやってよ!、と子ども達が責め立てた。振っていた尾を力なく下げて、承知、と小さく返した。ほれみい、と笑う悧羅に、主のせいですよ、と妲己が一瞥を投げた。すまぬ、と笑いを堪えていると、おや、と荊軻の声がした。
「どうやら舜啓と若様のようですね。残りは四組のようですが…。さてどうなりますやら…」
穏やかに笑う荊軻の視線を皆で辿ると、すでに闘技は始まっていた。大刀を手足のように使う忋抖に対し舜啓は刀を抜く事なく軽く避けている。息の上がった忋抖に対し、舜啓はまだ余力があるようだ。大きく振りかぶられた大刀を逆手に取ってそのまま大きく一廻しすると、忋抖の身体が宙に浮いた。浮いた忋抖の身体をそのまま地に叩きつけると、忋抖から苦悶の声があがったのが悧羅達にも聞こえた。握られていた大刀から忋抖の手が離れると、舜啓はその大刀をもう一廻しして切先を忋抖の首に突き付けた。
「勝負あり!」
枉駕の声が響いて舜啓が大刀を引く。くるりと大刀を回して肩に担ぐと忋抖に手を伸ばして立ち上がらせている。立ち上がった忋抖に大刀を返すと向き合って礼を取る。遠目からでも肩を震わせている忋抖の姿が目に入って悧羅の衣を掴んでいた玳絃、灶絃の力が強くなった。
「兄様…負けちゃった…」
涙声になっている二人の頭を撫でていると、忋抖も悧羅の側に戻ってきた。顔は下を向いているが肩が震えている。衣も破けて埃と血、至る所に痣もある。
なんとも痛ましや、と悧羅が思っていると、ちょっと貸して、と忋抖が弟達に言った。うん、と悧羅の衣を離して玳絃、灶絃、皓滓は媟雅と啝珈の側に寄った。悪い、と言いながら悧羅の手を忋抖が引いて構えられた場の後ろに連れて行く。他の者の目が届かない場で、忋抖、と悧羅が声をかけた。
「…母様…、ちょっと幼子に戻ってもいい?」
背中を向けたまま震える声で聞かれて、悧羅は、よいよ、とだけ応えた。ゆっくりと振り向いた忋抖の顔は涙で濡れている。それでも懸命に声を押し殺している息子に、おいで、と悧羅は両の腕を広げた。飛びつくでもなく、駆け寄るでもなく、ゆっくりと悧羅に近づいて忋抖は悧羅の腕の中に収まった。声を上げることをせずに肩を震わせ続ける忋抖の背を撫でながら、ようやった、と悧羅は労うしかできない。
「…まだまだだよ…。まだこんなんじゃ母様を守れない…」
「その気持ちで十分じゃて。あまり早うに大きゅうなってくれるな。妾の役所がのうなってしまうに」
でも、と言う忋抖の言葉はそこで途切れた。その後に紡ぐ言葉がみつけられなかったのだ。
「其方らはまだまだ強うなれる。身体も心も今からじゃ。そう焦るでない。刻はまだ沢山ある故。もうしばらくは妾に其方達を護らせてたも」
声も出さずに悧羅の腕の中で忋抖が頷く。痛ましい傷の数々を見やりながら、よい経験をした、と悧羅は抱きしめる腕に力を込めた。まるで若い頃の紳を抱きしめているようだ、と思いながら悧羅は忋抖の背をさする。鍛錬場を見ることは出来ないが、一際大きな歓声があがった。どうやら勝者が決まったようだった。
筆者、新型コロナワクチン二回目打ってきました。待機場で書いてましたが、すでに腕が痛いです。
利き腕でないのが幸いですね。
これで少しばかり一安心できそうです。
自分も家族も周りにも。
それでも予防対策はしっかりと致します。
お楽しみいただけましたか?
ありがとうございました。